魔王になった二人を連れてマイホームに戻ると、案の定魔王がいた。可愛いコスプレで来るのは日常茶飯事だから俺は見慣れているも、イカルとメイプルはキョトンとしている顔で魔王を見つめる。
「ハーデスさん。どちら様ですか?」
「魔王だよ。念のために言っておくが、男だからな」
「ま、魔王なんですか? それに可愛いお洋服を着ているのに男の子って・・・・・」
不思議がるのも仕方がない。一先ずこの二人に用事があるのだろう。座らせるとようやく女装趣味の魔王が口を開いた。
「キミ以外にも魔王がもう二人も増えるとは前代未聞だよ。これで世に現役の魔王が四人になった」
「困ることはあるか?」
「いや、むしろ喜ばしい限りだよ。なにより、キミが闇神の眷属になったことが魔王としての力が高まった。もはや僕より遥かに凌駕しているよ」
そう、なのか・・・・・? 実際に魔王と戦ったことが無いし、その強さは見たこともない。実感のない事を言われても半信半疑だ。首を傾げる俺は魔王が二人に対して問い掛ける様子を見守る。
「キミ達とは会うの初めましてだね。僕は冥界の悪魔族達を束ねる悪魔の王、魔王だ」
「イカルです。よろしくお願いします」
「メイプルでーす」
「うん、女の魔王なんて先代の魔王以来だ。さて、そんな二人に質問だ。キミ達は魔王になった今、地上の人間達に永遠に恐れられ、魔王を倒すことでお金がもらえる欲深い人間達に狙われる側となった。もしもそんな生活が嫌なら何もかも捨てて冥界に逃げるしかないよ」
何もかも? とイカルが不思議そうに鸚鵡返しをして俺に訊く。
「ハーデスさん、何を捨てないといけないんですか?」
「装備以外全部だ。冥界に従魔は連れて行けれないからエスク達も捨てないといけない」
第二陣のプレイヤーとしてログインしてからずっと一緒にいたエスクを捨てる。そんなことできる筈がないイカルの目が限界まで見開いた。
「エスク達を捨てないとダメなんですか!? 嫌です! 捨てたくないです!」
イカルが泣きそうな顔を浮かべ悲痛に叫び、メイプルは困ったような顔を浮かべる。
「ハーデスさん、このお話ってどう答えれば?」
「取り敢えず、最後まで話を聞いてくれ」
「そうだよ。後輩の言う通りだ。まだ話は終わってないからね」
魔王からも同意し語り続ける。
「冥界に来る場合、キミ達は僕の後輩として新しい魔王となってもらいたい。魔王になれば僕の配下がキミ達に従い何でもしてくれるよ」
「「・・・・・」」
「だが、拒むというならば彼のように人間達に嫌われながら人間界で生きるしかない。それはとても不便でならないしかつて味方だった人間が敵になってしまう悲しいことが起きる。キミ達は苦労しながらも人間界に生きたいかい。それとも何もかも捨てて楽になりたいがために冥界へ来るかい? どちらを選んでも構わないよ」
二つの選択に二人は迷うことなく言い切った。
「エスク達と離れたくないです! 魔王になんてなりたくありません!」
「私も、冥界で魔王になるよりハーデスさんやサリー、他のみんなと一緒にいる方が楽しいし好きだから遠慮するよ」
冥界入りを拒絶する。魔王は俺に目線を向けて苦笑を見せた
「人気者だね」
「お前ほどではないがな」
「そうかな? ま、僕的にはキミが正式に魔王を引き継いでくれたなら快く引退して隠居できるんだけどね」
「隠居したらルシファーはどうするんだよ?」
「ああ、ルシファーは襲名で別に本名じゃないんだ。本当の名前、真名は別なんだ。教えられないけどね。だからルシファーも幹部として引退するなら、ルシファーの名を捨て、他の誰かがその名を名乗るようになるんだ」
へぇ、そうだったのか。初めて知った事実だわ。
「元々、その名の悪魔はいたんだけど大昔に勇者に敗れてしまった今は存在していない。だからルシファーを含めた今の四魔の名は、大悪魔の名を受け継ぐに値する実力ある悪魔しか名乗ることを許されない。ルシファーはその一人だ」
趣味がアレなのに? とツッコんでみると魔王は神妙な顔で言う。
「うん・・・何故か趣味に没頭する悪魔が不思議と強いんだよね。ベルゼブブは料理、レヴィアタンは生物研究、アスモデウスは小説」
「レヴィアタン、リヴァイアサンの身体を乗っ取った悪魔か。そーいえば、あいつは元気か?」
「賢者の石で完全に回復したよ。今は冥界の魔獣をキメラに合成することに精を出しているよ」
まさか、またあいつと戦うことになるのか? しかもキメラって・・・・・確かベヒモスとジズ、リュカオーンがいるんだったよな。うわぁ・・・戦いたくねぇ。
「仮にルシファーが引退したら次はどんな悪魔が引き継ぐ?」
「そうだね・・・・・仮にキミだったら盤上一致で襲名されるだろうけど、バアルかグレモリーかな。この悪魔達も趣味に没頭しているのに不思議と強いんだ」
よくわからん強さの基準だ。長い悪魔の生命は時間を持て余すあまりに趣味で死ぬまでの人生を―――っと、どこかの中二病の言っていた台詞を言いそうだった。
「本題に戻すが、二人は魔王にならない。魔王、それでいいか?」
「個人的にはそろそろ魔王を交代してほしいところだけどね。ようやく念願だった地上の進出を果たして、魔王城の建造も八割も完成している。あの城に人間界の魔王として君が居座って欲しい所なんだよ?」
「そしたらお前の配下を従えないといけないし、俺の自由が制限されるだろ」
「うん? キミはまだ人間界の魔王だから僕の配下を従う必要はないよ」
・・・・・そうなのか? というかまだって、俺のことまだ諦めていないのか。
「ああ、何か勘違いさせちゃったね。確かに魔王の城を建てているけど、僕が住むわけじゃないんだ。人間界の魔王に住んでもらいたい城なんだ。つまりただのマイホーム。でも、人間界に出入りできるための次元の扉を設置させてもらったから僕達も城を使わせてもらうよ」
「俺が作ったわけでも関わってもいないから拒絶しないけど、魔王の城って俺のマイホームだったのか」
「気にいるかどうかわからないけど、【堕天の魔王】として王座に一度でもいいから座って欲しいね」
「・・・・・完成したら、顔を出すよ」
その一言で満足なのか魔王は笑みを浮かべ、イカルとメイプルに魔王になった記念として魔王だけしか許されないスキルを与えた。ぶっちゃけ言うと俺と同じスキルだ。
「これで二人も魔王になったな。NPCに嫌われるけどおめでとう」
「本当に嫌われるんですか?」
「仲がいいNPCとクエストをくれるNPC以外は泣いて逃げるほどな。他のプレイヤーが見つけていないクエストを探すのに便利なところもあるが」
「おお? 逆に逃げないNPCがクエストをくれる人なんだ?」
そういうことだと頷く。
「ところで二人は四神に何を願ったんだ? よかったら教えてくれ」
「えっとね。私はスキル!」
「私は月で見た時のハーデスさんと同じドレスをお願いしました! でも、闇神の力で作られた装備だから全て同じモノは作れない代わりに、見た目が違う同じ服と翼なら作れると言われましたのでお願いしました」
前者がメイプルで後者がイカル。イカルは立ち上がって黒い鎧から見た目は女堕天使になった時の衣装が闇ならイカルのは光―――色合いが違う俺と同じドレスと翼、頭装備を着た。
「どう、ですか?」
その問いに俺もメイプルも口から感嘆の息が漏れた
「赤と青と緑と白の四つの色合いがイカルをさらに似合わせてくれているな。正直に言えば鎧より四神が用意したそのドレスの方がずっと見ていたくなる」
「ッ!!!」
「うんうん、すっごく綺麗だよ! 私もそんなドレス、着てみたいなー」
イカルの顔に咲いた花のように笑顔が。なお、彼女のドレスにも【装備スロット欄】なるスキルが内包されていたので、ドレスにユニーク装備をセットした以降、イカルの装備はドレスになった。
「ところでハーデスさんが願ったものは?」
「ああ、マイホームの工房をレベルアップしてもらった」
「「工房?」」
気になった様子の二人を案内する。地下に足を運べば万能型・二型の鍛冶―――火霊の工房に顔を出すとヒムカ達が気合いを入れて鍛冶をしていた。
「あ、主! 見てくれ、オレ達の工房が凄いことになったんだ! 前の工房よりずっとずっとすごい物が作れるようになったんだぞ!」
「どれどれ、見せてくれ」
鑑定すると『神火霊の工房』と神の名がついていた工房になっているではないか。確かに工房もグレートアップしているな。
「ヒムカ、新しい工房になって何ができるようになった?」
「主が持っているオリハルコンをインゴットにできたり、オリハルコンで装備を作れるようになるぞ! あとインゴットの品質もより上質に作れるし主のためならレジェンド装備を作れる!」
「マジか・・・!」
「「凄い!?」」
あれ、だとすると前の工房はユニーク装備を作れなかったのかと訊くと、工房のレベルが足りなかったからできなかったと言われた。四神に工房を神レベルにしてくれと頼んだからできるようになったのか。
「じゃあ近い内にユニーク装備も作って貰うことになるがいいか?」
「任せろ! 最高の装備を作るぜ!」
胸に拳で叩いて頼もしい返事をするヒムカ。他のサラマンダー達も力強く頷き期待に応えると意思を示してくれる。あらやだ頼もしい。ヒムカ達の工房を後にし、次はルフレ達の工房、水霊の工房にも顔を出す。既にルフレ達は料理を作っている最中で工房に入った俺に気付くとルフレが来てくれた。
「ご主人様! 見てください、工房が新しくなりました! 今まで作りたかったものがこの設備のおかげで作れるようになったんですよ!」
「確かにな。リアルの高級レストランでしかない調理器具や調理場に新しくなっているし種類が豊富・・・お、オーブンに圧力鍋・・・このレンガの台にアメリカ式のバーベキューの道具まで揃っているとは・・・・・」
「何か食べたい物がありますか?」
「じゃあ、今ある材料で夕食用に作ってくれるか? 料理はルフレ達が好きなようにしていいから」
「好きなように・・・悩みどころですが、ご主人様や仲間達に喜んでもらえる料理をたくさん作りますね!」
頼んだ。そう言って『神水霊の工房』と変わっていた名前の工房を後に、最後は風霊の工房に訪れると、アイネ達が席に座って作業をしていた。皮革や服飾、機織りの総合工房を始め、様々な設備が新しくなっていたり種類が増えていた『神風霊の工房』の中で作業しているアイネに声を掛けると。
「ご主人様見て見て!」
「おお? もう完成しているのか? それに凄い出来栄えじゃないか」
「うん! 新しくなった工房の設備のおかげで前より色んな物が作れるようになったの! 素材があればユニークとレジェンドってとっても凄い皮革と服飾、他にも作れるよ!」
つまりは、俺の精霊達がユニーク装備、もしかするとレジェンド装備を作成することが可能にしたのか?
【蒼龍の聖剣】色々を語るスレ40part【和気あいあい】
つがるん
気分爽快! 経験値とステータスに補正が入る称号が手に入ったし、闇神のように願い事を叶えてくれたし! あ、俺は畑で育てられる手に入れたことがない百種類のアイテムを願ったけど、みんなは?
宝生覇王
俺達細工職はレア度と品質が最高の宝石を200個を願った。これで俺達の恩人に100個を贈るつもりだ
タゴサック
恩返しは大切だな。俺も畑で育てる百種類のアイテムを願ったら結構な数の苗木が入っていた
ネネネ
私は高級の苺!
エリンギ
虫のモンスターを合成できるか願ってみたら出来た。今日から俺は蟲博士と名乗れるよう研鑽する
スケガワ
フフフ・・・・・俺は素材をたくさんゲットしたぜ。なんか風化した装備とか錆びた武器とか交ざってるけど、わかる人いる?
佐々木痔朗
同じ鍛治師に聞いてみろ。ところで、俺達の白銀さんは何を願ったのか気になるところだ。誰か知ってる?
オイレンシュピゲール
スキルか装備、じゃなければアイテムだと思うけどなー
赤星ニャー
もしくは新しいモンスター
ウルスラ
どれも不思議じゃないから納得できる
宝石姫
もしかしてサスシロなことだったりして!
石田
それはそれでいつも通りなんだよな。こう、また白銀さんがやらかした! ってことが久し振りに無いんだよなー
エネルジー
白銀さんのそばにいると、そういう感覚が当たり前のようになってしまっているからじゃないですか?
メタルスライム
ああ・・・・・なるほど。身近にいると麻痺してしまって俺達は白銀さんに対する言動がすべて「あの人なら当然」って受け入れてしまっているんだな。第三者からすれば昔の俺達の頃のように驚かされるままだろう。例えば俺達が先に宇宙へ飛び出し月で遊んでいたら?
アメリア
【蒼龍の聖剣】に入団する前のかつての私達と他のプレイヤーだったら「宇宙!? 月ィー!?」だけど、現在の私達【蒼龍の聖剣】は「いやっほーう! 宇宙だぁー! 月だぁー!」って感じだよねー
ボルボ13世
分かりやすい例えで、その反応をしていた頃の自分が懐かしく感じるところ
百派
ヒャッハー! これからもそういう感じになるんだぜぇ~?
ジェンティルドンナ
私的には生産に関する願いを叶えたじゃないかなーって思ってます
イカル
すごかったです!
ノーフ
お、イカルちゃん。何が凄かったのか教えておくれ
イカル
ハーデスさんのサラマンダーとウンディーネ、シルフのお仕事場が! えっと、ユニークとレジェンドの装備が作れるようになったって!
イワン
・・・・・どゆこと?
佐々木痔朗
ここにいるみんなは、以前白銀さんのホームに入らせてくれたことまだ覚えてるだろ。地下まで行った奴なら知ってると思うが、白銀さんの日本家屋の地下には火霊の工房=サラマンダーの仕事場、水霊の工房=ウンディーネの仕事場、風霊の工房=シルフの仕事場がある。おそらく白銀さんは各工房をグレートアップしてもらう願いを叶えてもらったんだ
ヒット
あれ、もしかしてホームのリフォームもありだった? うあああー! もしそうだったらホームの地下でガンナー同士が撃ち合いできる広い場所を願ったのにぃー!!
トップガン
今さらそれを言わないでくれるか!?
最強の傭兵
現状のホームに満足してるプレイヤーはホームのリフォームなんて考えないものだ
カーバンクラー
確かに言えてる。お菓子の家なんてあったらそれ以上グレートアップする必要あるかって気になるしな
ふーか
お菓子の家、実在したりして。というか、作れるんじゃ?
ウサミ
お菓子なら私のようなパティシエが本文ですけど、家を作るならクラフト? 木工?
アスカ
プレイヤーの職業はメインとサブの二つも遊べるからあながち間違いじゃないかも
石田
それならば鮮魚の家を作ろうかな!
オカーン
魚臭くなるので止めてください
赤星ニャー
魚が好きな猫でも警戒するレベルニャー
ねうねう
ほんとそれ。というか青臭い魚臭いのが装備に染み着いちゃいそうで誰も近づかないのが目に見える。
ふーか
お肉のお家はー?
ネネネ
苺のお家もどう!?
オイレンシュピゲール
美女だらけのハーレムの家も悪くないぞ!
スケガワ
オイレン、お前は天才だ!
タゴサック
欲望の渦に呑み込まれる前に話を戻すぞ。イカル、それって教えていいって言われたのか?
イカル
えっと・・・・・あ、言ってません・・・・・あッ!?
死神・ハーデス
よぉーしイカルちゃーん。前回のお説教の続きをしようかー!! 今度は三十分のコースの正座ターイムだ!!
イカル
ハ、ハーデスさん!? ごめんなさーい!! 許してくださいー!!
佐々木痔朗
地味に辛いお説教とお仕置きだ。俺なら五分でギブアップ
エリンギ
時に白銀さん。次の新大陸行きは何時?
死神・ハーデス
来週でどうだ? あ、そう言えば女ヶ島に行く約束を果たさないとな。
スケガワ
女だらけの島だっけ!?
死神・ハーデス
そうそうそれ。男が侵入すると奴隷扱いされるらしい。みんな性転換してから行こうか。俺の目的はその島にある温泉に入ることでクエストが終わるし
オイレンシュピゲール
どんなクエストなのそれ!?
死神・ハーデス
ドワルティアで受注できるクエスト。でも、性転換したプレイヤーだと見破られる可能性があるから、その時は各自スキルで脱出してほしい
メタルスライム
わかったが、俺の仲間が早速性転換しては女口調で話す練習を始めたこの状況をどうすればいいか教えてくれ
ノーフ
お前も交ざれば乗り越えられる。男口調の女だっているんだから問題ない。な、タゴサック
タゴサック
事実だが俺をダシに使わないでくれ。これでも女であることを自覚してるんだからな
佐々木痔朗
いよ! ファーマー界の兄貴姉御!
プリム
頼れる格好いいお姐さん!
ネネネ
割りと同性のプレイヤーから人気のタゴサックの姉御さん
チャーム
白銀さんを除けばファーマーのトッププレイヤーの姉貴タゴサック!
チチチ
神酒を飲んで酔っ払った表情が可愛いと巷で評判で、密かにそのスクショで人気を得てることを知らないタゴサック姐さん!
死神・ハーデス
え、なにそれちょっと詳しく。スクショ見させて?
タゴサック
てめぇらゴルぁぁぁあああああああー!!? 特にチチチ!! 運営に通報あ、ドラゴンに乗って逃げるのは反則だろが!!!
チョレギ
あばよ、姐御とっつぁん!
チチチ
言っておくけど! 俺じゃなくて最初に撮って見せてきたのはネネネだから!
ネネネ
あー、約束破るなんてヒドイー
タゴサック
どっちみち逃げたお前ら全員俺の棍棒でぶっ飛ばす! あとハーデス! 絶対に俺の寝顔を見るんじゃないぞ!?
死神・ハーデス
わかった・・・イカル、どうした
イカル
なんかメールが送られてきました。あ・・・タゴサックさん、可愛い寝顔ですね!
死神・ハーデス
あ、こらイカル! アッ・・・・・
タゴサック
・・・・・最初はお前らからだ。ちょっとそこから動くなよ
死神・ハーデス
俺はとんだとばっちりじゃん!?