「た、大量に集めたわね・・・・・」
「これくらい当然だ」
色んな屋台を巡って時折得たアイテムで限定的な大会に参加、全て勝って得たアイテムが小さな山を形成するほど集まった。食材や希少な鉱石、ステータスを補正するホームオブジェクト、幸運を呼ぶ鯉王、その他諸々を見て桜姫は圧倒されてる様子だった。
「桜姫、この祭りって今夜で終わるのか」
小休止できる場所で腰を落としている俺達が居るのは年中開いている和菓子屋の敷居内。あれだけ聞こえた喧騒が今では静まり返りそうなほど聞こえなくなって、屋台を閉める鬼人の姿がちらほらと見掛け増え続けているので、鬼祭りのことを知らないから尋ねると。
「いいえ、三日も続けて行われるわ。だから全部遊び尽くすつもりで楽しんでちょうだい」
「それなら次は・・・・・」
「あ、お姉ちゃーん!」
聞き慣れた声。そして有言実行をしてみせた俺と同じ着物を着たイカルが小走りで駆け寄ってきた。
「見てください、作って貰いました!」
「妹分と呼ばれるだけあってあなたもよく似合うじゃない」
「だろう。イカルは可愛さだけでなく胸を張って自慢が出来る子だ」
「えっへん!」
薄い胸を反らすように張ったイカルが微笑ましい。
「イカル、約束通りこれから一緒に回ろう」
「わーい!」
満面の笑みを浮かべる少女であったが、不意に大鐘楼の音色が響き渡った。これは・・・・・!
「お、本当に墓石があるじゃーん。HPも表示されてるぜ」
「すげーボロいし、あからさまに壊せって感じだよな」
「リアルだったら祟りだの呪いだの受けて死ぬんだろうけど、ゲームだからそんなの受けない俺達は実質無敵だから怖くねーな」
「仮にモンスターが出てくるなら俺達で倒せばいいしな」
「まっ、それでも出来なかったらクソ魔王に押し付けて万事解決させようぜ」
死の都のど真ん中にHPがある墓石の情報はタラリアにも届き、良識あるプレイヤーは墓を冒涜した一寸先は闇の未来を迎えたくなく初めてこのエリアまで来たプレイヤーにそれとなく墓を壊してはいけない警告をするが、良識を持ってないプレイヤーは逆に愚行を犯す快楽を求めた。そのプレイヤー五人が「墓石を破壊しましたー!」と内容で生配信をした事で、事の始まりが証拠となることも構わず一斉に墓石のHPを全損させた途端に―――。
カランカラァーン・・・・・カランカラァーン・・・・・!
〈プレイヤー 俺様最強不良、四露死君主、覇王牙、威卦面、骨害折那が墓石を破壊し、封印されていた最恐の呪霊を解き放ちました〉
〈封印を解いたプレイヤーは称号【祟り神】を授与します〉
〈これにより週末に開催するイベント『鬼滅の危機』の終了まで全てのプレイヤーと鬼人族に【狂乱】の呪いが付与されます〉
「「「「「は?」」」」」
「うぁぁぁああああああああー!!?」
「桜姫!?」
「え、えっ?」
全身からいきなり迸る赤、紫、黒の色が入り乱れたオーラに包まれた桜姫に見ているしかできない俺達は当惑する。リヴェリア達には桜姫のような異常は見られないから本当に鬼人族のみの呪いらしいな。やがて禍々しいオーラが消失して、上を見上げたまま動かなくて声を掛けようとした時、桜姫が俺達に向けた目が危険を感じさせるほど血のように真っ赤な光を孕ませて、間違いなく正気を失っている状態で獣のような声を張り上げ、手を突き出しながら襲ってきた―――!!!
「・・・・・えと、大丈夫ですか?」
「特に問題は・・・・・」
「ヴヴヴヴヴヴッ!!!」
ガチガチガチッ! と人の頭を掴んで噛む桜姫に何とも言えない気持ちで見つめる俺達。うーん、なんか逆に申し訳ない・・・・・。
「マスター、如何致しますか。他の鬼人族達も彼女のように正気を失っているようです。報告するまでもありませんが、元凶らしきものが出現しており、マスターのように冒険者達が襲われている模様」
サイナの言う通り、集落中から獣の咆哮とプレイヤーの悲鳴と絶叫が聞こえてくる。というかプレイヤーにも呪いを受けているんだよな。俺とイカルは【呪いの王】で呪いを無効にするからどんな効果を受けているのか知る由もない。そして集落の上空に異形の顔の形をしてる黒い靄が浮いている。あれが【狂乱】の呪いで鬼人族を凶暴にしているようだ。
「あれは厄介だぞ後輩。早めに呪いの元をどうにかしなければ、里の外に今の鬼人族を出せば被害が計り知れないことになる」
「現実にしたくないことだなそれは・・・・・呪いの影響ならなんとかできるか?」
「お姉ちゃん、その子どうするの?」
未だに人の頭を齧る桜姫をイカルが指摘するまでもなく、もはやどうでもいいと気がしてきた。
「諦めて離れる気配もないからな。イカル、呪いを解除するスキルを使ってくれるか」
「わかりました! えーと・・・・・【悠久の聖火】!」
今まで一度も使ってない不慣れなスキルを発動するイカ。小さな手から聖なる炎が放たれて桜姫に当って燃える彼女は悲鳴を上げ、俺から離れて地面に転がりながら火を消そうとじたばたする。そんな様子を見守っていると変化が起きた。
「―――な、なにこれっ? も、燃えてる? 私が燃えてるの!?」
「あ、喋りました! よかったです!」
「喋るわよ! この炎あなたの仕業なの!?」
「イカルを怒ってやるな桜姫。お前、呪いの所為で正気を失っていたんだぞ」
「私が正気って・・・・・あなた、綺麗な髪が酷いことになっているわよ」
「お姉ちゃんを噛んだからですよ!」
ぷんぷんと怒りながら言うイカルに、俺を噛んだのは自分であることを察した桜姫だが、そんなことした覚えはないとイカルに食って掛かる。
「とにかくだ桜姫。集落は今、呪いで正気を失ってる鬼人族達で危険な状態だ。ゼ=ノンやア=トゥも例外なく正気を失って私達を襲い掛かってくるに違いない」
「そ、そんな・・・・・呪いって何? 何が原因で里がそうなってるのよ!?」
「アレです!」
「さらに言うなら、墓石に封印されていただろうアレが、大迷惑な冒険者達によって破壊してしまったために封印を解いてしまったことが。それ以降、この状況になったんだ」
イカルも何度も頷く。桜姫は極限まで元凶に向けてる目を見開いて、顔色が真っ青になった。
「まさか、あの封印を解いてしまったの!?」
「説明してくれるか?」
小さく頷き、桜姫は知っている情報を打ち明けてくれた。
「落ちてきた隕石で複数の都が滅び、無事な都や町に火山灰で積もって住めなくなって死の大地と化した話は知っているわよね。苦痛や悲しみ、飢えで多くの人間達が死んでも魂が成仏できず悪霊や怨霊、餓鬼に変異したことも」
「ああ」
「だからそういった多くの魂を鎮めるため、封印するために墓が創られたの。そうでもしないともう取り返しのつかないことになるからってお父さまに教わったわ。だからその墓の側に立て札を立てて、近づいても壊してはいけない警告を訴えていたのに・・・・・」
それだけで人がお利口にしていられるなら戦争も犯罪の概念なんてないわな。ルールは破るためにあるって誰かが言っていたようにな。
「封印の墓はどこにあった?」
「死の都の中心部辺りにあるわ。でも・・・・・」
ゼ=ノンを始め、鬼人族達が心配か。確かに放置はできないな・・・・・。
「【ガブリエル】【相乗効果】【聖歌の祝福】【悠久の聖火】」
違う美女の顔と真っ白な装備に純白の翼を生やした状態でスキルを発動する。俺を含め同じエリアにいる味方プレイヤーに自然回復(大)、状態異常無効、『系統:悪』のスキル無効の効果を付与するのと、呪いを解呪する相乗効果の力を使った。
「すごい・・・・・」
「どんなお姉ちゃんも綺麗です!」
プレイヤーside
「わ、なんだこの光・・・・・?」
「おい見ろ、呪いのデバフが解除されてるし受けてたダメージが自然に回復していくぞ!」
「うおおー! 白銀さんだぁー! ナイスファインプレー!」
「よかった、俺達だけじゃなくて鬼人達も呪いから解放されていくぞ!」
「た、助かった・・・・・」
「いやお前、半分喰われている状態だから微妙に助かってない」
集落から歓喜の声が挙がって聞こえてくる。イカルに頼んでギルメンのみんなに状況報告を教えてもらうとプレイヤーも鬼人も呪いが消えて正常に戻っているらしい。呪いの元凶は何か知らんけど怒り狂ったように咆哮を挙げて禍々しい瘴気を放ってくるが、俺がいる限り呪いの効果を付与する攻撃は聖なる光によって無効化される。実際、振りまかれた瘴気は光属性のフィールド系の魔法に触れると聖なる炎に燃えて焼失している。・・・・・あ、こっちを見た。
「これで残りは呪いの大本を叩くのみね。一応、鬼人達の安否確認をしましょう」
「ありがとう」
桜姫が他の鬼人達のことを心配しているのがイカルでもわかりやすいほど顔に出ている。一人にさせてはおけないしゼ=ノンのところに送りながら見て回ろうかね。
「封印の件は桜姫の口から伝えてほしい」
「分ってるわ。お父さまも力を貸してくれると思う」
「いや、鬼人達は集落に留まっていて欲しい。また呪いを受ける羽目になったら私達が戦い辛くなる。強い弱いの問題ではなく、同士討ちの恐れで」
「・・・・・わかったわ。お父さまが戦う気でいるなら何とか説得してみる」
集落内を歩き回る桜姫が一人ずつ鬼人族、子供達にも声をかけて安否確認をしていく。その様子を見守りながら、顔色が悪いア=トゥとも会いつつ最後まで同行していた俺達は度々出会うプレイヤーとも話し合い、死の都で封印から解放された何かがいると言い触らし続けた―――。
【ギルティ! ギルティ! ギルティ!】プレイヤー 俺様最強不良、四露死苦君主、覇王牙、威卦面、骨害折那が墓石を破壊し、封印されていた最恐の呪霊を解き放ちましたを語るスレPART1【絶許! 絶許! 絶許!】
・はた迷惑な事を仕出かしたプレイヤーの尻拭いをする羽目になったプレイヤー同士の集いです
・イベント『鬼滅の危機』に参加するプレイヤーの集いのスレです
・見守り隊の出動のお時間でございます
10:桃太郎なプレイヤー
白銀さんがいなかったら、白銀さんのスキルの恩恵を受けていなかったらこうなっていたプレイヤーである
・称号『身霊喰の死呪霊』
この称号を獲得したプレイヤーは一定時間ごとにレベル、ステータスが永久的に減少し続ける。
11:桃太郎なプレイヤー
ホントそれ! 呪いを解かない限りHP減り続ける鬼畜だ!
12:桃太郎なプレイヤー
その呪いで死に戻りしたら≫10の言う通りになるんだよなー。俺のフレンドのそのまたのフレンド達は鬼の里の外にいたから白銀さんに解呪されないままでいるので、現在進行形でログアウトしてやり過ごすかHPを回復して耐え忍ぶか悩んでいる最中だってさ
13:桃太郎なプレイヤー
俺様最強不良、四露死苦君主、覇王牙、威卦面、骨害折那の五人も確実に同じ呪いを受けているはずだ。そして白銀さんから持たされた情報では死の都の中心にあったあの墓石が壊された原因で今の俺達が居る
14:桃太郎なプレイヤー
ほんっっっと人害プレイヤーで困るな!? 最初から触ってはいけないって注意書きされてるのに触るバカはマジで嫌いだわ! リアルでも祟られてしまえー!
15:桃太郎なプレイヤー
無関係な俺達まで迷惑を被らせるプレイヤーはブラックリストに載せるだけでは物足りない。このゲームから追放されるべし
16:桃太郎なプレイヤー
気持ちは同感だがまだ問題は解決していないことを覚えているだろうか。イベントに参加して俺達が勝ち残らないとまたは鬼達が発狂するかもしれないぞ
17:桃太郎なプレイヤー
おおぅ・・・・・
18:桃太郎なプレイヤー
突然発狂して襲われたあの時の恐怖心がしばらく忘れられない・・・・・
19:桃太郎なプレイヤー
あのー、疑問に思ったんだけど白銀さんのスキルの影響がなかったら鬼の集落ってどうなってたのかな?
20:桃太郎なプレイヤー
≫19そりゃあお前、俺達を見かけるなり襲う人喰い鬼になったままだろ
21:桃太郎なプレイヤー
≫20の言う通りになったら鬼達が発狂して襲い掛かるのでは?
22:桃太郎なプレイヤー
アーッ!!!
23:桃太郎なプレイヤー
自分、美人な鬼人に襲われるならご褒美なんで大丈夫です
24:桃太郎なプレイヤー
・・・・・なるほど? ナニがとは言わないがつまりし放題になるとな?
25:桃太郎なプレイヤー
こういう犯罪と変態的な事を考えるプレイヤーだけ祟られて死に戻ればいいと思うのは私だけかな
26:桃太郎なプレイヤー
こういうバカもいるから世界はおかしくなるんだよ(良くも悪くも)
27:桃太郎なプレイヤー
ごめんなさい! 身内がド変態でごめんなさい! 路地裏で不良に絡まれた同級生を助けようと何故か全裸になって「イヤッホーゥ! 無償の愛で抱きしめてやるぜぇー! こんなチャンス滅多にない!」って腰をフルバースト、三点バーストのごとく振りながら迫って不良だけでなく同級生まで迫って警察にお世話になった身内がごめんなさーい!
28:桃太郎なプレイヤー
同感だ・・・・・ちょまて?
29:桃太郎なプレイヤー
≫27さん? 冗談だよな? そんな露出狂、わいせつ罪になるようなことをした学生? がいるはずないよな?
30:桃太郎なプレイヤー
嘘だと言ってくれ! 今なら冗談の意味でヤベェ奴ってだけに済むから!
31:桃太郎なプレイヤー
おいおい≫27 リアルのことを教えてはいけないマナーを守らないとダメじゃないか°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
32:桃太郎なプレイヤー
いぃぃやぁぁああああああああああああ!! 生粋の変態が同じ掲示板にいるぅー!!?
33:桃太郎なプレイヤー
≫32 失敬な! 変態ではない! 愛の伝道師なだけだ! リアルのことを教えられたお返しに≫27とは恋愛的な意味で突き合っていることを教えてやる!
34:桃太郎なプレイヤー
ちょっっっ! 何教えているんだよあんたぁぁぁあああああああああああ!!?
35:桃太郎なプレイヤー
常識人風な≫27もじつはヤベー奴だった件について
36:桃太郎なプレイヤー
ダ・・・・・ダメだ、ここにいたら腐海に沈んで死んでしまう! お気に入りのユリユリな二人の動画を見直して癒さなければならぬ!
37:桃太郎なプレイヤー
・・・・・私的にはちょっと興味があるかなーって・・・・・えへへ
38:桃太郎なプレイヤー
もう腐ってるプレイヤーがいた、だと・・・・・!?
39:桃太郎なプレイヤー
くそ、掲示板の中にまで呪いを振るっているのかよまだ見ぬイベントのレイドボスめぇー!!!
40:桃太郎なプレイヤー
そういえば、この掲示板ってイベントをする呼びかけではなかったのでは?
41:桃太郎なプレイヤー
そ、その通りだよ! だからほらみんな! 彼岸の鬼鳴峠を守るためにイベントを頑張ろう! なっ!?
42:桃太郎なプレイヤー
了解!