翌日―――。
イベントに参加する【蒼龍の聖剣】が一ヵ所に集まっていると運営から旧大陸にいる全プレイヤーへ告知がされた。
猫妖精の国のケットシー王国に犬妖精クーシーが戦争で攻める。
しかしクーシー側が戦争の発端はケットシー王国にありと宣言した。
プレイヤーはケットシーかクーシーのどちらの味方になるか選択した陣営で戦争をするイベントです。
愚猫王の言った言葉は間違いないようだな。そんで運営これさ、裏で猫派か犬派に分かれて不毛な戦いをしろって誘導しているよなぁぁぁぁぁぁ? そう思うと凄く癪で堪らないけど、ケットシー王国を守る最後の戦いだ。頑張らせてもらうぞ。
「んーでも・・・・」
「どうしたんだ白銀さん?」
「んや、クーシーの味方になったプレイヤーはクーシーの王国に招待されるかもなって」
「白銀さんでもまだ知らないんだ? でも、クーシーの味方になったプレイヤーに訊けばすぐわかるんじゃ?」
「仮にそうして行けたとしたら、好感度が凄く低い上に冷たい視線を向けられるクーシーが待ち構えていますねぇ!」
なんか急に沸いたどちらさま?
ほんの少しだけ紫がかった白い長髪を、後ろでゆったりと纏めた髪型は一見女性っぽくもあった。白い肌に赤い眼とか、狙い過ぎだろって思わなくもないけど、非常によく似合っていた。装備品は、漆黒の金属鎧だ。あまりゴツさは感じず、優美な曲線のおかげでどこか柔らかささえ感じさせる。
「お初にお目にかかります。ぬふふ。騎士のレーと申します。お見知りおきを」
「お、おお。俺は死神・ハーデスだ。よろしく」
手を大げさに胸に当て、優雅に腰を折るレー。どうやら、ロールプレイガチ勢っぽいな。暗黒騎士ロール? だとしたら、裏切ったりしないか? だって、暗黒騎士でレーって、ジル・ド・レーから取ってるじゃん。
「暗黒騎士と魔王のコラボが叶う時を待っていましたので、この戦争イベントは必ず魔王様に勝利を捧げると誓います」
「期待しているぞ?」
「ぬふふん」
どうしよう、この胡散臭い笑い方を見ると信用できないや。ええい、利用するだけだ!
「白銀さん」
KTK? 無表情な顔にバツ悪そうな表情をありありと浮かべている。
「昨日はごめんなさい。しないと否定したのに猫神様の中で寝てしまって」
「猫神様・・・ネコバスのことなら気に病むことはない。あいつも気にしていないって反応をしていたからな」
「・・・・・本当?」
「それでも気になるなら感謝の印に食べられるお土産でも渡せば? ほら、フレンド登録。何時でも会いに来ていいし、遊びに来ていいからな」
「・・・・・ありがとう、白銀さん。今日は全力で頑張らせてもらうから」
期待させてもらうぜ。さーて、もう少しでイベント開始の時間だ。PVPのフィールドは一体どんな感じなのだろうかね。
『イベント開始前が一時間となりました。これよりイベントエリアに転送します』
聞こえたアナウンスと共に俺達は戦場へ転送された。次に目の前の景色が歪み、次には百メートルは優に超えている巨壁が見える場所に転送された俺達は到着してすぐに告知を見た。
『今回のPVPの勝利条件は攻城戦でございます。ケットシー陣営は一定時間まで、耐久値を防衛を成功すれば勝利です。クーシー陣営は一定時間の間に攻める城壁の破壊に成功出来たら勝利です』
『人数の差の公平を考慮して数が少ない陣営には一定のステータスと職業を付与したNPCを配置します。有効的に戦争を有利に運んでください』
『なお攻め入るクーシー陣営側には攻城用の道具や兵器を用意しております。耐久度があり破壊可能オブジェクトですが、一日経つと使用可能となります』
『イベント期間は三日間。その間、プレイヤーが死に戻りするたびにステータスが減少します』
『一時間後。イベントを開始します。それまで準備を済ませてください』
準備か・・・・・。そりゃあ、巨壁を登る階段と外へ出る門は四方にあることを確認できているが。全プレイヤーがこのエリアに転送されたのか? 参加しなかったプレイヤーはもちろんいるだろうが、軽く何万人もいる? サーバー分けしているなら・・・・・あ、これ、サーバー分けされたケットシー側の敗北が多かったら俺達が勝っても意味ない?
「白銀さん、どうします? 作戦を考えないと」
「というか、どうやって守ればいいんですかね?」
「指示をしてくれ魔王様!」
周囲からも聞こえるざわめきと俺の指示待ちするプレイヤーの視線・・・・・まったく、しょうがないな。
「サイナ、メガホン」
「どうぞ」
征服人形の相棒からメガホンを受け取ると宙に浮いてもらったセキトの背中に立ったまま全員に聞こえるように話しかける。
「全員、謹聴! これから作戦会議を行う! 」
『!』
ざわめきが生じる水の波紋の如く静かになっていき、数分もしない内に静寂に包まれた。うん、上から見たら城壁の中にいる俺達は思ったより少ないことがわかった。こりゃあ、他のサーバーに分けられているな?
「まずはここにいるプレイヤーの中でギルドのマスターがいるなら全員俺のところに集まってくれ! その間に城壁のすぐ傍にいるプレイヤー達は城壁を登って外の様子を確認しつつ配信動画で状態と状況を報告する! それ以外のプレイヤーはその情報を認知することを専念! 俺自身も配信をするからよろしく!」
俺の指示に従って城壁へ上がるプレイヤー達を見ている間にギルドマスターが集まった。おやこれは意外なことに・・・・・。
「【炎帝ノ国】のギルドマスターもいたのはすげー僥倖だわ」
「安心しろ。足手纏いになるつもりはない」
「なったらバツとして髪の色と同じネコ耳と尻尾の付属品を付けて語尾に『にゃん!』って可愛くいってもらうつもりだから覚悟しろ」
そう言ったら顔を真っ赤にして酷く狼狽するミィが可愛かった。他のギルマスもそんなミィを生暖かい目で見ていてその視線に気付いてさらに動揺する。
「なっ、お、お前達もなに見て見たいと顔をする!?」
「いやー、絶対に可愛いだろって思ったもんで」
「うむ、猫属性のおにゃの子は至高だ」
「是が非でも見させてもらいたいな」
「「「「「うんうん」」」」」
十人以上からのギルマス(男)までもが賛同することになろうとは予想外だった。
「えーと、他に来るギルドマスターは・・・・・これで全員か。なら、今ここに集まったギルドマスターが四方それぞれのプレイヤーを指揮する大将とその副将とになってもらうぞ」
「俺達が大将と副将!?」
「全体の指揮者を一人にするんじゃなくて複数にするのか」
「戦国ものが好きな俺としては、その判断は間違っていないと思うぜ」
「んじゃあ、あとはプレイヤーの個々の戦闘スタイルの把握だな」
「それと城壁の外なんだけど。この城を攻略するプレイヤー達と攻城用の道具に囲まれてるぜ」
配信動画で見れば、防衛する側の俺達と同数と思しきクーシー側のプレイヤーと大型と中型の攻城兵器の姿が。わお、本格的じゃないか。
「取り敢えず、俺とジャンケンして最初に勝ったそいつが大将にするぞ。ステータス云々や実力で決めている時間はない。あいこでも負けにするからな」
「よーし、目立てる好機! 絶対に大将になるぞ!」
「俺は副将がいいな・・・でも、大将が死に戻ったら自動的に副将が大将代わりに指示出さないとダメ?」
「そりゃあそうだろ。誰が指揮するんだって話になるじゃん」
分っているじゃん。それじゃあ、行くぞー。
「最初はグー!」
「「「「「「「「「「ジャンケンポン!」」」」」」」」」」
ジャンケンで決めた結果。ミィを始め均等に大将と副将が決まった。そのことを俺の配信動画で城壁の中のプレイヤー一同に伝えていく。ミィ達の真上に浮いてさらに言い続ける。
「次はお前達を仕分けるぞ! 俺から見て右側に近接戦闘をするプレイヤーは集まってくれ! 左側に魔法職! 俺のところにサモナーとテイマー、もしもいるならデュエリストは集合! 最後に俺の真正面奥に遠距離 長距離の弓使いのプレイヤーだ! ゆっくりでいいから時計回りに移動開始だ! 他のプレイヤーの邪魔や周囲のプレイヤーに気を付けてな!」
指示をしてから約十分以上の時間を要して四方に仕分けした職業、戦闘スタイルのプレイヤーが集まった。
「さらにそこから、ヒーラーのプレイヤーは中央に集合! その隣に今日のイベントで征服人形を連れて来たプレイヤーだ!」
殆どが魔法職から出てきたヒーラーが中央に集まった。うーん、思ったより少ないな。征服人形と契約したプレイヤーはその倍近くいる。
「協力に感謝する! それからそれぞれ何人いるか数え合ってくれ! わかりやすく二十人ずつ! 二十人ごとになったら座って数え終えたら報告しに来てくれ!」
下に降りて大将たちと相談する。
「白銀さん、指示するのすげー上手いのな。で、これからは?」
「いま確定しているのは仕分けしたプレイヤーをお前達の部隊にして混同で戦ってもらうことだ。数少ないヒーラーは四方に分かれてもらいたいが、数が足りないから後で強化しておく」
「サモナー達の方は?」
「遊撃隊として独断で動いてもらう」
十数分後。数え終えた方から総人数を報告しに来てくれた。なるほど・・・・・。
「5000人か」
「ってことは、サーバー分けされているかもしれないか?」
「・・・・・もしくは」
一人のプレイヤーがある予想を口にした。
「同じサーバーでここ以外の戦場が行われているかも? 配信動画で見る限り、奥に進めそうだし」
「なるほど、可能性はあるな。それを確かめるには・・・・・フレイヤ」
『にゃん?』
最強の魔獣を頼むとしようじゃないか。
「今から外に飛んで行って何か見つけてくれないか? できれば早くだ。仮に何かにぶつかって先に進めなかったら引き返してきてくれ」
『わかったにゃー』
素早く飛んで城壁を越えて行ったフレイヤ。その間にプレイヤー達から召喚してもらったヘルキャットだが・・・・・。
「「「「「にゃー!!!」」」」」
「は? あっ、しま―――ぬぉおおおおおおお!!?」
「「「は、白銀さあああああああああああああああああああん!?」」」
「ヘルキャットに群がられてる!」
「なんでそうなる!?」
「ちょ、助けないと!!」
初めて冥界に来た時と同じ目に遭った。ていうか、城攻めする奴らもヘルキャットを使役しているよな!? すっかり失念してたわ! 俺は問題ないけど他の連中が危ないわ!
「ぜぇー・・・ぜぇー・・・・・忘れてた。ヘルキャットにとって俺はまたたびだったってことを」
四つん這いになって肩で息をするほどの疲労感を味わう羽目になろうとは・・・まだ戦争前だぞっ。
「何でまたたびなんですか」
「ヘルキャットは相手から恐怖を食らう魔獣だって知ってたっけ? 知らないなら教えるけど、俺は魔王だからNPCに恐怖を抱かせてしまう。魔王の負がヘルキャットにとってまたたびと同じ匂いみたいで今みたいに群がられてしまうんだよ。初めて冥界に行った時も同じ目に遭って、それから久し振りだったからすっかり忘れていた」
「そんな裏知識があったとは・・・・・」
「因みにヘルキャットのお母さんはベヒモスぐらいの恐怖じゃなきゃ満足しないらしい」
「あのベヒモスがお母さん猫に怖がるってどんだけだよ・・・・・」
「いやいや、ベヒモスをワンパンする最強の母猫様だぞ。怖がられて当然だわ」
「涙目のベヒモス・・・ちょっと笑える」
肝心のヘルキャットたちは主の元に戻っては、のびのびと寛いでいやがる。
『ただいまだにゃー!』
お、戻って来たか。人の頭の上に乗っかるフレイヤに訊いた。
「どうだった外は」
『ご主人の期待に応える物を見つけたにゃ! 他にもたくさんの人間がいたにゃ!』
「そうだったか。そこまで行ってくれてありがとうフレイヤ」
労いのナデナデをしながらミィ達に視線を送って頷く。
「これは、俺達だけが勝っても意味をなさない戦争だ」
「どうする白銀さん。他の味方の方にも助けに行く必要あるぞこれ」
「時間も残りあんまりないよ?」
「半数に分けたらこっちの城壁も危ないしな」
「プレイヤーは四回目で復活できないから、ある程度の数を復活させないまで戦って倒すしかないぞ?」
「それまで他の味方の城壁が持つかどうか・・・・・」
話しを聞きながら至高の海に飛び込み、俺のアイテムと従魔、スキルで何かできないか考え・・・・・至ると不敵の笑みを浮かべた。
「いや、賭けだがあるぞ」
「白銀さん。賭けって?」
「取り敢えず話しを聞いてくれ。あ、配信動画は消してくれ。これ以上の話の情報は敵にも聞かれたくないから」
「ああ、そう言えば配信動画って敵にも見れるんだっけ。それ以前の情報は筒抜けだったけどいいのか?」
「似たような状況の情報を、参考になると思うか?」
「なりませんねー。じゃあ、配信動画消すんで教えてくださいその賭けとやらを」
全員がそうした後に俺の考えを告げると揃いも揃って絶句した。
「いやいや・・・・・それは、大丈夫なのか?」
「心配もそうだけど、逆に俺はその様子を見て見たいんだが」
「と、とんでもないことを考える。味方だから頼もしいが、敵だったら・・・・・」
「今日ほど、白銀さんと同じ仲間で味方でいられるこの瞬間を安心している自分がいるぜ」
よし、特に反対意見がないな? じゃあ、これで決行だ!
「全員、一度配信動画を消してくれ! 掲示板に投稿することも禁止だ! これから総勢5000人から約1000人だけある付与をする! そのスキルを与えられたプレイヤーには簡単な仕事を与える! それ以外のプレイヤーは大将と副将から作戦を聞くように! 仲間から仲間へ、味方から味方に作戦を公伝するように! 俺からスキルを与えられたプレイヤーは中央に集まるように!」
ケットシー王国の防衛戦、開始に向けて急いでスキルを付与していく。時間もないからせっせと1000人分も与えて集まった1000人に作戦を伝え、驚かせたのだった。