バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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木像と水臨樹の成長

 

全員分の信仰と供え物を捧げてマイホームに戻った。カグヤに神樹の伐採の了承を求めると意外なことにあっさり許してもらえた。神樹の前に立って再度伐採しようとする。

 

「カグヤ、改めて聞くが神樹から材木として本当に確保していいのか? 切らないでくれって懇願したのに」

 

「あの時は私が神樹の中にまだいたので一緒に切られるとダメなんです。ですが今は、大丈夫です。この子は丈夫な上、この畑の土には神の力、神力が宿っています。それを神樹が切り出された部分を修復に使えば元通りに再生できますので」

 

それなら・・・・・せいや!

 

『神樹の木材を取得しました』

 

レア度、品質、共に最大の木材をゲット! 伐採ポイントは消失したがインベントリから出すと、長さ五メートル、寸胴の回りは五メートルはある丸太として手に入っていて、これならハナミアラシの社みたいな大きさぐらいなら余裕で作れそうと感想を抱いた。一日にこれ一本だけかと神樹に視線を向ければ、なくなっていた筈の伐採ポイントが復活していた。

 

「って、もう伐採ができるようになったのか」

 

『ここの畑の土が凄いからですよ。まだ数が必要ならばもっと集めて構いませんよ』

 

「そうか? それなら遠慮なく、ふんっ!」

 

そして、その日から麒麟の社をPSだけで作っていく。そんな俺に触発されたゆぐゆぐとウッド、クリス、カグヤまで何やら動きを見せたがそれを知るのは最後のお楽しみにしておこうと思った感想を頭の隅に置いて数日後。

 

いやー、我ながらこれは傑作だと思う。イベントにも間に合ったわ。

 

『できたのか? かなり凝った中々の出来映えの社ではないか』

 

「頑張った! 麒麟、どうだ!」

 

ハナミアラシより大きい社。扉付きで中には麒麟を象った木像が収まっており鳥居もセットだ。麒麟は社の前に立ち確認してから俺に向かって首を上下に振った。

 

『大変素晴らしい社です。あなたの想いが確と籠っているのを感じます。最後の仕上げとして私の神力を籠めます』

 

カッ! と社が光に包まれた同時に青いパネルが目の前に出てきた。

 

麒麟の中社を完成しました。設置の際は畑の四マスが必要です―――と

 

「麒麟、この社の効果って?」

 

『異邦人でいう経験値を捧げることで、捧げた度合いによってその者の畑の全てがよくなります』

 

「じゃあ、100の分の経験値を捧げたら?」

 

『この場の畑並みになります。加えて言いますが、旧大陸で所有している畑全てに同じ効果が得られますよ』

 

「なるほど」

 

それ、ヌルゲーになってしまうのでは? いやしかし、そこまで捧げたいプレイヤーはいないだろうし、もうそんなことしたいプレイヤーもいないだろ。これを聞いたタゴサック達はどんな反応をするか。

 

「ご主人様! 私達もできましたー!」

 

ゆぐゆぐ達が何やら自分達で作った木像を持ってきた。

 

「それは?」

 

「私は水臨大樹の精霊様の木像を」

 

「ウッドドラゴンを作りました」

 

「私自身! 傑作よ!」

 

「私もです。どうでしょうか・・・・・」

 

四人が抱えているのは、どれも高さ50cmくらいはありそうな木製の像である。彼女等が高々と掲げる像をよく見ると、本当に水臨大樹の精霊とウッドドラゴン(すげー似てる)、クリスとカグヤ自身(フィギュア並みの高い完成度)を象った物であるようだ。

 

「それぞれの樹木の素材で作った木像か」

 

畑に生えている樹木からは、枝や葉、木材が手に入ることがある。それは水臨樹と世界樹、水晶樹に神樹も例外ではなく、毎日ランダムでアイテムが入手できるようだった。ゆぐゆぐの木像を鑑定すると『水臨大樹の生成の木像』となっている。

 

「えーっと、インテリアじゃなくて、設置オブジェクト?」

 

「そうですよ」

 

「設置って、どこに設置できるんだ?」

 

「私が生まれた水臨樹にです。ウッド達もそうですよ」

 

そうなのか。しかし・・・・・ゆぐゆぐだけは農業地区の畑に植えてしまったからハブれてしまうな・・・。

 

「麒麟、前みたいに桜の木をこの家の畑に移したようにできないか?」

 

『いいでしょう。私の要望に応えてくれたお礼としてあなたの望みを叶えます。何を移しますか?』

 

「世界樹と神樹、水晶樹を農業地区に移動させる」

 

俺の要求に意外だったのか麒麟は首を傾げた。

 

『水臨樹の方ではないのですね?』

 

「あっちには霊桜があるし、ここの畑には劣るがあっちの畑も十分質がいい」

 

『あなたがそう望むのであれば、叶えて差し上げます。黄竜、手伝ってください』

 

麒麟が黄竜と協力して三つの大樹を農業地区の俺の畑へ一瞬で移してくれた。遅れて俺達も向かうとしっかりと三つの大樹が畑内にあり―――お隣さんであるタゴサックから質問責めを受けた。

 

「おい、いきなり巨大な木が増えたんだが。また何をした」

 

「ホームからここの畑に大樹を移してもらっただけだ。それにまだ本命じゃないぞ」

 

「本命じゃないって・・・何をする気だ・・・・・?」

 

「俺ではなく、樹精達がするんだよ」

 

把握したタゴサックは俺の畑に入り、麒麟と対面して何故かお辞儀をした。麒麟と黄竜は律儀にも水臨樹の側に移してもらってくれたおかげで、四人が並んで木像をそれぞれの樹木の根元に設置することができた。すると、像が緑、深緑、水色、黄緑に輝きだし、その光は四つの大樹全体へと広がっていく。

 

「おー、綺麗だな」

 

「ああ、凄い光景だ」

 

その光景を見つつ木像を再度鑑定した。すると、効果に新しい表記が追加されていることを知る。

 

「なになに? 水臨樹に捧げられた信仰の力を、神精へと捧げることができる?」

 

どういうこっちゃ? 神精って神の樹精? それならもうとっくになっていると思うんだがな。ゆぐゆぐ達がだ。

 

「麒麟、これは一体?」

 

『あなた達の祈りが信仰となり力としてもなり、樹精達の樹木の成長を促します』

 

「成長・・・水臨樹以外はもうとっくに成長しきっていると思うが」

 

「とにかくやってみようぜ。検証だ検証!」

 

おおう、タゴサックがなんかやる気を出したぞ。これは珍しい。祈りを捧げる、か。タゴサックと木像に向かって手を合わせた。目を瞑り、パンパンと拍手を打つ。俺は瞑らなかったから、タゴサックの体が薄く光って、その光はそのままタゴサックから水臨樹へと流れ込み、さらに木像へと移っていくのを見ることができた。続いて他の三つの木像にも祈りを捧げると同じ現象が起きたもの、変化はなしだ。

 

「麒麟、これでいいのか?」

 

『問題ありません。さらに数多の祈りが集まると水臨樹の成長を促しますよ』

 

「たくさんの祈り・・・多くのプレイヤーが祈ることでそうなるってことか」

 

『その通りです。しかし、同日に複数の神精へ祈りを捧げる行為はオススメしません。あなた方の言葉で言うとレベルが下がりますから』

 

レベルが下がる?

 

「祈りを捧げる行為は経験値を減らしているのか」

 

『はい、そうです。しかし、それだけでなく特別な資格を得る行為でもあります』

 

「特別な資格、とは?」

 

意味深な事を言う麒麟に訊いた時、俺の意識は変えざるを得ないことが水臨樹に起きた・・・・・。

 

ピカッ!

 

「「うん!?」」

 

なんか、水臨樹が光り出したぞ。何の演出だ? タゴサックと見守る光る水臨樹に一人の美しい女性が現る。あ、この女性・・・・・。

 

「お母様!」

 

ゆぐゆぐが嬉しそうに女性のことを呼んだ。―――水臨大樹の精霊のことだ。しかし、なぜ今になって? たまに会いに現れると知っているが、今回が初めてのことだな。

 

「お久し振りです。会いに来ました」

 

「おお、こうして会うのは初めてだな。急な来訪でびっくりだわ」

 

「申し訳ございません。我が娘の水臨樹の近くで神聖な力を・・・・・あなたですね?」

 

精霊はカグヤを見てお辞儀をした。カグヤも恭しく頭を垂らして応じる。

 

「なぁ、新しい従魔だよなあの巫女服を着たの」

 

「神の樹木、神樹から生まれた神の樹精だ。オルト達と同等の存在だと思ってくれ」

 

「神の樹木かぁ・・・・・そりゃあ神聖な大樹が傍にあると精霊も否が応でも反応するわ」

 

だよなー。俺も初めて知ったところだ。

 

「冒険者よ」

 

「あ、はい」

 

「まだ次の8週間ではありませんが特別にいま供え物をすれば祝福を贈ります。どうしますか?」

 

どうしますか、ねぇ・・・・・勿論決まっているじゃないか。2回目の供え物は仕事の都合上でゲームができなくて、ログインしていなかったからな(その間、サイナがゆぐゆぐと水臨大樹の精霊のところに行ったらしい)。

 

「供える。ちょっと待ってくれ。ゆぐゆぐ、どれにしようか」

 

意見を求めたゆぐゆぐも、どれを選べばいいか分からないか。ただ、その可愛いキョトン顔を見ていて、あることを思いついた。画面を下へとスクロールしていくと、目当てのアイテムがあった。

 

「樹精の若葉だ」

 

これは、ゆぐゆぐがスキルによって定期的に生み出してくれるようになった、素材の1つだった。その中でも、樹精の若葉は一番レアな素材である。貴重過ぎて、まだ詳しい検証もできていなかった。ポーションとかに混ぜると品質が上がるのは分かっているんだがな。娘が生み出した素材だし、成長も見てもらえる。何も分からないんだったら、水臨大樹の精霊様が少しでも喜びそうなアイテムを捧げておこう。

 

「じゃ、これを選ぶぞ?」

 

「はい!」

 

そうしてお供え物を選択すると、精霊がニコリと微笑んだ。

 

「あなたはしっかりと我が娘を育てているようですね。これを受け取りなさい」

 

お? いい反応なんじゃないか? 精霊に手渡されたのは、キラキラと光る緑色の宝石だった。『水臨大樹の輝き』という肥料アイテムとなっている。え? これ肥料なのか? しかし、ゆぐゆぐ大喜びだ。

 

「――!」

 

いつもはおしとやかなゆぐゆぐが、飛び跳ねてはしゃいでいる。きっといい物なのだろう。さっそく本体に使ってみるか。

 

「あ、待ってご主人様。このままじゃ使えない!」

 

「そうなのか?」

 

水臨大樹の精霊の精霊も話に加わって来た。

 

「まずは水臨樹の周りを空けてください」

 

「どのぐらい?」

 

「ここから・・・ここまでです!」

 

ゆぐゆぐが動かす樹を軽くポンポン叩いてから、走って移動させる場所を指示してくれる。俺が思っているよりも、水臨樹の周囲を広げないとダメっぽい。これは、雑草畑を1つ他の町へと移動させないとダメかもな。ギルドレベルが上がったから、まだ少し畑を広げられる。新エリアで新しい作物が増えることを見越して、余裕を持たせておいたのだ。自分の先見の明が予想通りでよかったぜ。

 

しかも、ゆぐゆぐの主張はこれだけで終わりではない。何やら地面に円を描いている。

 

「オルトさん―――」

 

「―――任せろ!」

 

「トリリ!」

 

オルトとオレアと相談して、何がしたいんだ? 見守っていると、オルトが土魔術で地面を掘り返し始めた。結構掘るな? ゆぐゆぐが水臨樹の周囲を広げさせたのは、このスペースを確保するためでもあったらしい。

 

いつの間にやら、直径10メートル、深さ3メートルほどの穴が出来上がっていた。水臨樹が大きくなるだけなのに・・・・・?

 

「いや、待てよ・・・?」

 

俺は、遠くにそびえたつ水臨大樹を見つめた。巨大な幹の途中から水が滝のように流れ出し、美しい虹を生み出している。

 

「え? もしかして、あれ?」

 

「はい♪」

 

「そうだ!」

 

「トリー!」

 

「まじかー」

 

「え?」

 

どうやら、水臨樹がついにその名前通りに水を生み出すようになるらしい。そりゃあ、池になる予定の穴は必要ですわ。むしろ、こんな小さい池でいいの? そんな俺達を察しできないでいるタゴサックは首を傾げた。

 

「水が溢れないか?」

 

「大丈夫だ!」

 

大丈夫らしい。そこはゲーム的なシステムで、いい塩梅にしてくれるようだ。ただ、水臨樹から流れ出る水は品質も良く、農業に適しているようだった。

 

オルト的には、水路を通して水を畑全体に回したいらしい。そのために、畑の作物の場所を弄りたいようだ。

 

「ご主人、頼めるか?」

 

「水路はグルッと回ってここに戻ってくる形でいいのか?」

 

「ああ!」

 

どうせならオルトが掘るよりも、オブジェクトを設置する方がいいよな。俺は水霊の街で水路を購入してしまうことにした。ついでにプールも買ってしまおう。オルトが頑張って掘ってくれたけど、オブジェクトを設置した方が見栄えもいいだろう。

 

「こうなったら、とことんやるぞ! オルトもゆぐゆぐもオレアも、好きなだけ買え!」

 

「わかった!」

 

「ありがとうございます♪」

 

「トリ!」

 

俺はゆぐゆぐたちを引き連れて、水霊の街のオブジェクトショップや、農業ギルドを巡る。ただね、テンションが上がったゆぐゆぐたちが、想像の3倍くらい注文を出してきた。

 

好きなだけって言ったのが三人の意欲を促進させたようだった。 だが、一度宣言したことを翻すなんてしない。結果、俺は半日かけて畑の大改造を行うのであった。また麒麟と黄竜が力を貸してくれて畑に育てていた植物全般をアイテム化にしてくれて、水臨樹が必要とするスペースを確保、今のところ、水が流れていない空の水路が張り巡らされた、ちょっとみすぼらしい畑である。本当に、大丈夫なんだよな?

 

「それじゃ、改めて水臨大樹の輝きを使用するぞ?」

 

「はい♪」

 

水臨大樹の輝きがその名の通り輝きを放ち、俺の手の上から姿を消した。そして、ゆぐゆぐの本体である水臨樹全体が強い輝きを放つ。

 

「何か変わったか?」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

首を捻る俺に対し、ゆぐゆぐがアピールしている。見た目に違いはなくとも、明らかに変化があるらしい。

 

だが、鑑定をしても、よくわからない。

 

「うーん。ゆぐゆぐ、どう――」

 

「おおぉぉぉ・・・・・これは・・・・・」

 

俺がゆぐゆぐにどう変わったのか問いただそうとした、その時であった。水臨樹が光り輝いたかと思うと、一気に成長を始める。幹が捻れるように太さを増し、どんどん背も高くなっていく。さらに、太くなった幹の一部に穴が空いて洞ができるのが見えた。隣でタゴサックも驚きで開いた口が塞がらないでいた。

 

「「水出た!」」

 

「ご主人様、ありがとうございます!」

 

洞からチョロチョロと流れだす水が、段々と勢いを増してジャバジャバとなり、最終的にはジャージャーと滝のように樹の幹を流れ落ち始める。

 

水は根元の穴に溜まって池となり、張り巡らせた水路に流れ込んでいった。

 

「おぉ! スゲー!」

 

「はい♪」

 

「こういうのも絶景って言うんだろうなぁ」

 

何か特別な効果もあるのかもしれないが、今はただその美しい光景を楽しもう。急成長を遂げた水臨樹は、非常に存在感があった。幹の太さは倍近くなり、樹高も20メートルを超えているんじゃないか? 世界樹、水晶樹、神樹を除けば、普通の果樹が5メートル、神聖樹などでも10メートル少々であることを考えると、1本だけ異常に巨大なのだ。

 

しかも、流れ出る水に太陽光が反射して、キラキラと輝いている。薄っすら虹も出てないか? いやー、綺麗だな!

 

「ただ、根元が少し寂しいよなぁ」

 

「寂しいですか?」

 

大興奮状態で冷静さを欠くゆぐゆぐは気づいていないようだが、水臨樹の周辺は土がむき出しでちょっと侘しい感じがするのだ。

 

今までは俺も見栄えとかあまり気にしていなかったんだが、植え替えを行って畑を整えることを知ってしまうと、もっと綺麗にしたいと思ってしまう。映えってやつ? それが気になるのだ。

 

それに、水臨樹はただでさえ美しいんだから、勿体ない。勿体ないんだ。

 

「うーん。足元に花を植えたり、草を生やしたりはできんもんかな?」

 

「生やそうご主人!」

 

「トリ!」

 

「オルトたちも賛成か」

 

となると、アレだな。

 

「これはどうだ? ホームの庭を整えようかと思ってたんだけど、ここで使えるんじゃないか?」

 

「きっといいぞ! 使ってみようご主人!」

 

「トリリー!」

 

どうやら問題ないらしい。畑担当者の許可が出たのだ。俺が取り出したのは、地面を花畑に変えるというオブジェクトである。採取はできないかわりに、畑の栄養なども必要とせず、1年中花が咲き続けるというアイテムだった。

 

その名も『花の絨毯・ネモフィラ』。まあ、一見農業の範疇っぽいけど、部屋の中でも使えるというし、実態は花の形のオブジェクトがたくさん出現するだけなんだろう。設置型の大型絨毯などと、同じ系統のアイテムってことだ。でもいいんだ。だって、絶対に綺麗だもん。

 

「それじゃあ、設置!」

 

「おおー!」

 

「トリー!」

 

突如、自分たちの足元を包み込んだ薄群青色の花の絨毯に、オルトとオレアも飛び上がって喜んでいる。この花の絨毯の良いところは、どれだけ踏んでも花が散ったり、折れたりしないところだろう。お陰で、花畑で駆け回っても問題ないのである。

 

「やべー、幻想的過ぎる」

 

「わーい!」

 

「トーリリー!」

 

オルトとオレアが楽し気に花の上で踊り始める。相変わらずへたくそだけど、楽しそうだ。それに気づいたゆぐゆぐとカグヤも、満面の笑顔で合流したな。水臨樹や水臨大樹の精霊関係のことになると、ゆぐゆぐもテンションが上がってはしゃいだりするんだよね。俺も花畑に寝転がってみる。絨毯の名前に相応しく、草がフカフカで非常に気持ちいい。

 

ネモフィラの香りに包まれながら、巨大に育った水臨樹の木陰に吹く爽やかな風を感じていると、耳にはモンスたちがはしゃぐ声と水音だけが聞こえてくる。

 

天国ー。ここに天国はあったんだー。

 

「クマ?」

 

「キュ?」

 

「ヤー?」

 

どうやら、楽しげな雰囲気を聞きつけたらしい。他のモンスたちも集まってきた。

 

水臨樹を背に座り込むクママと、俺の横に寝転がるヒムカとウッドとクリス。リックとリリムは育った水臨樹の木の上で丸くなり、ラミアースは木の上から俺を護衛、アイネとフレイヤとミーニィが空中でワチャワチャしている。サイナは寝転がる俺に膝枕をしてくれた。リヴェリアやアカーシャ、白雪もやって来てオルト達と遊び始める

 

ペルカとルフレは新しくできた池でプカプカと浮き、ドリモは水路を気にしているようだ。その姿は配管工にしか見えんな。

 

フェルとセキト、クズハは日当たりのいい場所で座り込み、ファウがその背の上に腰かけて落ち着く曲を奏でてくれる。

 

ネモフィラの中を走り回っているのは鳳凰とコケッコーの群れ、スネコスリかな? ラミアースと小型化になったネコバスはジーと水臨樹を見上げ、チャガマとハクレン、ハナミアラシはオルトたちの踊りの輪に加わった。妖怪なだけあって、盆踊りが得意なようだ。サラ、ゴールデンもそこに加わった。

 

河童はルフレたちの仲間に入り、そこにマスコットたちも加わって、水臨樹の周囲はあっという間に大賑わいだ。

 

「あいー」

 

「お、どうしたマモリ」

 

「あい!」

 

しばらくボーッとしていると、マモリが俺の顔を覗き込んだ。急に視界に現れたマモリの顔面に、何か遭ったのかと警戒した。

 

「あい」

 

「立てって?」

 

「あいー」

 

「はいはい。ちょっと待ってな。よっこらしょっと」

 

マモリは俺だけではなく、他の皆も呼び集めているようだ。

 

「あいあい」

 

「どうした??」

 

「なーに?」

 

全員を水臨樹の根元に並べて、立たせる。なんか、集合写真みたいな感じだな。いや、実際に集合写真を撮るつもりらしい。俺以外の皆はそれが理解できているのか、各々ポーズを取ったり、キメ顔をしたりしているのだ。

 

「あい、あい、あいー」

 

「お、おう」

 

「俺もなのか?」

 

最後にマモリが俺とタゴサックの前に立つと、3、2、1と指で合図を出してくれる。そして、パシャリと音がした。カメラが見えているわけではいないが、マモリが日記帳で使っている撮影用の能力だろう。

 

「あい!」

 

「お、くれるのか?」

 

ウィンドウが立ち上がると、マモリからメールに添付した数枚のスクショと動画が送られてくる。うんうん。皆楽し気で、いい写真じゃないか。俺も一杯スクショ撮ったし、あとで整理しよう。

 

「麒麟、質問がある。神樹の木材って後利益的なのが宿ってたりするのか? それも木像に作ったりするとだ」

 

『ありますよ。特に実在している神を模した神木の木像には、元となった神の恩恵を少なからず得られます。木像と社の大きさによって恩恵は変わりますが、創っておいても損はありません』

 

・・・・・なるほど、それを聞いてしまうの今のオルト達の木像を作ってみたくなるじゃないか。こうしちゃあいられないな。

 

後日―――天空の城で七つの神の精霊の1メートルの木像が鎮座しておいたら、オルト達のファンの身内が毎日のように足を運び、実際の神よりも深い信仰で以って祈りとお供えを捧げるようになったその影響で、怪しげで過激な宗教団体まで発展した想像を浮かべてしまった俺は、敢えて作らないようにしておこうと心に決めた。

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