久方ぶりの砂漠に水瓏が着陸する。水晶の船が燦燦と日照り熱くなる心配はないがプレイヤーにはかなり堪える暑さだ。それでもイッチョウの呼び掛けに集まるギルメンの数は多い(主に戦闘職)。
「待ってたよー」
「みなさーん!」
「ああ、そういう事だったのか。でもイカルが砂漠にいるのは珍しいな」
「ハーデスさんに食べてもらいたいおにぎりの海苔を取りに来ていました!」
「・・・・・ええ子や」
その後、お姉ちゃんになって上げて甘えさせよう。
それから約束の時間になると古代遺跡の前に大勢のプレイヤーが集った。既にレイド戦があってもいいように従魔と同化していたり従えてるテイマーが見受けられる中。炎系魔法を持っているプレイヤーが、見つかった黄金の器を持つ防御力が高い俺とメイプル、イカルの前に立つ。
「検証が上手くいくといいな」
「それはそれで、何が起きるか分からないがな。始めよう、やってくれ」
「「「【ファイアボール】!」」」
飛んで来る火の玉を受け止めるよう器を前に突き出した。すると消える筈の火が受け止めた器の中で燃え続ける。
カッ!
炎から一条の光が空へと昇り天に消えた。何が起きるか見守る俺達が次を待つこと数秒後・・・。砂漠に地震が発生した。静かだった砂漠に自然現象が起きて立っていられなくなったり転がったりする俺達の目の前で古代遺跡が崩壊しながら砂が一気に膨れるように盛り上がった。急いで離れる俺達の背後で莫大な量の砂がナイアガラ滝のように落ちていくその向こうに、大きな影が見えて地震が治まった時と同時に臨戦態勢の構えを取った。
二体の四肢の身体に巨大な翼、人面の顔の岩石系のモンスターが俺達を無表情で無機質な目で見下ろす。
『『汝等に試練を与える。試練を乗り越えし者のみ太陽神の箱庭へ招かれる』』
「二手に分かれて攻撃! 味方に流れ弾を当てるなよ!」
「「「「「わかった(おう)(了解)(はい)!」」」」」
案の定のレイドボスが始まった。翼を持つモンスターなのでたまに空から砂の塊を撃ったり砂の嵐を起こしたり、ブレスすら放つので足場が悪い上にAGIを減少させる砂漠エリアの中での戦闘は苦労させられたもの、飛行能力を有している味方が空を飛んで、スフィンクスの翼を破壊できれば地上に落とした。
「あの白銀さん?」
「なんだ?」
「どうしてピッケルを装備しているんですか?」
「岩石系のモンスターは砕くのが一番ダメージが通るんだよ。こんな風に!」
ティラノサウルスと同化したプレイヤーが俺の足となって口からブレスを吐いて味方に攻撃している最中を狙ってスフィンクスに向かって走ってもらい、ラヴァ・ピッケルとオリハルコン製のピッケルで動きを止めているスフィンクスの足に向かって思いっきり振るった。
ガッ!!!
片足の表面が抉れる。【八重ノ狂龍】で八回分の効果とダメージが付与されるからその分のダメージも加算された。なお、称号の【ホームラン王】の効果でノックバック効果が生じる。では攻撃した衝撃がどうなると思う?
パイルバンカーの如く―――ぼっきりと石造の足を砕くんだ。
ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアー!?
「どうだ!」
「うわ、すごっ。岩石系のモンスター相手なら鍛冶師でも戦えるってことか」
「特定のモンスター相手なら生産職のプレイヤーでも戦えるはずだ。魚モンスター相手だったら魚に特化した職人とかな」
「あー、なんか納得。そうか、生産系のプレイヤーでも通じるものがあるのか」
わかっているじゃないか。それ、今度は後ろ脚も破壊だ!
「見たか? ピッケルで戦ってるぞ白銀さん」
「しかも足をもいだぞ」
「そういや、斧で樹木の恐竜と戦ったばっかじゃん。他の生産系の道具でもモンスターにダメージを与えることすっかり忘れてたわ」
「本当に生産系のプレイヤーを馬鹿にできないな。このギルドに入ってつくづくそう思わされる」
結論から言えば、死に戻りしたプレイヤーを出さずに辛勝できた。部分破壊が出来ることを証明してみせた俺を見て、もう一方のスフィンクスと戦っていたAGI特化のマイとユイにも伝わったか真似て部分破壊を始めてからこっちの有利に傾いた。
「「「トドメだぁー!!!」」」
四肢が奪われ砂漠に埋もれる形のスフィンクスに一斉攻撃により、ポリゴンと化した二体のモンスターの後に俺達の勝利を告げる青いパネルが表示された。次いで喜びを分かち合う俺達の目の前に巨大なピラミッドがスフィンクスと同じ登場の仕方で現れた。ただ、このピラミッドには数十メートルほどの鋼鉄の門が設置されていて、門を開くためのスフィンクスの巨像が前脚を使って、俺達を迎え入れようと門を解放してくれた。
『ギルド【蒼龍の聖剣】が砂漠に眠る古代都市、ユニークエリア『サーラ』を解放しました』
『ユニークエリアを二つ以上解放した死神・ハーデス様に【トレジャーハンター】の称号を授与します』
これで二つ目のユニークエリアか・・・確かに苦労させられた上で壮大なエリアを解放したけど。
「ユニークエリア!?」
「古代都市か。黄金の都だったらテンション上がったんだけどな」
「とにかく行ってみようぜ! 俺達が一番乗りだ!」
「真の意味で俺が一番になるぜー!」
おーおー、暑苦しい中で激しく戦って動き回っていたのに元気だねー。ま、俺も新エリアに行くつもりだから同じだがな。中で休める場所があるならなお良しな俺の考えと同じかそうで無いか、他のみんなもピラミッドの中へ吸い込まれていくように入って行く。俺は水瓏を回収してから遅れて入る。
ピラミッドの門を潜った先は岩盤が天井の地下空間の中だった。この場に来た俺達は崖の上にいるので眼下の先の建造物を見下ろせることができた。
「黄金の都だったー! やっほーい!!」
仲間の言葉通り。地の底で眠っていた都市は、黄金で作られた建物の上に石で覆ってできた建造物で溢れている。覆っていた石壁が剥がれて隠されていた黄金が煌めきを放っているからすぐにわかった。
「全員注目!」
『?』
「まずは探索しながら情報収集をしてみたい。入手できそうなアイテムを見つけても、まだ手にしちゃダメだ。ピラミッドの下にあるってことは他にもギミックが設定されているだろうし、運営が俺達に欲望を駆らせて酷い目に遭わせて楽しむ悪意と意地悪な何かを用意していないとは限らないからだ」
運営の悪意と意地悪と言ったら仲間達が苦い顔を浮かべ、俺の提案を受け入れるように頷いてくれた。
「白銀さんだったらどんなギミックがあると思う?」
「リアルでも黄金の宝とか見つける冒険の映画や小説には犠牲がよくあるし、俺だったら宝の一つ一つに呪いを付与するぞ。古代の砂漠の王の財宝を盗む野盗に罠を仕掛けてもおかしくないし」
「逆に言えば、呪いに対する耐性が手に入れば怖いものなし?」
「手に入るならなー。俺もまだそういう耐性がないから慎重に扱わないと危険だ。とまぁ、俺からの注意事項を覚えておいて新エリアを見て回ろうか。他のプレイヤーが来る前にな。あと情報は出来る限り共有よろしく」
「「「「「おおおおー!!!」」」」」
改めて崖に沿って下へ続く道に降りる。都市に着き間近で建物を見れば・・・・・凄惨な光景が俺達を出迎えた。
「そ、そこら中に人骨が転がっているんですけどー!?」
「うわ、スケルトンと戦いそうな雰囲気・・・・・」
「しっかり破壊不能オブジェクトだぁ・・・」
「古代都市だから昔住んでいた人の痕跡も残っているのもおかしくないけど、この数はおかしくないか?」
「・・・・・なんか、戦った後に死んだって感じじゃない? ほら、骨に酷い損傷」
「だとしたら何と戦ったって話だぞ。この地下の中でさ」
至る所に骨が、人骨が転がっていた。黄金を覆っていた石壁が剥がれている建造物にはそれ以外何一つ損傷していない。人と人同士が戦って殺し合ったとしか思えない風景だこれは。
「白銀さんが言ってた通り、呪いで殺されたとか?」
「殺人ウィルス、とかないか。地下だし」
「ウィルスだとしても、もう死んでるでしょ。何千年も経過しているならさ」
考察する声を聞きながらフレイヤを召喚すると、可愛く鼻をヒクヒクさせて何かの匂いを嗅げれたようで目が輝いた。
「フレイヤ、何か感じたりするか?」
『とっても居心地がいいにゃ! そこら中に恐怖が染みついていてここに居るだけでもお腹が膨れるにゃ!』
魔獣でも感じる恐怖がまだ残っているのか。俺の真似をして契約したヘルキャットを召喚する仲間達は警戒する。
「じゃあ、一番美味しそうな臭いがするところってあったりする?」
『探してくるニャー!』
螺旋を描きながら楽しそうに飛ぶフレイヤに続いて他のヘルキャット達も主から離れてどこかへ行ってしまうので、追いかけていく仲間と一緒についていく。
「もしかしたらレイドボスがまたありそうだな」
「だとしたら―――って白銀さん、誰と連絡しているんで?」
「砂漠で共闘した戦友たちだ。念には念をだ」
にしても速いなヘルキャット。もう姿が見えなくなった。先に走り出した仲間が追いかけるのを諦めて足を止めたので俺達も―――。
「何だこいつ等!!!」
「どこから湧いてきたんだ! 迎撃するぞ!!」
「白銀さん、近くにいるなら気を付けてくれー!!!」
耳朶を刺激する叫び声に弾かれるように俺達は、その声の方へ振り返り仲間と互いに目線を交えて頷いてから動いた。駆け出して事件が起きたと思われる場所へ近づくにつれ、戦闘音が聞こえて来た。だが―――。
「「「ウヴァアアアアアアアアアア!!!」」」
「「「「っ!?」」」」
肌の色が毒々しく変色したNPCのなれの果てが俺達に襲い掛かって来た!
「【咆哮】!」
ホームラン王の称号でノックバック効果が付与される。叫んだ衝撃を受けて吹っ飛ぶ敵を見つめ、いつの間にか敵に囲まれていたことに俺は苦い顔を浮かべる。
「白銀さん! なんだこいつら!?」
「俺も知りたいところだ! が、古代都市が滅んだ理由がわかった!」
「理由は!?」
「生物災害! こいつらに襲われて古代都市の住人が滅んだ! 攻撃を受けたら呪いを受けると思った方がいい! とにかく、この都市から脱出する!」
「「「「了解!」」」」
幸い、こいつらはレベルが低いし動きが遅いもの数の暴力に屈しかねない。一々足止めされて戦うのもよくないだろう。
「【海竜人】!」
そして空色のナイトドレスを装着!
「凍れ」
俺を中心に満開の花のように氷が生成して『ノロワレ』というモンスターを氷漬けにして、粉砕して倒す。
「ついてきなさい。他の者達と合流する!」
「「「「はい、魔王様!」」」」