「【蒼龍の聖剣】だぁー!!!」
「バフを無効にしてるのに何で強いんだよ!?」
「元々白銀さんの防御力の影響を受けているプレイヤー達だぞ! ここのフラッグを取られたら手の打ちようがなくなる!」
「こっちには一体どれだけの数がいると思っている!? なんで押し返せれないんだ!」
「攻撃しろ攻撃ぃ! 【悪食】で対応するんだ!」
新たに戦火が燃え広がるは、∞に描き銜えた聖剣を交える二匹の蒼龍のエンブレムの旗を心に掲げるプレイヤー達。その最たるプレイヤーを始め、数々のプレイヤーがモンスターの姿を借りてモンスターの力を借りながら戦う様は烈火の如く。強力なスキルで応じようと通常のプレイヤーなら即死の一撃が、破壊することが容易い武器や盾を積極的に狙う―――が。
「は? なんで壊れないんだよ?」
「ざんねーん、【悪食】対策に破壊不能の武器にチェンジしたんだよ。これ、オリハルコン製の装備だぜ」
「んなっ、オリハルコン!?」
「ここまで気を遣ってくれた白銀さんに情けない所を見せられるはずがないだろうがぁー!」
【悪食】でもってしても破壊できない【破壊不能】のスキルがある装備で固められては即死は難しい。戦闘力が乏しい職業でも装備を整えれば戦えるよう運営の思惑通りになったプレイヤー達は【悪食】の脅威を物ともせず、メイプルが展開する巨大樹で味方プレイヤーのHPを自然回復で徐々に癒しフラッグの占領を―――。
「【原初の火】―――【罪禍ノ神炎】!」
突如として毒々しい業火がフラッグを占領しているプレイヤーを中心に広範囲で燃やす。味方も巻き込んでしまっているが、見えない範囲で巻き込んでしまったなら勝利した後に謝罪をと考えを抱く【炎帝ノ国】のミィが仲間を連れて中央の戦線に参加した。
「ここにも【蒼龍の聖剣】かよ」
「来て正解でしたね。危うくフラッグが取られていました」
「まだ危ないのは変わらないけれどね・・・・・」
溶岩のリヴァイアサンが無数に飛ぶ剣と周囲から大勢のプレイヤーに囲まれて攻撃を受けている姿が楽観視できなく、いつこっちに来るか分からない恐怖を覚えるマルクスの隣でカスミがミィに問いを投げた。
「相手が死に戻りするまでこちらもフラッグの占領ができないな」
「占領されるよりはマシだ。ミザリー、スノウリー王国陣営の城の状況は?」
「少々お待ちを・・・・・予想通りスノウリー王国陣営の代表プレイヤーはハーデスさんですが、依然と突破も太陽の石の回収も出来ていないみたいです。やはり、全てのフラッグの占領をするべきですね」
連絡係としてハーデスのところに送り込んだ【炎帝ノ国】のメンバーからの現状報告を得る。顎に手をやって絶対に倒れないプレイヤーが一番後方にいて、勝利条件の一つを達成させない姿勢でいる。もう一つの条件である三つのフラッグをすべて占領、どちらが比較的に勝ちやすいかなど火を見るより明らかだ。
「わかった。【罪過ノ神炎】を解く―――」
『アイムソウリー王国陣営の代表プレイヤーが討ち倒されました。これによりアイムソウリー王国陣営側の全プレイヤーへのバフが無効になると同時に全ステータスが20%下がります』
『太陽の石(欠片)が奪取されました。急いで太陽の石(欠片)を取り戻してください』
「「「「「っっっ!?」」」」」
自分達の陣営が不利になったアナウンスが流れた直後に、ミィの炎が聖なる光にかき消され、金髪で青い瞳の可愛らしい天使になったメイプルが真っ白な装備と無傷の姿で現れた。占領していた味方プレイヤーも誰一人欠けずHPの自然回復の恩恵を受けている。
「危なかったー。ハーデスさんのこのスキルを使うのに手間取っちゃった」
「でも、ありがとう! 助かったし、ここのフラッグも占領できた!」
「俺達も攻勢に切り替えるぞー!」
「覚悟しろよお前らー!!!」
メイプル達の頭上に天使の輪っかが浮かんでいる。【罪過ノ神炎】は系統:悪のスキルゆえに【聖歌の祝福】の効果の対象となり上書きされる形で消失されてしまったことに瞬時で察したミィ。
「ハーデスのスキルをお前も使えるのかメイプル」
「私だけじゃなくてイカルちゃんもね」
故にハーデスが三人もいるようなもので、マルクスがそんな真実を受けきれずめまいを起こし、ミザリーとカスミはVITの数値の差が違うだけのプレイヤーの存在の事実に冷や汗を流す。ミィは掌に炎を燃やしながら冷静に言う。
「つまりお前を攻略すれば自ずとハーデスを倒したと同じ道理だな」
「負けないよー! 【毒竜】!」
「俺達もいることを忘れては困るぜ! 太陽の石が白銀さんのところに渡れば俺達の勝ちだ!」
「そうなる前にフラッグをすべて占領する! 【炎帝】!」
中央の戦いは【蒼龍の聖剣】と【炎帝ノ国】が主戦となって互いの勝利を譲らない激しいものとなっている間、スノウリー王国陣営の代表となったハーデスは魔法と【体術】を駆使して敵プレイヤー達を倒し続けていた。
「食らえ【悪食】―――!」
手を突き出すプレイヤーの手首を掴み、剣を打ち落とそうとしているプレイヤーへ引っ張って凶刃とぶつけると【悪食】の効果がその剣の耐久値を消し飛ばして破壊してしまった。
「さ、最大まで強化した俺のレア武器がぁあああああああああああ!?」
「手を触れなければ脅威ではない。逆に受け流して同士討ちに引き起こす。集団戦に慣れていない時に使うのはオススメしない」
「こ、この―――!」
「ペーン!」
「我が主君には近づけさせん!」
「最強の魔獣の力を思い知るにゃー!」
ペルカが口から火炎を吐いてハーデスに襲い掛かろうとしたプレイヤーを燃やし、猫の騎士ラミアースがレイピアで鋭く突き、フレイヤがプレイヤー達からステータスを奪って糧にした力でダメージを与えていく。
「クママー!」
「「キュキュッ!」」
「うわ、このっ、激しいっ、あだっ!?」
鋭利な爪を伸ばしながらプレイヤーを牽制するクママの頭の上で投擲するリックとロック。
「ガルルルァッー!」
「ガウー!!」
「フェンリル、強すぎるだろうが!?」
「狼の女の子も手強い!」
幻獣のフェンリルとサラの動きに翻弄されて、ハーデスの従魔の中では多くプレイヤーを倒していた。
「ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーッッ!!」
「クァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「赤いティラノサウルスとプテラノドンみたいな奴が手に負えないー!」
「それ言ったら赤いペガサスに突進されてみろ! 反応できずに吹っ飛ばされる!」
「ていうか、個人的に攻撃しづらい樹精ちゃんがいて凄く困るんだが!」
「樹精ちゃんだけじゃなくノームたちを倒したら、各精霊のファンのプレイヤーの怒りを買うのが特にな・・・・・」
「言ってる場合かぁー! うわ、まぶっ! ぐえっ!?」
スライムスーツから作った大きなチャクラムで斬り捨てるリリス。猫らしく反射神経と流動的な動きで次々と敵にダメージを与えていく。神化したノーム、ウンディーネ、樹精、サラマンダー、シルフ、エーテル、アストラル達はそれぞれの属性魔法で数多のプレイヤー達を一掃するためか、七つの力を一つにした魔法攻撃をプレイヤー達へ放って広範囲攻撃にも拘らず味方にダメージを与えず敵だけダメージを与える一撃で空中庭園にいた殆どのプレイヤーがポリゴンと化して消失した。しかし、まだ城内や空中庭園に伸びる階段にアイムソウリー王国陣営のプレイヤーが待機していて、次は自分達の番だと空中庭園に現れる。手を突き出して魔法を放とうとしたハーデスの横にシュンッとドレッドが瞬間移動してきた。
「余裕そうだなハーデス」
「当然。一人で戦っているわけではないからな。それでここに来たということは持って来たんだな?」
肯定も否定もせず、ずっと持っていた橙色の半球の石をハーデスに突き出すドレッドから受け取り、敵プレイヤーが押し寄せてこようと踵返して玉座に戻り、ドレッドがハーデスを守らんと短剣を振るい続ける間に太陽の石(欠片)を覆っていた金属を解いた。
「これで終わりだ」
ドレッドが持って来た太陽の石と守っていた太陽の石を一つにした瞬間。太陽の如く眩く光を迸った―――!!!
『太陽の石(欠片)がスノウリー王国で再び一つになりました。南極大陸に訪れた永遠の冬が終わり暖かな春が再び戻りました』
『エクストラクエスト【春の回帰】が達成しました』
アナウンスが聞こえた。どれぐらい時間が経ったのかわからないが、目を開けた視界には豪華絢爛な玉座に座り、いかにも自分が王様だという冠とマントをつけた老人がいた。俺以外にもスノウリー王国の陣営に参加していたプレイヤー達も同じ場所に突っ立っていてすぐ目の前のNPCに気付く。
「よくぞアイムソウリー王国に打ち勝ってくれた。スノウリー王国の王として貴殿等の働きに心から感謝する。貴殿等には我が王国の英雄として後世まで語り継がれるだろう」
称号:スノウリー王国の英雄
効果:賞金100万G獲得。ステータスポイント20ポイント。アイテム上級ボックス 転送陣
「さらに、貴殿等の代表の者には我が宝物とは別に『太陽の石』を献上しよう。我が国が持つより二度と冬を訪れさせない者に持ってもらった方が安全であるからな」
アイテム『宝物』 アイテム『太陽の石』
以下の報酬を貰ったハーデス達はイベントが始まるまで待っていた場所へ転送されてお互い労いの言葉を掛け合った。
「今回は簡単に勝てないイベントだったな」
「何というか、運営が予想通りハーデス君を大暴れさせないように仕組んだ感じだったけれどね。その代わりにハーデス君の防御力のバフが付与するけど、フラッグ取られるとバフ無効にするなんてさ」
「一つでも取られると私達が苦戦するように仕上げたということだね」
「今回のイベントのように次のイベントもハーデスの恩恵を消す様な設定をするわね」
「気を付けておかないとな。他の連中も強くなってるしよ」
心中で同意する俺は太陽の石をインベントリに入れたままテキストを読んだ。
(太陽の石と呼ばれているが、実際は戦神が世界を創造する際に太陽からエネルギーの一部を結晶にした持ちモノであったが地神と喧嘩した際に落としてしまい、そのまま忘れ去られたもの・・・・・なんじゃそりゃ)
しかし部類は鉱石・・・・・戦神のところへ持ってみて聞いてみるか。
「この転送陣ってあれだよね? 他の町に行くときワープする」
「使い方を見るとMPを100使って一度訪れたことある他の町やダンジョンに行くことができるみたい。さすがに新大陸には行けないけどね」
「でも、これはこれで瞬間移動できる手段を持っていないプレイヤーには嬉しい物だと思うよ」
「俺達はもう持っているがな。さて、そろそろ手に入れたボックスでも開けてみるか」
「そうだね。それじゃあ、一斉に全員で開けてみようか」
ペインの提案に賛同する。俺達は大きな上級ボックスを置いて揃って開けた。中身が光を放つ演出に少なからず期待で胸が膨らむ・・・・・。
―――アポイタカラのインゴット×10
「・・・・・」
いや・・・うん。確かに深海まで潜らないと手に入らない上級者向けではあるけれどさ、これ以外の物が欲しかったりするんだよな。イッチョウ達の方を見ると、微妙だったり神妙な顔をしていた。敢えて何が手に入ったのか訊かないことにしよう。さて、宝物の中身は何だろうなー。
―――ドS女王の―――
バンッ!
中身と名前を見た瞬間に宝箱を閉じた。何でこんなものが宝物なんだ、趣味か、スノウリー王国の王の趣味なのかっ? 理解できない・・・・・! そんな俺に「どうした?」とドラグが気になったか訊いてきた。
「何が入ってたんだ?」
「・・・・・言いたくない。これは、これだけは言いたくない」
「好い意味で? 悪い意味で?」
後者だと短く言うと、イッチョウ達は押し黙った。俺が言いたくないと言うほどのとんでもないアイテムを知らない方が幸せだと認識したんだろう。この後すぐ、ウルスラに半ば強引に譲渡したらその日の内に愛用として装着したことを知ったのは次のイベントで集結した時だった。