「ハーデス、これから何か予定はあるか?」
「なくはない。新しいエリアを開拓する」
朗らかに言うと、「またか・・・・・」って雰囲気が・・・・・解せん。
うやって隠し要素を見つけられるの?」
「ねぇ、どれだけ見つけるの? どうやってみつけるの?」
「切っ掛けがあって、それの関連でスキルのレベルを極めておくべくしたら、なるべくしてなったとしか言えない」
「何のスキルだ?」
「【百鬼夜行】、常闇の町の鬼を弱体化せず倒せば手に入るスキルだ」
ああ、と風に納得した面々の中でセレーネが「もしかして」と俺を見ながら言う。
「鬼に関する場所を見つけるの? 鬼ヶ島? 新大陸かな?」
「中らずと雖も遠からず、だなセレーネ。いや、旧大陸にあるそうだ」
「へぇ、それって私達も行けるのかしら?」
「まだ判らない。これから調べに行く。来れるなら後から来てくれ」
そう言った後に俺達は南極大陸で解散して、俺はリヴェリア等のNPC達を連れてルルカに地図を持たせて道案内をさせる。が、何かルルカが恐々としている。
「彼岸の鬼鳴峠・・・・・あ、あの噂に聞く超絶ヤベー場所の地図を見つけるなんて・・・・・」
「そんなにヤバいのか?」
「彼岸の鬼鳴峠の鬼は人も食べるために町々を襲撃して略奪したこともあるほどなのです。今は何故かすっかり音沙汰もなくなったんですが、ルルカ達ナヴィゲーターでも近寄らない一つの場所なんです。だ、大丈夫なんですよね?」
身体が震えてるルルカを安心させるために彼女の小さな頭を撫でる。
「俺が絶対に守る。信じてくれ」
「・・・・・わかりました。ルルカもナヴィゲーターとしての務めを果たします!」
勇気を見せてくれたルルカの案内で俺達は常闇の町に足を踏み入れ、モンスターが湧くエリアの方へ歩く俺達を見て距離を置いてついてくるプレイヤー達はまだいない。大体が南極大陸からまだ戻れていないんだろう。無人のエリアの中を歩けれるってなんて素晴らしいんだ・・・・・!
「ハーデス様。ここから先が彼岸の鬼鳴峠です・・・・・。どうかお気を付けてください・・・・・」
一時間ほど歩き続けた先に、大きく引き裂かれた大地の間に吊るされた血のように真っ赤な渡橋の前に立ち止まるルルカ。見た目はかなり古そうだが頑丈に作られているようだ。
「リヴェリア達、橋を渡る道中に襲撃されるかもしれないから綱を握りながら渡ってくれ。サイナはその際の対応に私達の後ろから来てくれ」
頷く彼女達と一緒にギシギシと軋む橋を渡る。ルルカはフェルの背中に乗せて俺の斜め後ろにいてもらう。橋の長さは大体400メートルと長い木製の橋だ。何事もなければ渡り切れるんだが・・・・・。
ヒュン、ドンッ!
俺達の目の前に空から何かが落ちてきた衝撃で橋が激しく揺れる。事前にこうなることを予想して言っておいたのがよかったようで、みんな橋の手綱を握って振り落とされないでいる。
「おうおう! ここに来たってことはこの先が俺達『彼岸の鬼鳴峠』の鬼のナワバリとしってのことだよなぁ!? この『彼岸橋』を通りたきゃ、俺達10人兄弟を倒してからにしなぁっ!」
無造作に伸ばした黒い長髪と巌のような巨躯の身体は3メートルは優にあり、鬼のような凶悪な仮面を付けた大男が金棒を肩に担いでそう言い出してきた。なるほど、クエストも出るほどの10回連続挑戦をクリアしないと先に行けないのか。
「一対一の勝負か?」
「当然よ! 仮に一撃を入れてこの俺『一鬼』を越え兄の『二鬼』に負けるならば最初から挑戦のし直しとなるがな! お前が最後にいる『十鬼』の大兄貴に勝ちゃあ貧弱な連れもペットも彼岸の鬼鳴峠に入ること許される!」
入場制限は一チームのみか? まぁ、どのみちこの障害を越えなければ話にならないのも事実だ。
「私が戦う。行くぞ」
「濃厚な血をプンプンさせておいて腹が減って仕方ねぇ! ぶちのめしたらお前を喰ってやろう!」
「ヒィィイイイイ!? やっぱり人を喰らう鬼でしたぁー!」
ルルカの悲鳴が開戦の合図となり、片手で棍棒を振り上げる鬼の懐に【次元跳躍】で飛び込み、思いっきり腹に拳を叩き込んで殴り飛ばした。橋の奥まで吹っ飛んだ鬼はその後帰ってこなかったので、クエストが第一関門クリアという認識された。次の鬼と戦うために歩を進めると。
「おうおう! 一番下っ端の最弱な一鬼を倒したからって調子に乗るなよ! 次はこの二鬼が相手になってやらぁ!」
大刀を現れるや否や横凪ぎに振るってきた鬼に手を伸ばして鬼の大刀を指一本で受け止めてみた(実際にできるとは思えずダメージは受けると思ったけど、案外できたことに内心驚いた)。
「な、俺の大刀を指一本で・・・・・!?」
「振るい方が雑だ、もっと素振りをしてこい」
ワンパンで一鬼のように殴り飛ばす。彼の鬼も戻ってこなかったので三人目の鬼と戦いに挑む。
「弟達を越えるとは見事だが、この三鬼がお前を阻む壁となろう! 死に晒せヤァー!」
「ふん!」
「あべしっ!?」
弟達と同じ末路を辿らせる。次の鬼は双剣使いだったが、武器を掴み足で蹴り飛ばすと三人の鬼と同じく戻ってこなかった。五人目の鬼『五鬼』は大盾だけを構えて難攻不落の姿勢で俺達を阻んだ。
「ぐははは! お前の拳ではこの盾を越えられん! 攻略できるならやってみせろ!」
「なら【悪食】」
「は―――? 盾が壊れた!? ぐああああー!?」
そしてすかさず魔王パンチー。その後、大太刀の六鬼、大槌の七鬼、格闘の八鬼、大剣の九鬼も連続で称号【ホームラン王】の恩恵のノックバックの効果で吹っ飛ばせた。最後に九人の鬼達の長兄の十鬼は陀棒を構えた。
「我が兄弟達を無傷で倒す快進撃はここまでだ。この俺がお前に引導を渡してくれる」
「やってみせろ・・・・・ん?」
十鬼の背後に揺らぐ影が見えた。目の前の鬼は気付いていないようで視線と意識をそっちに向けていると突きをしてくる十鬼にの陀棒の下の柄を影が掴んだ。
「待ちな」
「ぬっ、あなたは・・・・・」
「何やら橋の方から騒がしいと来てみれば、なるほどお前さん・・・・・」
二本の赤い角を頭から生やし鈍色の前髪が赤い片目を覆い、黒いインナーと赤い袴を穿いた鬼の女が俺を見下ろす。
「ワタシらの先祖、赤と青の鬼に認められた奴だね。歓迎するよ」
「この侵入者が先祖に認められた!? ・・・・・それが事実ならばこの俺も手も足も歯牙にも掛けられないのも道理か」
「そういうことだ。悪いがこいつらはワタシの客人として預かる。お前はこれから来るだろう無謀者達の相手をしな」
十鬼は異論無いと受け入れ、俺達を通してくれた女の鬼に話しかけられた。
「十鬼を倒す邪魔をして悪かったね。どちらにしろ、先祖に認められたアンタが負ける道理はないと思ったからさ」
「いいのか? 十人の鬼を倒し続けないと入れないはずだ」
「構わないさ。他の人間や異種族はともかく、先祖の後継者として受け継いだお前さんなら特別だ。その上、そこまで血の臭いを纏わせているんじゃあさっさと消してもらった方がいい。面倒な連中に嗅ぎ付けられる前にね」
なんのことだと内心首をかしげる。どちらにしろ渓谷を歩き草木が生えてない岩肌だらけの峠道へ案内された先に、これまた狂暴そうな上半分だけの鬼の顔が俺達を出迎えてくれた。
「おい、開門しろ」
それだけで鬼の顔が持ち上げられて、凶悪な牙が鉄格子の代わりになっているのか、その牙も沈んで俺達が通る道が出来た。まるで鬼が口を開けた風な開門をするんだな。
「そういえば名乗ってなかったね、ワタシはア=トゥだ。よろしく」
「死神・ハーデスだ。一応、人間界の魔王を名乗ってる」
「ほう、魔王とは・・・・・大昔にそんな輩が魔王軍に加われと誘われたが先祖が拒んで追い払ったって聞いたことあるが・・・・・」
意味深に見下ろすア=トゥに首を横に振る。
「その気はない。観光気分で遊びに来ただけだ」
とは言っても、観光気分にしてくれそうな感じではない。門を潜り進む最中でも人間や動物、何かのモンスターの頭蓋がそこら中に転がってたり木の棒に突き刺されていたり、たくさんの綱が色んなところに伸びて無数の頭蓋と結ばれている。世紀末の世界に来てしまったようなおっかないところを歩かされているので、ルルカがフェルの背中でプルプルと震えている。
「それならいいさ。ワタシ達をどうこうしようならば、八つ裂きにしてやるところだったよ」
この鬼、本気の目をしてらっしゃるー!!!
「ア=トゥ。またここに来る時はさっきの門から出入りする必要あるよな?」
「遠回りしたくなければね。あそこは正門だが、遠回りすれば裏から集落には入れるよ。ただし、最初はこうして正門から入らないと侵入者として扱われ、鬼人に喰われても文句は言えないよ」
「正門に入る方法はやはり十人抜きか」
「当然だ。力のない人間はワタシ等に喰われても仕方がないと言うことだ。最近は人間を襲わないでいるから、他の鬼人達にとってご馳走でもあるさ」
ヒィッと短く悲鳴を漏らすルルカも似たようなことを言ってたな。
「どうして襲わなくなった?」
「ワタシ達を襲う面倒な鬼が現れたからなのさ。集落の防衛をしなければあっという間に雪崩れ込んで滅ぼされてしまうから人間の町に襲う暇がなくなっている」
説明を聞きながら里の中を見渡したら、舞台の上で鬼同士が戦ってた。鬼らしいかは分からないけど鬼同士でも切磋琢磨しているんだな・・・・・。
「さ、着いたよ。ここが集落内だ。茶屋でゆっくりしていくといい」
ア=トゥが案内してくれた場所は一回りも二回りも大きい建物がたくさん構えていた。橋で出会った鬼と同じ風格と仮面をつけている鬼が闊歩してるしア=トゥのような女の鬼も同じくらい集落内を歩いている。建物は何だか和風であるもの、角のような牙のような突起物が建物があるところだけ地面から伸びている。
『プレイヤーが隠しエリア、鬼が住まう隠れ里《彼岸の鬼鳴峠》を発見しました』
お、ここでアナウンスが流れたか。