バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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100年に一度のスープ

第三の町に戻り、小休止をしながら他のプレイヤーの配信を見ることにした。無人の温泉スポットだったエリアは、つくだ煮のようにプレイヤーで溢れていた。温泉目当てや、素材目的、ダンジョンへ挑戦の前菜であるウェディングドレスを来たメスゴリラとの戦いに来たプレイヤー層とハッキリして分かれていた。温泉の中でも入ってレイド戦の順番を待っているのかもしれないが、さてダンジョンに入れたプレイヤーはいるだろうか。

 

『ダメだぁ! 勝てねぇー!』

 

『あの広範囲攻撃が厄介すぎる!』

 

『耐性が、防御力が足りなさすぎるんだよぉっ・・・・・!』

 

『なんでブーケから刃が生えて、花びらを斬撃に飛ばしてくるんだよ・・・・・』

 

阿鼻叫喚に似たプレイヤー達の口々から負の感情の言葉が絶えない。この調子では貝竜にも挑戦できないだろうな、と【色彩化粧】で姿を隠しながら温泉スポットの中を歩いていれば知人と身内を配信者の動画で発見した。あいつらも挑戦しに来たんだとこの場にいる時点で火を見るより明らかだった。

 

「私達の時と違うな。花束なんて物は持っていなかった」

 

「そうだね。ボスモンスターと戦う人達の多さが原因じゃないかな?」

 

「すごく強くなってる?」

 

ウェディングドレスを無理矢理着た格好の白毛のゴリラは、ブーケから生えた長身の刃を持って真正面から攻めに行くプレイヤー達を横に凪払って花束の花びらがガトリングの弾のように放ち、少なくない数のプレイヤー達が牽制の攻撃を受けて撃退された。それでもなお生き残っているプレイヤー達は高らかに声を上げて勇往邁進し、メスゴリラに攻撃を加えてHPを減らす。囲まれたモンスターは足を軸に長剣とゴツイ拳を水平に構えて独楽のごとく激しい勢いの回転を初め、周囲のプレイヤーを巻き上げつつ両断、弾き飛ばしながら移動する様は、生きた嵐みたいだった。

 

「うわー、プレイヤーの人達が・・・・・」

 

「やっぱり強くなってます」

 

「さて・・・どうなる?」

 

もう三分の一しか残っていないプレイヤーへ畳み掛けるメスゴリラに反撃が始まった。一人のプレイヤーが広大な星の魔方陣を地面に展開した。その魔方陣に入った途端に止まったメスゴリラの足が誰かのスキルで凍らされて動かなくなった。ここぞとばかりに攻撃をし始めるプレイヤー達とメスゴリラの真上に宙で移動するプレイヤー達の反撃にHPはみるみると三割まで減った時、白い毛が紅く染まり、怒りの咆哮を上げたメスゴリラが両の拳を胸ではなく地面にドラミングし出した。地面が激しく揺らされて立っていられないプレイヤー達の戸惑いの声が聞こえ、宙にいるプレイヤー達には影響ないが自由を取り戻したメスゴリラが高々に跳躍して、その豪腕を天井に衝き拳で力強く殴り付けると、天井に両腕を沈めたままぶら下がって、下にいる全プレイヤーに向かって口から吹雪を放った。吹雪を食らったプレイヤー達は冷凍保存され、宙にいたプレイヤーも凍結した状態で落下、地面とぶつかって身体が粉々に砕けると即死になるようだな。誰かの生配信はここで終わり、身内のプレイヤーも負ける展開に俺は唸る。

 

「あの最後の吹雪の攻撃は盾で防ごうとしない方がいいだろう。盾持ちのプレイヤーが凍っている時点で私達も氷結状態になるのが目に見える」

 

「じゃあ【毒無効】の様に【氷結無効】になるまでスキルを育てますか?」

 

「氷結攻撃をしてくるモンスターってどんなモンスターかな」

 

メイプルの素朴な疑問に対して、氷系のモンスターを図鑑から調べ始めた。

 

「タマアザラシ、マンモスの二種類しかいない」

 

「え、意外と少ないね?」

 

「毒竜の洞窟のようなダンジョンがあるなら、そこに図鑑にも載っていないモンスターがいるかもしれないが、モンスターと戦わずに耐性を増やせる方法もあるかもしれない。というか、【マグマ耐性】を無効まで上げた時のような方法をすればいいかもしれないと思う」

 

「「なるほど!」」

 

二人まで納得してしまうほど、俺達はそんな方法で無効までスキルを高めてしまった経験がございますからねー。ということで俺達は【氷結無効】を得るための行動を開始した。まずは町の外で試しに砂風呂のように横たわるメイプルの身体に雪を盛るように被せる。しかし10分過ぎても耐性は上がらず、この方法は失敗に負えた。ならばとNPCから身も骨の髄まで凍えるような場所はないかと聞き込みしたところ。

 

「そんなの、防寒着を着なきゃ誰だってそうなるぜ。特に海に入ればそうなると思うぞ」

 

「それは既に試したから寒さに強くなる他の方法はないか」

 

「そ、そうなのか・・・・・? うーん・・・・・ああ、そう言えば風の噂で聞いたんだがよ。俺達の先祖が食糧の天然保管庫として利用していた海より冷たい場所があるらしいぜ。もしも興味あるなら探してきてくれないか? もしかしたらまだ冷凍保存されてる食糧があるなら俺達も助かるからよ」

 

探索系のクエストが発生し、老人達なら知っているかもというアドバイスを頼りに聞き込みをすると、手がかりを教えてもらうクエストをこなすこととなり、それらを全部終わるまで3時間も掛かった。が、町の長の信頼を得て天然の食糧庫の調査をしてもらう条件で場所を教えてくれたのが―――。

 

「まさか精霊門がある山の中にあるなんて思いもしませんでしたねお姉ちゃん」

 

「しかも、保管庫ゆえに扉が永久凍土の氷で専用のピッケルじゃないと砕くこともできない設定と来た。運営め、クエストをクリアさせるつもりはなかったな? 作れるかもしれないがそれも困難だったろう」

 

「二人共頑張れー!」

 

エーベレーストの頂上に続く道の途中で積もった雪で覆い隠されて気付きもしなかった氷壁。雪をどかして初めて発見した氷の扉に向かって砕氷のピッケルを使って氷を砕きイカルと掘り続ける。ピッケルを持っていないメイプルは湧くモンスターの警戒にあたってくれる間、イカルと協力して氷を砕くこと10分・・・・・。

 

ガラララッ!!!

 

「あ、洞窟です!」

 

「やっと開通できたか。ありがとうメイプル、入ろう」

 

「うん!」

 

ぽっかりと開いた洞窟の穴を解放した。ピッケルをインベントリに仕舞って二人と洞窟の中を進む。洞窟の中は淡く光る結晶で灯りが保たれ暗くなく進めれて、昔の人達が加工しただろう階段を上り続けたら凄い光景が目に飛び込んできた。

 

「「わぁ・・・・・!」」

 

「おお、これは壮観だ」

 

人の手が加えられた痕跡が残っている冷凍庫と呼ぶべき食糧庫。地上から数百メートルも上まで垂直の楕円形の壁に正六角形の穴の中に冷凍状態の様々な食糧が眠っていた。そしてそれらが囲む湖まである。驚嘆と感嘆の念を吐くと息が真っ白だった。【耐寒】スキルがあるから寒さは感じないが、ここならもしやと期待してしまう。

 

「手分けして見てみよう。それでクエストが達成できるかもしれない」

 

「「はーい!」」

 

二人と分れて食糧を確認する。第三の町の長から受けた調査のクエストは食料の数を調べるものだから、手分けしてした方が早い。これまた時間が掛かったがな。

 

「ハーデスさん。数え終わりました」

 

「私もです。お姉ちゃんは?」

 

「今終わった。これでクエストは達成できたな二人ともお疲れ。本来の目的をする前にクエストの達成の報告をしておこう」

 

異論はないと頷くイカルとメイプル。町に戻り長のところへ向かうと何やら騒々しい。町中のNPCが集まっている。屋根の上から様子見すると甲冑を来た騎士団が町のNPC達に向かって立っていた。アイムソウリー王国の騎士団かと思ったが軍旗の徽章が違う。スノウリー王国の騎士団か?

 

「近日にアイムソウリー王国との最終決戦が行われる! 我々スノウリー王国が勝つためには一致団結しなければならない! よってスノウリー王国の国土内にいる王国外の男の子供と老人以外の成人した男は全て強制的に徴兵することになった! さらにスノウリー王国への献上品としてこの町の食糧の半分を徴収する! 一人でも逆らえばこの町は我が国の反逆者とみなされ取り潰しが執行される! 戦争に打ち勝てば王国から多大な報酬が約束されるゆえ安心して軍に入るがいい!」

 

ああ、こっちもこっちでそういう活動を精力的にしているのか。しっかし、完全に脅している王国に逆らっていいことが起きる筈は・・・・・。

 

「ふっざけんなー!!」

 

「何だその言い草は!? 誰がスノウリー王国の為なんかに戦うかボケェッ!!!」

 

「そうよ! 食糧の半分なんて渡して男がいなくなったら半年でこの町が潰れちまうじゃないか!」

 

「そもそも王国が建設する前から存在しているこの町の歴史は、お前らスノウリー王国より長いんだぞ!」

 

「そうだそうだ! 何様のつもりだ! 俺達を戦争に巻き込むならもっと頼み方を考えやがれバーカ!!」

 

「こっちも食糧不足で困っているってのに!」

 

めっちゃ反抗的ィー!? 中にはその辺の石や作った雪玉で騎士団へ投げつけて追い返そうとしている! まさかの反抗に遭う騎士団達は動揺を隠せず、捨て台詞を言い放った。

 

「き、貴様等! スノウリー王国が戦争に勝利した暁にはこの町ごと赤子一人も残さず全員反逆者として処刑するからな! 覚悟しておぶふぉは!?」

 

「団長ォー!?」

 

てんやわんやな騎士団達が敗走するかのように足並みを乱して町から逃げ去っていく・・・・・。もしかして、スノウリー王国って弱かったりする・・・・・?

 

「えっと、戦争に巻き込まれなくてよかった・・・・・のかな?」

 

「NPCの代わりに私達プレイヤーが戦争に出る予定だからな」

 

「でも、戦争が終わった後が心配ですね」

 

集まっていたNPCの町民達がバラけ解散する。その中に居た町長を見つけてクエストの報告をした。

 

「おお、ありがたい。あの硬い氷壁を開けてくれたのなら儂達も食料を取りに行ける。さて、報酬何じゃが・・・・・スープでいいかの」

 

「スープ?」

 

「ただのスープではないぞ? 儂も一口も飲んだことはないが、この町の長になると100年に一度しか飲めないスープがあることを伝られる。そして丁度そのスープが飲める日は今日なんじゃが・・・・・ほれ、あれが証拠じゃ」

 

長がある方へ視線を向けて言う。釣られて俺達も見るとさっきまでいた山の上空にオーロラが発生していて、見る人の全ての目を奪っている。

 

「行ってくるといい。あのオーロラを発生させている場所は食糧庫の中であるらしい。アレが消えるまでの間は伝説のスープであるが、消えた後はただの冷たい水になる、と言い伝えられている―――」

 

「「「行ってきます!!!」」」

 

そんな特殊なスープがあるなら是が非でもゲットしなくちゃ損だろ! スキルで瞬時に食糧庫の中に転移した俺達は、オーロラを発生させている湖を見て、スクショしてからイカルとメイプルは手で掬って飲み、俺はスープを大量に確保する!

 

「お、美味しいっ!」

 

「すごく透明なのにいろんな味が凝縮したような、色んな味が・・・・・あ、スキルが手に入ったよ!」

 

俺も遅れてスープを飲んでみたらスキルが手に入った。二人も手に入ったスキルも共有する形で増える。

 

【極光】

 

相手の視力を十秒間奪う。またMPを消費することで様々なものに同じ効果を付与することができる。

 

【オーロラの羽衣】

 

魔法に対する被ダメージが20%増える

 

 

【天網恢恢(てんもうかいかい)】

 

一日一度だけ1000ダメージまで防ぐ極光の網を張る。網の大きさはMP100毎に半径1メートル。

 

 

「【八門遁甲】のスキルみたいなものが使えるのか」

 

「【極光】のスキルはどんな感じなんだろう?」

 

「じゃあ試してみますね?」

 

と、言ったイカルが【極光】を使った瞬間。イカルの小さな手が肉眼では見られないほどの強い光量を解放してメイプルと一緒に目の前が真っ白になった。め、目が~~~!!?

 

 

三分後・・・・・。

 

 

「発動者を中心に半径十メートル、最初から目を閉じてれば視力は奪えない、発動までに三秒は掛かる、放たれた極光が消失するのは一瞬、ということか」

 

「アイテムや武器に付与すると、私達の意思で何時でも光を眩しくできるみたいだね」

 

「【相乗効果】で色んなスキルに付与しなくてもいいみたいです」

 

これは面白い。投擲用の石に【極光】を付与したら閃光玉の代わりになるじゃないか。三人寄れば文殊の知恵と風に【極光】を調べてメスゴリラの吹雪のブレスの対策になるか考える俺達。

 

「あ、オーロラが消えましたよ」

 

「あっという間だったね。ハーデスさん、スープを集めてませんでした?」

 

「ギルドのみんなに飲ませるだけの数より集めたが、飲んだスープと同じ味なのかはまだわからない」

 

ということで、インベントリからスープの湖から採取したスープを出してみた。入れた覚えがない皿に入っていたスープの上にオーロラが発生していて感嘆の息を吐く二人の前で試飲。・・・・・? 何故か二人が信じられないものを見る目付きになってる? 何を見てる?

 

「お、お姉ちゃん・・・・・すごく変な顔をしてます」

 

「え? 顔の感覚、変な顔をしてるつもりもないぞ」

 

「えっと・・・・・何て言うか、こういう感じになってるよ」

 

俺の顔をスクショしたメイプルに見せられたものは・・・・・。口が裂けても言えないほどすごい変な顔をしてる。淫らな顔がさらに緩んだような、そんな感じの顔になってることを初めて知った俺は、両手で顔を隠して羞恥で身体を震わすしかなかった。

 

「・・・・・ステータスポイントが100も手に入るスープを飲む代わりにこの顔を晒せというのか運営め」

 

「誰かに見られないところで飲むしかないよね・・・・・」

 

「私もお姉ちゃんみたいな顔のままで外に歩きたくありません。変な顔のお姉ちゃんも見たくないです」

 

この後、10分経ったらようやくもとの顔に戻って俺だけじゃなくて二人まで心底からホッと安堵で溜め息を吐いたところで、フレンドコールが入った。誰かと思えばフレデリカだったので話を聞く。

 

「久し振りだなフレデリカ。何か遭ったか?」

 

『今何してる? 暇ならハーデス達が見つけた南極のダンジョンのレイドボスの攻略を手伝って欲しいんだけど』

 

「勇者が四人いるのに勝てなかったのか?」

 

『即死救の氷のブレスが厄介すぎてさー。どうやっても勝てないんだよ。ハーデス達はどうやって勝てたのさ?』

 

「即死級のスキルを使ってだ。そもそも戦った時は三人だけだったからブーケなんて持ってなかったし、メスゴリラのHPもそこまでなかったぞ。戦闘パターンは物理と氷塊を投げつける程度だった」

 

『・・・・・つまり、最大人数で戦うとレイドボスも相応に強くなって戦闘状態になるってこと?』

 

「そうかもな。だからと言って、強い事には変わりないからな。それとフレデリカの申し出は受け入れるよ。もう一度ダンジョンに入る用ができたからな」

 

『ん、ありがとうね。この際だからギルドの皆と挑んでみる?』

 

「声を掛けるなら任せるぞ。ただ、私達はすでに攻略済みで、ダンジョンに繋がる扉の鍵を手に入れている。もう一度戦えるかわからないぞ」

 

『鍵なんて必要なんだ? 取り敢えずそれは実際に来てもらわないと分からないから、私達は待ってるよ。早く来てねー』

 

フレデリカとの連絡を切り、二人に説明をすると快くレイドボス攻略の手伝いを受け入れ、スキルで温泉スポットがあるダンジョンの前に跳んだ。

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