バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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月と闇神

 

「ほう、ハーデス・・・これまた珍妙な物を手に入れたものだな!」

 

それから色々と手を出してアップデート直前の日。そういう割に目を輝かせるラプラス。豊満な身体に改造した彼女からの感想の催促がないから特に何も言わない。彼女とゼロを案内したのは日本家屋の地下施設、宇宙戦艦を収容するラボ。

 

「これで宇宙に行けるらしい。が、そのためには人手が必要だけど揃っているから問題ない。―――行ってみるかラプラス?」

 

「もちろんだ。是非ともこの目でこの世界の全貌を拝んでみたいぞ」

 

「そう言ってくれると思って、もう他のみんなも船に待機しているぞ」

 

当然だが、宇宙戦艦を購入したことをギルドのみんなに教えたら、宇宙に行こう! とお祭り騒ぎになった。先にメンバーを宇宙戦艦に案内させて艦内を慣れてもらった。デッキに配置されたロボットの操縦を懸けてじゃんけん大会もしていたな。

 

二人をメインブリッジに案内して、待機してもらっているイッチョウ達が俺に振り返った。

 

「首尾はどうだ」

 

「動かし方は何とか覚えたよん」

 

「武装の種類と扱い方もセレーネと覚えたわ」

 

「使う時がないことを祈るけど、使ってみたい気持ちが湧いちゃうよ」

 

「白銀さん、こんな大役を任せてくれて心から感謝を・・・・・!!!」

 

「マスター、いつでも発進できます」

 

感涙を流す前世が戦艦大和以外は何時もの感じで俺からの指示を待つ。サイナに艦内放送をするというと準備を整えてくれた。

 

「宇宙戦艦に搭乗している諸君に告げる。これから俺達は宇宙へと向かう。全員、衝撃に備えたり何かに掴まっているようにしてくれ。まだ動かしたこともないので安全で優しい運転は出来る保証はない。ロボットのパイロット達も同様だ。くれぐれも気を付けてくれ。―――では、ゲートを開け」

 

「了解! ゲートオープン!」

 

機械で覆われた空間の天井が轟音を立てながら開いて光が差し込んでくる。次に宇宙戦艦を発射するカタパルト式のコースターが天へと伸びる。

 

「宇宙戦艦全てのシステムオールグリーン、異常なし!」

 

「メインエンジンも異常なし!」

 

「了解。では宇宙戦艦・・・・・名前は『ミネルヴァ』にしようか」

 

「名前の由来は?」

 

当然のように気になったか訊かれたので当然のように答えた。

 

「ローマ神話の女神の名前だ。音楽・詩・医学・知恵・商業・製織・工芸・魔術を司り、知恵の女神、 戦争の女神、芸術の女神と象徴されているからな」

 

「へぇ、私達のギルドみたいじゃない? 鍛冶がないのは残念だけどそういう由来があるなら賛成だわ」

 

「うん、いいんじゃない? 名前も悪くないよ」

 

と、賛成派が殆どだったので水瓏に続く二隻目の戦艦の名前はミネルヴァになったところで―――。

 

「前世は戦艦大和副艦長、号令言っていいぞ」

 

「ありがとうございます! ふぅ―――ミネルヴァ、発進!!!」

 

「発進!!」

 

メインエンジンのブースターに火が点き、凄まじい推進力を発生させながら蒼天へ飛ぶそのG、圧力がブリッジにいる俺達にも激しく伝わる。

 

「乗ったことはないけどスペースシャトルに乗った気分ー!!!」

 

「凄い揺れね・・・!」

 

「大気圏突破まで後のどのぐらい?」

 

「数分後じゃないか? まぁ、この戦艦も艦長席に座っているプレイヤーのスキルとステータスが反映されるから・・・【超加速】!」

 

さらに加速させて地上が見えず大陸として見えなくなるほどの距離まで飛行して、あっという間に宇宙空間へと躍り出た。

 

「はっはー! 来たぞ宇宙空間に!」

 

「反重力を設定しているけどどうしよっか? 無重力の体験をさせてあげる?」

 

「そうさせてやろうか。ただし、デッキと待機部屋や皆の部屋限定な」

 

「りょうかーい。みんなーこれから無重力にするけど、初めての体験だからデッキと待機部屋やみんなの部屋限定で無重力を体感して体の動かし方を独自で慣れてねー」

 

艦内放送でギルドメンバーの皆に告げるイッチョウ。

 

「で、これからどうするの?」

 

「決まっているだろう。月に向かうぞ!」

 

「どれぐらいかかるんだっけ?」

 

「リアルじゃあ四日ほど掛ったぞ。が、NWOの場合だとさらに短縮される筈だ。ということでドレッド、【超加速】と【神速】を頼んだ。AGIを爆増してやるから」

 

「だと思ったぜ」

 

そして俺の読み通り、俺達を乗せる『ミネルヴァ』は一日も掛からず3時間ほどで海がある月面に到着した。何か巨大な万神殿みたいな建造物があるんだけどあれはなんだ?

 

『プレイヤーが初めて月に到着しました。称号【神世界を超越し冒険者】を授与します。さらに称号【宇宙飛行士】、【全プレイヤーの先駆者】、スキル【月歩】を授与します』

 

 

称号:神世界を超越し冒険者

 

効果:ステータスポイント+300

 

 

称号:宇宙飛行士

 

効果:宇宙服(破壊不能)を授与

 

 

称号:全人類の先駆者

 

効果:スキル【次元転移】を授与

 

 

中々いい報酬が貰えた! 100レベル分のポイントが手に入るなんて俺だけじゃなくて他のプレイヤーにも嬉しい報酬だろう!

 

 

【次元転移】

 

プレイヤーが一度訪れた場所なら一日十回までMPを消費することなく移動することができる。また他のプレイヤーを同じエリア内であれば転移が可能

 

【月歩】

 

MPを消費せず宙を地面のように移動可能

 

おっと・・・・・エムさんの協力が必要じゃなくなってしまったが?

 

 

「便利なスキルが手に入ったなドレッド」

 

「宙を駆ける暗殺者かぁー。ちょっと満月を背に横切るよう走ってくれない? スクショ撮るから」

 

「やらねぇよ!」

 

「さっそく月の上を歩きに行こうか。気になる神殿もあるしね」

 

「前世は戦艦大和、お前も行くか」

 

「いえ、俺は残ります! 青い星を見ながらコーヒーを飲むのが夢なので!」

 

いつも間にか艦長が被るような帽子と上級の船員の服にチェンジしていた副艦長。お前があの某アニメのファンだということが分かってしまうが、笑わないからな。

 

「全メンバーに告ぐ。これから月面で散歩をするぞ。宇宙服を着て甲板に集合だ」

 

艦内放送をして仲間達に促す。

 

「じゃ、何か遭ったら報告してくれ。こっちもそうする。艦長席は預けるぞ」

 

「わかりました。いってらっしゃいませ!」

 

ブリッジを後にする俺達の背後で歓喜の奇声が聞こえてくる。

 

「彼、人生を満喫しているんじゃない?」

 

「いい事だと思うよ。今死ぬことになっても幸せの中で永眠できそうだ」

 

通路を歩きつつ宇宙服を着込む。サイナは征服人形であるが念のために宇宙服を着てもらう。ここまで連れて来たリヴェリア達NPC全員と合流して宇宙服を着てもらい、甲板に足を運んだ。

 

俺達が最後だったようで無重力の状態の通路と外の宇宙空間と繋がっている出入り口に潜れば、宇宙服を着たメンバーが待っていてくれた。

 

「待たせた! それじゃあ、月を踏むぞー!」

 

「「「「「おおおおー!!!」」」」」

 

甲板から飛び降りるも、無重力の為にその速度はとてもゆっくりで足が付くまでには体を回転させたり、捻ったりする時間はあった。それを経て砂を踏む感触が宇宙服の足の裏から感じたところで。

 

「わははー! 月だっ! 月を踏んだぞっ! 体が軽すぎて笑えるー!」

 

「リアルの月と宇宙もこんな感じだろうなー!」

 

「スクショを撮ろう! スクショ! あの星にいるプレイヤー達に自慢するんだ!」

 

「地球を背景に後で集合写真もしましょうよ!」

 

「賛成だー!」

 

身体が翅のように軽くなった体感を面白おかしく笑うプレイヤーや、記念撮影をするプレイヤー。砂や石など月から採取、採掘するプレイヤーが続出する。

 

「リヴェリア、アカーシャ、ラプラス、白雪、サイナ。どうだ、あれが俺達の星だぞ」

 

「綺麗な青い星です・・・・・何時までも眺めていたいです・・・・・」

 

「素敵な光景ね・・・・・まず地上からじゃあこんなの見ることができないわ」

 

「魔王として生きてから、これほどまでの絶景は初めてだ。ここから見ればまだまだ世界は広いのだな」

 

「奇麗・・・・・!!」

 

「この光景を全ての征服人形とマザーと共有したいです」

 

彼女達と一緒に青い星を眺めていれば、機械が動く音が聞こえて来た。振り返ればデッキから出てきたのだろうロボットを操作する仲間達も遊び始めていた。

 

「ところでラプラス。あの神殿は何だと思う?」

 

見掛けたからここに降り立ったわけなんだが、魔王の先輩は俺の質問に対して神殿を見ながらこう答えた。

 

「行ってみなければわからないが・・・・・可能性があるとすれば・・・・・いや、やはり直接向かうべきだな」

 

「そう言うならそうしよう。俺は行くけどみんなは?」

 

「私は行くよ。なんか、他人事じゃないことが起きそうだし」

 

「ハーデス様に付き従います」

 

「私は、もう少し眺めています」

 

「では私も、星を眺めていたいので白雪様と一緒にいます」

 

「私は行くが、ゼロ。お前は念のために二人と一緒に居て守ってくれ」

 

「かしこまりました」

 

二手にわかれて気になる建造物へ目指す俺達に気付き、ついてくるプレイヤーを追い返さず扉がない白亜の万神殿に潜る―――。

 

「失礼しまーす! 入ってもよろしいでしょうかー!」

 

「え、誰かいるのか?」

 

「いや、念のために言っておかないと。無断で不法侵入したから迎撃されかねないし。こんな立派な神殿が月にあるんだから可能性を考えておかないと―――」

 

前に一度止まって神殿に向かって挨拶を掛けた。その時、ゾクッと緊張感が走る似たような感覚が覚えた。急に黙り込む俺だけでなく、ついてきた仲間達も顔を強ばらせるか、当惑の表情で周囲を見回した。

 

《殊勝な心掛けの者だ。それに免じて我が敷居に入ることを許そう。参れ我の下へ》

 

重圧を感じながらも無機質な声の女性から許可を得て、初見からコミュニケーション成功してガッツポーズをする俺に回りから拍手が送られた。

 

「では、改めて失礼しまーす!」

 

「「「「「「失礼しまーす!!!」」」」」」

 

俺に倣って仲間達も大声で言ってから神殿に入った。等間隔で並ぶ石柱に囲まれてる他、柱の隙間から地球が覗ける以外巨大な石の玉座しかなく、そこに座っている巨人より大きな白くて長い足、視線を上に変えれば肘を杖代わりにして頬を支えている女性が俺達を見下ろしていた。宇宙の輝きを髪にしたような黒の長髪、濡れ羽色の瞳。星の輝きを服の中に閉じ込めたような濡れ羽色の衣を纏っていて、格好いいと思わされた。

 

《あの星にいる我が含む七人の神よりも、この我のもとへ来るとは愛おしい限りよ。いかなる生物でもこの空間に来ることはないし、死を甘んじるしかないこの空間に、世界を創造してから初めての客人である》

 

続けて彼女は告げた。

 

《よくぞ来たな、異邦の者達よ。我が名は闇神。あの世界を創造した七柱の主神の一人であり、闇と無の力の根源でありそれに属する者らに崇められる神よ》

 

闇神・・・・・! NOWの創世神話に出てくる一柱とここで会えるとは!

 

《先ほども述べたが一番早く我がもとへ来るとは実に愉快である。期待していなかった分、実に滑稽よ。この死の空間に抗う生物はいないし、来る術もなければ我らの存在を知ろうとも、お前達のように我等を見つけることはなかった上にしようともしなかったからな》

 

「そうだったのか?」

 

《うむ、故にとても気分がよい。しかも色濃く我が力をその身に宿している生物が我がもとへ来てくれたのだ。歓迎しないわけにはいかんな》

 

ラプラスとアカーシャ、それにベンニーア。プレイヤーも含まれているなら俺とイカルとメイプルもかな? 闇神は指をパチンと鳴らす。

 

『スキル【無呼吸】を取得しました』

 

 

【無呼吸】:呼吸が不可能な場所で使用すればスタミナがなくなるまで活動が可能になる。

 

 

このスキル・・・もしや! 宇宙服を装備から外すと恐らくダメージが入るだろう。しかし俺ならばどうだ? 【無呼吸】を使って検証してみると・・・HPが減らない。

 

「あ、意外と大丈夫だ」

 

「「「「えええええええええええええ!?」」」」

 

「俺も試しに脱いでみよっと・・・・・げ、【無呼吸】でもHPが減っていくー!?」

 

「こっちも同じだ! 白銀さんの防御力並みじゃないと大丈夫じゃないのかよ!」

 

「白銀さん防御力をプリーズ!」

 

てんやわんやと騒ぎ出す仲間達。すると闇神が面白おかしそうに笑いながら、また指を鳴らした。何をしたのか分からないが、仲間達がピタッと騒がなくなった。

 

《さすが我々を認めさせた者。一つの切っ掛けがあれば我と対等に立てるとは面白いではないか。が、他の生物はまだまだ・・・世界の環境と同じにした我が敷居の中であれば、そのような不細工な物を着ずともいられるようにした。感謝するがいい》

 

「「「「「闇神様、あざーっす!」」」」」

 

《あざーっす・・・・・?》

 

あ、そういう言葉は知らないんだな。宇宙服を解除した仲間達の感謝の言葉の意味が分からないとポカンとした闇神を見て察した。

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