「大和ー。綺麗なクロスを作ってきたぜ!」
「食材の調達、これで完了だ!」
「調理器具も何とか揃えれたよー」
「教室の飾り付けももう少しで完成だよ」
学園祭当日、時間ぎりぎりまでテキパキと動く風間ファミリー。とても慣れているかのような無駄のない動きに感嘆していると、僕の後ろに誰かがいたことに気付かないでいた。
「・・・・・
「おわっ」
いきなり後ろから響くムッツリーニの声。いつもながら存在感を消すのが巧い。
別に常日頃はそんな事をしなくてもいいと思うんだけどな。
「ムッツリーニ、厨房の方もオーケー?」
「・・・・・味見用」
そう言ってムッツリーニが差し出したのは、木のお盆。上には陶器のティーセットと
胡麻団子が載っていた。ハロウウィン喫茶店としてお菓子になるような外国の料理にも作ることにしたんだよね。僕はムッツリーニが作った胡麻団子を食べながら色々と話をする。
「ところで、ムッツリーニ。ハーデスは?」
「・・・・・あっち」
ムッツリーニは指をとある方へ向ける。僕はその方へ視線を向けると・・・・・。
『・・・・・』
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ですから、無言の圧力を掛けないでください!怖いです!」
何故か、ハーデスが姫路さんに顔を近づけながら大鎌を構えていた。
姫路さんも涙目だ。
「・・・・・ねえ、なにがあったの?」
「・・・・・姫路が厨房に立っていた」
ナイス、ハーデス!キミは多くの人間の命を救ったよ!そして始まる学園祭。開け放たれた扉の向こうから大勢の人の声のざわめきが聞こえるようになってきた。
「ねえ、大和。召喚大会にキャップと出るんですって?賞品が狙いなの?」
「そうだな。チケットを手に入れたら適当にどっかの誰かに売り渡す予定だ」
「あはは、小遣い稼ぎが目的なんだね」
「大和らしいちゃらしいがな」
納得の面持ちの一子とガクトだった。すると、ハーデスが姫路さんから離れ、
松永さんに近づき一緒に教室からいなくなった。そう言えば召喚大会に出るんだったね。
さらに言えばだ。大和とキャップ、島田さんと姫路さん―――。
「おい、明久。俺達も大会に行くぞ」
「うん、分かっているよ」
僕と雄二も召喚大会に出る訳だ。優勝したら僕らはある達成を果たせて一石二鳥。
その目的はまた後ほど説明するね。
―――☆☆☆―――
「えー。それでは、試験召喚大会一回戦を始めます」
校庭に作られた特設ステージ。そこで召喚大会が催される。
「三回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして全力で出してください」
今回立会人を務めるのは数学の木内先生。当然勝負科目は数学となる。
「い、いきなり相手が死神なんて・・・・・が、頑張ろうね、律子」
「う、うん・・・・・」
対戦相手の女子が頷き合う。ハーデスの存在は既に学園中に知れ渡っていよう。
「では。召喚してください」
「「
相手の二人が喚に声を上げると、馴染みある幾何学的な魔方陣が足元に現れて召喚者の姿を
デフォルメした形態を持つ試験召喚獣が喚び出された。
『数 学』
Bクラス 岩下律子 179点 & 163点 菊入真由美 Bクラス
向こうは二人とも似たような装備の召喚獣じゃ。西洋風の鎧とハンマーとメイスを持っている。
姫路の召喚獣を一般的な強さにしたような感じじゃろう。
「さーて私達も召喚しよっか。蒼天の力を見せつける為にね」
『・・・・・そうだな』
「『
現れる私達の召喚獣。私の召喚獣は相変わらず刀を装備してる。
一方、ハーデスの召喚獣は黒いマントを全身に包み、顔には髑髏の仮面を被って刃が備わっているトンファーを持っている。死神は鎌と通常装備だけど、どうしてトンファーなんだろうね。
『この試合はどうなるでしょう高橋先生』
『BクラスとFクラスでは試合にはならないかもしれませんね。
一回戦ですのでバランスの悪いカードも多いでしょう』
実況を務めておる福原先生と高橋先生が、この戦況を見据える。―――Fクラスだからって舐めないでくださいよ。
『数 学』
Fクラス 松永燕 569点 & 1点 死神ハーデス Fクラス
「ご、569点!?そんな、勝てるわけないじゃない!律子、先に死神をやっつけちゃいましょう!」
「そうね!あんな雑魚だけでも倒してみせるわ!」
先手必勝と武器を構えて敵が飛び掛かる。
ハンマーを持つ敵は大振りでハーデスの分身を潰そうと振り下ろすが、
私がカバーして真っ直ぐ振り下ろされるハンマーの軌道を横から叩きつけて逸らし攻撃を外した。
「なっ!?」
完全に狙いが外れたハンマー。地面から持ち上げるその瞬間、
次の攻撃をするためのタイムログをハーデスは
突いた。ハンマーに乗り、そのまま敵に向かって駆け―――。
横薙ぎに払い敵の首を刎ねた。
「律子!?」
『・・・・・他人を心配するより、自分の方を心配したらどうだ?』
「よくも律子を!」
大切な友を討たれた怒りに燃え上がるのがよく分かる。敵はメイスを縦、突き、
横薙ぎに振るってハーデスの召喚獣を攻撃するのも、ハーデスは一切防がず、
軽くかわし続けて―――敵の背後に回って刀の刃を敵の胴体に深く突き刺した私。
そしてハーデスも攻撃に転じてトンファーブレードを突き刺したことで敵は刃から抜けることができないまま
点数が減り続け―――何時しか、0点となり召喚用フィールドから姿を消した。
「勝者、死神・松永ペア!」
木内先生が勝者の名を告げる。勝利のハイタッチしたその後、直江君と風間君に坂本君に吉井君の試合を見ず、教室に急ぎ足で戻ったところ。
「お、覚えていろよっ!」
教室から坊主頭の男子生徒を抱えて逃げるようにっ走り去っていくモヒカンの男子生徒。
何があったのじゃろうか?ハーデスと顔を見合わせ教室の中に入ると、
「ん?おー、お前ら。戻ってきたか」
「うむ。それで、先ほどのお二人さんは?」
「ああ、三年の先輩らが営業妨害をしやがってな。『パンチから始まる交渉術』~『キックで繋ぐ交渉術』~『プロレス技で締める交渉術』をして速やかに退出させてもらったところだ」
島津君の物言いに内心溜息を吐く。まるでヤンキーみたいな言動だね。Fクラスの喫茶店に影響が出なければいいんだけど。
「それで、被害は?」
「んーと、大和が騒がしてしまった謝罪に今いる客達にタダで提供をするそうだぜ」
「落ちた評判を取り戻さなくちゃね」
やれやれ、どうして初日から営業妨害されるのかな。それも上級生。私達、上級生の人に何もしてないのに。
『・・・・・』
王様も何か考え込んでいるようで物静かだ。この時点で嵐の前触れだって感じているのはきっと私だけだよね。
―――そして次の試合に臨む私達だった。
「次は二回戦・・・・・相手はあの二人みたいだね」
『・・・・・やることはかわらない』
校庭に設けられた特設ステージに私達と対峙する対戦相手の姿を見て確認した。
「BクラスとCクラス。またしても上位クラスコンビかぁ」
「ふん、この勝負はもらったのも当然だな。友香」
「・・・・・」
根本が小山に話しかけるも、小山は根本の言葉に同意しない。
あの者の視線は真っ直ぐハーデスに向けられてる。
「そうね」
「それでは、試験召喚大会二回戦を始めてください」
今回の立会人は、多少のことには目を瞑ってくれる英語担当の遠藤先生。
「「「『
この場にいる四人の生徒の召喚獣が出現する。
『英語W』
Cクラス 小山友香 165点 & 199点 根本恭二 Bクラス
流石はBクラスとCクラスの代表コンビ。Fクラスの数倍以上の点数を得ておる。
『英語W』
Fクラス 松永燕 322点 & 1点 死神・ハーデス Fクラス
対する私とハーデスの点数が表示される。この手の科目は得意じゃないから必然的に
この点数だけど、私はAクラス以上の成績だから彼等からすれば強敵の筈。
「くたばれFクラス!」
『・・・・・』
根本君の召喚獣が真っ直ぐハーデスの召喚獣に迫る。小山さんの召喚獣は一歩も動かない。
様子見か漁夫の利を狙っておるのか定かではないけど、警戒しておくに越したことはないね。
「ちぃっ!ちょこまかと避けやがって!」
必死に武器である鎖鎌を振るうのじゃが・・・・・攻撃が当たる雰囲気ではない。
サーカスの劇団みたいに軽やかな動きをし、相手の動きを翻弄し、隙が出たら敵の体勢を崩して
立ち直るまで攻撃をしない。そんな繰り返しをしばらく繰り返しておると。
『・・・・・飽きた』
ハーデスが私にだけ聞える声量で伝えると、敵の召喚獣の体勢を崩した後に敵の顔面に絶え間なく
斬り続けた。その連続の斬撃に点数も凄い勢いで減り―――0点になった。
「そ、そんな・・・・・!」
愕然とする倒された根本君の隣にいる小山さんに尋ねた。一度もカバーもしないどころか少しも動かず静観の姿勢を崩さないのが不思議だ。
「小山さん。貴女は戦わないの?」
「止めておくわ。返り討ちに遭うのが火を見るより明らかだもの。
私より点数が高い
先生、私は棄権します」
それだけ言って小山さんは特設ステージから降りて行った。
「ま、待ってくれ友香!これは何かの間違い―――!」
情けなく追う根本君。あー、もしかして付き合っていたのかな?
「勝者、死神・松永ペア!」
ま、カップルの事情は気にせず私達はこれで三回戦進出決定!勝利の凱旋を心の中でしながら繁盛している教室に入ると、信じられないほどにお客はほとんどいなかった。
「あ、戻ってきたのね」
椅子に座って暇そうな態度をする川神ちゃんが声を掛けてきた。
「この状況は一体どうなってるの?」
「わからないわ。少しずつお客さんが来なくなっちゃって」
「営業妨害とかは?」
「されていないわよ?」
私は首を傾げる。ハーデスはどう思ってるのかな。あ、また考え込んでいる。私も考えてはいるけれど、こんな状況になる理由なんて今のところ思い当たることは無いからわからない。どうしてこのクラスだけ?もしかして他のクラスも?
「―――あら、閑古鳥が鳴いているわねここは」
「へ?」
『『『『『いらっしゃいませーっ!』』』』』
男子達が水を得た魚のように、ようやく来た
「「「・・・・・!」」」
「お前達、どうしたのじゃ?」
川神ちゃん、椎名ちゃん、クリスちゃんが警戒を露わにした。
「あの二人達・・・・・かなり強いわ」
「うん・・・・・全然隙がないよ」
「気配すら感じなかったぞ・・・・・」
流石、わかるんだね。四人のうちの二人だけ鍛えられてるから当然だよね。
「お客様。この島津学人が席までご案内いたします」
変態的な顔を浮かべる島津君が恭しくお辞儀をして手を差し伸べる―――次の瞬間。
「ほぉ、紳士的な対応をするなんて知的になったのかガクト?では案内してもらおうか」
最後に現れた長身的で真紅の長髪を伸ばす強い意思を宿す金色の瞳が特徴の男性が、島津君の手を取って笑みを浮かべた。
「あ、王様!」
「よう、燕。それにハーデス。楽しんでるか?」
『・・・・・閑古鳥が鳴いてる』
「それについて軽くだが知ってる。後で教えよう」
私達にそう言って顔を向ける彼―――蒼天の王。王様の登場に場の空気が停止したように静まり返ってたけど。
「ええええええっ!?」
「た、旅人さん!?」
直江君達が再起動した途端に王様は深い笑みを浮かべた。
「よう、久しぶりだなちびっこ共。元気にしてたか?遊びに来たぜ」
「うわぁい!旅人さんだぁ!」
「旅人さん久しぶりだなっ!」
川神ちゃんと風間君が王様に飛びついて物凄く嬉しそうに笑う。抱擁をするほどだ。
「旅人さん、子供を作ろう!」
「京?どんな風に過ごしたら再会の開口一番にそんな言葉が出てくる?」
「それはもちろん、毎日十年間も旅人さんのことを火照らせた体で想いながらだよ?」
「・・・・・十年前、お前の何かを捻じ曲げた覚えはないんだが」
嘆息する王様から何とも言えない雰囲気が凄い。
「お久しぶりです旅人さん」
「モロ、京のおかしな成長ぶりを見て俺はどう反応すればよい?」
「あはは、ありのままを受け入れるしかないかと」
「受け入れたら何か大変なことになりそうな気がするぞ」
「旅人さん、久しぶりです。まさか、学園祭に遊びに来るなんて思いもしなかった」
「なに、召喚大会を見に来たのも含めて学園祭に来るつもりだったんだ。お前も参加しているんだろ?戦いぶりを見せてくれよ。楽しみにしてる」
「はい、頑張ります。ところで彼女達は」
王様は直江君の指摘で軽く彼女達に視線を送った。
「私達は蒼天の者よ。『試験召喚システム』にも関わっているわ」
「蒼天の人達?」
「そーよ♪私の名前は雪蓮。よろしくね」
「って、雪蓮。名前を教える必要があるの?今日はスポンサーとして来ているだけなのよ?」
「いいじゃない。個人の自由でさ」
雪蓮という者が朗らかに笑う。
「・・・・・(パシャパシャパシャ)」
ムッツリーニ君がこの手のことに関してぬかりはない。
だけど、『試験召喚システム』を開発した国のスポンサーにそれはいささか失礼―――。
「失礼」
美しい黒髪をサイドに結んでいる少女が、何時の間にか手に持っているの武器であった。青龍刀だ。
「ふっ!」
「・・・・・!?」
刹那。彼女はあろうことかくムッツリーニ君に振り下ろした。いきなりの暴挙に、
ムッツリーニ君は持ち前の身体能力で回避した。
「いきなり何するんですか!?」
「そうよ!土屋が一体なにをしたって言うのよ!」
島田ちゃんと姫路ちゃんが食って掛かる。が、澄ました顔で黒髪の少女は答えた。
「無断で私達の姿を写真に収めるのは失礼でしたので、フィルムごとカメラを斬っただけです」
カメラを・・・・・?ムッツリーニの方へ振り向けば・・・・・。
「・・・・・お、俺のカメラが・・・・・」
真っ二つになったカメラに身体を震わせてショックを受けておるムッツリーニの姿。
その光景に島田も見て怒りを露わに叫ぶ。
「撮られたぐらいで、カメラを壊すことなんてないじゃない!」
「では、あなたは無断で写真を取られても問題ないと仰りたいのですか?無防備であられもない姿を、もしかしたら脅迫のために撮られる写真を」
「そ、それは・・・・・!」
正論な言葉に口籠り何も言い返せない島田ちゃんは最後に口を閉ざした。
「もしそれが良いと仰るのであれば・・・・・あなた今すぐここで衣服を脱ぎ棄てて全裸となり、
彼に写真を取られるべきかと。そして、私達は安易で公にされてはならないのです。どうぞ、ご理解いただけると感謝します」
「それに命を失わないだけでも幸運よ。私達は殺生ができる権利だって得ているから、
例え警察沙汰になっても無条件で『今回の事件は何もなかった』とされるものね」
金髪の可愛いデフォルトの髑髏の髪飾りでツイン縦ロールにしてる金髪の女性が、大胆的な発言をってちょ―――――っ!?
「いい?蒼天はそれほどまで絶大的な権力を有しているの。
裏で世界の半分を掌握している蒼天はね。だから人が一人二人死のうとっ―――!?」
そこで彼女の言葉が途絶えた。その理由は、王様が拳骨を落としたからだ。
うわっ、今鈍い音がしたっ。殴られた彼女の目尻に涙が浮かんでるぐらいだから相当痛い筈だ。
「な、なにするのよ・・・・・!?」
「蒼天がいつ暴力的な国になったんだ華林?」
目を細め、睥睨する王様が威圧を放った。それだけで場に緊張が走しり、彼女に無言の圧力を掛ける。あの鋭い眼光は、初めて接する者に畏怖の念を感じさせる。
「・・・・・ごめんなさい。先の発言を取り消します」
私達に頭を下げて謝罪の言葉を述べた。王様は威圧を消して謝った彼女の頭を撫でる。
まるで子供を宥めた後の扱いだね。
「・・・・・しばらく学校にいるのですか?」
「そのつもりだ。明日も来るからな」
「明日も?やった!」
『・・・・・じゃあ、暇なんだな?』
「確かに暇だが・・・・・それがどうした?」
ハーデスの質問の真意は次で分かった。
『・・・・・一緒に手伝って』
―――☆☆☆―――
「いらっしゃいませー!ようこそ喫茶店ハロウィンへ!」
なんだ、ここは・・・・・!?僕、吉井明久が雄二と途中で出会った
小さな女の子と共に教室に戻ってきたらFクラスの教室の入り口からズラリと
客が立ち並んでいる光景を見て唖然となっていた。
「おい、こりゃどうなっているんだ?」
「僕にも分からない。取り敢えず入ろう?」
僕達がFクラスだと言いながら何とか教室の中に入る。
すると、見知らぬ女性達がFクラスの皆と働いていた。
「おお、明久と雄二。ようやく戻ってきたか」
「あ、うん。でも、これってどうなってんの?」
秀吉が話しかけてきた。うっすらと額に汗が浮かんでいてとても煽情的だった。
「何というか、蒼天の王様が来ての。ハーデスのお願いで共に働いてもらったら、あっという間に客がわんさか来たのじゃ」
『おい!食材が足りなくなったぞ!』
『誰か買出しに行ってくれ!』
『よし、風のように俺が行くぜ!』
蒼天の王様が来ているんだって!?それに・・・・・そうみたいだね。凄い繁盛じゃないか。
「まあ・・・・・ここの学校の生徒だけでしろと言われているわけじゃないからな。
これは良い誤算だ」
そうだね。それじゃ、次の試合まで頑張るとしますか。
『お前達か。他のクラスで迷惑行為をしているという生徒達は』
『げっ、鉄人!?』
『お前達をキツーイ指導をしてやるから覚悟しろ!』
『俺達は何もしちゃいねぇよ!』
『黙れ!ありもしない発言行為及び、二年Aクラスからお前達が大声で話をして
迷惑だと訴えられている!営業妨害とみなし今日一日は補習室で過ごしてもらうぞ!』
『『そ、そんなっ!?』』
なんだか、聞き慣れた声と悲鳴が聞こえてくる。僕達には関係ないことだけど。
―――☆☆☆―――
「あれ、代表。どこにいくの?」
「・・・・・特設ステージ」
「試合はまだのはずだけど?」
「・・・・・死神の試合を見に行く」
「ああ、そういうこと。視察しに行くってこと?」
丁度休憩時間の時、代表が出し物で着ているメイド服を着替えずそのままどこかへ
行こうとしている様子にアタシは納得した。そんな代表に私もついて行く。
「でも、あの死神の点数を見ても1点で戦うんでしょ?見ても大した情報もないわ」
「・・・・・保健体育で1000点という隠し玉みたいなことがあるかもしれない」
うぐ・・・・・あの時のことを言っているのね・・・・・。
アレはいくらなんでも勝ち目はない。Sクラスとならいい勝負ができそう。
「・・・・・それに見ないより見ていれば対処方法も考えれる」
「ふーん。代表って死神のどこが好きなの?あの骸骨の仮面を被ってて不気味とは思えない?」
気になったことを真っ直ぐ代表にぶつける。正直、あの仮面を被っている限り
慣れ合いなんてできそうにない。なんというか、近寄りがたいのよね。
「・・・・・私は小さい頃、助けられたから」
「代表、何か遭ったの?」
「・・・・・最初の出会いは小学校だった」
へぇ、小さい頃からなんだ。
「・・・・・私が周りからいじめられた時に彼は現れて助けてくれた」
「同じ小学校だったんだ?」
「・・・・・違う。彼は雄二を会いに来た時に私がいじめられているところを
目に入って助けてくれたの」
坂本君を会いに来た・・・・・?違う学校の子が違う学校に来るなんて珍しいわね。
「・・・・・それ以来、彼と私は会うことはなかった。
でも、私が中学一年の時、とある事件に巻き込まれたの」
「事件って大丈夫だったの?」
「・・・・・うん、彼がまた私の前に現れて助けてくれた。
その時、父が運営している会社が蒼天の会社と同盟を結ぶための集会に来ていた。
でも、父のライバル会社が蒼天の会社と同盟をするって情報を聞きつけて、
父の命を狙った騒動が起きた」
そんなことが遭ったんだ・・・・・。
「・・・・・その時だった。私はその騒動に巻き込まれ、殺されかけた時に死神が助けてくれた。
それから。物凄く申し訳なさそうに何度も謝ってきたの。自分たちの不注意だって」
「死神ってすごく強いのね」
上靴を外出用の靴に履き替え校庭に出る。
「・・・・・強かった。あっという間に犯人を亀甲縛りで縛り上げたから」
「ちょっと待って。とても信じられない結び方の名前が出たわよ?」
「・・・・・本人曰く『俺に牙を剥く奴ら限定でSだから』だって」
い、意外・・・・・そんな性格なんだ。死神って・・・・・。
「でも、代表が言う死神と今の死神の性格と言動がちょっと似つかないような・・・・・?」
「・・・・・正体を隠しているからだと思う」
「正体って・・・・・蒼天の出身者なんでしょう?」
「・・・・・それもそう。だけど、他にも理由があるかも知れない。だから―――」
アタシと代表は観客席に繋がる入り口を通り、会場に踏み込んだ。
「・・・・・この大会で死神の仮面を取って、本当の意味で向き合いたい」
『三回戦、開始です!』
丁度、三回戦の試合が始まろうとしていた。
「あの二人は間違いなく準決勝にまで上り詰めてくるわね」
「・・・・・うん」
「アタシは松永って人と相手をするわ。代表は死神の方をよろしくね」
「・・・・・分かっている。絶対に勝つ」
静かな強い決意の炎が代表のつぶらな瞳に宿る。死神・ハーデス。
代表の心を掴むその魔の手は安心して良いかどうか、アタシが確かめるわ。
『勝者!死神・松永ペア!』
「・・・・・優子、帰る」
「何か掴めた?」
踵返す代表に問うた。代表はアタシに背を向けたまま言った。
「・・・・・あとは実戦で」
―――頼もしい発言だわ。それでこそAクラス代表だわ。私も頑張らないと。
「というか、蒼天の王様が来るなんて吃驚しちゃったわ。寿命が縮んじゃったかも」
「・・・・・来てくれて嬉しい」
「代表?」
「・・・・・なんでもない」