イッチョウside
私達に向かってそういうハーデス君の言葉に、ペイン達が副マスの私の指示を待つ姿勢で目を向けてきた。
「だってさ副マス。俺達はどうするよ?」
「【蒼龍の聖剣】はこの戦場と隔離された道から敵本陣に向かうよん。全員、【月歩】のスキルを使って崖へ移動! 【月歩】のスキルが無いプレイヤーにはピクシードラゴンの背中に乗せてあげるか、【月歩】のスキルがあるプレイヤーが背負ってあげて!」
「「「「「「「「「「了解!(わかった!)(おう!)(はい!)」」」」」」」」」」
指示通りに動き出す仲間達を背にして左右にある互いの城に行くことができる道へ。城まで戻って行く時間が惜しいからショートカットで向かうとハーデス君の言う通り、戦場と隔てる崖の奥に城と繋がっている道があった。雪が無いのは幸いだ。これなら―――と思いつつ、そこに降りて開始時間まで考えた作戦を伝えながら待つこと数分後。隔てていた光の壁が消失した直後に崖の反対側からプレイヤーの雄叫びが聞こえた。私達も動き出してアイムソウリー王国の城へと走り出す。
「太陽の石を確保したら、ドレッドがハーデス君に届けてね」
「ああ、わかった」
【蒼龍の聖剣】の中でAGIが一番高いドレッドに任せた方が私達より安心できる。このイベント、一度でも死に戻るすると再復帰が出来ない仕様になっている。防御力が高いと死に戻りする心配が減るから皆もそれがわかってハーデス君を選んだのは当然と言える。
「あ、敵がいるぞ! こっちに来る! ヘルキャットも大量だ!」
ハーデス君の予想通り、敵も戦闘を避けてこっちの道を選んできたみたいだね。同じ考えをするってわかっているなら―――。
「全員、左右に分かれて! ガンナープレイヤー、お願い!」
「「「「「「「「「「任せろー!!」」」」」」」」」」
ブォンブォンブォオオオオオオオオン!!!
左右に広がって中央に無人の空間を作った私達の一番後ろから車やバイクを乗った世紀末の暴走族のプレイヤーになった味方が追い越して敵プレイヤーへアクセル全開で突っ込んでいった。
「「「「「「「「「「ヒャッハー!!!」」」」」」」」」」
「く、車ぁああああああああああああ!?」
「出たぁー!?」
「ちょ、マジで突っ込んでくるなぁー!!?」
うーん、リアルで車の危険性を知っているからこそ利用できる恐怖心を利用した精神攻撃。敵さんが足を竦んで避ける暇もなく轢かれて吹っ飛ばされていく。運転しながら銃を撃つからさらに危険度が高まる。
「敵のヘルキャットを攻撃!」
「「「「「了解! いけー!」」」」」
「「「「「ニャー!!」」」」」
こっちもヘルキャットを召喚して敵のヘルキャットに襲わせて戦わせる。うーん、リアルの猫同士の喧嘩を見ている気分だね。ヘルキャット達には申し訳ないけどここの放置して私達は先に進む。
「敵のプレイヤーはどうする!」
「放置だよ! 後ろから来ても構わない! アレがあるから!」
そのアレとはすぐに分る。私達が轢かれたプレイヤーを放って城へ向かった後。
「クソ、ゲームじゃなかったら重症か即死ものだぞあいつら・・・・!」
「怖ぇ、マジで怖かった・・・・・死んだかと思った・・・・・」
「どうする、追いかけるか? それともこのまま城へ進むか?」
「そりゃ・・・・・は?」
キュラキュラキュラッ!!!
「ふはははは! トドメはこの戦車の砲弾だ!」
「「「「「は?」」」」」
「徹甲弾、てぇっー!!!」
「「「「ヒャッハー! 俺達の弾もくらいなぁー!!」」」」
「「「「「「「ちょ、ま―――!!?」」」」」」」
ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!
えーとT28重戦車とか言う漆黒の戦車が車長のプレイヤーの号令で撃った砲弾が、轢かれても死に戻りしなかったプレイヤー達に直撃して大変凄い爆発が起きた音だね。ある日、宇宙戦艦を購入できるカジノのVIPルームに鎮座していた戦車を見てほしくなったプレイヤーがハーデス君に懇願したのが始まりで・・・・・。
『使う時は来るんだろうが、アレ物置にしかならないぞ』
『たのんます!!! 必ずあの戦車で白銀さんの役に立ってイベントの勝利を貢献しますから!!』
『えー・・・・・じゃあ、スライムのジェルを1000個集めたら買ってあげるよ。砲弾と燃料も込みでだ』
『あざーす!!!』
という条件をクリアした末にハーデス君の財力を借りてゲットしたらしい。ハーデス君からそんなことがあったと話を聞かされたから覚えてるし、なんならどの戦車も燃料を補給すれば動き続けるけど、装甲の防御力がそこまで高くなくて、プレイヤーに群がれるとあっという間に壊される乗り物としては貧弱なのにとも愚痴を零したことも覚えてる。しかも重戦車故かAGIが0だからめっちゃくちゃ遅い。
「ヒャッハー! フラッグ発見だぜえっ! でも、先に敵が占領中! 数は五十以上だ!」
先行したヒャッハーの連絡が入った。彼等だけじゃあ負けなくても勝つのも難しい。急がないとハーデス君の防御力のバフが消えちゃう。
玉座から混戦中の戦場を見ているしかできないかと思っていたが、予想外にも戦況はアイムソウリー王国側が優勢だった。中央の戦いをしてる味方が押され気味でフラッグが占領されかけている。中央のフラッグは獲られて欲しくはないが・・・・・あれま、完全に占領されたか。味方のバフも消え去ってもとのステータスに戻っては、どうしようもない。
「左右の道から城へ向かう味方に告ぐ。中央広場のフラッグが敵に奪われ、味方を減らしながら城とお前達の背後から近付いてくる。気を付けてくれ」
ミィside
左側の城と一直線に繋がってる道にあったフラッグの占領中に中央の戦況が極めて優位であると代表から報告され、最後の一つのフラッグの占領した報告はない。しかし、このまま行けば私達の勝ちである認識がミザリー達以外の味方の油断を招いた。
「ヒャッハー!!」
道の奥から車やバイクを走らせるおかしな格好をした集団が血に飢えた顔と鋭い目付きで突っ込んできた! 噂に聞く【蒼龍の聖剣】の世紀末の暴走族か!
「【炎ーーー】」
「撃ちまくれぇー!」
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
耳が発砲音を聞こえた認識するよりも先に私の攻撃をキャンセルさせる銃撃が当たり、味方にも一瞬だけ怯みさせた隙をついて全力で突っ込んできた車にフラッグを占領するためのサークル内から弾き飛ばされてしまったされてしまった! 後もう少しで占領できたというのに、キャンセルされると0からやり直しになるのかっ。そしてサークル内に入る彼等が占領するので、私達は急いで奪い返そうとするがーーー彼等の武器、銃が無数ある砲身を一つに纏めた銃に変えた様子に思考が停止しかけた。
「おぅら、食らいやがれぇー!」
「ガトリングの味をたんまりとなぁー!!」
「ヒャヒャヒャヒャッー!!」
あれは、防ぎようがない!
「撤退する! 一度後退しろー!!」
「俺が受け止める!」
クロムが私の前に立ち大盾を構えた次の瞬間。ガトリングの弾が雷のごとく飛んできて、クロムの背後にいる私を含む【炎帝の国】の主力メンバーを残し、ほぼ逃げようとした味方の背後から撃たれていく。
「【ヒール】! 【エリアヒール】! 【護身の光芒】!」
「くそ、ガトリングガンってこんなに強いのかよ! 手が痺れる! 盾越しでも凄い衝撃だぞ!」
「私が隙をついて斬る」
「いや待てカスミ。出た瞬間に蜂の巣にされちまうぜ。俺の【崩剣】でガトリングを撃てなくする」
「どっちでもいいから早く何とかしようよ~! ・・・・・あ、ヤバい」
何がヤバいのか分からないが、この地響きの揺れは味方のではないことぐらいはわかっている。そして日差しを遮るほどの大きな影が私達を覆い被せる何かを見上げると、漆黒の巨獣の足が迫っていた・・・・・!
「銃撃が止まった! 俺が一瞬でも受け止めるから逃げろ!!」
「すまない! 【フレアアクセル】!」
ミザリーとマルクスを脇に抱えて足元の炎を爆発させながら城へ駆け出す。カスミとシンも後から追いかけてきて、尻目にクロムが巨獣の足に踏み潰されず、弾くように私達の方へ叩いて飛ばしてきた。そのまま壁に激突してしまったがなんとか生き残ったクロムに安堵する。だが、この場のフラッグは譲るが勝利条件はもうひとつある。そちらに注視すれば我々の勝ちだ。中央のフラッグはこちらが押さえているのだからな。恐らくスノウリー王国の代表プレイヤーはハーデスだ。彼がいるのといないのとでは戦力の差が大分違ってくる。この機を逃がすわけにはいかない!
フレデリカside
「何かと【炎帝ノ国】と戦うことよくあるな」
「それよりも中央のフラッグを取り戻さないと!」
「ここの防衛も必要だ。ミィ達は未だに健在だ。だから少数精鋭の部隊を分ける必要がある。イッチョウも構わないね?」
「うん、ペインの言う通り少数精鋭で行くべきだね。でも中央のフラッグも無視できないから・・・・・イカルとメイプル、マイちゃんユイちゃんを含めた部隊は中央のフラッグを取り戻す。アイムソウリー王国の太陽の石の奪取を目的とする部隊はミィ達を倒す意味も兼ねてペイン達が。それ以外のプレイヤーはここのフラッグの護衛。私達が来た道から挟み撃ちする敵プレイヤーが来てもおかしくないから何がなんでもフラッグを守って欲しい。みんなお願いします」
「「「「了解副マス!!」」」」
不意にハーデスから連絡が入った。
『城に敵プレイヤーが雪崩れ込んできた。太陽の石を守り抜く間にそっちも気を抜くな。城の構造が同じなら、上を目指せ。空中庭園に太陽の石と代表プレイヤーがいるはずだ』
ヤバい!? もう時間がなさそうじゃん! イッチョウが攻撃と防御特化の四人とテイマーを中心とした部隊を中央に行かせ、私達はガンナープレイヤーの半数と城へ飛び込み、イッチョウが残りのプレイヤーを従えてフラッグの守りに入った。
「【炎帝】!」
「ふっ!」
城の搭内に入るや、いきなり飛んできた炎を剣で斬るペインに私達は助かった。目の前にはミィ達が立ち塞がっている。
「この城に守りがいないと思っているまい。ここから先は通さないぞ【蒼龍の聖剣】」
「ならば、別の方法で行かせてもらうよ。俺達しかできないことでね」
あ、察した。悠々と搭の外へ出ては先に【月歩】で宙を走るペインに私達も追い掛ける。後から出てきたミィ達の顔が愕然としていたのを忘れられない。そのままショートカットする私達は、外から空中庭園を見つけては石造りの椅子に座っているプレイヤーとそのプレイヤーを守るたくさんのプレイヤー、最後に橙色の半球状の石の前に現れて・・・・・。
「時間はないからね。早々に終わらせよう」
うん、やっちゃおうか。今頃ハーデスが一人で奮闘している頃だろうしね。いまの現状をハーデスに教えておこっと。
「なるほど、どっちもそこまでの状況になってるようだな」
「「「「「っ・・・・・」」」」」
空中庭園にまで押し寄せてきた敵プレイヤー達は最初は勇ましく攻めてきたものの、俺を倒すことも宇宙の星塊で包み込んだ太陽の石を奪えず攻めあぐねるばかりで向こうからすれば手も足も出せないでいる。優雅に玉座に座る俺を立たせることもだ。なにせ、俺を守る従魔をほぼ召喚しておいてるから攻めにくいだろう。
「戦況はお前達の方が有利に傾いているものの、個人の勝負ではこっちが有利のようだな」
敵が目の前にいながら観戦する俺の独り言を拾うプレイヤーが勝手に応じた。
「だとしても俺達が勝つぜ白銀さんよ。フラッグを全部奪えば俺達の勝利だ」
「知っている。が、中央の戦いはまだ終わっていないようだぞ」
映像に溶岩のリヴァイアサンが、数多のモンスターが中央の戦場に現れて大暴れを始めた。フラッグを占領したから守る必要はなくなった油断がその隙を突かれて、敵プレイヤー達の混乱があっという間に伝播していくのがわかった。フラッグを占領するテイマー達に慌てるプレイヤーは、イカルとメイプル、破壊を司る姉妹の猛威に蹂躙されてフラッグに近付けずにいるな。
「奴らが奮戦しているんだ。のんびりと座っているわけにもいかない、な」
立ち上がる俺に呼応して従魔達も臨戦態勢に入ったのを見て敵プレイヤー達から緊張の色が浮かび出した。
「この魔王に勝てもしなければ太陽の石は獲れぬ道理はないことを知るがいい」