ケットシーとクーシーの戦争が終わり王国に戻った俺達の目の前で多くの猫妖精達が待っていた。しかも豪華な料理を用意した上でだ。どれもこれも美味しそうであって、魚だけでなく野菜や肉、乳製品の料理まである種類が豊富な料理だ。
「みなさん、見ず知らずの僕たちのために戦ってくれてありがとうございますにゃん!!」
「「「「「「心から感謝するにゃ! 人間さん達、ありがとー!!」」」」」」
「そして、王国の悪政をしていた王様と戦い、なにもしてくれなかった貴族達まで国から追い出してくれた勇敢なレジスタンスの人間さん達、ありがとうございます! これで昔のように王国で暮らせるにゃ!」
「「「「ありがとうございます!!!」」」」
「僕たちと王国を助けてくれたお礼に今度は僕たちが人間さん達に恩返しをするにゃ!」
「「「「「よろしくにゃー!!」」」」」
『称号【猫の恩返し】を獲得しました』
【猫の恩返し】
この称号を持つプレイヤーはパーティー枠と従魔枠を必要としない、特殊NPCがお供ネコとしてプレイヤーと活動するようになる。生産から戦闘までプレイヤーのサポートをし、育成も可能で進化先はプレイヤー次第である。
「うっそぉー!? ネコちゃんが来てくれるの~!?」
「進化も可能って! 白銀さんのようなネコにも進化させられるのか!?」
「今日ほど、俺はネコ好きでよかったと思った日がなかったよ!」
「料理をするネコちゃんの後ろ姿を優雅に座りながら眺める生活・・・・・イイ、スゴクイイ!」
「これからよろしくなー!」
皆の下に集まる猫たちを迎えるプレイヤー達。近くにいた猫好きのKTKは凄く嬉しそうな顔で猫を抱き上げご満悦だ。さて、私の猫はいずこに・・・・・? ・・・・・来ないのだが?
「なぁ、俺とお供してくれる猫さんは?」
「にゃ? 人間さんのところには既にいるにゃ」
すでにって・・・・・もしや。
「リリム、お前のことか」
「理解が早いね」
金豹が不敵に笑んだ。こいつがそうなのか? 進化もすることができるのか? うーん、想像できんな。
「そう言うわけだからよろしくね主」
「ケットシー王国の元王族が俺に従うっていいのかよ」
「いいんだよ、もう・・・少なくともあの愚猫王のドラ息子の番にならずに済んだのは助かったし」
お前なら余裕で逃げられるだろに。何でしなかった? いまさらな疑問をぶつけてみるとリリムは教えてくれなかった。
「教えなーい。女には秘密の一つや二つもあるんだよ?」
「・・・・・お前、やっぱり女だったの?」
「は?」
お互い、信じられない物を見る目で見つめてしまった。
「いやいや、普通分らない? 番にされかけたってのに」
「その番と言う単語が出なかったらずっと性別不明だったわ。元人間の俺を含め、動物の姿をした人の顔って似ていてわからないんだよ」
「そうなの? 結構わかりやすいはずなのになぁ・・・・・男と思われるよりはマジだけどやっぱりなんか癪だし、そっちに合わせるよ」
合わせる、何をだ? と思った俺の目の前で金豹が光りに包まれながら人の形になって・・・・・あ、なんか頭の中で第六感の警告の警鐘が!?
「フェル! ゆぐゆぐとウッドとクリスとルフレにアイネ、サラ! リリムを隠すように囲め! 急げ!」
プレイヤーと交流していても俺の命令に従ってすぐに動いてくれた。呼んだ従魔達は変身を遂げたリリムを囲ってなんとか未然に防げた。
「え、なに?」
「お前・・・・・服着てないだろ」
「当たり前だよ。獣人族って家にいる時は裸だし、服を着ていても下着は着けないよ。邪魔だし、普段裸で過ごしているのに、いまさら同族や他の種族に裸を見られるなんて対して意識しないんだ」
『なん、だと・・・・・!?』
ほら、やっぱり男達が反応した!
「女性プレイヤー諸君、ちょっとこれでリリムに服を着させてくれ!」
「わかった!」
「白銀さんが紳士で安心したわ」
「ほら男子達! その変態丸出しの顔で見るんじゃない!」
「ところで、白銀さんがどうしてこの服を持っていたのかな?」
「イカルちゃんとゆ―――じゃなくて遊ぶためだよ絶対に」
「私もお姉ちゃんって呼んで甘えたい・・・・・」
「気持ちは分かる。後でお願いしてみましょう」
さらに女性プレイヤーの身体を張った人垣と言う防衛が築かれて何人かがリリムを何とか衣を着させる。
「終わったかー?」
「終わったよー! 素材がとても高いからかなり美人だわ!」
女性の壁が解かれて俺の目の前に現れるリリムは、猫耳が生えた長い白金を一本に結い、渡した黒い浴衣で身に包んだ少女になっていた。年齢的に15歳? にしては体つきがイカルが好きなグラマーである。
「主、酷くない・・・・・?」
「外の世界ではそれが当たり前なんだ我慢してくれ。それに不愉快な視線を四六時中も浴びたいのか?」
「気にしないよ。それだけ私に魅力的だからでしょ?」
そう、なんだけど・・・そうなんだけどこの子の論理感はどっかズレてるなぁ・・・・・! 当のリリムは着せられた服に微妙な顔を浮かべていらっしゃるし。
「んー、やっぱり服を着ない方がいいなー。素肌で自然を感じられなくなるし」
「つまり、露出が高ければいいってことか?」
「それも含めて、身体とピッタリになるような服がいいかなー」
ピッタリ・・・・・繊維の服は好みじゃないらしいから動物性の皮・・・・・特殊加工した滑らかなのか。
「あ、わがまま言うけど動物の皮で出来た服は嫌だよ。臭いがありそうで身体に移るかもしれないから」
「その口ぶりからして着たことが無いだろ。試さず選り好みしちゃダメだぞ。魚の皮と鱗の服を用意したろうか」
「えー・・・・・魚は好きだけど臭いは嫌だし・・・・・ん?」
リリムが何かを見て気付いた。彼女の視線の先を追えば、サラがゴールデンと戯れていた。
「ねぇ、あの金色の物体は何?」
「名前はゴールデン。種族はスライムだ」
「「「「「「スライムゥッー!?」」」」」」
何故かプレイヤー達まで反応して驚愕した。
「あれ、メタルじゃなくてゴールデン? メタルじゃなくてー?」
「メタルスライムは未だ見つからないな」
「スライム自体はいるんだけどねー。主に『毒竜の洞窟』ってダンジョンに」
「物理攻撃を無効化にするスライムが海の中にもいるんだけど、知らない?」
「そんなスライムが海に!? ってことはあのエリアしかいないじゃん!」
「この後探しに行こう! テイムしてメタルスライムに進化させるんだ!」
「残念だけど、こっちにはもうすでにメタルスライムを仲間にしているぜ! なーメタルスライムさん!」
「お、お前ら・・・・・俺のPNでからかうんじゃない! そもそもこんな名前に設定したのはお前だろうが!」
「あれはリアルの方でトランプ勝負に負けたお前が悪いんだよー?」
ほうほう、メタルスライムの名前にそんな経緯があったのか。で、リリムはそのゴールデンに近づいて感触を確かめる手付きで撫でている。
「この滑らかさ・・・いいね。このスライムの身体で出来た服なら愛用したいぐらい着てみたいよ」
「スライムの身体で作った服か・・・・・その発想はなかったな。でも、スライムから手に入るドロップアイテム、服を作る素材ってないぞ」
「そうなの? 残念だなぁ・・・・・」
と、ゴールデンを触るのを止めないリリムだが手に入らない物は手に入らないのだ。諦めてほしいと声を掛けようとした俺にレジスタンスの一人が挙手した。
「スライムのドロップアイテムが欲しいなら、手に入りますよ?」
「―――マジで?」
振り返ると男のプレイヤーがコクッと頷いた。
「北の港エリアで海の掃除をするクエストがあるんですよ。船の出航の妨げとなる指定された数の漂流物を集める途中で普通のスライムと大きいスライム、ビッグスライムって大きいスライムが邪魔してくる上に、倒したら倒したでゴミとなって回収する羽目になります。その時ドロップアイテム『スライムのジェル』が手に入るんですよ」
「あー、私もやったー。スライム自体、魔法だったらすぐに倒せるし、ビッグスライムも通常のスライムよりHPがちょっと高いぐらいだけだから苦戦はしないよ。『スライムのジェル』って売っても1Gしかならないし本当にゴミなんだよねー」
地味に知らなかった・・・・・そもそも俺、港町でクエストをした事一度もなかったから知るはずないじゃん。
「因みに一回でどれぐらい集まった?」
「小さいスライムは10匹に1個? 大きいスライムは確定で5個ぐらいだったかな」
「大きいスライムはたまーにしか現れないから、どれだけ手に入れたいのか分からないけど集めるのは簡単じゃないよ白銀さん」
「にゃー? スライムがどうかしたのにゃ?」
一匹の猫妖精が話に加わって来た。事情を説明する俺にふむふむと相槌を打つ猫妖精は海の方へ指した。
「スライムならこの海にもたくさんいるにゃ。海面にも海中にもスライムがいるから漁の邪魔で困っているにゃ。魚介類も根こそぎ食べるしおいらたちの生活もカツカツ、火の車! もしも数を減らしてくれるならお魚を分けてあげますニャ!」
おっとここでクエスト―――え?
「あっ、『海の掃除』かEX『スライムの駆除』のどちらか選択するクエストが発生した」
『な、なにぃいいいー!?』
驚くのも無理もない。こんな唐突にクエスト、EXクエストまで発生するなんて俺も思わなかった。
「試しにEX『スライムの駆除』をやってみよう」
「ありがとうございますにゃ! 」
選択するとクリア条件に―――。
スライム0/1000 メタルスライム 0/1 ビッグスライム0/10
が表示された。・・・・・ふむ?
「なんか特殊っぽいスライムまで倒さないといけないのか?」
「そいつ、攻撃してもビクともしないどころか臆病なのか直ぐに逃げてしまうにゃ。でも、そいつの身体は金属でできているからおいらたちにとって簡単に手に入る唯一の金属にゃ。よく見かけるのは潮が引いた洞窟の中だから気を付けてにゃ」
「居場所も知っているなら話が早い。完璧に駆除するよ」
「申し訳ないにゃー。お礼はたっぷり弾むにゃ。あ、潮が引くのはいまから3時間後にゃ。普段洞窟は海の中に沈んでいるから見つけにくいけど、無くなるとあっちの海沿いの崖下に穴が出てくるから」
そう言って行ってしまう猫妖精を隔離するように、俺から情報を得ようとするプレイヤー達の人垣が俺にも出来てしまった。
「白銀さん。クエストの内容は?」
「スライムを1000匹、ビッグスライムを10匹、それから・・・・・」
「それから?」
「―――メタルスライムを一回、倒す簡単なお仕事でございます」
EXの内容を聞いたプレイヤー達が静かに一人のプレイヤー『メタルスライム』に振り向いた。彼のプレイヤーは、彼等彼女等からの異様な圧を感じザッと後退り・・・・・。
「白銀さん・・・嘘だよな? 白銀さんまで俺をからかうなんてことしないよな・・・・・?」
「ほら、証拠はちゃんとあるぞ」
クエストの青いパネルをメタルスライムに見せつけた。討伐対象にしっかりとメタルスライムが載っていて・・・・・一緒に見たプレイヤーがメタルスライムの肩に手を置いた。
「くっ、すまねぇメタルスライム。お前の犠牲を俺達は一生忘れない・・・・・!」
「見ろよこいつ、綺麗な顔だろ。これで生きていないなんて信じられねぇよ・・・・・」
「俺、隠していたことを告白するよ。―――あなたと白銀さんを題材にした薄い本を書いてしまったの!」
「お前の意思は、俺達が受け継ぐ・・・・・だから安心して眠ってくれ」
「だがなメタルスライム、お前だけ死なせねぇ! お前の仲間も後でたくさん俺達の手で送るから寂しくさせないぞ!」
メタルスライムの固定パーティの仲間達から励まされる。だがしかし、それぞれの手に武器を持っていて心から悲しんでいるように思えない良い笑顔を浮かべてる。
「俺達もだメタルスライム! 略してメタスラ!」
「俺もEXクエストを受注してくるよメタスラ! あんたを殺した同胞をたくさんあの世に送ってくるぜ!」
「お前ひとりだけ逝かせはしない! 待っていろメタスラ、仇を俺が取ってくるぜ!」
「みんな行くぞー! メタスラさんの敵討ち合戦の開幕じゃー!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおー!!!」」」」」」
パーティーそっちのけでさっきの猫妖精を追いかけに行くノリがいいプレイヤー達と。
「お、お前らぁあああああああああ!! そのネタで俺をからかうなああああああ!!!」
全力でからかわれて怒るメタルスライムと心底楽し気に彼を引きずり移動する仲間達。それがまぁ、何ともおかしくて久しぶりに声を出して笑ったよ。この後もそのネタでしばらくからかわれるだろうプレイヤーに同情を禁じ得ないがな!
「なんか、愉快な人間達だね」
「だろう? というわけで俺はもうしばらくケットシー王国に留まるけどリリムはどうする」
「暇だし手伝うよ。スライムは海だけじゃなくて陸にもいるからね」
「あ、そうなんだ? じゃあ陸地で探した方がいい?」
「んー、海の方がいいと思うよ。陸地と言っても奥の方に居なくて海に面した崖にいる方が多いんだ。なんならかなり崖にくっついているし」
虫でいうシミかなにかか?
「打撃系にめっぽう強くて斬撃系と勢いよく突く感じの攻撃なら倒せるよな」
「わかっているじゃん。ああ、あと知らないと思うけど、でっかいスライムは身の危険を感じるスライムたちが合体した姿だ。だから探すより一度にたくさん集めて怖い思いをさせた方が手っ取り早いよ」
「簡単に集まるもんか?」
「あいつら何でも食う雑食なんだけど、特に好きなのがさ鉱物なんだ。だからメタルスライムに進化するし、そこにいるってことは少なかれ多かれ鉱石が眠っている証拠にもなるんだ。興味なかったけど昔聞いた話じゃあ、確か王国には珍しい鉱石が取れるみたいだよ」
意外な情報を知った時、クエストをする気がない様子だった鍛冶師の女性プレイヤーが二名ほど、急に走り出して他の多くのプレイヤーが集まる野次馬と交った。
「ところで、スライムを倒す武器はどうするんだ」
「爪で倒すよ。この姿でもそれなりに戦えるし」
伸びた爪を見せつけられる。伸縮自在なのねそれ。まぁ、戦えるならいいけど・・・・・。
「サイナ、念のためにリリムと行動してくれ。陸の方で何か見つけたら報告を頼む」
「了解しました」
「あれー? 信用されてない私?」
「というか、あちこち陸で行動するならついでの形で地理を知っておきたい。ここはお前のホームだから庭のように知り尽くしているだろ。俺達の知らないことをサイナに教えてほしい。そのためだ」
「ああ、そういうこと? それならお安い御用だよ主。サイナだっけ、色んな場所に案内するよ」
軽く了承してくれたリリムはサイナを連れて山の方へと向かう。そして残された俺達は。
「ペルカとルフレーズは俺と海のスライムを倒すぞ! 陸地はフェル達に任せるが、他のプレイヤーの獲物を横取りしてはダメだからな! 特にサラはフェルの指示に従ってくれ、いいな?」
「ガウ!」
「フェルも頼んだ。お前が皆を引率するリーダーだ」
「グル」
反対方向へオルト達を引き連れて向かうフェル。そしてペルカとルフレーズ、後で召喚したモササウルス達(通常個体〈モウル〉ユニーク個体〈オウスイ〉)と海のスライムを探しに泳いだ。
「鉱物、鉱石が好物って言ってたけどはたして・・・・」
オウスイの背中に立った状態で簡易な釣り竿を使い釣り糸にオリハルコンを巻いて海に沈めた。地龍のように鉱石の臭いで寄ってくるとは思えないが・・・・・。
プカプカ・・・。
「お」
オリハルコンの近くに青いスライムが海面に浮かび出した。様子を見ていると引き寄せられるようにオリハルコンへ寄ってそのままくっついた。そーれ!
「スライム取ったどーぉぉぉおおおお!?」
餌の好物にくっついたスライムが一匹だけかと思ったら、葡萄のような感じでたくさんくっついていた! 情報通りなのはいいんだけど、オリハルコンに夢中過ぎやしないか?
「ペルカとルフレ、今の内に攻撃! (他ユニークのウンディーネ)カルナ達は海に逃げないようスライムを!」
「ペーン!」
「わかったご主人様!」
「「「「任せて!」」」」
ケットシー王国のスライムも物理攻撃を無効化にするし、なんなら水魔法で応戦して来た。が、しかしあの時の俺達ではないため戦闘力が高まったルフレーズたちが特に頑張ってくれた。水魔法を無効化にするバリアを張ったり、水魔法を矢の如く放ってダメージを与える。
ペルカも嘴で突く攻撃スキル以外にも一度進化を果たしたことで他にもスキルを覚えた。
「ペギャー!」
お腹を膨張させた後、勢いよく青白い炎の吐息が放たれてスライムが悉く燃えてポリゴンと化した。名前は【悪魔の火炎焱燚】、効果はダメージを与えた相手に徐々に威力が増す燃焼のスリップダメージと時間の経過とともに一つ増える状態異常を付与するデバフのスキルだ。他にもスキルがある。【天使のラブソング】だ。
ペルカが歌って踊ると様々なバフが俺達に付与される。さらに【鵜呑み】というスキルもある。【漁師】と【採集】を一つにしたようなスキルの効果は様々な魚を捕まえて集めてくれる。魚に限らず獲物を丸呑みすることができるモンスターにも発現しているが、自分よりサイズがデカいのは捕まえることはできないのは同じらしい。
出来たら絵面がホラーだわな。
「ご主人様、倒したよー!」
「ありがとう、お疲れ様」
「ペンペー!」
「お、ペルカ。採集してくれたんだ」
全員の頭を撫でて最後にペルカからスライムのドロップアイテムを受け取った『スライムのジェル』。
『スライムのジェル』
たまにスライムが残す用途不明のゼリーみたいなもの。そのため価値はゴミと同じぐらい今はとても低い。
「今は、か・・・・・つまり、今後は高くなるのも高くするのもプレイヤー次第ってことか。面白いじゃん」