バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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冥霊山

餓鬼討伐の遠征中、遠くで地上を覆う黒雲が見えた。あの中心に餓鬼がいるのかと側にいる鬼人に訊いた。

 

「あれは全部火山灰でできた雲だ」

 

「あれが全部、灰・・・?」

 

「隕石が直撃した都を始め、噴火した火山から噴出した灰が風に乗って広範囲に広がって行く最中で複数の都や村、町などとにかく人間が暮らしていた場所の殆んどにその日からずっと死の灰が降り注いでいる」

 

その日からずっとって・・・・・待て、それじゃあ今も火山灰が降っているのかよ? とんでもない話だそれは。

 

「彼岸の鬼鳴峠は運良く無事だったな」

 

「全部問題がなかったわけじゃないが、傍迷惑な餓鬼が現れるまでは平和だったらしい。これから俺達はあの雲の下に向かう。討伐だけが目的だけじゃないから俺達に従えよ」

 

「他に何を?」

 

「鋼を採掘する。落ちた隕石がその周辺一帯の地盤を引っくり返えてな。数え切れない数多の死者が出たそこは冥府に近いと忌避された。今ではあの辺り一帯は『冥霊山』と呼ばれているも、良質な鉱物が取れることを知った当時の鬼人達が、今日までその鉱石を取っている。それで作る刀は妖刀になる」

 

妖刀・・・・・! 中二病の男子が欲しがる武器のひとつではありませんかー!! ぶっちゃけ俺も欲しい!

 

「俺もその鉱石を後で掘っていい?」

 

「好きにしろ。これから向かう途中の採掘場は誰の物でもないからな」

 

楽しみが増えた。それをするには先に餓鬼を倒しておかないと。その間に他のプレイヤー達も来る頃だろう。

 

「餓鬼って種族的に妖怪? 幽霊?」

 

「妖怪だ。なんだ、魔王も幽霊が恐ろしいのか」

 

「幽霊が怖い仲間の少女がいるから、悲鳴を上げて戦闘どころじゃないんだよ」

 

「それならばなおさら足を踏み入れるべきではないな。これから戦う餓鬼以外にも、餓鬼から生じ、変異した強力な魑魅魍魎共が無限に湧いて出る。俺達はそれを間引くため毎日『冥霊山』に足を運んでいる。年々、餓鬼の数も増えて俺達の手に余る一方だがな」

 

それは大変だ。ゲーム的用語のスタンピードが起きかねないじゃないか。ペイン達の力も必須だな。

 

「ここからは登る」

 

古い鳥居が幾つも上に続く階段と一緒に並んでいる場所に着いた。暗い森の中にあるし【耐寒】スキルがあるのに肌寒さと背筋が凍るホラーテイストを覚えさせる場所があるなんて。強引に引っ張っても百代が涙目で頑なに行きたがらない光景が目に浮かぶなぁ・・・・・。

 

「って、既に何かいるんだが」

 

「殆ど無害な霊だ。この辺りの霊は悪戯する程度だが、奥へ進むと悪霊が増えてくる」

 

着物を着た首なし、ではなく胴体の上で帽子を被って宙に浮いている頭蓋骨が鳥居の側で立っていた。見た目がモンスターなのにNPC扱いされているから、階段を登っていく俺達に攻撃してくる素振りはしない。ザッザッザッと山を登る感覚で階段を長く登った先に開けた場所とお社が鎮座していた。

 

「お社があるんだ」

 

「悪霊も出るからな。俺達は霊山に入る前に必ず祈りを捧げてから行く。お前はどうする」

 

「俺もしておく。祈り方を教えてくれ」

 

きちんと整列して祈りを捧げる鬼人に倣って俺も社に教えてもらった作法で祈りを捧げた。これで何かのバフが貰えたらいいなーと思いつつ踵を返して社から離れた時だった。

 

ガタガタッ・・・・・!

 

「ん・・・・・? 中に誰かいるのか?」

 

「いや、物しか置いていないはず。何かが落ちたとも思えん・・・・・」

 

鬼人も聞こえた確かな音。というか、今も聞こえてくるから顔を見合わせて扉を開けず中を覗こうとしたら。バンッ! と音を立ててお社の扉が勝手に開きだし、中から何かが俺に向かって飛び出してきた。反射的に手で掴み受け止めた物を確認する。

 

「・・・・・なに、この見るからに禍々しい呪いが宿っているであろう靄を出してる刀」

 

「それも太刀より長い大太刀、長巻だな」

 

柄が長い太刀と言えばわかるだろうか。そんな武器が俺の手の中に納まる理由は何だろうか? あ、禍々しいのが俺の全身を包み込んだ。目の前が真っ暗になった。

 

『大太刀に宿る呪いがクエストが達成するまでプレイヤーの装備の変更、スキル使用、アイテム使用不可の呪いを付与しようとしましたが、プレイヤーが保有する【呪いの王】の効果により無効されました』

 

『生意気なプレイヤーだと大太刀は執念深く呪い続けます。抵抗しました。諦めず呪いました。抵抗しました』

 

『更新中・・・・・更新中・・・・・更新完了・・・・・』

 

『スキル【呪いの王】の保有者に逆に屈服し、スキル【反転再誕】によって大太刀に宿っていた呪いが消失し《破邪の大太刀》に変わりました』

 

 

《破邪の大太刀》

 

滅んだ都の地中で長年埋もれ、死者の怨念が集まり苦痛、悲しみ、恨みつらみが籠った刀と化し、見つけた大昔の鍛冶師の鬼人が社に保管した間に怨念の意志が宿った呪いの大太刀と変貌したもの、強大な存在により呪いが屈服して祝福の大太刀となった。

 

 

破邪の大太刀

 

【VIT+100】

 

【破壊不能】【輪廻転混】

 

 

【輪廻転混】

 

一日に一度、スキルの使用中はプレイヤーの高いステータスと選択したステータスの一つと同等になる代わり、HPとMP以外のステータスは装備ステータスの数値も含めて0になる

 

 

おっと・・・・・これは面白いスキルではありませんか。HPとMPに二つ以外のステータスの数値は0になるのは仕方ないとしても、防御力極振りの俺からすれば大した問題視もならないスキルだ。これも装備枠にセットしておこう。

 

「大丈夫か。まさか呪われたのか」

 

「心配かけた。大丈夫、呪われてないよ」

 

「本当か? それならいいが・・・・・」

 

視界が晴れたところで鬼人に心配を掛けられた。最後に並んでいたから他の鬼人達は先に行ってしまって、その間に手間を取らせてしまったことに謝罪をしてから急いで追いかければ、道が二つ別れた場所に差し掛かった。

 

「霊山の道に行くなら右、採掘場に行くなら左だ」

 

「わかった。右だな」

 

この鬼も一緒に右の道へ足を速めて進み、ようやく他の鬼人達に追いついた。それから三十分歩くと灰を被った大地に辿り着く俺達を出迎える無数の餓鬼が灰の中から出てきたのだった。さーて、千匹の餓鬼をたおさなくちゃーな!

 

 

 

常闇の町では南極大陸から戻ってきたプレイヤー達がイベントの疲れを忘れているほど彼岸の鬼鳴峠に目指していた。その集団のトップに立つペイン等固定パーティーを始め、妖怪、妖刀、新発見の鉱石のワードを残しては詳細を公開しないハーデスがいる隠れ里が気になって仕方ないプレイヤー達も動いている。

 

「新しい鉱石! どこ、どこにあるのよハーデスゥー!?」

 

「妖刀妖刀妖刀ー!」

 

「美人な鬼美人な鬼美人な鬼ー!」

 

目的は違うが似た気持ちの昂りが抑えきれず、プレイヤーの足を急かすので自然と彼岸の鬼鳴峠に繋がっている橋の着くまで走り続ける。なお・・・・・。

 

「ヒャッハー!!」

 

「どこまでも走るぜー!!」

 

「オラオラどけどけー!」

 

世紀末の暴走族の男達もラッパを鳴らしながら目指していたのは別の話になる。そんな集団と混じらず上空で走るか従魔の背中に乗っている【蒼龍の聖剣】のプレイヤー達は赤い橋を見つけ、さらに渓谷の峠道を辿った先に鬼の顔をした大きな門の前に足を止めた。

 

「ここか、彼岸の鬼鳴峠って里は」

 

「本当に大きい鬼の顔の門だ!」

 

「でも、どうやって入るんだ?」

 

「あ、立て看板があるぞ。何か書かれてる」

 

その言葉を発した一人のプレイヤーのもとへ集まるプレイヤー達。看板にはこう書かれてあった。

 

 

その一 里の出入りは正門からではなく裏門。

 

その二 里に入りたくば先に二つのどちらかの依頼を達成すべし

 

その三 期間限定の依頼であり、その間に里の鬼達に認められなければ在住は不可能。鬼の十人抜きを乗り越えるべし

 

以下の内容を知ったプレイヤー達は自動的に発生した二種類のクエストのどちらかを選ぶとマップを見ながら途中まで同じ道を共に歩き、一部のプレイヤーがすごく怯えながら山の階段を登って途中で分かれ道では、それぞれ受けたクエストを達成するべく進むべき道へ分かれて足を前に運び続けた。戦闘系のクエストを受注したペイン達は、死の灰の大地で既に戦っている多くの鬼人に交じって大太刀を振るっているハーデスの背中を見つけた矢先。

 

シュンッ!! ズバババババババババンッ!!!

 

ハーデスの姿が掻き消え、眼前にいる軍勢と言ってもおかしくない数の餓鬼や悪霊のモンスターが一瞬にして数十のポリゴンと化したのであった。

 

「え・・・・・白銀さん、強くなってない?」

 

「それか、モンスターの方が弱いからか・・・・・」

 

「とにかく、凄い事には変わりないのは確かだから俺達もクエストを終わらせないと!」

 

「そうだな!」

 

声を掛けられる状況ではないのと、自分達のクエストのこともある事から雄たけびを上げながらモンスターに攻撃を仕掛け倒し始める。

 

 

―――採掘場

 

 

隕石の直撃の余波で地盤がひっくり返えて出来上がった場所に着いた。鉱物の採取クエストを受けたプレイヤー達は思い思いの場所で珍しく採掘ポイント無しの採掘を始めた。

 

「場所はここで合っているのに、採掘ポイントがないなんて初めてね」

 

「うん、無くても掘れることは知っているけど集めなくちゃいけない数が数だからこれは大変だよ」

 

イズとセレーネも適当な場所で最近愛用している『ラッキーセブンピッケル』を振り上げて壁に向かって打ち落とした。

 

「あ、取れたわ」

 

「私も。これが瞋恚鋼なんだ・・・・・意外と綺麗だね」

 

採掘クエストで求められている血の色より更に深く黒味が帯びた紅色と橙色、黄色の縞々模様のお目当ての鉱物が手に入った二人の他にも、採掘場に集まったプレイヤー達の手にも求めている鋼以外の鉱物を手に入り、中にはとても貴重な鉱石を手に入れた喜びを露にするプレイヤーもいた。

 

「他のプレイヤーも来ているから、別の場所でも掘ってみる?」

 

「うん、でもモンスター出ない?」

 

「出る所は出るけど、逆にそうじゃないところもあるし何とも言えないわ。出たら出たで倒しましょう」

 

「そうだね」

 

「おー? イズとセレーネ、他のところにも行くなら俺も行くぜ!」

 

「私達から距離を取ってよね」

 

「白銀さんでもしない露骨に壁を張らないで!? 地味に傷つく!」

 

彼は彼、私は私よ。と同じギルドの鍛冶師プレイヤーに言い捨てるイズの横に並んで動くセレーネはフォローしない辺り、似た気持ちを抱いていた。三人で歩く先々にもちらほらとプレイヤーがいて、壁に向かってピッケルを打ち落として岸壁を削っている後ろを素通りしてプレイヤーが未だにいない奥の方まで進んだ。

 

「この辺でいい?」

 

「うん。まだ手付かずだしここの当たりならかなりの鉱物が眠っているかも」

 

「んじゃ、俺はもうちょっと欲張って奥に行ってみるかね」

 

二人を置いて鍛冶師プレイヤーことスケガワは曲がり角の奥へと足を運んで消えたのを気にせず二人はピッケルを振り上げた直後。

 

「お、おい二人共! こっちに来てくれよ!? すげーぞ!」

 

「「?」」

 

興奮、高揚の声に呼ばれ動きを止めたイズとセレーネ。何を見つけたのか目で会話し、ちょっとだけ顔を出して作業に入ろうという気持ちでスケガワのもとへ向かった。曲がり角を通りすぐ彼の背中を視界に入れながら前に出た二人の視界に飛び込んだ光景・・・・・。

 

「「・・・・・っ」」

 

木材で支えの役割を果たしている人工的に掘り進めた痕跡を残す行動の出入り口を発見した。しかしそれだけなら驚嘆よりも感嘆ものであるが、スケガワが教えたかったのは坑道の出入り口ではなく、その前に大きく開いた穴の壁にびっしりと埋まっている状態で顔を出している鉱物の放つ輝きの一部。しかもその大きさは氷山の一角のごとく小さくはないことを窺わせる。

 

「あれ、どうにか掘れないか?」

 

「気持ちは分かるけど、場所が場所だから崩落しそうで怖いわ」

 

「でも、あんなに大きい鉱物は中々お目に掛れないのも事実だよ。それに鬼人達も鉱物だけ削って持ち帰った跡があるから、私達もそうしてみない?」

 

セレーネの言葉通りに巨大な鉱石の表面は粗削りされたまま放置されている。その指摘をする彼女にスケガワも賛同とイズを催促するので、実質二対一の意見に反対できないもの掘れるなら掘って手に入れてみたい気持ちもなくはなかったので、方法があるなら掘りたいイズも結局折れて宙に留まれるスキルを使って穴の中に入り、壁に埋まっている大きい鉱石に向かってピッケルを振るった。最初の一打、カァーンと音を鳴らした直後。

 

「・・・・・誰か来たか!」

 

「「「っ!?」」」

 

真下から誰かの声が聞こえた。真っ暗すぎて何も見えないが声だけは聞こえた。

 

「誰かいるなら返事をしてくれ! ここに落ちて一週間も抜け出せないでいるんだ! 情けないがどうか助けてくれないか!」

 

「えーと、どこの誰だ? 俺達は冒険者だ!」

 

「冒険者・・・・・? 里の者ではないのか。だが、誰でもいい。俺を助けてくれるなら彼岸の鬼鳴峠の連中に話をつける!」

 

彼岸の鬼鳴峠、つまりこの下にいるのはNPCの鬼人―――と認識した三人は突如発生したクエストの相談するまでもないと受注をして救助活動を始めた。灯りの道具を片手に穴の底へと降りれば坑道があるなら、あってもおかしくないとばかりに地面に張り巡らされていた線路の上に降りると壁にもたれている鬼の仮面を被った巌のような巨躯の大男がいた。初めて見るNPCの姿に圧倒されながらも問う。

 

「鬼人族の人ですか?」

 

「そうだ。そして鍛冶師でもある」

 

「へぇ、俺達も鍛冶師だ! 同じ鍛冶師なら助けないとな!」

 

「すまぬ、恩にきる。欲張って壁の鋼を採掘しようとしたら、地盤が思ったより脆くなっていて落ちてしまった」

 

「あの、坑道の出入り口にはいかなかったのですか?」

 

「上の穴が崩落で出来てしまった時に塞がってしまったんだ。開通の作業をしているが年々数を増している餓鬼の討伐に数を割かれて今じゃ中止の状態だ」

 

他の鬼人族は探してくれないのか? とスケガワの問いにはこう返された。

 

「俺の不在を認識しても鬼人族は誰が一部の鬼人族以外は死んでも他者を気にしない。弱者は死んで当たり前という鬼人族の間でそういう認識されているからな。弱い者は里から追放されることも珍しくない」

 

「うわ、なんて過酷な・・・・・」

 

「話はそこまでよ。まずは・・・・・腹ごしらえでもしてもらいましょうか。一週間も飲まず食わずにいるなら力も出せないでしょう」

 

「・・・・・イズ、どうしてそんなに大量の料理を出せるの?」

 

「鍛冶師にゃ必要ないだろって言わずにはいられない量だぞ本当に」

 

インベントリからたくさんの料理を出すイズに聞かずにはいられないセレーネに同意して頷くスケガワ。

 

「ハーデスの影響を濃く受けちゃったみたい。こういうこともあるだろうから戦闘に必要な道具以外の空欄にはバフが付く飲み物と料理で埋めてるから。もちろん空きも残しているわよ」

 

「感謝する・・・・・正直言って空腹で死に掛けていた」

 

「あんたの身体を見ても、とてもそうは見えないんだが」

 

一心不乱に食べる鬼の胃袋が満たされるまで待っている間、どうやって鬼人族を地上に運ぶか相談する。ふと、セレーネが線路を見てピンと来た。

 

「鬼人族さん。今線路を使ってないなら、線路を外して地上まで伸ばしたら登れます?」

 

「ああ、登れるだろう。しかし、方法はあるのか?」

 

「あります。その為には線路が必要なので、外してくれませんか? あとで私達が元通りに直しますから」

 

え、俺も? と心中でツッコミを入れるスケガワが口にしなくて幸いだった。した場合はイズに肘でど突かれていただろう。そしてその後、三人は梯子代わりにする線路を長く外しにかかり、地上まで伸ばしてセレーネが持つ機械の乗り物とロープで結ぶ。

 

「それじゃあ、行くよー!」

 

穴に向かって合図の声を発した直後。発進し前に進む乗り物に引きずられる線路が穴の下からイズとスケガワがしがみ付いている鬼人族を釣り上げるように引っ張り上げた。

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