とあるプレイヤーside
「イベント開始だぁー! 城壁を攻めるぞー!」
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!
これから攻める城壁を攻撃しに味方のプレイヤーが駆け出す。クーシー側の俺達に与えられた攻城兵器の投石兵器も使って大きな岩を城壁へ放って耐久値を大きく削った。相手プレイヤーが一向に姿を見せない異様な動きに疑問を抱くが、亀のように甲羅の中で引っ込んだまま負けてくれるならいいやと俺も城壁に攻撃をしに向かう。
耐久値は壁にゲージとして浮かんで、攻撃すると見る見るうちに減る分かりやすさ。手応えの無い、相手の対応の無さのまま目の前の城壁の耐久値が3割まで減ったところで・・・・・こっちの正門が開きだした。何で今更? と思った矢先に。
「「【エクスプロージョン】!!」」
「【エクスプロージョン】!」
「【エクスプロージョン】!」
「【エクスプロージョン】!」
ドドドドドドドドドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
爆発が爆発を呼びまた爆発が起きて何度も止まらない爆発が俺諸共一緒にいた仲間が食らったことに気付いたのは、死に戻りして復活した瞬間だった。そして、攻撃している間になかった城壁とはまた別の門のような壁が城壁を囲むように立っていた。
ドドドドドッ!!!
「・・・・・へ?」
何なんだあの壁はと更けている俺達のところに黒い何かが迫って来た・・・モンスター? 黒い・・・・・え゛。
「ま、まさかこの城壁に、白銀さんがぁあああああああああああああああああ!?」
ボカーン!
黒い蠍のモンスターに暴走トラックの如く轢かれて、中にはモンスターに捕まってどこかへ連れて行かれる様子を見たのを最後に、俺は黒い波の中に呑み込まれた。は、ははは・・・・・復活した俺の前の前に黒いモンスターだ・・・・・。
―――とまぁ、こういう作戦である。さらに分かりやすく教えるとイカルの【八門遁甲】のスキルと俺の【八重ノ邪龍】のスキルを合わさった結果、一人だけでHP1000の16の防御障壁が守るべき城壁の前に召喚するのが作戦だ。しかし、そのコンボが出来るのは一人じゃなく二人じゃなくて―――1000人だったら? 1000人同時で16の【八門遁甲】を召喚したらどうなるかなんて、言わずもが判るよなー? そしてその間に俺が召喚した黒いモンスターで嗾けさせ、捕らえたプレイヤーを黒い沼の中に浸して俺の新しい下僕に増やす第二の作戦だ。
うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!
ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!
ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・!
うーん、悲鳴が聞こえるね! さぁ、下僕たちよ。どんどん生贄を捧げに来るのだ!
フレデリカside
「今日ほどのイベントで、あそこまでぶっ飛んだ考えを実行するハーデスにドン引きしたことねぇぞ」
「抗わず負けを受け入れる方がどれだけ楽かわかるまでの間は地獄を見るな」
ドラグとドレッドが走りながら言いたくなるのも無理はないと思う。絶対に後で運営が修正か規制するよ。でなければ今後のイベントでプレイヤーの勝ち目が絶対になくなるもん。
「だけど、ああでもしないと俺達はこうして他の仲間の下へ駆け付けることはできないのも事実だよ」
「そうだけど、あそこまで魔王を徹するプレイや運営も黙ってないと思うよペイン」
「というか、プレイヤーも1000人ぐらい倒したら俺達も魔王になるんだっけ?」
「ああ、同じギルドに魔王が複数いるのってもうヤバいんじゃないの?」
「サポートが必要な魔王って弱そうに見えるよねー」
意地の悪い笑みを浮かべてそう言えば、ドラグは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そ、そういやペイン! 剣聖のヒントが見つかってよかったじゃねぇか? まさかハーデスの従魔が剣聖として進化するなんて信じられないよな」
あ、分かりやすく話を逸らした。
「そうだね。騎士の職業も育てるよ。もしも剣聖になったらハーデスに再挑戦する」
「今度はお前が勝つだろうよ。そうなったらハーデスは魔王から卒業だな」
「そうかな。仮にそうなってもまた魔王に甦るんじゃない? だってアレだし」
「ああ、アレだからあり得るな」
敢えて具体的には言わない。この三人も同じ思いを抱いているから言わなくても分かってくれている。
「んで、道はこっちで合っているんだよな?」
「ハーデスのヘルキャットが案内してくれている以上、間違ってはいない筈だ」
「しかし、別サーバーで戦争をするのかと思えば、同じサーバーで複数の味方が城壁を守るイベントだったとは思わなかったな」
「本当だねー。私達だけ勝っても他が負けていたんじゃあ、実質こっちの敗北だよ。勝負に勝って試合には負けたってね」
まだまだ走り続ける私達の上でハーデスのヘルキャットが飛んでいる。あの魔獣に続いて皆のヘルキャットが飛んでいるから他の味方も迷わず走っている。
『あそこにゃー!』
ヘルキャットが叫ぶ。同時に私達の肉眼でも複数あるそのうちの一つの味方の城壁と、城壁を攻めるクーシー側のプレイヤー達の姿が捉えた。
「―――旗を掲げろぉ!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」
後ろから号令の声が聞こえ、猫の手のマークが刺繍された複数の旗が持ち上がった。あれ、ケットシー王国の王城にあった旗だよね。ハーデスが借りたと言ってプレイヤーに持たせて。他のプレイヤーに私達が敵で味方であることを認識させるためにだ。だから―――。
「なん・・・・・敵だとぉっ!!?」
「は? 敵側のプレイヤー!? あんな大勢、別サーバーから来たってのか!?」
「いやまさか、同じサーバーで戦っている他のケットシー陣営とクーシー陣営のプレイヤーがいるのかよ!?」
「お、お前らぁああああああああああ! 味方だ、味方の増援が来てくれたぞぉぉおおおおおお!?」
「マジで? マジでぇえええええええええええ!?」
「やった! ありがとうー! これで数の差で勝てるぞぉおおおおおおおお!!!」
敵は驚き、絶望するに対して味方は歓喜してさらに戦意を昂らせた。そして他にも、私達が敵味方と区別させるシステムがある。私達の頭上にPNが表示されているが割に猫の絵のマークが浮かんでいる。これで互いに識別している。だから、互いに迷わず敵と戦い味方と一緒に戦う事が可能。
「さっさと倒して次の場所へ行くぞ! 場所は知らないけどな!」
「それについて問題ない。ハーデスがもう手を打っている」
うん、本当に凄いよねー。私達が戦っている間にピクシードラゴンや魔獣達を偵察させるなんて。これで分かれば次の戦場へ行ける。そして私達が勝ちに行くことができる。だからハーデスも早く全滅させて来てよねー!
その後のハーデス達―――。
「敵を倒せえええええええええええええええええええ!!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」」」」
ドッカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
思いの他、戦争イベントの時間の流れが速いようだ。攻め込んできたプレイヤーを全滅するまで一時間以上は掛かったけど、もう日が沈むとは。
「1時間20分が一日の三間分の一?」
「白銀さーん!」
夜の帳が降りようとして暗闇に閉ざされる城壁から味方に呼び掛けられる。城壁の中へ戻った俺の背後で門が硬く閉ざされ、プレイヤーが集まった。
「退屈させて悪かったな。そっちで情報は集まったか?」
「ヘルキャットたちに捜索させてたら、他の味方の援護に大将たちが向かった城壁と違う城壁が他にもあったって」
「そうか。向かわせたヘルキャットの感覚でどの城壁と距離が近かったかわかるか?」
「ちょっと待って今聞く」
かくかくしかじか・・・・・。
「えっと、全員似たような感じだったかもだって」
「そうなると互いの距離が均等に数Kも離れているってことになるな」
「数Kって・・・・・見渡す限りの平原なのに?」
「この城壁の高さだったら見えてもいいと思うんだけどな」
うん、そこに何か秘密があるのかもな。
「俺が外で敵を蹂躙している間に、あいつらの足音が途絶えたのを確認した。となるとこの城壁からある程度離れると、テレビのチャンネルを変えたような感じで別の戦場に切り替わるんじゃないか? そうなっていることを気付かなければイベントが終わるまで城壁を攻めるプレイヤーは、城壁を守るプレイヤーは・・・・・」
互いを互いに自然と釘付けされて他のことを考えられなくなる。戦争イベントの勝敗条件はすでに目の前に用意されると余裕ができない限り何も疑わなくなる―――と説明口調で告げるとプレイヤーは絶句した。
「うわ・・・・・ここで運営の思惑と底意地の悪さを垣間見ることになるなんて」
「こんなの白銀さんだって気付かなかったら誰だって気付くことできないだろ!」
「運営め! 今年一番かもしれないイベントの意地が悪い設定をしやがってー!!!」
「というか、このことが敵側にも知られてたらヤバいでしょ!」
「えー、ここで悪いお報せです。どーやら他のサーバーからサーバーに援軍として行くことができるって情報が掲示板に拡散されておりまーす」
「ですよねー!!?」
ははは、情報規制なんてないようなもんだし、誰も止めることは最初から不可能だったのさー。
「ま、そんなわけで。それを見越して俺達はここで城を落とされないよう待機するしかなく、攻撃部隊が他の城の援護に行かせたわけだ」
「白銀さんだけでも十分守れそうな気もするけど」
「そこまでできるか。守る対象が大きすぎて無理だ。城壁という障害物が俺にも邪魔するんだから反対方向まで対応できないって。主に物量がものをいう戦いは出来ることと出来ないことが俺にだってある」
「そりゃあそうだな。できたらもう誰だって白銀さんには勝てないぜ。というか、白銀さんに弱点なんてあんの? って聞かれると返答に困る」
「「「「「同感だ」」」」」
ぶっちゃけ言うと初見でスナイパーされると一回だけなんとか耐えられるけど、スキルを封じられたら負ける自信はあるぞ? そんなこと誰にも言わないがな。
「―――白銀さーん! 敵がきたっぽーい!」
城壁の上で見張っていた味方からの報告に俺達は動き出した。
「夜戦とは敵も体力が有り余っているな? ここが誰がいる城壁なのか知らないでさ」
「白銀さん、また壁を作るか? 予備兵の壁をいつでも出せるぞ」
「うんや、これから城壁にあるもんを設置する。ガンナーじゃなくても使えるもんをな。空を飛べるヘルキャットにも爆弾を落としてもらおうか」
「え、何を出すんだ白銀さん。なんかヤバいもの?」
そりゃあ、相手も攻城兵器を使うんなら・・・・・こっちも使わないとな?