最後に残すのはメタルスライム。引き潮で露になっただろう洞窟の場所へ向かう俺達は、海に沈んでいた横穴を発見した。躊躇せず中に入ると広さはかなりにあって。暗いと感じるさせるも視界が黒く塗りつぶされるほどではない。
「うわー、暗いな。闇精霊の試練を思い出すわ」
「あの恐怖は一生のトラウマだ・・・・・思い出させないでくれよ」
「こんなに暗いとメタスラさんを見つけることって難しくね?」
「まー何とかなるだろ」
「だな! 早く見つけて初のEXクエストを達成したい!」
ここまで一緒に来たプレイヤーのお気楽な達観は、この後で絶望の絶叫で洞窟内に轟くことになろうとは思わないだろう。洞窟内を進む途中で高い崖とぶつかって上に登れば次へ進められることが発覚、宇宙の星塊で螺旋階段を形成して楽々と崖を乗り越えた先の一本道のみで奥まで辿り着くのにそうは掛からなかった。水の溜まり場が神秘的に光っていて俺達の視線を奪うのに十分過ぎた。
「うわー、綺麗! スクショしよっと!」
「それもいいけど、ここが最後っぽいぞ。メタスラさんはどこに?」
特徴を聞いていないからどんな姿形をしているのかわからない。全員が入ったところで出入り口を封鎖するために宇宙の星塊で塞いだ俺も注意深く探す。隠れられる場所はこれと言ってないんだが、水の溜まり場にいるのか? ソナーのスキルを使ってみたら・・・・・お?
「ここの水の溜まり場、潜れば奥に―――」
ん? なんか急に暗く・・・・・ぐほぉっ!?
フレデリカside
水の溜まり場を覗き込んだハーデスの真上に何かが水溜まり場を蓋するように落ちてきた!! その衝撃で飛び散る水飛沫が私達の装備(服)を水浸しにしてくれた。ハーデスが死に戻った心配はないけど、私達の目の前に現れたモンスターが戦意満々! この瞬間、レイドボスが発生したアナウンスが聞こえて、私達は必然的に攻撃体勢を取った。
「あの色に光沢・・・・・鑑定でも間違いない、念願のメタルスライムだぁー!」
「やっとお見えになられたなぁメタルスライムさんよ~?」
「お前らで最後だ、俺達のために倒されろ!」
鈍色のスライムとそれより大きいビッグスライムがたくさん。最後に水溜まり場を蓋したのがキングスライム級のメタルスライム。
「メタルだろうと何だろうと! 貫通攻撃なら余裕で倒せるだろう! 行くぜオラァ!」
勇ましく誰よりも早く飛び出したプレイヤーが貫通スキルを使っての上段から打ち下す斬撃で小さいメタルスライムを攻撃した。
キンッ!
金属同士がぶつかったような軽い音が聞こえた。でもそれだけでメタルスライムが倒れる様子はない。
「は? ダメージ1って―――ぶぼぇっ!?」
ビッグなメタルスライムが何か呆けるプレイヤーにタックルをかました! 即死するほどではないとはいえ、結構なダメージを受けたっぽい上に気絶状態になった!
「ちょ、もしかして白銀さんみたいにめっちゃ硬かったりするのか?」
「そりゃあメタルなんだから当然だろう、って言いたいけどまだ白銀さんの方がダメージ通るぞ」
「白銀さんの純粋な防御力よりめちゃんこ硬いモンスター? ハハハ・・・・・笑えねぇ」
「多分、スキルか何かだよ! 物理がダメなら魔法攻撃だ!」
「そうだな! 食らえ【ファイアーエッジ】!」
飛ぶ炎の斬撃がメタルスライムに迫る。魔法なら確かに有効だろうと私も思ったのも束の間、メタルキングの方が身体から野太い触手を生やして―――スパンッ! と魔法を打ち消した。触手を鋭く振るって・・・・・。
「は・・・? 魔法を消された?」
「単発じゃだめだ! 一斉射撃! 何でもいい! とにかく攻撃しまくれ!」
誰かの疾呼に皆が反射的に魔法をたくさん放った。私は参加せずにハーデスと連絡をする。
「ハーデス、聞こえる? そっちは大丈夫?」
「未だに水の中に閉じ込められている。そっちは?」
「メタルスライムに物理攻撃は1ダメージしか与えられないし、魔法攻撃はいま・・・・・メタルキングスライムが気持ちが悪いほど全部弾いて無効化して、ビックのメタルスライムが突進してきてプレイヤーを吹っ飛ばす感じ」
「それぞれが役割を担ってプレイヤーに対応しているのか。じゃあ、広範囲の魔法攻撃は?」
「それ無理。みんなも巻き込む狭い広さだし。ていうか、そこから攻撃できないのハーデス」
「いま奥まで泳いでいるからそこにいないぞ。何かあると俺の直感がそう言っている。お、空気があるところに出られて・・・・・意味深すぎる宝箱があったぞ!」
な、こんな時に別のことしてるって何考えてんのハーデス!?
「お、へぇ・・・そういうこと。今すぐそっちに戻る。キングスライムの方は俺が相手をするから他のスライムはフレデリカ達が頑張ってくれ」
なんか見つけたみたいだね・・・・・だったら。
「みんな聞いて! ハーデスがメタルキングを引き付けてほしいって言っている! スキルをありったけ惜しみなく使って!」
「よしきたぁー! みんなも聞いたな、白銀さんが動いてくれっぞ!」
「「「「「うおおおおー!!」」」」」
全力でキングスライムに攻撃するみんなはハーデスを信じてその時まで稼ぐ。私も温存せず魔法を放ってメタルキングに防がれようとダメージが与えられなくても、構わず魔法を射った。・・・・・このスライム、真正面からじゃ戦うのは得策じゃなさそうだよね! レベル的に私達より低いのに、ペイン達がいるのにこうも攻めあぐねるモンスターはジズとリヴァイアサン以来だよ!
「ぐはっ!?」
「一人吹っ飛んだ!! 衛生兵!」
「了解!」
「くそー! こんだけのプレイヤーがいてもダメージが通らねぇってどういうことだよ! ここは新大陸じゃないんだぞ!」
「白銀さーん! カムバッーク!!」
「持ちこたえろ! あの一番邪魔くさいキングを白銀さんが何とかしてくれるから!」
そう、みんながハーデスを期待と信用をしているんだから早く来てよ。
「ハーデース!」
思わず叫んでしまった私の声でビクンッ! と不自然な動きをするキングスライムが呼応したように見えた。触手も急に停止してみまったからみんなが攻撃の手を止めてしまった。誰かの「なんだ?」 と呟きの声が聞こえたところでーーーあのメタルキングが天井へ轟音と共に吹っ飛んでいった!
「よくもまぁ、下敷きにしてくれたな!!」
あ、女堕天使に変身していた。だから「お姉ちゃん!」 と喜ぶ声が聞こえても気にしない。赤黒い二重のサークルがバチバチと危ない放電を放って落ちてきたキングスライムを余所にハーデスがこっちに振り返らず、なにかを投げてきた。
「ペイン、受け取れ!」
「っ!」
名指しで呼ばれたペインが宙に投げられた何かを受け取り、一度目を張ったらそのまま装備した。
「さすがだよ、この装備を見つけてくれるとは」
「今だけ特別な装備だ。量産可能なソイツで下っ端を斬れ!」
「任せろ!」
「ハーデス、前!」
懐にいるハーデスにメタルキングの触手が遅いかかった! けれど、まるで曲芸のように避けて、触手に乗ったり、大盾で受け流して一度もダメージを食らわずそのまま―――!
「硬いんだって? なら、その硬さを関係ない攻撃をしたらどうなる? 【相乗効果】【悪食】【エクスプロージョン】!」
「【相乗効果】【メタル斬り】【破壊の聖剣】【勇者の七閃・光爆】!!」
ハーデスだけじゃなくて、ペインが横凪に振るった剣から七つの光の斬撃が飛んで、メタルスライム達が、メタルキングが爆発に飲み込まれてHPが全損、ポリゴンとなって私達の目の前から消え去ったことで、私達のEXクエストは達成できた。
「か、勝ったぁ~!!」
「やっと達成できたぁー!!」
「うおっ、経験値が凄すぎる! レベルが一気に十回も上がったぞ!? 経験値稼ぎになるモンスターだったのか!!」
「このメタルジェル、何に使えばいいんだ?」
「あっ、やったー! メタルキングの王冠が手に入ってるー!」
「それは羨ましいんだけどー!?」
「いよっしゃー! 初めてEXクエスト達成だぜー!」
「嬉しすぎて涙が出そうだ!」
和気藹々と喜ぶプレイヤー達を見聞しながら男に戻ったハーデスに近付く。
「ハーデス、宝箱から何を見つけたのさ」
「ペインが持っている武器だ。【勇者の剣】だよ」
「勇者の武器かよ。ユニークやレジェンド以外にそんなもんまであるなんてな。でもよ、量産が可能って言ってなかったか?」
私も聞いた。勇者になるのにレジェンドモンスターを倒さないといけない苦労があるのに、勇者の武器が量産可能って・・・・・。ハーデスはその理由をペインの剣を指しながら教えてくれた。
「それ、テキストを見たらメタルキングの素材が入ってることが書かれてあるからだ」
「うげ・・・・・可能つっても、今さっきメタルスライムどもと戦って苦労を知ったところなのにそれかよ」
「この武器を欲しさに周回しなくちゃならない苦労の方がよっぽど地獄をみるんじゃね?」
見るね絶対。それにハーデスとペイン並の強いプレイヤーじゃないとあのメタルキングを倒すことできないよ。その前にあの1000匹もスライムを駆除しないといけないんだから結局地獄を見るんだよね。
「てか、勇者武器ってユニークか?」
「いや、そういうランクは勇者武器にないらしいぞ。だからペインに譲渡することができたんだ。それに勇者しか扱えないスキルあるから、勇者の称号を持っていないプレイヤーが装備していてもスキルは使えない。ステータスが高いだけの装備に成り下がる」
「規制されているのか。となると、俺達専用の勇者武器も作れたりするんだな?」
「魔王の俺でも装備できるぞ。あと他に必要な素材はオリハルコンです」
あ、意外と早く私も手に入りそう? どんな杖が手に入るのか楽しみだなぁー。
「メタルキングの素材はどのぐらい必要だ?」
「鍛治師じゃないんだからそこまではわからないって。神匠のNPCに見せれば解るかもよ」
「それもそうだな。ペイン、どうする?」
「みんなもこの武器を持った方がいいと思うから訪ねてみよう。勇者武器を装備した勇者プレイヤーのステータスが二倍になる効果が付与されてるんだ」
「「マジか」」
うわ、私も欲しい! ハーデスも「あとでまた・・・・・」とか声を殺して周回する気だし!
「取り敢えず戻らない? みんな待ってるよ」
「そうだな。ハーデス、残りはないよな?」
「あるとすれば他にもこういったのがあるかもしれない可能性を探さないといけなくなったってことだな」
ハーデスが新大陸よりも旧大陸にまだ解放否定ないギミックを探す熱意が燃えてしまった。でも、それがいいかもしれないね。
運営side
「いい意味で攻略されたー!」
「よかったっす。もうお蔵入りされるかと思ったっすよアレ」
「白銀さんが偶然にも猫妖精を引いてくれたおかげで、ケットシー王国から始まる関連クエストも発生しますよ。次はヴォパールバニーの王国のイベントですね」
「というか、よくもまぁあそこまでやったと思ったよ。特にキングになるまで集めるとは」
「確かにそうですね。スライムを1000匹も倒している間にビッグスライムを倒すのが定石でしたし」
「そもそもキングスライムなんて俺達の悪戯で設定した特殊レイドボスっすよ? 方法としては漁に出る猫妖精たちの協力で網にいっぱい括りつけた好物の鉱石に群がるスライムを一網打尽に捕まえ、港町で弱らせればレイドボスのキングスライムの出来上がりっす」
「方法は微妙に違ったけど、やることはその通りだったんだよなー」
「白銀さんの場合は、あの宇宙の星塊があって初めてできた事ですからね。キングスライムの存在を知らないにもかかわらず、良く思いつきましたよあの方法」
「それ以前に、白銀さんだからEXクエストを達成できたと言えないだろ。溺死しなくなるスキルを持ってるから宇宙の星塊を使って海中でスライムを誘い込ませる罠を作れたんだからな」
「その上、メタルキングスライムまで出現させてしまったっすよねー」
「あれは予定通りにスライムとビッグスライムだけ倒せば、洞窟内で高確率でメタルスライム、低確率でメタルビッグスライムだけ遭遇できる手筈でした。が、今回は裏ボスまで発現させたことで自動的にこれもまた運営が考えた悪意と悪戯のメタルキングスライムの出現も加わりました。・・・一応、これは超低確率でしたがね」
「メタルスライム戦は、EXクエストを受注したプレイヤーの数で出現率のが変動するからなぁ・・・」
「軽く30人以上は参加してたっすけど、出ない確率が大きかったような・・・・・」
「「白銀さんがいたから」」
「サスシロってことっすか。で、周回しようとする動きが見受けるっすけど?」
「あのクエストは一回きりだし、クリア後の洞窟はダンジョン扱いとなるんでしたよね」
「そうだ。しかも最初に倒したメタルスライムの数と種類がそのままレイド戦に反映する。くくく、メタル武器が無ければ泣きを見るプレイヤーの想像をすると楽しいぜ」
「えーと、白銀さんたちが初犯として出現させたメタルスライムはーと」
「メタルスライムが50匹、メタルビッグスライムが10匹、メタルキングスライムが1匹・・・・・単独で勝てる数じゃないなこれ」
「白銀さんと、白銀さんが怪我の功名みたいな感じで運よく見つけた勇者の剣を手に入れたペインだけなら勝てるっす」
「ふははは! プレイヤー達よ、メタル系のスライムを相手に憤慨しやがれ!」