スライムのジェルを大量に確保できた次にメタルなスライムのジェルだ。件の洞窟に向かうとまだ海の中に沈んで・・・いや、時間が過ぎて引き潮から満ち潮になってしまったか? とにかく洞穴が海中にあろうがなかろうが、俺には関係なく潜ってダンジョンの中に入る。が、途中で空気がある場所・・・高い崖を登らないといけない場所まで海水で満たされていたから簡単に上がれた。
「おい、ふざけるなよお前等!!」
「・・・・・うん?」
プレイヤーがいたのか。もしかすると一緒にEXクエストをクリアしたプレイヤーか? が、穏やかじゃなさそうだな。怒声が聞こえた洞窟の奥、メタルスライム達が出現するルームの出入り口前まで足を運ぶと大人数のプレイヤーが屯っていた。というか、対立している? ちょいと【色彩化粧】っと。そーと足音を立てないよう寄ってみた。
「戦わないなら入らせろよ! 戦うならさっさと戦え!」
「おいおい、何言ってんだお前。ここは俺達のギルドが縄張りにしたんだ。勝手に俺達の許可なく入ろうとするんじゃねぇよ」
「同じ神獣の眷属同士だろうが!」
「ああ、眷属が同じなだけでおめーらと仲間になった覚えはないがな」
ガラの悪いプレイヤーがメタルスライムに挑みたがっているプレイヤー達の前に立ち塞がって邪魔している。言わずと知れた独占と妨害行為をしているのか身内同士で。しかも辰の眷属とは・・・・・。
「それによぉ、先に俺達がここに居て仲間を待っているだけなんだぜ? その順番を守らねぇで割り込もうとしているお前等が悪いよなぁー?」
「そう言ってもう一時間も経っているだろうが! 来ないなら俺達が挑んでも問題ないだろう!」
「いやいや、それが大ありだぜ? ここは俺達が独占したダンジョンだからな。同じ神獣の眷属同士でも他のギルドが勝手に入っちゃいかんでしょ」
「そうそう、それでも通りたかったら通行料を払えってな!」
「一人頭、一千万でいいぜ? 本当なら一人に付き一億Gなのに、俺達の優しい気配りでここまで下げたんだ。泣いて喜んでくれたっていいんだぜ?」
下品な笑い声が洞窟内で木霊する。・・・・・うん、邪魔だなあいつ等。ちょいっとお仕置きでもするか。その方法を思いついて一番後ろにいるプレイヤーに近づき、肩を叩いた。
「あ? 誰・・・んなっ―――」
「シッ・・・この状況を解決する協力をしてくれ」
俺のことを気付いて驚く前に、男性プレイヤーの口を手で塞ぎながら小声で話しかける。相手は俺の提案を呑むと頷き、俺の指示通りに動いてくれた。
「・・・・・チッ、退くぞ」
「・・・・・ああ」
「クソが!」
ガラの悪いプレイヤーに恨めしいとばかり睨んでから全員が来た道へ戻る。そんな彼等を見て気をよくしてわざと聞こえる声量で嘲笑う十数人のプレイヤー達。お互い見えなくなるまで離れてもらい、そこで暗闇から姿を現す俺に声を掛けたプレイヤー以外の彼等は目を丸くした。
「本当にいたのかよ白銀さん。 何時の間にいたんだ」
「言い争っているところ。ぶっちゃけ聞くけど、運営に報告しないのか?」
「しているけど、あいつら無視しているみたいでよ。ちっとも効果がないんだ。で、何とかしてくれるんだって?」
「おう、こんな風にな」
召喚した久しぶりのバシリスク。ちょーと、奥にいるプレイヤーを皆殺ししてほしいんだお願いな。と頼むと、バシリスクは洞窟の奥へと凄い勢いで進み、プレイヤーの悲鳴と怒号が轟いた。少しして静かになると無傷のバジリスクが戻って来て一仕事が終わったとばかりの態度をするので、感謝の言葉を送ってから送還した。
「終わったみたいだ。行こう」
「・・・・・白銀さんが大蛇までテイムしていたなんて知らなかったんだが」
「していないぞ? サモナーみたいな感じで召喚して使役しているんだ」
「本当に何でもありだな。女に性転換することもそうだし」
「おや、俺の性転換した姿を見たいのかな?」
「「「「「是非とも」」」」」
「・・・・・俺も」
メタルスライム達を倒してからなーと口約束する俺もチームに交ぜさせてもらいながら再度奥へ進むと、石化したガラの悪いプレイヤー達が石像のように固まっていた。邪魔なので大槌で粉砕してPKすると奴らが消えた。
「旧大陸じゃあPKできないんじゃ?」
「魔王は別だ。逆に俺をPKできるのも勇者だけだ」
「勇者か・・・・・ベヒモス倒すのが難しすぎるんだよな」
「ヤマタノオロチは? 眠らせたら簡単に倒せるぞ」
「え、マジで? というかどうやって戦うことができるんだ?」
「世界の神社に米を奉納すると手に入る神の酒を、もう一度捧げるとレジェンドレイドボスのヤマタノオロチと戦えるぞ。攻略方法は、大きな樽の酒を八つの社の所に置いてヤマタノオロチを潜らせながら飲ませると眠るからその間に攻撃すれば倒せる。倒し損ねたらもう諦めてくれ。ああ、奉納は一日に一回だから神の酒は奉納していない味方に捧げれば挑戦できるぞ」
ペラペラと語る俺の話に耳を傾けるプレイヤー達。
「当然、白銀さんは倒したんだよな」
「めっちゃ苦労した。三時間近くもな。やっぱりレイドはみんなでやらんと楽じゃないわ」
「一人でベヒモスを倒した人とは思えない発言だな・・・・・よし、ようやく戦えるぞ。準備はいいな」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
「あ、メタルスライムのジェルが欲しいからいらなかったら譲ってくれ。ある素材に使いたいから」
え、素材? と不思議そうに聞かれるが目の前にキングとビックも含めた大量のメタルスライムが現れた。気を引き締めて俺達は厄介な硬いスライムと戦い、何とか苦労してすべて倒し終えた。
「おっしゃー! レベルが上がったー!!」
「本当にいい経験値の稼ぎができるダンジョンだな!」
「白銀さんのおかげでやっとだよー」
「あいつら、眷属から追放されても絶対にまた同じことを繰り返すぜ。どうするよ」
「運営の対処次第だ。白銀さん、助けてくれた礼にジェルを渡す。王冠とかいらないのか?」
それはいらないとジェルだけ貰う俺に他にもたくさんのメタルジェルを譲ってくれたので手に入った。ダンジョンの外・・・いや、引き潮の時間じゃないし洞窟の中かわからないがそれらしい転送陣と港町に送られる二つの転送陣が浮かんだ。俺達は港町まで帰還する魔方陣に乗って移動した。
「それで何の素材にするんだ? 用途不明のゴミよりマシなアイテムだぞ」
「繊維、糸にするんだ。そうしたら服を作るプレイヤーに衣服を依頼するつもりなんだよ」
「はー・・・・・スライムのドロップアイテムが糸になるのか。因みにどうやってだ?」
「カイコって幼虫の協力でだ。一度完成品を見させてもらったけど、強いぞ」
と、自慢げに語ると全員から羨ましそうな眼差しを向けられるようになった。
「それ、今持ってます?」
「NPCに着させたからない。だから俺の分の服を作って貰うために来たんだよ」
「ああ、経験値よりもドロップアイテムの方が狙いだったのか。白銀さん、もう200以上ですもんねレベル。他の新大陸に行きました?」
「いんや、旧大陸で他にも未発見なエリアがあるみたいだからな。それを探してみたい気持ちがあるんだ」
「どんなエリアです?」
「NPCからの情報では広大な砂漠のどこかに眠っている都が存在しているって」
「マ?」
首肯するとプレイヤーの一人が考える仕草をして意を決したように口を開いた。
「白銀さんって神獣の眷属にならないんですか?」
「メリットとデメリットを同時に抱えそうだからな。実際、辰の眷属になってどうよ?」
「えーと、ステータスが全てそれなりに増えるんですけど与えられるクエストが大変」
「クエストが三種類あって一つは生産系、指定された品質とレア度のアイテムを作る必要があるんだ」
「後は戦闘系。俺達にとって楽勝だろこれと思ったのが、いざ蓋を開ければそこは地獄の窯の入り口に立たされた気分にさせられるんだ」
「格上の相手に装備無しで指定した数のモンスターを倒せだの、スキル無しで戦えなど、制限時間内に倒せなんて辛たん・・・!」
「最後に占領と強奪。数あるダンジョンを占領するんだけど、これは神獣の眷属の縄張りを作るだけであって、神獣の眷属じゃない他のプレイヤーには何の実害もないんですよ。でも、眷属のプレイヤーの間ではそうではなくて、一度そのダンジョンを占領されると占領した眷属のプレイヤー以外、入れなくなるんですよ」
ならどうやって入れるようにするか? ―――占領したダンジョンを上書きするように占領すればいいだけなのだ。PVPを促すものではなく、一定時間も別の眷属のプレイヤーがそこに留まるだけで占領ゲージなるモノが目に見えて占領している様子が分かり、ゲージが満たされると晴れて別の神獣の眷属が占領したダンジョンになるらしい。
「プレイヤー同士が争わないか?」
「めっちゃなります。神獣の眷属になるとPKが可能になるんですよ。でも無所属のプレイヤーには・・・・・」
「本来ならPKが出来ないのに、眷属でもない俺が眷属のプレイヤーにPKが出来てしまったわけか」
その通りと頷かれる。まー? 俺? 人類の敵の魔王だからな? お前等とは別枠で出来てしまうんだよなー?
「・・・・・なんだか、今後絶対に神獣の眷属同士のPVPのイベントが起きるよなこれ」
「白銀さんもそう思いますかー。ということで、【蒼龍の聖剣】も辰の神獣の眷属同士になってくれませんか?」
「うん、断るよ。ノルマが嫌いなプレイヤーがギルドに多いんだ」
おいおい、断れたからってそこまで落ち込むなよ。
「そっちには【炎帝ノ国】のミィがいるから強いだろ」
「確かに強いっちゃあ強いんですけど・・・正直同じ眷属なのに派閥めいたもんが出来るぐらいなら眷属になりたくなかったって話で」
派閥? まぁ、色んなギルドが神獣の眷属になるんだから対立してもおかしくないだろ。
「もしかしてさっきのオラオラ系のプレイヤーも何かの派閥?」
「察しがいいですね。あいつらは最前線で張っているプレイヤーだったんですけど、今じゃあルールに則った上で好き放題やりたい放題するようになって。同じ眷属だろうとお構いなしで食って掛かるんですよ」
「ああいうのがいると、いつの間にか増えて幅を利かせるようになるんだよな。現在進行形でそうだし」
「【炎帝ノ国】も手を焼いているんだよな・・・・・炎帝なだけに」
「つまらないギャグを言ったやつは死刑! ひっとらえろ!」
「恩赦を! 恩赦をプリーズ!!?」
目の前で漫才を始め出すプレイヤー達の裏の事情があるとは・・・・・。
「追報とかできないのか? もしくは眷属から脱退とか」
「脱退は出来るけど、追放は主神の神獣の意思次第なんだよそれ。それ以前、俺達プレイヤーに会う事すらしないんだ」
「ん? じゃあ、クエストは自動的に?」
「他の神獣のところもそういう感じらしいぞ」
なるほどな。ますます眷属にならなくてよかったって感があるな。辰の眷属だけの話を聞く限りでは。はい【海竜人】で性転換して装備をナイトドレス変更。
「どう? 似合うかしら?」
「「「「「・・・・・(拝む)」」」」」
「「「「「・・・・・(貢ぎ金)」」」」」
「「「「「・・・・・(スクショの構え)」」」」」
おい金を渡そうとするないらん! 金よりジェルを寄こせ!
そして最後の奴らは撮る気満々だな! 別にいいけど!