2本目の神聖樹の場所をイッチョウから聞き出した翌日の5日目。出発から3時間後。
俺たちは神聖樹に向かいながら、激闘を繰り広げていた。今も1体のオークが俺に襲いかかって来ている。
オークの外見はかなり悍ましかった。目つきの悪いブタの顔に、2メートル近い上背と、だらしない贅肉ダルダルの体型。薄汚れたピンク色の肌はリアルだ。半裸のオークが迫って来る姿は、セクハラ扱いになりかねないのではなかろうか?走る度に揺れる汗だくの贅肉が・・・・・。
「美味しそうだな・・・・・」
「フゴッ!?」
こいつらがいなきゃ実食していたところだ。非常に残念だが今回は諦める。振り下ろしてくる棍棒を短刀で軌道を逸らし地面に叩きつけさせると、棍棒に乗って跳躍し水平に喉を切り裂いて倒す。
「よし、全部倒したな」
「サイナ。周辺にモンスターは?」
「500メートル先にモンスターの反応が複数ございます」
「そこまでわかるのか?」
「種類までは把握できないが数と距離だけならな」
「白銀さんのパーティは凄すぎるな。完璧なんじゃないか?」
「完璧かどうかは分からないが先を進もうぜ」
それからさらに30分後。
「つ、着いたー!」
俺たちは道中の激しい戦闘に遭いながらも、なんとか神聖樹へと続く洞窟へと辿りついていた。
「お疲れ様です」
「そっちこそ、お疲れ」
「いえいえ、元々はこちらから頼んだことですから」
グラシャラボラスの使徒を倒したおかげで、ここから先はモンスターが一切出現しないらしい。
とは言え、一応コクテンの仲間が前後を挟んで警戒してくれている。俺たちは散歩気分で洞窟を進むだけだ。後は、時おりオルトが採掘をするくらいかな。洞窟を抜けた先は、1本目の神聖樹の時と同じで森となっていた。そして森の中央に花畑があり、そこの中に巨大な樹木が立っている。
その根元には、巨大な獣が横たわっていた。それは巨大な猪だ。この神聖樹の守護獣、ガーディアン・ボアだった。
ガーディアン・ボアはコクテンが近づくと、ゆっくりと立ち上がってその場を譲る。俺たちが樹に用事があると分かっているんだろうか?その眼は非常に穏やかで、この巨体にも関わらず怖さは全くない。雰囲気はガーディアン・ベアに似ているな。
「枯れそうな感じとかも、1本目の神聖樹と同じか」
葉に元気がなく、幹の一部がひび割れているし、確実に危険な状態だろう。フェンリルが悪魔を倒したはずなのに、枯れたままと言う事は、やはり樹を復活させるには他の要因が必要ってことか。
「とりあえず1本目の時と同じ様にやってみよう。皆、頼むぞ」
「ムム!」
オルトは俺が渡した高級肥料を木の根元に撒いていく。もしかしたら高級肥料じゃなくても平気なのかもしれないが、1本目と同じにしといた方が良いだろうしな。勿体ないが、ここは仕方ない。
「――♪」
ゆぐゆぐは樹魔術をかけているようだな。成長を促進させる術と、植物を回復させる術、両方使っている様だ。
「剪定開始します」
「クックマ!」
どれだけ効果があるかは分からないが、サイナの剪定と、クママの栽培も一応使っておく。効果が無くとも、悪影響はないだろう。
そうしてしばらくうちの子たちに任せていると、守護獣がおもむろに立ち上がった。そして、その鼻先を神聖樹に押し付けた。
もしかしてこれは――。
俺がガーディアン・ベアが神聖樹を復活させた時の事を思い出していると、あの時と全く同じ光景が目に飛び込んで来た。
巨樹が青白く輝き、光を放つ。そして、蛍の様な光の粒が俺たちを包みこんだ。2回目なのに、思わず見とれてしまった。それくらい綺麗なのだ。
樹を見つめていると、お馴染みのアナウンスが聞こえてくる。
『死神ハーデスさんは既に、称号『神聖樹の加護(イベント限定)』を所持しています。死神ハーデスさんが樹魔法スキルを習得しました』
あれ?称号が貰えなかったな。いや、そこは良いんだが、樹魔法を習得したぞ。
ゆぐゆぐとリヴェリアと同じ何度も見た魔法だから把握している。
「おおお! 称号だ!」
「やった!」
どうやらチームを組んでいるコクテンたちも、無事に称号を取得できたらしい。おめでとう。
無事に神聖樹を復活させて村に戻って来た俺たちは、少し休憩した後にジークフリートやスケガワと共に今後の事を相談していた。まあ、俺はおまけと言うか、話を聞いていて時おり相槌を打つだけだけどね。
今は、スケガワが打った武器を皆でチェックしている所だ。俺はユニーク装備なので不要と遠慮しているのでイズ達の出来栄えの作品を見ず、オルト達にジュースを与えている。
「期待以上の性能だな!」
「数を揃えたら、普通に守護獣武器を手に入れるよりもいいんじゃないか?」
「1度作って勝手も分かったから、品質は1つか2つは上げられると思う」
コクテンの称賛。スケガワとしては鍛冶師のこだわりとして、混ぜる物をカッパーインゴット以外にしたいらしい。なので、次に作るまでにプレイヤーから素材を集めるつもりなんだとか。
「俺の持ち出しでも良いんだが、アイアンとブロンズは、全部に使える程の量が無いんだよな。出来れば錫鉱石辺りを持ってるプレイヤーから買い取りたいところだな」
「錫?錫鉱石が必要なのか?」
錫鉱石なら少し持ってる。と言うか、2つ目の神聖樹につながる洞窟の採掘ポイントから普通に入手できたんだけど。それを教えたら、スケガワが考え込んでいる。
「そうか・・・・・。やはり、あの樹海は第4エリアと同レベルの場所になっているのかもな」
錫鉱石は第4エリアに採掘できるポイントがあるらしい。そのままでは銅よりも弱い雑魚金属なのだが、銅と混ぜると青銅に変化し、強度が上昇するらしい。
「鍛冶師仲間を連れてちょいと採掘してくる」
「護衛も付けよう」
「頼むよ! ふっふっふ、腕が鳴るぜ!」
錫にそんな使い方があったとは。銅鉱石は畑で採掘できるし、イベントが終わったら青銅装備でも何か作ってみるか?
居てもたってもいられず、鉱石の採掘に向かったスケガワが抜けて、次に探索の話に移った。マップを見ながら、グラシャラボラスの居場所がどこなのか相談している。
「じゃあ、神聖樹の周辺に、あの黒い靄に包まれたモンスターは出現しなくなったんですね?」
「僕が確認した限り、出現しなかったね」
「1本目の神聖樹の周辺では完全に姿を見せなくなったわ」
「2本目の神聖樹があった樹海周辺で戦闘をしてたパーティも黒モンスターがいなくなったと報告して来たよ。中には、目の前で靄が消えて、普通のモンスターに戻った瞬間を目撃したパーティもいたみたいだ」
「やっぱりあの黒い靄は中ボスたちが広めていたってことでしょうか? 白銀さんはどう思います?」
「まあ、そうなんじゃないか?中ボスと言えど中ボスだ。何かの役割を担ってなきゃおかしい話だ」
「ですよね」
となると残りはグラシャラボラスだけなのだが。以前、発見した報告は届いていない。
「ただ、この辺にはまだ黒い靄を纏ったモンスターが出現するようだよ?」
「あ~、村から一番離れたエリアね」
「そこは完全に第4エリア相当の敵しかでないから、ほとんど探索の手が入っていない場所だね」
「だが、何かがあるんじゃないですか?」
「そうだね。例のグラシャラボラスがそこに居る可能性があるかもしれない」
「じゃあ、死に戻り覚悟で強行偵察をした方がいいかしらね~」
第4エリア並の敵がうようよ居る場所に突っ込むか。どんなモンスターがいるのやら。
「白銀さんはどうします?」
「うん?んー・・・・・いや、俺は行かない方針で」
「えー!一緒に行こうよ!」
「2本の神聖樹に関しては白銀さんの尽力が大きかったし、今回も協力を得られたら心強いんですが・・・・・」
マルカは絶対にクママと一緒にいたいだけだろう!
「偵察するだけなら大勢行く必要はないだろ。このサーバーにいるプレイヤー全員に配信を見てもらってさ、足の速いプレイヤーを行かせて何か見つけたら情報を共有すればいい。配信中でもお互い会話はできるしさ」
「なるほど!配信はそういう使い方も出来るんだったな!」
「でも、偵察に行ったプレイヤーが即レイドボスと戦うことになったら?」
「死に戻り覚悟で強行偵察するつもりでいたんだから大勢で行こうが行くまいが変わりないだろ」
ぐうの音も出ないコクテン達は何も言えない他所に、ペインは主張してきた。
「なら、俺達が行こう。ジークフリート達は彼の提案で俺達の配信動画を見て作戦を考えて欲しい」
「ペインさんがそう言うのであれば・・・・・」
「言い出しっぺの俺も空から偵察してやるよ」
「はいはーい、私も【AGI】が高い方だから偵察に行くよん」
イッチョウも行くと挙手する。
「ただ、本当に戦いがすぐ始まる可能性もあるからジークフリート達は村と黒い靄を纏ったモンスターが出現する森の中間位置のここまで移動、待機してもらえるか?あくまで念のためだ」
異論はないと頷いてくれたジークフリート達。そして俺とイッチョウ、ペイン一行は村を後に目的の森へと移動した。そうなったら、オルト達を村に残ってもらいたいので―――。
「では、オルト達に重要な任務を与える。よーく聞いてくれ」
「ムム!」
オルト達が横一列に並んで後ろに手を組む俺を真似し、姿勢を正しくして立つ。メリープやミーニィはその場で座って俺を見上げるしかできないが。
「俺はしばらく森にミーニィを連れて探索しなければならない。その間オルト達諸君等にはあそこで料理や薬を作っているプレイヤー達がいるだろう?彼等彼女等の邪魔にならない程度でお手伝い、または応援をしてほしい。それだけで皆の頑張りが更によくなる。それはオルト達諸君の頑張りが必要だ。できるかね?」
「ムムッ!」
任せてくれ!と力強く頷くオルト達に向かって軍人の敬礼をする。
「いい返事だ。では、諸君等の頑張りを期待しているぞ」
「ムム!」
「キュイ!」
「―――♪」
「クマッ!」
「メェー!」
オルト達も敬礼、出来ないメリープとミーニィは鳴いて応じる。
「サイナはオルト達のフォローしてくれるか。主にプレイヤー側にオルト達の嫌がるようなことをさせない監視だ」
「かしこまりました。マスター。必要あらば私もマスターの勝利の為にお手伝いをいたします」
「頼んだ。それとオルト達の日に一回の食事もな」
俺の配慮でオルト達はそれぞれプレイヤーに近づいて自分達なりの声援をすると、男女問わずオルト達の応援に黄色い声が、歓喜の声が上がってきた。
「オ、オルトちゃんが私を応援してくれるぅっ!」
「クママたんの手が、手がぁっー!」
「ふぉおおおおお!ゆぐゆぐちゃんの笑顔で元気百倍だぁー!」
「メリープちゃん、可愛いい!」
・・・・・大丈夫だろうか。このイベントが終わったら全力で労うか。と後ろ髪を引かれる思いでフェンリルまで一緒に来るなど、ミーニィの背中に乗って空から目的の場所へ移動する俺とAGIが低いドラグとフレデリカ。地を駆けるイッチョウ達は途中モンスターと遭遇しても走りながら倒すか無視して移動し続けた。
「おー、走るより速いな。ドラゴンの背中に乗っての移動だなんて楽でいいぜ」
「そうだねー。風邪も気持ちいいし」
「ミーニィ。何か感じるか?」
「・・・・・グルルッ!」
村からかなり移動しているがグラシャラボラスの姿は見当たらない。だが、【索敵】のスキルを駆使してるミーニィは唸り声を上げた。次の瞬間。森から天を衝くほどの巨大な黒い柱が立ち昇った!
ガォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
黒い靄を発する柱から獣の咆哮が村まで轟いた。あーはいはい、巨大悪魔と勝負する流れだなこれは。
程なくして指示したわけじゃないのに降下するミーニィ。降り立った森の中にあったそれを俺は視界に入れた。遅れてイッチョウ達もやってきた。
「もしかしなくてもだよね」
「間違いなくだな」
「だけど、直ぐに戦闘が始まるわけじゃなさそうだな」
俺達の目の前には結界らしきものに閉じ込められているグラシャラボラスと赤いマーカーで表示されている存在がいた。そして更には黒い砂時計があって現在進行形に下へ砂が流れ落ち続けている。
「破壊できそうな感じでもないねー」
「あからさまに時間経過しないと始まらないやつだなこれは」
「なら、村に戻ろうぜ。配信動画で他の奴らもこの光景を見て知っただろうからよ」
ドラグの意に賛成する俺達、踵を返してこの場から離れようとしたその時だった。四方八方から黒い靄を纏うモンスターの群れが襲ってきたのだった。それはすなわち俺達にとっては―――。
「ポイントの入れ食いだぁー!」
「向こうから来たんなら仕方がないよな?」
「うんうん。これはしょうがないよねー?」
ということで皆仲良くモンスターをこれでもかと言うぐらい倒しまくったその後は、グラシャラボラスの特大の咆哮の直後、黒い柱の動きが一段と激しくなった。柱の表面が泡立つように蠢き、何やら突起の様な物が生えて来た。
生物の腕っぽいか? 上の方は何かの頭のようにも見える。いや、見間違いじゃない。黒い霧の柱は――もう柱とも言えないか。すでに黒い彫像のように見えるな。明らかに人型を模し始めていた。
「粗方片付け終わったよー」
「そっちは?」
「こっちもだ。アレに攻撃は?」
「無理だろ。ゲームやアニメ的に言うと敵同士の変身する間は手を出さない、出せないお約束だから」
「お前、よく知ってるな」
そりゃあ、変身に関しては熟知してるもんで。
「それにしても、この砂時計も明日になったら全部流れ落ちてる感じかな」
「それも含めて今、生中継しているから情報は共有している」
生配信中なので、偵察する前にジークフリート達には配信を見るよう村にいるプレイヤー全員に言って回ってくれたから情報は知れ渡っている筈だ。動画の画面は様々なコメントが流れている。中にはこっちに来るってプレイヤーも浮上している。
「ところで私達はこのまま帰る?」
「いてもしょうがない。ジークフリートのところに戻ろう。それともこのままポイント稼ぎでもするか?」
「探すのか?」
「いーや、向こうから来てもらうのさ。【芳香】」
モンスターを誘引するスキルを発動。程なくして黒い靄を纏うモンスターが大量に現れた。
「こんな感じです。【挑発】」
「レベル上げに持って来いのスキルだねー。ペインさん、どうします?てい!」
「・・・ハーデス、もっと集めてくれないかな」
「前線の攻略組らしい答えだことで!」
その日は何十回も【芳香】を発動して百匹以上は黒いモンスターを狩り尽くしたのは言うまでもない。恐らく他のプレイヤーよりもポイントを稼いだと思うが、結果は果たしてどうなっていることやら。
「では、第一回グラシャラボラス対策会議を始めます」
無理矢理議長役を押し付けられたコクテンの言葉に、パチパチと拍手が起きた。
俺たちが今居るのは、冒険者ギルドの会議室だった。頼んでみたら、快く場所を提供してくれたのだ。
マルカたち曰く、日々依頼をこなして、好感度が上がったからではないかと言う事だった。言われてみると、イベント開始時に比べて受付の女性の態度も柔らかい気がする。
会議室には十数人程の人間が集まっていた。
実質的な最高戦力であり、他のプレイヤーからも一目置かれているコクテンとペイン。サーバー貢献度が3位で、サーバー順位優先組のまとめ役であるジークフリード。ボス戦などで活躍し、このイベント中に名を上げたマルカ。サーバー貢献度が5位な上、守護獣装備を作り上げるトップ鍛冶師のスケガワの他イズ、セレーネ。
他にも戦闘、生産で活躍している上位パーティのリーダーや、プレイヤーが顔を揃えていた。そして、そこに何故か俺もだった。
しかも、会議の進行役であるコクテンの隣と言う上座的な位置である。逆側にはジークフリードが座っていた。ここはペインがいるべきだろうにと、そのペインを見やると俺の隣に居座っていた。
「まずは、おさらいとしてこのスクショをご覧ください」
コクテンはこういう場に慣れているのか、スラスラと会議を進行していくな。
グラシャラボラスの前に置かれている砂時計の説明と、落ちる砂の量から導き出された砂が落ち切る日時の考察が語られる。
その後、最初から全力で挑むかどうかの相談だ。通常の様に何度か戦闘を挑んでパターンを解析するか、一か八か挑むか。明日は6日目なので、一か八か挑んだ方が良いのではないかという意見も出たが、明日はパターン解析、明後日に決戦という結論に落ち着いた。
ついで、戦闘のための準備の話だ。スケガワ達の守護獣装備は、戦闘系パーティに配られることとなった。話し合いは驚くほどに短かったな。インゴットを手に入れて来たコクテンたちとマルカたちが、称号があるから自分たちには必要ないと辞退したことで、他のプレイヤーもわがままを言いづらかったんだろう。
あと、一応俺も武器を辞退した。俺の場合は持つ意味が無いからスケガワに押し付けただけなんだけどな。そんな感心した様な目で見られたらむず痒かった。
次はグラシャラボラスの攻撃方法の考察である。勿論、グラシャラボラス自身と戦闘したことはないが、その姿は俺たちが戦った中ボスの変身前の姿と非常に似通っている。俺の知らないところでいつの間にかコクテンたちが戦った2体目の中ボスもそっくりだったらしい。
そのことから攻撃を予想できないかと考えたのだ。その結果、HP半減後の変身と、黒い霧を放つ範囲攻撃が共通しているだけだった。
中ボスの変身後は犬と猫だったので、グラシャラボラスもかろうじて動物っぽい姿に変わるだろうとは思われたが、その程度だ。これは出来るだけ回復の準備をして行って、その場で対応するしかないだろうな。
最後に、支援についてだ。
「白銀さんの提案でバフ効果付きの料理は早い段階で潤沢です。ポーションも全員分に回せるだけの量産ができてます。何よりは白銀さんの従魔達の応援でモチベーションの維持が出来たのが大きかったです」
「誰一人暴走しなかったのが幸いだったよ」
「それはまぁ・・・・・」
名も知らぬプレイヤーが神妙な顔を浮かべた。
「白銀さんの従魔に粗相なことしたその日から他のプレイヤーから罵詈雑言の嵐を食らうし。何よりプレイヤー同士が牽制し合ってたのが暴走にならなかった原因でもあるから」
どんだけうちのオルト達はアイドル並みの人気があるんだ。・・・・・オルト達の外出控えようかな。
「ジークフリート、コクテン。グラシャラボラス戦に戦闘できるプレイヤーは?」
「300人中250人だ。他50人は生産職のプレイヤーだけど、少し懸念があったが今は問題ない」
「それは?」
ペインの問いにコクテンは理由を打ち明けた。最初この部隊分けで、色々と揉めたらしい。コクテンやジークフリートに協力している者だけではなく、自分たちのパーティだけでイベントを進めて来た者もいるからだ。こっちに協力しろという話は、彼らにとっては軍門に下れ、下に付けと言われている様に感じたんだろう。最初は協力はしないと言ってきたのだ。
「ああ、そういう。攻略組にも少なからずいるんじゃないか?自分勝手に動くプレイヤーは」
「というか、普通にいるよ。何度もフレンドリーファイアしちゃって喧嘩になった話なんて珍しくないしね」
「きっと他のサーバーにもいるだろう。でも、この29番サーバーが貢献度1位なのはそういうことするプレイヤーが限りなく少ないからだ」
それについてジークフリートは安堵した笑みを浮かべていた。でも、だからこそ・・・・・。
「最下位のサーバーにいるプレイヤーが哀れだな」
「仕方がないとしか言えないね。話は戻すけど最終的には協力に応じてくれたよ。皆が目標を目指して一致団結すれば勝てない相手はいないさ」
素で格好いいことを言うなジークフリートめ。
「ハーデス。参考に訊きたい」
「なんだペイン」
「森の奥深くでグラシャラボラスと戦うことは確定だ。そこでグラシャラボラスを倒しきることはできるかな?悪魔の存在を誰よりも早く示唆した君の考えを聞かせて欲しい」
「そうなのか?」
「凄いな白銀さん!」
称賛されることでもないがペインの質問に対してグラシャラボラス戦の悪い方向を、思考の海に飛び込んで答えを見出す・・・・・。
「んー、中ボスと同じHPの減り具合によって行動が変わることを考慮すれば。あのボス悪魔の巨体だ。この村の破壊の蹂躙をする最悪の事態を考えるべきだな。村の破壊具合によって順位が変動するかもしれない。これが最悪の事態だ」
周囲のプレイヤー達に言い聞かせる風に語った後、ざわざわと隣人同士顔を見合わせて話し合いを始めたのだった。
「納得のいく話だな。となると、250人を分けて臨機応変に村に移動するグラシャラボラスの対応をするべきか?移動するなら第一陣と第二陣に分けるべきだ」
「戦闘員が全員とは言わずとも死に戻りはする。村から再出撃してもらうもグラシャラボラスがいるところまで戻るのも時間が要するからそれがいいかもな」
「長い戦闘とグラシャラボラスの戦い方に恐怖して戦いに復帰できないプレイヤーもいてもおかしくない。この際、生産職のプレイヤーにも戦闘に出てもらうか?特に鍛冶師は【投擲】のスキルを取得できるし」
「いや、全員出張らせるわけにはいかないだろ。戦える生産職プレイヤーだけに選別するべきだ。それとヒーラーの人数も割り振り訳ないとな」
俺の発言から明日の戦いに向けての話し合いが発展して、俺とペインに鍛冶師組は会話に入れない状況となってしまった。
「第一陣と第二陣、俺なら第二陣にするな」
「理由は?」
「第二陣まで移動してきたグラシャラボラスの足止めをしている間、第一陣が引き返してくるまでの足止めをするためだ」
「なら、俺は第一陣に配属されるようお願いしよう」
ジークフリートとコクテンに俺達の要望を伝えると快く了承してくれたので明日に備え―――ペイン達の舌を唸らせる料理を今日も作って寝た。