バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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学園祭1

現実の世界での朝食時、シンプルな料理を作り肩を並べて食べながら燕と会話を楽しんでいた。主にNWOの事だ。

 

「イベントも終わってもう少しで文化祭ですね。ハーデス君としてならお化け屋敷がいいじゃないです?」

 

「そうであると驚かし甲斐があって面白そうだな。だけど、その日の俺は分身体と入れ替わるつもりだ」

 

「え、どうして?」

 

「カヲルにプレッシャーをかけるためだ。神月学園の文化祭の目玉は来賓してくる人達に対する召喚獣を使ったデモンストレーション。失敗は許されないことをあいつも解ってるから、嫌な緊張感を抱くだろう」

 

「生きた心地をしないでしょうね校長先生。ちょっと同情しちゃうよん。でも、そうなると一人で来るんですか?」

 

「いーや、この日のために調整をしてきたんだ。俺以外の王達も羽を伸ばしに来るつもりだ」

 

「・・・・・頑張ってください校長先生」

 

 

そして清涼祭が始まる前。

 

拝啓。桜色の花弁が徐々に姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。

僕らの通う神月学園では、新学年最初の行事である。『清涼祭』の準備が始まりつつあった。

お化け屋敷のために教室の改造を始めるクラス。焼きそばのために調理道具を手配するクラス。

この学校ならではの『試験召喚システム』について展示を行うクラス。

学園祭準備のためのLHR(ロングホームルーム)の時間は、

どの教室を見ても活気が溢れている。そして、我らがFクラスはというと―――。

 

『明久!こいっ!』

 

『勝負だ、ガクト!』

 

『てめぇの球なんざ、場外まで飛ばしてやる!』

 

『言ったな!?こうなれば意地でも打たせるもんか!』

 

準備もせずに、校庭で野球をして遊んでいた。

 

 

 

 

 

『・・・・・召喚獣も使役する季節外れのハロウィンをモデルにした喫茶店をしてみたい』

 

俺こと直江大和は校庭で野球をしているバカ共を余所に、

数少ないメンバーと『清涼祭』という学園祭の出し物を決め合っていた。黒板の前に立つ俺の隣に立つハーデスが一番初めにそんな提案をした。

 

「ハロウィンの喫茶店とはまた奇抜な。でも、現時点で学園祭でする出し物にしちゃいいと思う」

 

「ねぇ大和。ハロウィンの定番はお菓子でしょ?料理はお菓子系ってこと?」

 

「喫茶店をするんだから他の料理も出さなきゃ駄目だぞ」

 

ジュースにナポリタン、サンドウィッチに揚げ物と喫茶店ならではの料理は数多くある。コストが低くて美味しくたくさん作れる料理でなきゃ割に合わなくなる。

 

「ねぇ、お菓子なら私のお店が甘味処だからもしかしたら提供できるかもよ?」

 

「そう言えばそうだったな。小笠原、頼めれるか?学園祭で得た稼ぎで費用は返す」

 

「ついでにお店の宣伝にさせてもらうからね」

 

クラスメートの女子の提案でお菓子の方の目途は立った。後は衣装だがどうするか。

 

『・・・・・衣装はこっちで用意した』

 

「はーい、これだよ!」

 

松永さんがハーデスの隣で男用と女用の期間限定の衣装を両手で持って掲げた。ハロウィンらしく先が折れた帽子にフリルが沢山で黒と橙色を基調にしたドレス、可愛らしく描かれたジャック・オー・ランタンのプリントが張られてポケットもジャック・オー・ランタンの顏で施されている。男の方は顔を出すカボチャの頭の部分の着ぐるみに、ウェイターが着るような紳士的な黒服とこれもまたジャック・オー・ランタンのプリントが張られた黒いマント。

 

「へぇ、ドレスが可愛いじゃない」

 

「まさにハロウウィンを彷彿させる服だね」

 

ハーデスが準備をしてくるほど、学園祭が楽しみのようだ。

 

「因みにこれ、蒼天のデザイナーの人が試作で作ってくれたんだよ」

 

「試作?ああ、まだ出し物が決まってないからか」

 

「そうそう、決まったら逐一発注しないといけないけど、他に出し物の提案あるかな?」

 

と言われるが、学園祭でする出し物なんてたかが知れている。喫茶店だって他の学年の一クラスぐらいやるだろうし、初めにいの一番で提案したハーデスのハロウウィン喫茶店・・・・・。

 

「ハーデス、召喚獣も使うって言ったよな?教師側が召喚獣の召喚を許可してくれるのか?」

 

『・・・・・学園祭中に召喚大会がある』

 

「あー。なるほど、この学園の目玉はそれだから間近で召喚獣を見れれる喫茶店はうちのクラスだけ、つまり特権だな」

 

『・・・・・幸い、ここの設備は充実。見栄えもいい。それに学園祭中こっそり召喚獣の操作も向上できる』

 

そこまで考えてるハーデスには流石だと言わざるを得ない。

 

「一粒で二度も美味しい思いができるとは、お前が考えたのか?」

 

「考えたのは王様だけどね。学園長には召喚獣を使った出し物はするって事前に許可も貰ってるし、後はどんな出し物にするか決めるだけなんだよ」

 

流石すぎるよ旅人さん!

 

「じゃあ、ハーデスの『ハロウウィン喫茶店IN召喚獣』以外の出し物の提案を考えてるなら言ってくれ」

 

皆に尋ねるとハーデスの提案で構わないという意見を多く貰った。

 

「ところでウチらだけ勝手に決めていいの?代表の坂本抜きでさ」

 

「こっちはそれなりに学園祭に向けて真面目にやっている。

あっちは学園祭の準備すらやらず遊んでいる。発言権は俺達に有りだ。

後から何を言われようと、既に決まったことだ。文句は言わさない」

 

『・・・・・同意』

 

ハーデスもスケッチブックを前に出しながら頷く。この教室にいる女子と男子共に問う。

 

「んじゃ、取り敢えずこのメンバーの中からホールとキッチンのメンバーを決めよう。

まずは料理ができる奴は手を挙げてくれ。今から文化祭中のシフトを作成する」

 

キッチンメンバーを決めるために皆に訊ねたところ―――。島田、

ハーデスをはじめFクラスの数少ない女子である小笠原千花、甘粕真与が手を挙げた。

よし、俺も含めてこのメンバーをキッチンにしよう。これから修正するつもりで軽く黒板に予定を書いていくと。

 

「あ、あのー直江君。私も手を挙げているんですけど、

どうして黒板に私の名前が無いんですか?」

 

―――やっぱり訊いてくるか。

 

「ああ悪い、姫路はホールの方が適切なんだよ。適材適所ってやつだ。

姫路の可愛い容姿と抜群なスタイルで客寄せを頼みたい」

 

「わ、私もお料理がしたいです」

 

『・・・・・』

 

「ハーデス!頼むから教室に血で汚すようなことをするな!姫路を何とかホールにして

もらうように説得するから!」

 

姫路の発言に大鎌をどこからともなく取り出すハーデスに苦労が絶えない俺だった。どうしてこうなった。まさか、姫路があんなおかしなところがあるなんて今でも信じられないぞ。

 

「ねえ、姫路って料理できないの?」

 

「小笠原、できるできないの問題じゃないんだ・・・・・。後で教えるから何も言わないでくれ」

 

「ふーん?分かったわ」

 

取り敢えず、キッチンの時間割は・・・・・こんな感じでいいだろ。

 

『貴様らッ!学園祭の準備をサボって何をしているか!』

 

『全員鞭叩き10回だ!』

 

もうすぐ戻ってくるだろうあいつらも聞かないとな。

 

「じゃあ、次ホールの方は・・・・・ハーデスは無理だな。その姿じゃ」

 

『・・・・・試験召喚大会で宣伝ぐらいはしておく』

 

「大会に出るのか?商品が目当て?」

 

俺たちが通うこの神月学園には、世界的にも注目されている『試験召喚システム』

というものがある。今年はその注目されているシステムを世間に公開する場として、

清涼祭の期間中に『試験召喚大会』という企画が催されるらしい。

俺はこれといって興味がないけどな。

 

『・・・・・俺の存在を世界中に知らしめる』

 

「お前、どれだけ出しゃばりなんだよ・・・・・」

 

『・・・・・冗談。優勝賞品に興味深い腕輪がある。それが欲しい』

 

「ああ、そう言えばそういうのがあったな」

 

まっ、ハーデスが出るなら間違いなく優勝できる。あの大会は二人組まないと参加できない。

 

「って、『試験召喚システム』を開発した蒼天から来たお前に直接貰えないのか?」

 

『・・・・・本国から稼働データのためと送られてくるなら話は別』

 

「なるほど。学園側がお前を贔屓するわけもないか」

 

蒼天の出身者とは言え、この学校にいる限りは一生徒。ということか。

 

段上の奥から校庭で野球をしていた奴らが戻ってきた。・・・・・何人か恍惚の表情を浮かべているのは

無視しよう。クラスメイト全員が戻るや否や、鉄人が降りてきて教卓の前に立った。

自分の隣に見知らぬ外国人の少女を立たせて。

 

「どうやら、学園祭の催しは決まっているようだな」

 

「はい。俺達だけで決めさせてもらいました」

 

「こんな馬鹿共の中にでもまともな生徒がいてくれて俺は正直安心している」

 

・・・・・なんと返事をして良いやら。

 

「さて、お前らに伝えないといけないことがある。

―――このクラスに転入生が加わることになった」

 

『はい?』

 

この時期に転入生・・・・・?

 

「先生、本当ですか?」

 

「教師が生徒に嘘を吐くものか。お前達が不思議がるのも無理ないが受け入れろ」

 

鉄人は顔と視線を隣にいる少女に自己紹介の促しの言葉を告げた。

綺麗な金の長髪に赤いリボンが結ばれていて、瞳が青い外人の彼女は口を開いた。

 

「私の名前はクリスティアーネ・フリードリヒ!ドイツ・リューベックより推参!

この寺小屋で今より世話になる!」

凛々しく、ハキハキと軍人のように自己紹介をした。

 

「おおお、金髪さん!可愛くね?マジ可愛くね!?」

「超、当りなんですけどぉぉぉぉぉ!!!」

 

『うおおおおおおおっ!金髪美少女キタァァァァァァァァァッ!』

 

凛とした声と立ち振る舞いに、男子達は見惚れていた。興奮していた。

 

「へぇ、ドイツから来たんだ」

 

モロが感嘆の声を漏らす。

 

「なんだか個性的なキャラが現れたって感じだぜ」

 

キャップは面白そうに笑う。京は興味がないとばかり本に夢中。

 

「あの子、強いわね。決闘を申し込んでみたいわ」

 

ワン子は彼女と戦いたいようで、ウズウズしている。

んで、ガクトは変態顔で彼女を凝視している。

 

「ええい、静まらんかこのバカ共が!」

 

シーン・・・・・・。

 

鉄人の一喝により、Fクラスが静寂に包まれた。

 

「すまんな、このクラスはバカしかいない。

頭を抱える学校生活になるかもしれんが我慢してくれ」

 

「大丈夫です。問題ございません」

 

「うむ、いい返事だ。空いている席は・・・・・あの髑髏の仮面を付けている生徒の隣だ」

 

「分かりました」

 

クリスティアーネは視線を自分の席に向けた時。一人の男子が手を挙げた。

 

「クリスティアーネさん!質問いいですか!?」

 

「ああ、いいぞ」

 

「じゃあ、クリスティアーネさん。俺と付き―――」

 

『異端審問会を開く!』

 

『『『『『了解でございます!』』』』』

 

「って、ぎゃああああああああっ!」

 

・・・・・Fクラス男子達が殺気立っている・・・・・。

俺も彼女と話しただけで異端審問会に掛けられてしまうのか・・・・・。

 

「・・・・・なんだ、アレは?」

 

「ああ、アレは気にしなくて良いわ。クリスティアーネさん。

ドイツ出身なのね?ウチもドイツの帰国子女なの」

 

「おお、そうだったのか。えと名前は・・・・・?」

 

「ウチは島田美波。趣味は吉井明久を殴ることよ☆」

 

「・・・・・それは趣味といえるのか?」

 

言えない!そんな物騒な趣味を外国人の転入生に教え込むな!

 

「ねえねえ、クリスティアーネ!」

 

ワン子?

 

「自分としてはクリスと呼ばれることを希望する」

 

『『『『『クリスさぁああああんっ!!!!!』』』』』

 

『『『『『『『『『『愛しているうぅっ!』』』』』』』』』』

 

「・・・・・すまない。恋愛事はまだする気が無い」

 

Fクラス男子の殆どが机に伏して血の涙を流した・・・・・・。

 

「じゃあ、クリス。なにか武道とかやっているの?」

 

「フェンシングを小さい頃からずっと」

 

「YES!じゃあ、あなたの腕を確かめたいわ!」

 

ワン子はワッペンを取りだした。そのワッペンを見た皆は目を丸くする。

 

「おいおい、マジかよ?」

 

「うはっ!久々に決闘が始まるのかよ!」

 

この神月学園には『試験召喚システム』の他にも切磋琢磨、

相手に直接肉体的な意味で決闘を申し込むこともできる。この町は武家の家系が多いから純粋な

力比べ、物事を決着を白黒つけるために決闘も行うことがある。

 

「クリスティアーネ。川神はお前に歓迎の義をしたいそうだが。お前の意志はどうだ?」

 

「なるほど、新入り歓迎ですね?分かりました。受けて立ちます。―――ただ」

 

「む?」

 

「私は・・・・・あの髑髏の仮面の者と決闘をしてみたいです」

 

―――☆☆☆―――

 

『これより、第一グラウンドで、決闘が行われます。内容は武器有りの決闘。

見学者は第一グラウンド―――』

 

グラウンドに学園祭の準備をしているはずの生徒達が集まってくる。

本人達の希望があれば見学不可もできるが。

他のクラスや違う学年も面白がって集まってくるのでお祭り状態だ。

 

「ハーデス、大丈夫かしら?あいつ、強いわよ?」

 

「大鎌を軽々と振るうぐらいだから・・・・・それなりに戦えるだろう」

 

グラウンドの方へ目を向ける。

 

「これより、神月学園伝統、決闘の儀を執り行う!

二人とも、前に出て名乗りをあげるがいい!」

 

この学園の理事長である川神鉄心が審判を買って出ている。

 

『・・・・・二年Fクラス、死神・ハーデス』

 

「今日より二年Fクラス!クリスティアーネ・フリードリヒ!」

 

「ワシ、川神鉄心が立ち会いのもとで決闘を許可する。

勝負がつくまでは、何があっても止めぬ。

が、 勝負がついたにも関わらず攻撃を行おうとしたらワシが介入させてもらう、

良いな?」

『・・・・・了解』

 

「承知した」

 

「いざ尋常に、はじめいっっっ!!!!!」

 

理事長の開始宣言と共に決闘は始まった。

 

「参る!」

 

『・・・・・』

 

クリスが鋭く突貫する。手に持っている武器はレイピア。

全身を使うスポーツでもあるため、身体能力も高いはずだ。

 

「はぁっ!」

 

狙いを違わず、クリスのレイピアはハーデスの身体に吸いこまれるよう貫いた―――!

 

「って、えええええええっ!?」

 

「さ、刺さった・・・・・?」

 

信じられないと唖然になる。いくらなんでもあっさりすぎる。

だが、誰から見てもハーデスの身体にレイピアが刺さっているのが分かる。

この後、どうなるんだ?様子を窺っていると、

 

「―――いや、あの髑髏の仮面の男は防いでいるぞ」

 

「ね、姉さん!?」

 

「よお、弟よ。何だか面白そうなことになっているじゃないか」

 

俺より身長が高く、赤い双眸に甘い香りがする黒い長髪にドギマギしてしまう。

 

「姉さん、防いでいるって・・・・・?」

 

「マントを貫いているが、その中身はどうなっているんだろうな?」

 

姉さんの言葉に俺は改めてハーデスを見やると、ハーデスの腕がマントから出た。

クリスが突き付けたレイピアの先端を摘まんで受け止めていた。

 

「な?」

 

「・・・・・あいつ、簡単にクリスの攻撃を受け止めたってのか」

 

「それだけじゃないんだ。あの仮面の奴、まったくの気を感じさせない。

気を完全に抑え込んでいる」

 

「え、それって・・・・・」

 

「ああ、強いぞ」

 

ハーデスが動く。レイピアを手放して後方へ距離を置いたと思えば、足を大きく振り上げた。空ぶった?と思った俺の視界にグランドの地面を削りながらクリスへ迫る何かの攻撃を放った。

 

「っ!」

 

避けるクリスに当たらなくても十数メートルまで地面を削った。な、なんだよあれ・・・・・。

 

「姉さん、今のハーデスの攻撃ってわかる?」

 

「・・・・・気の攻撃ではないことは確かだけど、ただの蹴りで斬撃を飛ばしたかもしれない」

 

「姉さんでもできるか?」

 

「大気圏外まで跳躍できるぐらいだが、斬撃を飛ばすことは多分今の私にはできないだろうな」

 

人間離れしてるな相変わらず。でも、ハーデスの技を見ると姉さんに負けないぐらい人間離れしてるってことか。

クリスとの戦いを経て強さの片鱗を見せるハーデスは手の中で光剣を生み出した。あれ、どうやって作ったんだ?

 

「ジジイと師範以外にもあんなことできる奴は初めて見た・・・・・っ」

 

姉さんから聞こえる、感想のような言葉から興奮している感じに聞こえた。そして二人の戦いは一方的になった。剣の達人でもない俺から見ても振るう動作、突く鋭さはとても綺麗でまるで踊っているようにも見えた一連は、クリスを追い詰めていき、やがて押されている彼女の足を足で払い、ハーデスも倒れながらクリスを押し倒して馬乗りになった状態で光剣を首の真横に突き刺して止まった。

 

「そこまで!勝者ハーデス!」

 

あっという間に決着がついた。あいつ・・・・・強いな・・・・・。

 

「あいつ、少しも本気を出していないな」

 

「え、マジで?」

 

「ああ、さっさと終わらせるために倒したようだな。―――――はは、こいつは面白い奴を見つけた!」

 

そう言って姉さんがハーデスの下へと歩み寄った。

その時、ハーデスに弾丸の如く赤い何かが飛び掛かった。

ハーデスは自分に向かってくる何かを察知し、腕で防いだ。

 

「久しいですね。死神」

 

その正体は赤い長髪に眼帯を装着している軍服を身に包んだ女性だった。

ハーデスの光剣に鉄製のトンファーがぶつけられていた。

というか、彼女はハーデスと知り合いなのか?

 

「次は、私と勝負しなさい」

 

『・・・・・』

 

女性の言葉にハーデスはフルフルと首を横に振った。

 

「何故です?」

 

『・・・・・』

 

「・・・・・なるほど、分かりました。必ずですよ」

 

何を分かったんだ!スケッチブックで伝えられたわけでもないのに何が分かったんだ!?

 

「あれ?美人なお姉さんだな。誰だ?」

 

「私はマルギッテ・エーベルバッハだと知りなさい。

今日より二年Sクラスに所属します。武神、川神百代」

 

んなっ、よりによってSクラスかよ!戦力が増強しているじゃないか!

 

「おー、よろしくな。それはそうと、死神。今度は私と勝負しよう♪」

 

「こら、モモ!既に決闘は終わりじゃ!さっさと自分のクラスに戻って学園祭の準備をせんか!」

 

「えー!いいじゃんか、ちょっとぐらい!」

 

 

―――☆☆☆―――

 

 

午前の授業は終わり、僕達はクリスさんも誘って屋上に昼食会を開いている。

 

「クリスさん、凄かったよ」

 

「いや、私はまだまだだ。死神ハーデスはやはり強かったからな」

 

「え、ハーデスと知り合いなのか?」

 

「いや、私が敬愛している軍人から聞いたんだ。骸骨の仮面を被った

黒いマントの者が紛争地域で敵の血を一滴も浴びず、

次々と首を刎ね飛ばしていくところを何度も見掛けたと」

 

『・・・・・』

 

それを聞いて、僕達はハーデスに目を向けた。召喚獣も相手の召喚獣の首を刎ねていたけど、

それってリアルでもしていたから簡単にできていたってこと・・・・・?

 

「ほ、本当にお前は人を殺したのか・・・・・?」

 

『・・・・・』

 

ハーデスはスケッチブックに書いて、僕達に伝えた。

 

『・・・・・戦争で苦しんでいる人間を解放するために敵をさっさと倒したまでだ』

 

首肯の意味の言葉がスケッチブックに書かれていた。

だからだろう、姫路さんや島田さんが顔を青ざめる。

 

「彼と彼の国の蒼天は昔から何度か世話になっていると父からも聞いた。

 まさか、この地にいたとは予想外だったが」

 

「世話になってるって具体的にどんな?」

 

「私も深くは聞いていないが、軍事に関する事だとは知っている。ドイツ軍の兵士達の能力を強化したり戦闘訓練をしたりとか」

 

「蒼天ってそんなこともするのか?」

 

「たまにするそうだぞ、他国との戦争規模の模擬戦を。そして蒼天の兵士達は強い。現代兵器を凌駕する兵器でドイツ軍に圧倒的な強さで勝ったのだから父はあの国の兵器にかなり興味津々なのだ」

 

国同士の交流をしてるなんて話、実際している人の関係してる人の話は初めての経験だ。

 

「ドイツの軍人といえば、Sクラスに新しく入った軍服を着た女がいたが、クリスの関係者か?」

 

「そうだぞ。マルさん、マルギッテ・エーベルバッハは現役の軍人で、私が尊敬する人だ。死神、マルさんに何て言ったんだ?」

 

『・・・・・学園祭が終わってから勝負する約束』

 

だからあっさり引いたのか。納得したよ。

 

「そう言えばSクラスってあの教室でどんな出し物をするのかな」

 

「英雄のことだから金で物を言わせて改造しているだろう。そんでド派手な出し物をするに決まっている。

 これ確定な」

 

「何でそこまでわかるんだ?」

 

雄二の質問に僕も同感だと頷くと、大和の口から驚かされる言葉を聞かされた。

 

「幼馴染だからだ」

 

「えええっ!?」

 

「まー、驚くよね普通」

 

「あんな性格の野郎と幼馴染の関係なんて誰も信じられないだろうよ。中学になるまでは、まだそれなりに一緒に遊んでいたんだからな」

 

「それからは全然遊ばなくなったもんなー」

 

「あの人は仕事で忙しくなっちゃってそれどころじゃなくなったからね」

 

「あの暑苦しくて騒々しさがなくなったた一時はちょっと寂しく感じたわねー」

 

あの九鬼君と幼馴染だなんて意外過ぎる・・・・・。いつも風間ファミリーを見ている分、そこに九鬼君が加わって遊んでいるとことなんて一度も見たことが無いから余計に唖然としてしまう。

 

「じゃあ、久々に英雄んとこに行こうぜ!」

 

「ワン子、時間が被ったら一緒に学園祭を回って見たら?」

 

「そうしてみようかしら」

 

久しぶりに学園祭だけど遊べるかもしれない機会に風間ファミリーは九鬼君と会うことに楽しむ。大和が「土屋に情報収集―――一日だけ風間ファミリー全員抜けれる時間―――」と言っていたのが聞こえた。

 

だけど、僕らはこの時知らなかった。学園祭当日、とんでもないことが起きるなんてことを。

 

 

学園祭当日。

 

「久しぶりねー。皆とこうして出掛けるなんて」

 

「偶然ではないことは確かよ。この男なら簡単に私達のスケジュールを変えるなんて朝飯前でしょ」

 

「当然だろ。この日の為にちょっとずつ調整したんだからな。嫌なら帰って仕事でもするか?」

 

「嫌だなんてとんでもないです。貴方と一緒に楽しむ一時はとても嬉しいです」

 

「私もです。だから今日は思いっきり楽しみましょうね!」

 

一人の男と四人の女性達が神月学園の門をくぐった。

 

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