ドォオオン! ドォオオオオオン!! ドドドドドン!!!
発砲の轟音が大気を震わせる。城外から攻めてくるプレイヤーや地面に直撃すれば爆発が発生して敵を吹き飛ばす。それを可能にする兵器を使っている仲間達のテンションがおかしいほど高まっていた。
「おぅらぁあああああ! 撃て撃て撃てぇー!」
「手持ち沙汰で暇を持て余した分、はっちゃけちゃうぜヒャッハー!」
「次弾装填よーし!」
「撃てぇーっ!」
「へい手榴弾!」
「目指すぜホームラン王! (カキーン!)」
「たーまやぁー!!」
ドガンッ!!! ドッカーン!! ドゴオオオオンッ!!!
「何で城壁から砲弾と爆弾が来るんだぁああああああああああああ!?」
「ちょ、こんなのありかよー!!」
「四方どこに行っても同じってどういうことだよ!?」
「むりむりぃっ!? 上からも爆弾が落ちてくるー!!!」
「ここの防衛する奴らの殺意が高いし激しいんだけど!?」
「ひ、退けぇー! ここから逃げるんだぁー!」
ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「報告ー! 西方面に敵が出現! 発砲許可を!」
「撃ってよし! 敵に目にモノを見せてやれ!」
「しゃー! アロム、撃ちまーす!」
「俺も撃つぜ!」
「ヒィーハァー!」
この瞬間の攻防戦の戦況は配信動画や掲示板で瞬く間に、あの城を見て狂った笑い声が聞こえたら確実に死ぬという情報として知れ渡ったことを知ったのは二日目の朝を迎えた時だった。
「・・・・・ハーデス君、やりすぎだよん」
「味方ならいいの味方なら、ふふ、ふふふ」
「・・・・・こっちも似たようなことをなっちゃっているから何も言えないや」
「・・・・・」
別の味方の城壁を守るイッチョウ達も次のエリアに行く前に小休止を挟んでから出発し、接触した敵を味方と挟み撃ちする形で全滅していく。特にミィの火炎の魔法が戦場に華を咲かせて戦況を一変させていた。
「あれが朱雀から得たスキルかな?」
敵の魔法がミィに直撃しても、莫大な熱量を誇る炎の衣を纏っているミィのHPは減らず、彼女しか把握できないMPが回復、最大値を突破して過剰な魔力は次の魔法の威力を二倍にする。そのスキルの効果を知らないイッチョウ達はさりげなく視線を送っていた。
「というか、混戦過ぎて敵味方関係なく当たりそうで戦いづらいわね」
「私の魔法もね。こうも入り込んでると、味方にまでスリップダメージが入るから手加減しなくちゃ、ね!」
一斉に四人で三人に飛びかかる敵プレイヤーに放つ【多重火炎弾】が直撃してイッチョウが別方向から飛来してきた矢を切り捨て、【超加速】による移動で相手の懐に潜り込み、連続斬撃を浴びせた。
「うーん、爆弾しか攻撃ができない私は完全にお荷物ねセレーネ」
「そ、そんなことないよイズは」
ドン! と聞こえた発砲音の後、敵プレイヤーの頭にヒットして一撃で死に戻りさせた。
「私は、イズがいてくれないとこの状況に堪えきれないから・・・・・」
「やっぱりハーデスと一緒にいるべきだったじゃない?」
「そ、それはわがままだよ。それに、ハーデスにもう気遣ってくれてる」
セレーネの回りにはゆぐゆぐとクリス、ウッドやベンニーア、ラミアースにフェルやセキト、サラまでが付き添っていた。セレーネの性格を忘れていないハーデスが従魔の大半を彼女の側にいさせているのだ。一人の女性を守護するにしたって、過剰戦力である。
「セレーネ」
「なに?」
「ハーデスに愛されてるわね」
「ひゃ、ひゃい!?」
ドン!!
本気かからかわれているのかわからないが、どちらにしろイズの発言で狙っていたプレイヤーじゃなくて味方の頭に当たってしまった。
「「・・・・・」」
あそこまで顔を赤くするぐらいハーデスに意識しているのか、またハーデスが女を増やしたのか、と二人の乙女がちょっと嫉妬したことをセレーネはイズにからかわないでと怒ってた。
「フレデリカ、ちょっと乙女会議をしない?」
「イベントの後ならいーよ。イカルちゃんも呼ぶ?」
「あの子はどっちかって言うと、憧れの方が強いしお姉ちゃん大好きっ子だから。それに流石に結婚してないでしょ」
「だったらメイプルは?」
「うーん、一緒にいるところは見たことないけど・・・・・」
遠くで暴れている異形の怪物を見てしまうと、自分達の知らないところで何かしていると思わなくもない。別の方でも暴れている異形の怪物にも判断が困る。
「取り敢えず四人でしよう」
「わかった」
と―――そんな会話をしている二人の心を占めてるプレイヤーは。
「ふーん、そういう感じか」
偵察しに行った仲間の視点の配信動画でリアル情報を集めていた。
「よし、半数は俺と一緒に行動するぞ。作戦はこうだ―――いいな? 残りは死に戻ったプレイヤーとここで待機だ。三十分で戻るから、その次に行くからな待機組」
「わかりました!」
「ということで・・・・・お前ら、これで行こうか」
「え、こ、これって・・・・・マジですか!?」
「「「「「ええええー!?」」」」」
そう、大真面目なのだよ俺はいつだって! それに何となく買ってみた棘つき肩パットやモヒカン装備をする仲間達とエンジンとアクセルをフルにして土煙を起こしながら別の城壁があるエリアへ向かう。そこはもう陥落状態手前の味方が敵に囲まれていて、駆けつけに来た俺達に気付いたときは―――!
「うん? な、なんじゃありゃー!!?」
『ヒャッハー!!』
ブォオオオオオオオオオオオ!! ブォオオオオオオオオオオオン!! ブォオオオオオオオオオオオオオオン!!
パラリラパラリラ~!!
世紀末の広野を駆け抜ける荒くれ者やゴロツキの格好をした五百人の暴走族のお通りだー!!
「バ、バイク!? それにあいつらはどこの誰だよ!? (ドッカアアアンッ!!)うわああああー!!」
「や、やつら爆弾まで投げてくるぞぉ!!」
「本当にどこの誰だよ! 全員似た顔だから区別ができねぇよ! どわぁっ!?」
「オラオラー! 今の俺様は一味違うぜヒャッハー!」
「死にたくなかったら引っ込んでなヒャッハー!」
「ヒャッハー! ヒーハッー!!」
「どけどけどけぇー! 暴走猫族のお通りだニャー! ヒャッハー!」
「攻城兵器を壊せぇー!!」
近づかず離れずの位置にバイクを走らせる二人乗りのプレイヤーは爆弾を投げる。また釘バットを片手に擦れ違いざまに敵を殴る。標的の一つの攻城兵器も手榴弾でダメージを与えて壊していく。よーし、そろそろか!
「全員、Sを投げて戻ったら作戦通りに動け!」
『ヤッーハー!』
バッと俺だけ降りる。暴走族達は来た道に戻りながらS=スモークグレネードを敵味方関係なく戦場に落としていなくなった。【飛翔】で空を飛び味方の城壁に立つと、味方プレイヤーに警戒された。
「誰だお前!?」
「この顏を見れば名乗る必要はないだろ」
頭装備のモヒカンを外せば、顔だけ元の顔に戻ったのでプレイヤー達は絶句した顔で叫んだ。
「「「「「白銀さんんんん!?」」」」」
「お前達の窮地に助太刀に来た。取り敢えず、これを置きだな」
ドン! と凹凸の間に突っ込むように置く黒光りする大きな大砲と砲弾×100
「下にいる仲間達を呼び戻せ。巻き込んでもいいなら撃っても構わないぞ」
「え、この大砲って俺達も使えるんですか?」
「ガンナー専用でもないしダメージを与えられるオブジェクト扱いの道具だからな。 そう言うわけでどんどん設置していくからこれで明日まで耐えてくれ」
「あ、ありがとう白銀さん! 正直俺達だけじゃキツ過ぎるんだよ! 相手の攻城兵器が厄介すぎて!」
「これで撃ち返せる!」
感謝の言葉を背に次々と大砲を手榴弾を置いて城壁を一周する。一角の煙が晴れた頃には城壁にはなかった筈の大砲があることに気付いたプレイヤーは、さぞかし驚くだろうよ。
「「「「「撃てぇええええええええー!!!」」」」」
ドドドドドドドドドン!!!
「はぁああああああああ!!? 大砲!? なんで、さっきまでなかっただろ!」
「うわあああ!! また暴走族が来やがったー!!」
「「「「「イヤーッハー!!!」」」」」
もう混沌と化していませんかねー!? そうしたのは俺ですけどねー!
運営side
「なぁ・・・? 一部だけ世紀末の走り野郎が湧いたんだが?」
「そっすねー」
「敵だけじゃなくて味方にも度肝を抜かせてますねー」
「なぁ? 俺の知らぬ間にバイクが組み込まれているのは何故なんだ?」
「あー、それに関しては上からのお達しでして」
「略すると自分達もログインしてバイクを乗り回したいから、実装よろしくってイイエガオで言われちゃあ従うしかないっす。なお、機種は上の要望っす」
「んじゃあ、あのゴロツキや荒くれ者の顔は?」
「「それは自分達の悪戯心が発揮してつい・・・・・」」
「お前らなぁ~!」
「まぁまぁ、有効活用してくれているんですから、何も問題ないですよ」
「そうっす。機械の町でも作れないバイクは買うしかないっすからね。それを全部買った白銀さんの財力はホント凄まじいっすー」
「いやいや、そのために前回よりもさら10極も増やしたあの人には恐れ入る。ほぼ銃器を残して他もほぼ買い込んだから」
「じゃー、近い内に宇宙へ向かうっすよね」
「そうだな。宇宙にもイベント的なものを用意してあるからいつ行くのか楽しみだなー・・・って、いつの間にかもう三日目か」
「・・・・・どっちが勝っているんだ」
「クーシー側が一歩有利っすね」
「白銀さんがいるにもかかわらずか? 珍しいな」
「いや、普通にそうなるかと。四方からの投石器をまず破壊しないと城壁の耐久値が減少しますよ。それをわかってて、プレイヤーは守りを厚くしながら使用しますし、戦い方がわからず城壁に籠ってばかりで碌に反撃をしないケットシー側のプレイヤー側が多いんです。あと指揮者がいるかいないか、適切であるかどうかで決まってますね」
「それでもなんとか戦えているんだろ?」
「白銀さんがいる城壁のプレイヤー達が他の味方に攻撃しているクーシー側のプレイヤーを全滅させてから、休息と味方を増やしつつ別の味方のところへ向かう繰り返しをしていますからね」
「クーシー側のプレイヤーにも一定以上の強さを持ったプレイヤーが頭角を現しつつあるっす。主にギルド対抗戦イベントの上位ばかりっすけど」
「これでケットシー側が負けたらどうなるんだっけ」
「ケットシー王国が滅ぼされるっすね。その王国が後にクーシー王国に成り代わる予定です・・・・・本来だったらっす」
「なんか問題が?」
「問題と言うか、魔王の白銀さんが猫王から国を奪い取って乗っ取った形じゃないですか。だから初めて魔王の国として手に入れたので、イベントをしているプレイヤー達は知る由もないんですけど、冥界の魔王や悪魔族のNPCが遊びに来たり空き家に住み始めているので、俺達の設定どおりにシステムが動くかわからないです」
「・・・・・あー、仮にケットシー側が負けたとしても国は滅ぼされることも乗っ取られることもなくなっている感じ?」
「というか、魔王の国に喧嘩を吹っ掛けたってことで第二次戦争イベントの用意をしなくちゃならないかもっす。いまのケットシー側のプレイヤーは王様がいない代わりに代理戦争をしているようなもんっすよ。もちろんクーシーの王はそのことを知らないっすね」
「知る機会があったら別の結果になっていたでしょうね・・・・・あ、終わった」
「ど、どっちが・・・・・?」
「「・・・・・」」
「お、おい! そんな焦らす様なことをするな! 心臓に悪いわ! 早く言え!」
「「・・・・・ケットシー王国の・・・・・」」