「わははは! 負けてしまった! 流石に強いな魔王よ!」
「なんか、ごめんなさい・・・・・」
「気にするな。負けは負けだ。しかしなんだその姿は?」
ちょこーんと俺の身体は【鬼神】を使用した代償として幼児化したりステータスが一時的に100まで減少、装備ステータス以外のスキルも全て一定時間封印状態だ。不味い、今襲われたら確実に死ぬ自信はあるぞ・・・・・。
「力の代償だよ。気にしないでくれ」
「そうか。それならば私を倒した証と褒美をやろう。遠慮せず受け取るがよい」
〈称号『真・彼岸の鬼鳴峠の攻略』を獲得しました。称号『真の強者』を獲得しました。スキル【一刀流】を取得しました。スキル【二刀流】を取得しました。スキル【三刀流】を取得しました。アイテム【龍の爪】×5を入手しました。アイテム『レシピ×7』を獲得しました。ユニーク装備『閻魔刀』を取得しました。上位職【侍大将】のジョブチェンジ〉
いや、多っ!?
「報酬太っ腹過ぎない? それにレシピって俺に渡してどうするの」
「先祖の力を受け継いだ魔王に渡してもよいだろうと判断したのだ。たくさんの仲間がおるならば先祖しか作れぬ鬼の酒を造って貰いたい。秘薬については私を楽しませてくれた特別な報酬だ」
それならありがたく受け取るけど、一から三までの刀スキルが手に入ったなぁ。にしてもこの刀は・・・・・。
『閻魔刀』
【STR+100】【AGI+80】【DEX+95】
【破壊不能】
【地獄王の神罰】
【地獄王の神罰】
半径十メートル内のサークル内のプレイヤーやモンスターにスリップダメージが入り、倒したプレイヤーに一定時間継続するデバフを付与する。
あ、このスキルの効果は面白―――。
グイッ。
「今宵は宴にするぞ皆の者! 私を倒した魔王ハーデスと此度の戦いに祝い、大いに飲み、大いに騒げ! 時期は早いが明後日鬼祭りを開催する!」
オオオオオオオオオオオオオオオオーーーーー!!!!!
俺を持ち上げて肩に乗せながら発言したゼ=ノンの宣言により歓喜の雄叫びをあげる鬼人達。鬼祭りとやらはその日の夜に行われて屋敷に招待された俺は祭りの準備が終わるまで居させてもらい、彼の一人娘とも交流を交わせた。その間にステータスと封印が解消されて体格も元に戻った。さて、見る暇もなかったが戦いの最中に称号が手に入ったな?
『最大火力』『攻撃力特化』『攻撃力極振りの冒険者』『破壊神』
『最大速度』『敏捷特化』『敏捷極振りの冒険者』『神風』
称号:『破壊神』
効果:範囲が常時半径20メートルとなる
称号:『神風』
効果:MPやステータスの代償を支払わず飛行を可能となる
「・・・・・」
・・・・・なるほど、なるほど? そういうことならこれもいけるわけだな?
「【クイックチェンジ】【至高の堕天使】」
「ぬっ!? 誰だ、魔王はどこに!」
「落ち着け。ただ性転換して女になった魔王ハーデスだ」
「女になった!? ・・・・・もはや何でもありなのだな。集落の外ではそれが当たり前なのか?」
「私だけだ。他の者達と一緒にしないであげてくれ。彼等彼女等が可哀想すぎる」
性転換した俺に困惑し、ゼ=ノンの一人娘が硬直してしまっても気にせず結果を待つと・・・・・。
《おめでとうございます! 死神・ハーデス様の【INT】が50万に達しました! 称号【最大魔法力】を獲得しました! おめでとうございます! 死神・ハーデス様の【INT】が100万に達しました! 称号【魔法力特化】を獲得しました! おめでとうございます! 死神・ハーデス様の【INT】が150万に達しました! 称号【魔法力極振りの冒険者】を獲得しました! おめでとうございます! 死神・ハーデス様の【INT】が200万に達しましたため称号『魔術の神』を獲得しました!》
称号:『魔術の神』
効果:魔法スキル限定で消費するMPは常時0となる
「これぐらいの称号を取らないといけない新大陸とモンスターがいるってことか・・・・・後でDEXの称号と取っておくか」
何を言っているんだ? という顔でこっちを窺うゼ=ノンを気にしないが、娘の方がなにやら熱い視線を・・・・・。
「お父さま。この方をお借りしてもいい? 明後日は祭りなのでこの方に相応しい着物を見繕ってあげたいわ」
「魔王が良ければよいぞ」
それ、人によっちゃ断りづらいじゃん! ほら、いいよね? って目を輝かせてこっちを見るし!
「・・・・・そうだな。祭りといえば着物だ。案内してもらってもいいか」
好感度を上げるなら断らない方がいい。声を弾ませて俺の手を取って呉服屋へ連れてく娘に「おお、ついに我が娘にお友達が・・・・・」と言って感無量なゼ=ノンだしさ。
集落の至るところで和気藹々と盛り上がっている鬼人達の間を横切ってゼ=ノンの娘『桜姫』と呉服屋にお邪魔して、俺が着る着物の布を選びオーダーメイドで頼んで、長らく待った結果・・・・・。
「うわぁ、よく似合う!」
「本当にねぇー。鬼人族だったら男衆が黙っちゃいない美しさだよアンタ」
服装は、極端に短いラベンダー色の着物の下に、薄暗い紫色のボディスーツ。ボディスーツの袖は腕をすっぽりと覆い、中指の金色の輪で終わり、手のひらと手の甲を部分的に覆っている。着物の背中と袖には、紫と金の濃淡で巴、花、波の模様があしらわれている。着物は背中で真紅の帯を蝶結びにして締めてる。上部に小さな菱形の開きがある濃い紫色の太ももまであるストッキングを履き、ヒールの高いサンダルを履いている。右足首には、髪と着物に描かれているのと同じ花が2つ飾られている。 爪は紫色に塗られている。首と肩を覆うが、胸と背中の上部には窓が開いている。紫色のシンボルが描かれた衣装には、左肩に黒い巾着、帯の前に房飾りが、帯のリボンに扇のような飾りがついている。これ翼と冠を外せば確かに浴衣美人だわな。
「着物の完成を待ってたらちょうど夕飯の時間ね。いきましょう!」
「待て、お代を払ってない」
「お代はいいよ。その代わりその着物姿を外から来た人間達に見せつけてこの店の宣伝しておくれ。そうして欲しいほど渾身の出来なんだ。私達鬼人は同じ服しか着ないから作り甲斐が無くてねぇ、たくさんの人間が来てくれるなら職人冥利が尽きるってわけさ」
商魂逞しい鬼人だな! ただより高い物はないとはこのことだわ。次にここで着物を買いに来たこの店のオーダーメイドをする際に一番高い金額を、600人分の代金を払っておくと言うと、店主に「気前がいいじゃないか」と言われながらせかす桜姫に引っ張られて喧騒の真っ只中の集落の通りへ躍り出たところ。
「あっ、(≧▽≦)キャ―――!! お姉ちゃーん!!」
「おおおー! 着物姿の白銀さんだぁー!!」
「え、お美しい太股が見える着物って・・・・・イイネ!(≡゚∀゚≡)イイヨ!」
「そちらの鬼っ子ちゃんも可愛いね!」
俺と一緒に狙われているイカルの護衛をしているらしい身内の仲間と遭遇して、イカルに抱き付かれた。
「お花のいい匂いがします!」
「あら、気付いた? 魔王が着てる着物は特注品も特注品なのよ。魔王の動きやすい着物がいいと要望を言うものだから店主に頼んで品性を損なわせない着物に花の香りを染み込ませてもらったのよ」
「宣伝を頑張ってしなくてはいけない理由を作ってくれてありがとう。ということでイカル。今日は一緒に着物姿で歩けないが、次の祭のために呉服屋で作ってもらうといい。私はこれから用事があるから明後日の祭りまで会えないが、他のプレイヤーには気を付けてくれイカル」
「わかりました! 作ってもらいます! 今すぐに!」
他のプレイヤーに襲われる不安より、絶対にお揃いの着物を欲しいと熱意が伝わってくる。イカルが俺達と別れ、彼女を追いかける仲間達にイカルを頼むと言葉を送る。
「随分と慕われてるわね」
「妹分だからな。よく甘えてくる」
「ふぅーん、だからってその姿で悪いことしちゃダメよ」
「悪いこともなにも、私は魔王だが? イカルも魔王だが?」
「そ・れ・で・も・よ!」
・・・・・解せん。
その後、屋敷に戻ってゼ=ノンと桜姫、初めて会う二人の妻であり母の『那津梅』と夕餉の時間を過ごした。
「明後日の祭り、一緒に回りましょうねー!」
マイホームに帰る直後、そんな声を背中に向けられながら片手を挙げて応じた。日本家屋に戻るとすぐあるNPCに訪ねた。
「ラプラス、時間あるか?」
「相談か? 私に作って貰いたいものがあるのか?」
「ああ、今回は彼岸の鬼鳴峠の関係で手に入れた素材を調合できないかなと。それとは別にレシピも手に入れたから貸すよ」
「ふむ・・・・・鬼人族の秘伝のレシピか。すぐに取り掛かろうではないか。二日もあれば完成できるだろう」
二日か。それならみんなと彼岸の鬼鳴峠の鬼祭りに行けるな。ラプラスにお願いの一言を残して彼女の工房を後にし、リヴェリアと縁でトトロのオカリナの音色を静かに聞きながら時を過ごした。
―――二日後。
「待ってたわよ!」
「二日ぶりだな。ここに来る道中、もう祭り騒ぎで賑やかだったぞ」
「だから早く行きましょうよ!」
随分と楽しみで仕方がないご様子の鬼の姫さまだ事で。この日の為に浴衣や着物姿で鬼人族の集落に足を運んだ俺たち以外、他のギルドメンバーにも鬼祭りのことを知っているし、知人友人関係で他のプレイヤーも知られているはずだから、祭りに参加しているプレイヤーが鬼人より多く見かけた。
夜から始まる鬼祭り。リヴェリアの手を引いて屋台巡りをして金魚すくいを越えた鯉すくい等があったり、 人面鬼林檎という鬼の顔がついたたくさんの林檎を箱で隠して神経衰弱の要領で同じ顔を二つ、相手より多く揃えたら勝ちのゲームをして、勝つと人面鬼林檎の苗木を貰えた。射的も仮面屋もあると型抜きまであった。
「見難易度が高い型抜きほど報酬も豪華になるぞ」
店主の話を聞き、挑戦する気で金を払った俺に警告に似た説明を言ってくる桜姫。
「これ、毎年誰かが挑戦するけれど誰一人として成功してないのよ?」
「桜姫は?」
「・・・・・できなかったわよ」
よーし、この俺が初の成功者になってやろうじゃないか!
「因みに制限時間があるわよ」
「のんびりと型抜きさせてくれないのか」
「今年の祭のために用意した傑作の型抜きだ。割れずに成功させてみな」
そう言って数十センチ四方の思っていたより大きい型抜きを俺の目の前に置いた店主。・・・・・えっと、手を突き出しあって対峙してる竜虎?
「これは、今まで以上に難しい型抜きだわ・・・・・! 型抜き自体割れやすいから指先の力が少しでも強いと、必要以上広く罅が入ってしまうからみんな失敗してしまうの。気を付けてっ」
「制限時間は3分だ。始め!」
これ、もしかするとステータスの数値次第で成功か否か左右するんじゃね? ってもう考えてる時間がないか。心中でアータタタタッ! と某アニメや漫画的な感じで型抜きに爪楊枝を突き刺していく。おっ、STRが0だと割る広さが小さいな。
「なんだと、俺の渾身の型抜きが綺麗に削られていくっ!?」
「しかもなんて繊細なっ、指先に必要以上の力が籠ってないし、迷いが一切感じさせない。こんなことできる人、初めてみたわ・・・・・!」
そして、最後の部分の型をくり貫いて作業を終わらせる。
「時間は?」
「・・・・・2分59秒だ。見事だぜ客人。俺の完敗だ」
よーし! 初クリアゲットだぜ! 桜姫が自分のことのように歓喜の声を上げて、リヴェリア達も拍手を送ってくれた。
「約束の豪華商品だ。受け取りな」
『マンドレイクダケ』『オニトロダケ』
「・・・・・キノコ?」
これが豪華賞品? 確かにレア度と品質は高いが、キノコが豪華賞品とは想像すらしなかったな。
「今の冥霊山を作った火山の火口にしか生えない特別なキノコだ。マンドレイクダケは生で食っても焼いて食っても活力が漲るほど美味で、オニトロダケは食えないが灼熱を秘めた珍しいキノコなんだ。このキノコのことを知ってるのは集落の中で俺しかいない秘密のキノコだから育てられるならやってみるといい」
それはとても貴重な物だな。是非とも帰ったらオルトに渡して数を増やしてもらおう。何かの調合や料理に使えるかもしれない。
「・・・・・マンドレイクダケ、美味しそうですね」
ほら、リヴェリアがとても興味津々に手に入れたキノコを見つめていらっしゃる! 食べてみたいと強請られる前にインベントリに仕舞い、型抜きの店主と別れて次は何を遊んでみようかと祭りのことを聞きつけて彼岸の鬼鳴峠に来るプレイヤーの数が多くなっているのを感じながら屋台巡りを続けた。