バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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イベント開始~4日目 進展

イベント4日目。

 

 

 

畑仕事などを全てこなした俺たちは、昨日は留守だった、茸採集をしているバッツの家を再訪問していた。

今日は時間が良かったようで、すぐに出会うことができた。まあ、キノコを譲ってもらう代わりに、キノコ栽培の手伝いをさせられたけどな。

 

凄い発見もあったから文句はないけど。なんと、乾燥茸から出汁を取るという方法だ。干しシイリ茸を水に浸けておくと、出汁になるらしい。良いことを聞いたぜ。味噌汁のレベルがさらに向上するかもしれない。

 

 

いや、昨日の夜に作った味噌汁もかなり美味しかったけどね。

カイエンお爺さんの家に戻った俺は、手に入れた食材を使って料理をすることにした。

 

最初に取り掛かるのが味噌汁だ。何せ魚がある。とは言え、生で出汁を取ることは俺には難しいので、乾燥させてみることにした。すると、ビギニウグイは小魚の煮干し、ビギニマスは川魚の一夜干しというアイテムに変化する。

 

大きさの違いかね? まあ、煮干しがあれば出汁は取れる。どうせならとことん拘ろうと考え、浄化水と煮干しを一緒に鍋にかけてみた。すると、煮立ったところで鍋の中に変化が起こる。煮干しがどこかに消え去り、浄化水が出汁という名前に変わっていたのだ。成功らしい。品質は低いから、そこは研究が必要だろうが。

 

その出汁に、味噌と、狩人のカカルから購入したアタックボアの肉、青ニンジン、キャベ菜、群青ナスを投入すれば、青い具材の浮かぶ豚汁の完成だ。ただ、その効果が凄かった。

 

 

名称:豚汁

 

レア度:2 品質:★7

 

効果:満腹度を23%回復させる。2時間、HPの自動回復速度上昇。2時間、HP、MPが2上昇。

 

 

これだ。効果が高すぎる。これは売れるんじゃなかろうか? 食事するだけでバフが付くわけだし。さらに、その次に作ったのが念願のピザなんだが、こっちも凄かった。

 

まずはトマトソースである。白トマトを切ってオリーブオイルを加え、後はひたすら煮詰めていく。軽く塩コショウを加え、ドロドロになったら完成だ。見た目がホワイトソースの、白トマトソースである。

前は品質が低かったことも考えて、最初にトマトの皮を剥き、煮詰める時の火加減も注意してみた。品質が★5になってくれたので、頑張った甲斐があったね。

 

それを焼く前のパンの生地に塗り、オリーブオイル、白トマト、群青ナス、バジルル、千切ったチーズをのせて、オーブンで焼く。

 

 

完成した物がこちらです。

 

 

 

名称:ピザ・1ピース

 

レア度:2 品質:★6

 

効果:使用者の空腹を13%回復させる。2時間、MP消費が8%減少。

 

 

これは昨日食べたフレデリカが絶賛していた。

 

「凄い!!!2時間もMPが8%も減少するなんて、魔法使いのプレイヤーだったら必ず2時間ごとに食べたい有用すぎる料理だよ!!?」

 

と言っては、俺にピザの材料をなくなるまで作らせる代わりに数万Gの金をポンと払ってくれた。

 

今朝の朝食は昨日の余り物だが、豪華な朝食だった。しかし、味噌汁がばっちり作れるようになったからには、やはりもっと米が欲しいよな。パンも美味しいんだけど、見た目がどうしてもね。

 

使い切ってしまったピザの材料を買いに行かねば、そんなことを考えながらペイン一行とギルド前の広場に行くと、すでにマルカやジークフリードたちが輪になって話をしていた。

遅れたことを詫びると、とんでもないと逆に恐縮されてしまった。彼らは皆この広場にテントを張っており、自然と集まってしまったそうだ。それに、集まった協力者のうち、半数以上が俺の名前を出したらしい。昨日の女性陣が頑張ったようだな。

 

「むしろ白銀さんは仕事を十分こなしてくれたので、次は我々の番ですから」

 

「ああ、君は良い報告を待っていてくれ」

 

と話していたら、広場の石碑がうっすら輝くのが見えた。誰かが死に戻ってきたようだ。

 

「さっそく被害者が出たようだな」

 

「どうやらそのようで、それじゃペインさん達も来たことで出発しましょう」

 

「え? もうか?熊はともかく悪魔の居場所はまだ判明してないぞ」

 

「今回は悪魔の居場所を探すための調査隊を結成したんです」

 

コクテンたちは時間を無駄にするのが勿体ないということで、すでに朝から悪魔を探しているらしい。事前情報通り、ガーディアン・ベアは川の上流で遭遇するそうだ。コクテンたちのパーティが最初に戦ったらしい。

 

「どうだったんだ?」

 

「今のままでは難しいですね。実際戦ってみたらHPを3割ほど減らしたところで力尽きました。ただ、パターンが分かれば、やれないことはないでしょう」

 

「戦うのはいいけど倒すなよ?村の守り神的存在なんだからな」

 

誤って倒したら盛大にそいつらを・・・・・。

 

今日はギルドで依頼でも探してみるか。そう思ってギルドの中に入って、クエストボードに向かおうとしたのだが、その前に受付嬢に声をかけられた。

 

「あの、昨日リッケと一緒にいた旅人さんですよね?」

 

「ん?そうだが」

 

何で知られてるんだ? いや、一緒に歩いてたし、村の人には普通に見られてたか。

 

「実は、リッケとあと2人の子供の姿が見えないそうなんです。それでリッケと最後に話したというあなたに心当たりが無いか聞きたいんですが」

 

「最後?いえ、俺と別れた後、ギルドか村長さんの家に行ったと思いますよ?」

 

巨熊のことを村の人に伝えるって言ってたからな。だが、受付嬢は知らないと言う。詳しく説明すると、非常に驚いた顔をしていた。そんな報告は受けていないのだと言う。

 

「ええ? でも、確かに報告するって言ってたんだけどな」

 

「その巨熊というのは、どんな熊でした?」

 

「俺は直接は見てないんですけど、かなり巨大な熊のモンスターらしいですよ。川の上流で遭遇したとか。それで村の人達に訊いたら守護獣のガーディアン・ベアだとか。何だか凶暴化していることを伝えたら悪魔の封印が解けかかっているのじゃないかと危惧してました」

 

「なるほど・・・・・」

 

俺の言葉に受付嬢が考え込む。いったい何が起こってるんだ? 分かるのは、リッケが熊のことを村の人に話さずに隠していたってことか。

 

「あの、リッケたちの捜索をお願いできないですか? 村の人間も探しに出ているんですが、手が足りないんです」

 

探索クエストか。まあ、何か依頼を受けるつもりだったし、ちょうど良いな。いや、特にクエストが発生したりはしてないみたいだ。クエストではない、単なるお願い扱いってことかね?でも、イベントに関連がありそうな事件ではあるな。

 

「じゃあ、まずは心当たりを当たってみるか」

 

俺は最初に釣り場に向かうことにした。村の外でリッケに関係ありそうな場所は、あそこしか思いつかないからな。

 

「みんなもリッケを捜してくれ」

 

「ム!」

 

「キュイ!」

 

「クマー!」

 

「――!」

 

「メェー!」

 

「かしこまりました」

 

おっと、その前におばあさんの畑労働クエストをこなしておかないと。100ポイントも貰えるクエストだからな。もう慣れてきたから、30分くらいでこなせるし。

 

 

 

 

 

 

 

釣り場に向かいながら、俺はリッケを捜していた。名前を呼びつつ、スキルで周囲を探っているんだが。

 

「うーん。どこにもいないよな」

 

「キュイ」

 

「クマ」

 

俺の言葉に頷いたのは、リックとクママだ。俺は気配察知、ミーニィは索敵、クママは嗅覚という、人捜しに使えるスキルを持っている。だが、誰のスキルにもリッケの存在は引っかかっていなかった。

寄ってくるのはモンスターばかりだ。この辺はラビットしか出ないので、さくっと倒せるはずだったんだけどね・・・・・。

 

「プチ・デビルと黒ラビットがめっちゃ増えてるな」

 

「ムム!」

 

「サンキューオルト」

 

「ム!」

 

黒ラビットの突進から俺を庇ってくれたオルトは、振り向かずにサムズアップで俺の声に応えてくれる。はは、漢らしい!昨日はこの辺でプチ・デビルは出なかったはずなんだよな。黒ラビットは分からないけど。でも、昨日は1回しか遭遇しなかった黒ラビットに、今日はもう3回もエンカウントしている。

 

「リッケが本当に村の外に出てたら、相当危険なんじゃないか?」

 

「クママ!」

 

「そうだな、早く捜した方がいいよな」

 

クママが急かすように俺を手招きしている。リッケとは釣りをした仲だからね。うちの子たちも心配しているんだろう。

 

そのままラビットたちを蹴散らしながら、釣り場まで進んだんだが、そこにリッケの姿はなかった。だが、全くの空振りでもない。

 

「――!」

 

「ゆぐゆぐどうした?」

 

ゆぐゆぐが何かを拾い上げている。それは、赤い色をした小さな魚型の模型だった。これはルアーか? どっかで見た気がするが・・・・・。そうだ、リッケが持っていたルアーだ。やはりリッケはここに来たのか。

 

「皆、この辺を捜せ」

 

他に手掛かりがないか手分けして釣り場を探索すると、オルトが岩の間から何かを拾い上げた。

 

「ム!」

 

「お、何か見つけたか?」

 

「ムー」

 

オルトが発見したのは女物の髪飾りだ。ただ、これはリッケの持ち物じゃないよな? まあ一応インベントリに仕舞っておこう。

 

「キュイ!」

 

「ミーニィもか」

 

ミーニィが引きずってきたのは何やら小汚い布の小袋だ。中を開いてみると、ハーブの種が入っている。

 

「これもリッケの手がかりにはなりそうもないか」

 

だが、それ以上は何も出てこなかった。さて、この後どうするか。

 

「普通に考えたら、熊に関することで何かあるんだろうな」

 

イベントに関連ありそうな巨熊に、その熊の話を何故か秘密にしていたリッケ。そして、姿を消したリッケは、この釣り場に戻ってきたことがほぼ確実だ。

 

「ということは、熊が目撃された上流に向かった可能性が高いんだよな」

 

うーん、どうしよう。熊に出会ったら即全滅だ。いや、熊じゃなくても、普通に強いⅯOBに遭遇するだけで死に戻るだろう。

 

だが、リッケの失踪は確実にイベントに関係あると思うんだよな・・・・・。

 

「仕方ない、行くか。できるだけ戦闘は避けて、早くリッケの居場所だけでも突き止めておこう」

 

ということで、俺たちはさらに上流を目指すことにした。川沿いの岩棚を皆で登って行く上流に進んでいくと、出現するモンスターに変化が表れ始めた。ラビットだけではなくリトルベアや、アタックボアが出没するようになり、時おり黒い靄に包まれた強力な個体も襲ってくるようになっている。

迎撃して戦いつつ、時おり逃げながら俺たちは進み続けた。すると、開けた場所に出る。そこだけ岩がなく、小石が敷き詰められた広場のようになっていた。

 

しかも、その広場の端には見逃すことができないある物がある。そこには、見紛うことなき洞窟が口を開けていたのだ。

 

「おおー。初めて本格的な洞窟を見たな」

 

苔とか岩の感じが凄いリアルで、これぞファンタジーっていう感じだよな。冒険の匂いがしてきたぜ。

さて強力なモンスターとか、罠とか、危険がわんさかあるかな?

 

「クマー」

 

「お?これ、どうしたんだ?」

 

考え込んでいた俺のもとに、クママが近寄ってきた。そして、何かを手渡してくる。竹で編んだ籠か? いや、よく見るとそれは釣りで使う魚籠だった。リッケが腰に下げていた奴にそっくりだ。

 

「どこにあった?」

 

「クマ!」

 

俺が尋ねると、クママが洞窟の入り口の岩の間を指差した。そこに挟まっていたらしい。

 

「洞窟の入り口の脇か・・・・・。リッケはこの洞窟に来たのか?」

 

洞窟をのぞき込んでみると、その入り口に何か白い物が落ちているのが見えた。

 

「あれ、これは何だ?」

 

拾ってみるとハンカチだ。花柄の刺繍がしてあり、どう見ても女性物だ。

 

「――!」

 

「お、どうしたゆぐゆぐ?」

 

「――!」

 

ハンカチを眺めていたら、今度はゆぐゆぐが俺を呼びに来た。俺の手を引いて、何かを訴えかけている。どうやらゆぐゆぐも何かを発見したらしい。後についていってみると、ゆぐゆぐが広場の端にある木の上を指差した。木の上に茶色い何かが引っかかっているな。多分、麦わら帽子だろう。

 

「ミーニィ、取ってこれるか?」

 

「キュイ!」

 

俺の言葉にミーニィがピシッと敬礼して、木に飛んでいった。麦わら帽子まですぐに到達し、取って戻ってくる。

 

「リッケのか? いや、リッケの麦わら帽子はもっとつばが大きかったか」

 

これは少し幅が小さいタイプだ。そういえば、リッケと一緒に子供が2人いなくなったって言ってたよな? もしかしてその子供たちの所持品だろうか?

 

「この洞窟に入っていったのは確かだろうな。入ってみるか。みんな――」

 

「グルオオオオォォオ!」

 

「うお!え?あれって噂の熊か?」

 

皆を集めて洞窟に入ろうとしていたら、遠くから低くて重い咆哮が聞こえてくる。そっちを見ると、巨大な黒い影がこちらに向かってくるのが見えた。

 

熊だ。それも、クママやリトルベアのような可愛げのある姿ではない。怒りにゆがんだ瞳に、剥き出しの歯茎。口からは盛大に涎がまき散らされ、その狂暴さが遠目からでも理解できた。そんな恐ろし気な形相をした巨大な熊が、全力で向かってくるのだ。古の鍛冶師の指輪と白妖精の指輪を外して防御特化に戻した俺はペインに連絡を取った。

 

「ペイン、上流にガーディアン・ベアが現れた」

 

「そうか。耐えられるかハーデス」

 

「あー・・・・・耐えられるというか」

 

現在進行中、頭から噛まれてると伝えるとペインからの声が聞こえなくなった。あ、顔に何とも言えない熊の舌が・・・・・。オルト達が必死に俺を助けようとしてくれてるが、ガーディアン・ベアの方が強っぽいようで中々てこずっている。

 

「ハーデス。ダメージは?」

 

「不思議なことに0だ」

 

「わかった。俺達も急いで向かう」

 

上流でも違うところにいるらしいペイン達を待っている間。ガシガシと噛むことを止めない熊にどうしようかなーっと悩んだ。

 

 

―――10分後

 

 

「あ、白銀さ―――!」

 

「遅い!」

 

ようやくやってきた一行に叱咤をくれてやった。相変わらずガーディアン・ベアは爪を立てて逃がさないと頭に噛みついてくるが、そんなことしても俺のHPを削る事すら敵わないでいる。オルト達はすっかり少し離れたところで石積みをして遊んでしまう始末だ。

 

「えっと・・・すみませんでした。あの、それがガーディアン・ベアで?大丈夫ですか?凄く嚙まれてるんですけど」

 

「かれこれ10分以上は噛まれてるぞ俺」

 

「白銀さんの防御力ってどんだけあるんだよ・・・・・」

 

そんなことよりも―――と短刀を手に取り【パラライズシャウト】。至近距離でもろに食らったガーディアン・ベアは呻き声を上げて俺の後ろで倒れた。

 

「え、今の何?倒してしまいました?」

 

「麻痺攻撃だ。しばらくはこれで動けまい」

 

「え、つよっ」

 

「ハーデス。君はどうしてここにいるんだい?」

 

「NPCの子供を探しに来たんだ。ガーディアン・ベアと関係しているらしくてあそこの洞窟の中にいる模様」

 

洞窟に指差してこの場に居る理由を語る。一行は洞窟を一瞥して熊に視線を戻す。

 

「となると、この熊はどうしようか」

 

「放っておいたらヤバいだろうね」

 

「洞窟の中まで連れて行くか?俺がこいつの相手を請け負うから」

 

「怖いこと言わないで!?」

 

ダメか。んー・・・・・じゃあ、

 

「ミーニィ。俺達が戻ってくるまで巨大化してこいつを抑え込むことはできるか?」

 

「キュキュイ」

 

出来ない?

 

「じゃあ、遠くに運ぶことは?」

 

「キュイ」

 

それならできると頷いてくれた。

 

「だ、そうだ。ちょっと遠くに放置するから待ってもらっていいか?ジークフリート」

 

「運べるんですか?」

 

まぁ、見ていろ。

 

「ミーニィ【巨大化】」

 

そう口にすると、ミーニィの全身が大きくなってペイン達の視線を奪う美しい毛と羽毛の巨大なドラゴンと化した。

 

「ド、ドラゴンだぁっー!」

 

「やだっ、あんなに可愛かったのに大きくなるとこんなに格好いいなんて!」

 

「は、白銀さん!スクショ、記念に撮影していいですか!?」

 

「乗ってみたいな・・・・・乗れるのかな」

 

大興奮のプレイヤー達を他所に熊を掴むミーニィの背中に跨って言う。

 

「この1件が終わったら改めてな」

 

空飛ぶミーニィの乗ったまま、ガーディアン・ベアを遠くへ運びに向かった。

 

 

 

 

すぐには戻ってこられない距離にガーディアン・ベアを置き、ペイン達の元へ舞い戻って合流し突入する洞窟の中はかなり暗かった。考えてみたら、今までダンジョンや洞窟に入ったことが無かったので、こんなに暗いとは想像もしていなかった。

唯一入ったことがあるダンジョンっぽい場所は精霊様の祭壇があった地下道だけど、あそこは灯りがキチンと設置されていたし。

 

 

光源を持てぬ俺達にはサイナが【機械創造神】で全員に馴染みあるライト付きのヘルメットを創造して頭に装着している。振り向く先まで明かりが差すので暗い洞窟の中の歩行はスムーズに行けた。

 

「ムム!」

 

「オルト?」

 

不意にオルトが洞窟の壁に向かって走っていく。何だ? 疑問に思いつつオルトを観察していたら、クワで壁を叩き始めた。どうやら採掘ポイントがあったらしい。

 

と言うか、モンスターが全く現れない。もう5分くらい歩いているんだが、敵が全然いなかった。おっと、麻痺状態がなくなって起き上がったか。【パラライズシャウト】。

 

「敵、全然出ないね?」

 

「罠もないな」

 

「道も一本道だし」

 

マルカたちも拍子抜けしている。次第に緊張感も薄れて来たらしく、雑談を交わしたりしていた。マルカに至っては、隣を歩くクママをガン見しながら歩いている。

 

その後の俺たちは更に10分ほど洞窟を進み続けた。結局、罠も分かれ道もなく、採取、採掘ポイントが幾つかあるだけだったな。

 

「ねえ、光が見えるわよ?」

 

「もう出口か」

 

「結局、洞窟は安全な一本道だったか」

 

何事もなく洞窟を抜けた先は、緑の木々の生い茂る森となっていた。

 

「いよいよ本番てこと?」

 

「ここからは気を引き締めないといけないかもな」

 

俺以外の皆は改めて隊列を組み直し、森の中を進む。すると、すぐに俺たちの前に立ちはだかる影があった。

 

「出た!」

 

「ラビット5匹。リトルベア4匹。オリーブトレントが2匹だ!」

 

「数が多いな!」

 

「ペインさん、ラビットを任せていいですか?」

 

「分かった」

 

「リトルベアを最初に殲滅する!」

 

「俺がトレントを抑えておく!」

 

マルカたちのパーティがリトルベアに向かっていく。シーフだけがオリーブトレント担当だ。ヘイトをとって、引き付けておく役目らしい。

 

その間にペイン達はラビットと激戦を繰り広げた。半数が黒ラビットだったため多少手こずったが、最後はクママの爪と、ゆぐゆぐの鞭がラビットを撃破した。

 

マルカたちはまだリトルベアと戦っているな。

 

「よし、俺たちはオリーブトレントに行くぞ!」

 

「ムム!」

 

「クマ!」

 

「キュイ!」

 

「――♪」

 

「メェー!」

 

オリーブトレントは、見た目は顔の生えた木だ。顔も森の長老的な愛嬌のあるタイプの顔じゃなくて、洞穴が目と口を形作るちょっと気持ち悪いタイプの顔だ。

 

根を張っているせいでその場から動けないらしいが、長い蔓の様な物を伸ばして攻撃してくる。シーフは動けないトレントの特性を利用して、遠距離から挑発して、その意識を自分に引き付けていた。

 

それを見て、ふと疑問が湧く。

 

「オリーブトレントをテイムしたらどうなるんだ?」

 

テイムで指定できると言う事は、テイム可能なモンスターと言う事だ。だが、動けないモンスターを連れて行けるのか?

 

リトルベアを倒してこちらにやって来たマルカたちに話を聞いてみたが、分からないと言う事だった。

 

気にはなったが、今はチームを組んでいる最中だからな。テイムしてしまうと素材などは取れないし、さすがに今は試せない。いや、道中の採取物を少し譲ったりしたら試させてくれないかな?

そうお願いしてみたら、あっさりオーケーしてくれた。彼らにとってトレントの素材は大した価値が無いらしい。むしろ、リトルベアの素材などを多めに譲ると言ったら、どーぞどーぞと言う感じだ。

 

「でも、このトレント全然可愛くないと思うんだけど?」

 

「そうだな」

 

「いいの?」

 

「いや、可愛さでモンスを選んでるわけじゃないし」

 

「ええ! そうなの?」

 

そりゃそうだろ。そもそも、オルトとゆぐゆぐとクママは、最初から姿が分かってた訳じゃないし。俺もうちの子たちは可愛い子が多いとは思うけど、あくまでも偶然だ。

 

「でもでもー、なんか嫌ー!」

 

「嫌って言われてもな・・・・・」

 

「白銀さんのモンスは可愛いのが良いのに!」

 

「それはお前の希望だろ?」

 

「ほらほら、わがまま言うなって」

 

「白銀さんの勝手だろ」

 

「ほーら、落ち着こうなー」

 

「ちょ、離しなさいよ!」

 

マルカが仲間たちに引きずられていった。

 

「あのー、気にしないでください。あいつ、可愛い物に目が無いんで、たまにああなるんですよ」

 

「はあ」

 

「ささ、今の内にテイムしちゃいましょう」

 

という事で、残った戦士に手伝ってもらって、テイムを試みる事にした。ある程度HPを削った後、手加減を使って瀕死にする。後はひたすらテイムだ。

 

「テイム、テイム、テイム――よし、成功だ」

 

3回で成功した。やはりユニークモンスターじゃなければ、結構簡単にテイムできるな。

 

「さて、牧場に送られるがどんな感じになるのか・・・・・」

 

いくら何でも、移動できないままじゃないと思うんだよな。ノームみたいに、テイムすると性質が変わるタイプのモンスだと見た。

 

俺の予想通り、テイムされたオリーブトレントが光に包まれ、大きさを変えていく。ドンドン小さくなっていくぞ。そして、光が収まった時、そこに居たのは俺の想像を越えた姿に変化したトレントであった。

 

「・・・・・苗木?」

 

「これってモンスなの?」

 

いつの間にか戻って来たマルカも、首を傾げている。だが俺のステータス欄を見ると、テイムモンスターにオリーブトレントと表示されている。

 

「いや、でも、名前の決定画面が出ないな」

 

それに苗木を鑑定しても、ステータスは表示されず、オリーブトレントの苗木とだけ書かれていた。しかも、インベントリに仕舞えてしまう。何と言うか、苗木とモンスターの中間? そんな感じだ。

 

「こんなモンスターもいるのね」

 

「いや、俺も初めて見た」

 

「戦闘は無理そう?」

 

「だな。まあ、イベントが終わったら畑に植えてみるか」

 

それまではお預けだな。

 

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