バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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侍大将ゼ=ノン

 

「勝者、魔王ハーデス!」

 

ワァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!!

 

ウオオオオオオオオオオオーーーッッッ!!!

 

闘技場の席に腰を落としていた鬼人族達が一斉に立ち上がってまた空気や地面、闘技場をも震わせるほどの歓喜が籠った絶叫で轟かせた。耳を塞いでも身体が震動して結局はうるさい。って、片腕斬り飛ばされたから片耳しか塞げないや。

 

「まいったまいった。最後は鬼と力の根比べして勝ってしまうなんてね。ワタシの刀が見事に砕かれる始末だ」

 

「この刀じゃなきゃア=トゥとその刀に勝てなかったよ」

 

「それならいい巡りをしたね。さて、約束の褒美をやろう。手を出しな」

 

言われた通りに手を出すと、いろんな報酬が一気に手に入った。

 

『スキル【九重】を取得しました。スキル【白捲】を取得しました。称号【真・彼岸の鬼鳴峠の攻略者】を贈呈します。アイテム【高級旅館の利用札(永久無料)】を贈呈します。アイテム【八百万の瞋恚鋼】×10を贈呈します。隠し職業【侍】を解放しました』

 

・・・・・称号の方が妙に気になるところだけどスキルもアイテムも気になるものばかりだ。後で詳細をみたいところだが。

 

「さて、アンタを治療院に運ぶよ」

 

「ありがとうア=トゥ。悪いけど手足を持ってきてくれないか」

 

「それなら持ってきた」

 

「あっ、ありがとうア=セン」

 

旧大陸だからか、出血によるスリップダメージはしていない。欠損した手足をア=トゥの腕の中に収まってる俺の身体の上に置いてくれたら。

 

チュッ。

 

「へ?」

 

頬に柔らかい何かが押し付けられた。

 

「強い男が現れたからには、唾を付けておかないと。女の鬼人は人間の男と交尾することもある。オメーはこの里でその対象になってるから気を付けておきな。全員孕ますってなら遠慮しなくていいぜ。オメーのなら喜んで受け入れてくれるさ。このア=トゥもだ」

 

「おい・・・・・」

 

こわっ!? 鬼だけど鬼の形相をして睨み付けるア=トゥから逃げるア=センも本気じゃない感じ・・・・・だよな? で、いいよな?

 

それから治療院に運ばれ医者の鬼人から絶賛の言葉を送られた。斬られた手足の断面をくっつけたまま何かの液体を掛けると、あっという間に自分の手足として動かせるまでに回復した。

 

「おお、もう動かせる。すごい薬だな。ありがとう」

 

「こちらこそ、いい闘いを見させてくれた。剣匠を倒したのは同じ鬼人じゃなくて異種族、それも魔王とは思わなかったが、剣匠の本気を出させたのは鬼人族以外で始めてなのも事実。また剣匠と闘争をしてくれ。応援するさ」

 

そんな頻繁に戦う機会はないと思いたい。治療院を後に出た瞬間、ギルドの身内や他のプレイヤーが、わっ! と詰め寄ってきた。

 

「白銀さんお疲れー!!!」

 

「めっちゃ熱い戦いだったよ! 特に最後が感動した!」

 

「お疲れ様ですハーデスさん!」

 

「戦った感想を聞かせてくれ!」

 

「久しぶりのサスシロだねー! 掲示板でも動画でも大盛り上がりだよ!」

 

ちょっ、お前らいっぺんに話し掛けてくるなぁっー!!?

 

「おいおい、魔王が困ってるじゃないか。離れな」

 

上からみんなを制する声に騒然としてた場がピタリと止まった。

 

「こいつらも魔王の仲間かい」

 

「そうではない冒険者もいるけど、すまん迷惑を掛けたな」

 

「気にしてないよ。まぁ、魔王を応援するぐらいの元気が有り余ってるなら、魔王に倣ってお前達も挑戦してみるかい。今回の儀式で男衆も女衆もお前達冒険者を興味を持ったはずだからね」

 

俺からでは眼前の面々に何のクエストが発生したかわからないが、いきなりどこかへ走り出していったプレイヤー達の背中を見送る。あそこって闘技場か。もしかして鬼人に挑戦できるクエストが発生したか?

 

「ハーデス。そこの女鬼人とは俺達でも戦えるか?」

 

「だ、そうだが?」

 

「ワタシと戦いたいなら、最後まで無傷で勝ち残ってからだ」

 

「だ、そうだぞ」

 

「わかった。やってみよう」

 

そう訊いてきたのはペインで、ア=トゥと戦うために闘技場へ足を向けた。ドラグとドレッドも付き合う風について行って、フレデリカは残った。魔法職だから刀スキルはいらんよな。

 

「いたいた。やはりア=トゥと一緒にいたか」

 

「なんだ、魔王に用事かい」

 

見知らぬ女鬼人が俺を見ながら言うのでア=トゥは彼女に訪ねた。彼女はその通りだと首肯する。

 

「魔王、アンタと話をしたいと里長が言っているんだが問題ないかね」

 

「俺に? 俺だけ?」

 

「ああ、里の外から来た者達の中でアンタだけだ。ア=トゥも同伴してくれても構わない」

 

「ふぅん、そういうことなら行こうかね」

 

俺と話って何だ、と想像つかない相手を思いながら名も知らぬ女鬼人とア=トゥについていく。里の奥まで案内されて、俺を待つ鬼人がいる場所は立派な和風の屋敷の敷居、大きな池に泳ぐたくさんの鯉を眺めてる今まで見た鬼人族より一回り大きい鬼人。大会時にも観戦していた鬼人だった。

 

「アンタ、失礼のないようにな。ただの里長ではなく侍大将なんだからね」

 

鬼が侍でその大将って・・・・・桃から産まれた後の侍の人間もビックリする事実だな。

 

「おう、ご苦労。そして誘いに応じて感謝する魔王ハーデス。俺は彼岸の鬼鳴峠の里長ゼ=ノンだ」

 

「人間界の魔王死神・ハーデスだ。里長の屋敷に入れて光栄だよ」

 

「そう言ってくれると招いた甲斐がある。立ち話もなんだ、中に入ってくれ。酒は飲めるか?」

 

「飲めるよ。何なら先代から受け取った酒を飲むか?」

 

「・・・・・それを飲んだら話が出来なくなるから後にしよう。全てが済んだら飲ませてほしい」

 

あ、なんか頼みごとをさせられそうだこれ。縁に上がり居間に入りそこで腰を落とすゼ=ノンに倣って座った。ア=トゥも俺の隣で座る。

 

「単刀直入で言わせてもらう。ア=トゥを倒したその腕を見込んで頼みがある」

 

「それは?」

 

「餓鬼とは戦ったか? 戦ったなら餓鬼が蔓延る死の灰の大地のさらに深奥のところに旧都跡地があることを知っているか?」

 

「話だけは聞いている。直接行ったことはないが」

 

「それなら話しが早い。その都の外で集めてほしい素材がある。どうか引き受けてくれないか」

 

里長ゼ=ノンからの採集クエストが発生した。集める物は『怪力の花の種』『苦虫』『オニスズメバチのハチミツ』『オーガイ』・・・・・どれもこれも、新種の物で間違いないな? 受託する前にゼ=ノンに訊いた。

 

「怪力の花は里でも育てていないのか?」

 

「いや、育てていない。最初こそは育ててみたが、土が合わないのかすぐ枯れてしまう。ならばと群生している地の土を持ってこようならば、死の灰が周囲の土を死滅させてしまう。仕方なく現地から『怪力の花』を集める他ないのだ。先代の時は集落内でも育てられていたようなのだが、何が必要なのかさっぱりわからなくてな」

 

ふむ? 先代の時はの話しはともかく、今までは出来ていた話し振りだけど・・・・・今はそうじゃないからア=トゥを倒した余所者の俺を頼むしかない逼迫な状況なのか?

 

「これらを集めて何をするか聞いても?」

 

「最近、年々に餓鬼の増加が報告を受けている。さらに時間が過ぎればいつかこの彼岸の鬼鳴峠が呑み込まれるやもしれん。そうさせないために秘薬を作らねばならない。魔王ハーデス、どうか協力をしてくれぬか。集めてくれるならば褒美を与えるぞ」

 

「褒美・・・それなら・・・・・二つ要望がある」

 

一つは証印のことをゼ=ノンに打ち明けた。俺の話しに耳を傾けてくれた里長は一つ頷いて胡座かいた脚にパンと手を置いた。

 

「こちらの頼みを聞いてくれるなら、いくらでも捺してやろう」

 

「交渉成立だ」

 

ゼ=ノンと握手を交わしながら受託した。

 

「魔王ハーデス。もう一つの要望は?」

 

「それは全部終わってから教える。まずは集めてほしい物の詳細を教えてくれるか?」

 

「もちろんだとも。現物を見せれば直ぐに見つけられるはずだ。頼む魔王ハーデス」

 

ゼ=ノンが召使に俺が集める素材の現物を見させてもらい、スクショして姿形を記録させてもらったらア=トゥと屋敷を後にした―――。

 

「あの死の大地に行くんだ。先に腹ごしらえをしな。鬼の馳走を堪能してたくさん食え」

 

そしてどこかの宿屋の居間に案内された。海の幸の食材をふんだんに使った料理が運ばれ、どれもこれも鬼サイズのビックスケールに俺は目を丸くした。数人の女鬼人達も同席して鬼らしく豪快に伊勢海老を丸ごと食べたり、酒を水のように飲み俺とア=トゥの戦いぶりを肴にして盛り上がってる。

 

そう言うア=トゥだが、どうして彼女の股の間に座らされているんだろうか。身長的に彼女の胸が当たるし、なんなら頭に乗せてくるから地味に重い。

 

「この食材ってどこで手に入るんだ?」

 

「餓鬼が沸いて出る死の灰の地より先に進めば、隕石の影響で滅んだ都の代わりに海が出来たのさ。そこで漁ができる」

 

「そうだったのか。そこに俺が集める物の一つがありそうだな・・・・・ん、美味しい。この美味しいさなら、料金も高いだろう」

 

「お前なら宿屋、温泉施設はタダ。鍛治屋、服飾、茶屋は割引だよ」

 

「おお~~~! ありがと!」

 

嬉しいあまり顔を見上げると、ア=トゥがズイと顔を寄せてきた。

 

「それだけお前を気に入っているんだ。なんなら本気でここに住むかい?」

 

「彼岸の鬼鳴峠の作物を育ててみたいし、さっきも言ったように海にも行ってみたいからしばらくは住むつもりだ」

 

「そいつは重畳だね。楽しみが増えよ」

 

ア=トゥと話すとあることも訊く。

 

「その高級旅館って俺も利用していいんだよな? なんか永久無料って利用札を貰ったし」

 

「当然さ。その札は誰にでも渡すものじゃない。特別なモノ故に特別な方法でなきゃ手に入らないよ。魔王ハーデスの場合は儀式で勝利して得たが、その他の場合はやることをやってから特別に頼まれたことを果たせば貰えるようになっている」

 

お前ら、コミュニケーションが必要だってことだ。頑張って積極的に交流をするんだぞ。

 

「それはそうとア=トゥ。この『八百万の瞋恚鋼』ってのは? 瞋恚鋼の上位で希少の鋼か?」

 

「そいつは偶然でしか取れない特別な瞋恚鋼だ。採掘場で採れる瞋恚鋼より深い色をしているから八百万の名が付くほど、武器にすれば通常の妖刀より凄まじい妖刀を作りあげられることができる。後は優秀な素材があればの話だけどね」

 

「これならどうだ? 『大陸の覇獣』の大牙」

 

インベントリに溜まりに溜まったベヒモスの素材の一つを床に寝かせて置いた。じゃないと天井に穴が開いてしまうほど大きいからな。それを片手で掴み持ち上げたア=トゥは、感嘆の息を吐いた。

 

「ふぅん、強靭な生命力を持っている獣の牙か・・・・・実物は見たことないが名前だけは知っていた獣の牙を触れることが来るとは思わなかったよ。でも、これなら強い妖刀が作れそうだ。構わないなら三日も時間を貰うよ」

 

「よろしく頼む。完成したらこれを飲ませてあげるよ」

 

料理をどけてもらってからテーブルに置く大きな水瓶の表面に『鬼殺し』と『鬼酒』と書かれてある。

 

「そ、それはっっっ!?」

 

「先祖しか作れず認めた者にしか飲ませないって聞く鬼人達の間では伝説の酒じゃないかい!!」

 

「『鬼酒』だけでも壺を見れただけでも奇跡なのに『鬼殺し』まで持っているなんて!!」

 

「ヤバい、涎が止まらない・・・・・!」

 

おや、女鬼人達の様子が・・・・・って、何となくこうなるだろうなーと思ってたよ。色めき立つ女鬼人達を手で制するア=トゥが溜息を吐いた。

 

「それを持っている時点で先祖は本当に魔王ハーデスを認めたも当然だ。もしかしたらと思っていたが、やっぱり持ってたか。実物を出されちゃあワタシも飲むために全身全霊で魔王ハーデスが持つに相応しい最高の妖刀を作らないといけないじゃないか。それを持って火事場までついてきな魔王」

 

先に立ち上がるア=トゥから牙を返されると女鬼人達がブーイングしてきた。その理由は言わずもがなだ。

 

「ア=トゥだけずるいぞ!」

 

「アタシらにも飲ませろ! 一杯だけでもいいからさ!」

 

「そうだそうだー!」

 

二つの水瓶もインベントリに仕舞い、彼女達に向かって手を振りながら居間を後にした。

 

「ところで、魔王は妖怪の酒を飲めたのかい」

 

「試しに飲んだら飲んだで、妖怪しか味が分からないのか無臭無味であることを認識したら意識を落とした。その後知ったけど、泥酔したみたいに酔い潰れてたようだ」

 

「鬼の酒は他の種族からすれば強力だからね。もしも人間が飲んだら即死だよ。にしても魔王でも酔い潰すとは先祖の酒は思った以上に強力な酔いをさせるようだね」

 

「まぁ、その後は酔えなくなる機会に恵まれて先祖と何度も酒を飲み交わした。味は変わらず全然わからんが」

 

有料で食っている奴らの代金を払ってからア=トゥの工房に足を運んだ。着いたらすぐに鋼と牙を出して妖刀を打ってもらったその間に、作物を売っている鬼人達から買い取って購入した畑で召喚したオルトーズに作物を渡して任せた。

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