バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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スライムスーツ、再びスライム狩り

 

「できたぁー! できましたよー!」

 

そんな声と共に廊下を走る音が聞こえた。ジェンティルドンナに依頼をしてから数日後のこと。畑を見ながら縁に座って茶を飲んでいた俺のところに執事服で身に包んだ女性が興奮冷めない風体で現れた。

 

「白銀さん、完成しました! 見てください! ほらほらぁー!」

 

「凄く伝わってくるから、気持ちが伝わってくるから落ち着け! 魔茶葉が零れるからー!」

 

眼が充血、血走って鼻息が荒いジェンティルドンナを落ち着かせるのにサイナを呼ぶ必要があった。

 

「すみませんでした・・・・・ゲームを初めてから最高傑作のスーツを作れたので興奮が・・・・・」

 

テーブルがない居間で俺に対して深々と完璧な土下座をするジェンティルドンナ。

 

「わからなくはないが、リアルまで騒いだら迷惑だからな?」

 

「そこは大丈夫です。防音が優れた部屋にいるので。なんなら幕の中で寝転んでいますから」

 

ベッドの幕と言えば天蓋付きの寝台なんだが。それだけでジェンティルドンナはお嬢様かもしれない可能性が浮上してしまう。

 

「それよりも改めてこれですよこれ!」

 

さっきの反省は? とぶり返した興奮のまま発注したスーツを畳に広げた。

 

 

【スライムスーツⅩ】

 

品質☆10 レア度10

 

【MP+100】【INT+100】

 

【魔力操作】

 

どんな体型のモノでも完璧に着用が可能なスライムの素材で作られたスーツ。

 

 

【魔力操作】

 

MPを消費すればそのスーツを変幻自在、攻防一体の戦闘を可能にする。また擬態やMPを消費する一部のスキルも操作が可能

 

 

「ご、語彙力が足りない凄さ・・・・・!」

 

「私の気持ち、わかりましたね?」

 

今度は俺が土下座をする番でジェンティルドンナは誇らしげに豊かな胸を張った。

 

「かなり強化してくれたんだな。最高ランクじゃないか」

 

「費用こそかかりましたが、白銀さんの依頼にはこれぐらいが当然でしょう。そのおかげで私も色々とレベルが上がりましたよ」

 

「本当にありがとうなー。おーい、リリム! 服が出来たぞー!」

 

大声で呼んでから少しして金豹がやってきた。スーツに目線を向けるや否や、俺が表に出る前にこいつは全裸で人の姿になり、ジェンティルドンナに聞くよりも先にスーツを手に取って着始めた。胸元と太ももに深いスリットが入っている以外、ボディラインがくっきりと浮かぶ

 

「・・・・・いいね、これ。身体にピッタリしてて着心地がいいよ! それに何だか細工があるみたいだね?」

 

そこまで察したか。俺が頷くとリリムに押し倒されてゴロゴロと喉を鳴らして甘えて来た。違う、甘える相手が違う。

 

「ありがとう主、最高のプレゼントだよ! 愛してる!」

 

「気に入ってくれたようで何よりだよリリム。彼女、ジェンティルドンナにもお礼を言ってくれ。スーツを作ったのは彼女だから」

 

「ありがとうね。これ、大切に着るよ」

 

「いえいえ、私も素晴らしい作品がこの手で創れて嬉しかったからですよ」

 

「ん、じゃあ、さっそくこのスーツで戦ってみるよ。またね」

 

猫らしく自由気ままに俺から離れていなくなった。

 

「ネコですね」

 

「ネコ科だからな」

 

「それじゃあ、次は白銀さんの分ですね! どんなスーツに仕立て上げましょうか?」

 

覚えていたのか。普通のスーツでもいいんだがな。さっきのスーツの性能を見てしまうと・・・・・。

 

「そうだ。このカードの絵の服を再現できるか?」

 

「カード?」

 

デュエルマスターの称号を得たことで、外でもカードバトルができる道具を手に入れた。その道具を使って女堕天使の魔王の姿のカードをセットすれば立体的な映像が浮かび上がる。

 

「わ、なんですかこれ?」

 

「カジノ内にあるTCGで手に入れたものだ。この服を見て格好いいなーって思ってさ。で、どうだ?」

 

「確かに格好いいですね! わかりました。ちょっとそのままでいてください。細部までスクショに残したいので!」

 

その行動はプロのカメラマン並みの情熱があって、本当に細部までスクショに残すジェンティルドンナ。時間にして10分以上も掛けて撮りまくったところで新たな来訪者が現れた。

 

「お久し振り。あなたの望んだ物が完成・・・・・あら?」

 

「あ、ルシファー」

 

あの紡績機と機織りの道具の追加を頼んだ物が完成したか。丁度スクショしていたジェンティルドンナと出会ってしまった。

 

「ねぇ、これは何?」

 

「俺の姿がカードになった絵を立体的な映像として浮かべているところ」

 

「・・・・・素敵な衣装ね。私が作ってみたくなるぐらい」

 

職人の目となったルシファーを見てただ者ではないと察したジェンティルドンナから訊かれた。

 

「彼女は?」

 

「冥界の魔王の奥さん。名前はルシファーで、とっても可愛い相手に自作した服を作るのが好きな魔王軍の幹部だ」

 

「服を製作する悪魔で魔王の幹部?」

 

「趣味を没頭する悪魔は珍しくないんだって。で、撮り終えたか?」

 

彼女は頷き、次はメジャーを持ち俺の身体を測定しようとした。

 

「ねぇ、魔王。彼女の代わりに作らせてって言ったらダメ?」

 

「なに?」

 

「え?」

 

俺達はルシファーに顔を向ける。俺の服をルシファーが作るだと?

 

「突然どうして?」

 

「私もさっきの服を作りたくなったから。あと、私の大切な夫を助けてくれた個人的なお礼がまだだったなぁーって」

 

「後者は気にしなくていいんだがな。紡績機と機織を融通してくれたし」

 

「ダメかしら?」

 

あ、断る度にグイグイくるなこれ? ・・・・・となると。

 

「一先ず、素材を集めないと依頼できないから保留ってことで。集めたらお願いする方針で」

 

「必ずよ?」

 

「嘘は吐かないから信じてくれ。それと、依頼していた方のあれほ?」

 

納得してくれたルシファーから冥界産の紡績機と機織をそれぞれ5つ渡されると彼女は冥界に帰っていった。

 

「えと、私はお役御免かな?」

 

「いや、そうじゃないぞ。これで二種類のスライムの糸の素材を集めなくちゃいけなくなっただけだから」

 

「二種類のスライムの糸?」

 

メタルのスライムの繭を見せるとジェンティルドンナが驚きの声を上げた。

 

「これ、糸にしたら絶対に凄いスーツが出来上がりますよ!?」

 

「さっきのスライムスーツを見た後だと、メタル故に防御力も付与されるかもな。ただ、問題なのはこのメタルのスライムは経験値稼ぎとして今頃は行列ができているかもなんだ」

 

「経験値が凄いんですか?」

 

「一気に十レベルが上がるほど」

 

スライムの駆逐クエストをしたことがない彼女はその凄さに目を丸くした。おっと、とっとと渡しておこう。

 

「ジェンティルドンナ。スライムスーツの依頼の報酬を渡すぞ。作ってくれたありがとう」

 

「そうでした。受け取り忘れ・・・・・ぇ?」

 

十億とさっき受け取った紡績機と機織×5つを報酬に渡した。

 

「ちょっ、あのこれ!? さすがに多すぎますよ!? あの紡績機と機織まであるなんて!」

 

「その道具はジェンティルドンナと同じ職業のプレイヤーと共同で使ってほしいから用意したんだ。同時にこれからまた依頼する報酬の全額の先払いの意味も兼ねている」

 

「先払いにしても、多すぎますよこれ・・・・・それに、私たちのために用意してくれたなんて」

 

申し訳ないといった表情で萎縮する彼女の肩に手を置いた。

 

「この先に新大陸でしか手に入らない素材を活かすには相応の物も必要になるのは確実だ。いまこの大陸で一番かわからないがそれでも最高の素材で作ってもらったこれで、さらに凄い服を作ってほしいんだ。自他ともにな」

 

「は、白銀さん・・・・・!」

 

「それは一人だけじゃなくてみんなにもそうあってほしい意味を込めての報酬だ。衣服を作る職業で遊ぶプレイヤーにはいろんな道具があった方がいいと思っている。これはその一つだし、また何か必要だったらできうる限り揃えてみせる。だからこれからもよろしく頼むジェンティルドンナ」

 

その後・・・・・。

 

「―――って、白銀さんに言われてみんなは手を抜く真似はしないよね!?」

 

「「「おおおー!!」」」

 

「漢だぜ白銀さん!」

 

「この紡績機と機織りを私たちのために用意してくれるなんてありがたいわ! これ、凄い完成度だもの!」

 

「ジェンティルちゃん、私もスライムの糸がほしい! 変幻自在で変わる布なんて私達にとって夢のアイテム!」

 

「いまからスライム狩りじゃー!」

 

「取引掲示板にも呼び掛けよう!」

 

「でもどうやって糸にするの? 普通~高級糸はNPCから買えるけど」

 

「・・・・・確かに、スライムの糸ってどうやってだっけ?」

 

「えっと・・・カイコの協力で作っているって言ってた。風霊の里のホームオブジェクトにも売っているカイコとは全く別物のカイコの方だって」

 

「け、結局白銀さんの協力無しでは特殊な糸を手に入らないなんて・・・!」

 

「いえ待って。ホームオブジェクトのカイコでも可能じゃない? もしくはそのカイコをどうやってかグレードアップするとかして品質と種類を増やせないか試しましょうよ」

 

「「「「「それだ!」」」」」

 

と、躍起になっている一部のプレイヤー達がいることを知らない俺はケットシー王国に【テレポート】で移動した。

 

「いたいた。おーい、ネコのー。スライムの駆逐をしたいんだが」

 

「にゃ、恩人のお人! ありがとうございますにゃー!」

 

「で、あれはどういうことなんだ?」

 

港町の至る所に真っ白に燃え尽きたプレイヤー達もとい屍の数々にネコは「あー」と相槌を打った。

 

「スライムの駆逐で疲れ果ててしまったんだにゃ」

 

「全部倒して?」

 

「にゃー、全然にゃ。数が多い上にスライムを見つけるのが大変にゃ」

 

納得できたが、クエストを請け負ったからには頑張ってほしい。前回のように沖へ出て海底で宇宙の星塊という罠を仕掛けると大量のスライムが罠の中に納まり、港町まで引っ張っていく。

 

「よいっしょーと!! 大量に集めたぞー! スライムを倒したいプレイヤーは早い者勝ちだー!」

 

ピクッ ムクリ・・・・・。

 

「いや、ゾンビかよ」

 

しかもログアウトしていたんじゃないのか。一人、また一人と幽鬼のように起き上がってこっちに来る足取りがゾンビぽかった。

 

「俺はスライムのドロップアイテムが欲しい。倒させる代わりにスライムのジェルを譲ってくれ!」

 

「ス、スライ、スライムゥ・・・・・」

 

「ヒヒ、ヒヒヒ、イヒャヒャヒャ・・・・・」

 

「スライムスライムスライムスライムゥ・・・・・ッ」

 

聞いていなさそうだな・・・・・ま、いいか。それじゃあ、オープン! 解放されたスライムが雪崩の如く集まったプレイヤーへと迫る最中、プレイヤー達の眼光が妖しく煌めいた。

 

「スライム祭りじゃああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ひゃっはああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「シュライムゥゥウウウウウウウウー!!!」

 

おおう、ここまで恐ろしい物に変貌させるほどスライムを求めるとは。喜々として狂喜の笑みを浮かべ、血走った目で弱体化したスライムに群がって倒していく。おっと、ここでビックスライム、キングスライムの登場でレイド戦の開始した! 俺は何もせず、ぷちぷちとスライムを倒す飢えたプレイヤーを高みの見物させてもらった。見ている分面白いが、10分ぐらいでキングスライムが倒されたので彼等のクエストは次のステージに進むだろう。

 

「は、白銀さん・・・約束のブツだ・・・・・納めてくれ」

 

「確かに。スライムのジェルだな」

 

「お、俺もだ・・・・・」

 

「僕も・・・・・納めてください」

 

ふははは、スライムのジェルがどんどん集まる! もうあっという間に100個も手に入った!

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