「お父さま!」
「おお、桜姫・・・・・我が娘よ無事であったか」
「私も呪いを受けたけど魔王が呪いを解いてくれたの」
屋敷に戻り中に居たゼ=ノンと再会する。どうやらこの鬼人も正気を失っていたようで、呪いが解けた他の鬼人同様に顔色が少々悪い。
「・・・・・別人になっているが、その神々しい姿で私の正気を取り戻してくれたのだろう。桜姫共々、感謝する魔王よ」
「まだ感謝するのは早いと思います。桜姫の話では死の都にある封印の墓石が山賊の悪意によって壊されて、彼岸の鬼鳴峠に呪いを振り撒くモノが解放されています。まだソレがこの集落の上に留まっております」
「なんだとっ、あの封印を・・・・・いったいどこの馬鹿な人間なのだ!! 捕らえ次第、里総出で裏地獄の苦痛を味わわせてやる・・・・・!」
おおぅ・・・・・鬼人族なだけに鬼の形相をしておらっしゃる。こりゃ簡単には怒りが収まらないな。自業自得だから誰も救いの手を差し伸ばさないだろうよ。・・・・・お、身内からの連絡か。
「里長。緊急事態であることを承知してお願いしたいことが。今鬼祭りに来ている冒険者達に依頼を宣言してほしいのです」
「・・・・・わかった。私のように弱体化している鬼人では満足に戦えないどころか、魔王たちと協力して足手纏いになるのは本末転倒だ。どうか彼岸の鬼鳴峠を救ってくれ」
ワールドアナウンスが放送され、日曜日まで彼岸の鬼鳴峠の集落に来ればエクストラクエストが受注出来るようになった。受注すると『鬼滅の危機』で敗北すると彼岸の鬼鳴峠が消失して、鬼人族がモンスターになる・・・・・勝てねぇといけないクエストじゃんか運営コンチクショウ!
「恐らく強大な悪霊。しかも長年封印されていたのであるから魔王とて倒すのは容易ではないほど呪いの力が高いやもしれぬ」
「では?」
「新しく用意した封印で鎮めるしかない。魔王よ、何か手元に特別なものはないか? 可能であれば霊が宿りやすいものがいい」
霊が宿りやすいもの・・・・・石、人形、魑魅魍魎、九十九神的な?
「それでしたら、名前的にこちらがいいかと」
「ほう・・・・・確かにこれならば。しかしよいのか? 呪いを宿したものは持ち主に牙を剥くものだ」
「呪いを屈伏させれないならその程度の力しかなかっただけの話です。違いますか?」
「・・・・・ふっ、流石は私を倒した者だ。里の女達が黙っておるまい」
その時は全力で逃げてやる。なんなら、南極に移住する所存だ。ゼ=ノンは新たに封印するものを俺から受け取りながら桜姫に指示した。
「封印の札を持って来ておくれ」
「わかったわっ」
駆け足でこの場から去りいなくなった桜姫を待っていると、ドタドタと騒がしく走ってくる足音がこっちに近づいてくる。ゼ=ノンと一緒にその音に耳を傾けたところで、この屋敷に仕える従者が雪崩れ込むように飛び込んできた。
「里長、一大事です! 集落に現れた怪異に引き寄せられているのか、冥霊山から見たことのない数の餓鬼や悪霊が迫って来ている一報が届きました!」
「わかっておる。すでに魔王から話を伺った。動ける者達を集め、体に異常が起きている者の救助に当たらせろ・・・・・」
「はっ!」
「お父さま!」
駆け出していなくなる従者とすれ違うようにして桜姫が胸に抱えるように両腕の中に紙の束を持ってきた。
「魔王、その覚悟の証明としてお前の血が欲しい。コレにこれから封印する悪霊がお前の血の力で縛り、二度と好き勝手に呪いを振り撒くことがないようにする。逆に魔王に屈したならば想像できない強さを身に付くだろうが、逆だったら死ぬまでお前を苦しむことになる。・・・・・お前に厄介な事を押し付ける無力な私を恨んでくれ」
「気にしないでください。これもまた運命でしょうから」
その後、俺の血? で札に封印の術式を描き、これから悪霊を封印するものに張っていくゼ=ノン。
「使えるのは一度のみ。極限まで弱らせてから悪霊に使うといい」
「わかりました。ではすぐに向かいます。封印するまで安静にしてください」
「重ね重ね、頼んだ魔王・・・・・」
屋敷を後に出た直後、桜姫に呼び止められた。
「ねぇ、なんでそこまで首を突っ込むの? さっさと逃げても誰も文句は言わないと思うわよ。墓石の封印を壊した人間は除いてだけど」
「私達は冒険者。理由の有無関係なく自由に動くのが私達なのです。だからこの集落で起きた事件にも自由に自分から突っ込むことを誰にも止められないです」
「そう言うことです!」
話は終わりだと前に足を動かす。今回のクエストの敗北条件である彼岸の鬼鳴峠の集落の耐久値が0の防衛戦イベントになってることが、掲示板や配信動画でも今回のイベントのことが伝わっているようで、今から参加するプレイヤーがいるだろな。
「お姉ちゃん。あの空にいる黒いのとは戦わないんですか?」
「最初は南極大陸でした防衛戦のようにイベントを終えてからになりそうですよ」
「頑張りましょう!」
やる気を漲らせるイカルの頭を撫でて日曜日まで時間はあるから・・・・・。
「イカル、空いた時間は神獣の討伐でもしようか」
「はい!」
ペイン一行以外にも、神獣の討伐に動いているプレイヤーはいるかな? ちょっと掲示板でも・・・・・。
【蒼龍の聖剣】色々を語るスレ44part【和気あいあい】
91:死神・ハーデス
今神獣の討伐をしているプレイヤーはいる?
92:ネネネ
どうしたのー? ちなみに私はしてないよー
93:死神・ハーデス
ただの聞き込みをしてるだけだから気にしないでくれ。倒したならともかく、倒してないなら魔王直々倒しに行こうかと思っているだけだから
94:メタルスライム
それなら俺達はネズミの神獣に挑戦した。子の神獣の眷属になったプレイヤー達に討伐の妨害をされるかと思っていたんだが、意外とそんなことはなくて逆に質問してしまうほどあっさり通された。理由を聞いたら「別に守れって言われてないし、そういうクエストを受けてもないから」って返された
95:ノーフ
そういや、神獣を倒したらどうなるんだ? 人間界からいなくなったりするのか?
96:早耳猫
≫95の疑問は実際に倒してみないと分からないよ。≫94はネズミの神獣を倒したの?
97:メタルスライム
残念ながら勝てなかった。白銀さんみたいに大量のネズミを召喚して一方的に齧られてやられたんだ。申の方も挑戦してみたが、猿も猿で子分を大量に召喚してクソを飛ばして装備とステータスの数値を下げるデバフ攻撃や、武器まで使って襲ってくるんで負けた。辰の方は他の神獣より戦った感はあったがHPと攻撃力と防御力が高かったから負けてしまった
98:赤星ニャー
お疲れ様ニャー
99:ウルスラ
大変だったわね
100:宇田川ジェットコースター
お前達の頑張りは白銀さんが報いてくれるぞ!
101:死神・ハーデス
うん、毛皮と鱗が禿げたらプレゼントするよ。神獣のドロップアイテムだ。装備の制作の素材に使ったらさぞかし強い装備になるに違いない
102:石田
魚の神様っていないですかねー
103:イケメンネコ
そんなのいるのか?
104:プリム
物知りな白銀さん! 魚の神様っていますかー?
105:死神・ハーデス
食用なら秋田県のハタハタ(漢字に変換すると→鰰(魚偏に神(かみ))。「あかむつ」と言う魚の別名で喉が黒いから「のどぐろ」って言われてるが、富山県だとぎょうしん(魚神)って呼ぶぞ。神話の方でもちゃんといるぞ。聞き慣れた名前を挙げるならば〈バハムート〉だ。時にドラゴンの名前にも使われている魚の名前な
106:タゴサック
お、本当に鰰って漢字が出てきた。はー、意外な名前だなー
107:石田
お、俺は知ってたよ? 魚を捌くん板前だから魚の漢字の名前ぐらい知っているぞ?
108:オイレンシュピーゲル
ならば答えてもらおうか! 俺から始め、5人の誰かが魚の漢字の問題を出すから当ててみろ! 俺はこれだ! 『鯑』
109:七宝神
鯰
110:ふーか
鯒
111:死神・ハーデス
食用ではないが 鯆
112:國生
これは誰にも答えられない自信がある! 鯇
113:アシハナ
鯛!
114:エネルジー
鯉
115:イワン
もう五人過ぎてるぞー。さぁ、板前職人なら簡単に答えてみせよ!
116:百派
ヒャッハー! 鱒ダゼィー!
117:石田
・・・・・じゅ、十分だけ時間を貰っていいですか・・・・・(汗)?
118:死神・ハーデス
ダメだコラ・・・・・って、話が完璧に逸れてしまってるわな。
119:イカル
お姉ちゃんの漢字は何て読むんですかー?
120:死神・ハーデス
イカル、じゃなかった。イルカだぞイルカ!
121:プリム
あれ? 海豚じゃないんですかー?
122:タゴサック
俺もそう思ってた。別の漢字があったのか。因みにだがハーデスは全部答えられるか?
123:死神・ハーデス
オイレンシュピーゲルのは数の子、七宝神のは鯰(なまず)、ふーかのは鯒(こち)、國生のは鯇(あめのうお)。この中で一番難しいのは國生の問題だったな。琵琶湖にいる固有種「ビワマス」の別名で卵をかかえた産卵期の状態のことを指して呼ばれているんだ。 ビワマスは普段、琵琶湖の深い場所に生息していることから昔は捕まえるのが難しい魚で「幻の魚」と呼ばれているけど、昔食べたことがあってめっちゃ美味かったなー
124:國生
白銀さん、スゲェー!!! 何で知ってるんだよ!? 地元しか知らない魚の名前だと思ってたのに!
125:アメリア
蒼天の出身の人なのに凄い知識力だね・・・・・
126:イッチョウ
ただの食いしん坊なだけだよん
127:石田
ま、参りましたぁあああああああああああああああああああ!!!
おう、イッチョウ、後で覚えておけよ・・・・・?
なおこの時の俺は気付くことも知る由もなかったが、前回の魔王討伐イベントと同じで俺のマイホームに、鬼の居ぬ間に洗濯とやらで俺達がいないにプレイヤー達が侵入していたらしい。
「あのクソ魔王は鬼の集落にいるみたいだから今のうちにあいつの大切にしている物全てめちゃくちゃにしてやろうぜ」
「いつぞやの恨みを晴らせる機会がくるなんてラッキーだぜ」
「まずは畑だ。全部燃やしてそのあとはこの家に保管してるもんを全部奪うぞ。それから売り捌いて俺達は億万長者だ」
「ギャハハ! ザマァ~みやがれ!」
「前回は俺達だけだったからモンスターにしてやられたが、今回は五十人以上連れてきたんだ。いかに強いモンスターがいようと・・・・・」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・。
「・・・・・おい、なんか音が聞こえるぞ」
「虫じゃね?」
「虫の羽音ならこれさ・・・・・本能的に怖くてヤバい音だぞ・・・・」
「おい、ここまで来て弱気になるんじゃねぇよ! さっさとここいらの畑を目茶苦茶にしやがれ!」
「おらおら~! 悔しがれ魔王めー! 呑気に祭りなんて行きやがって、くだらねぇ畑をまた目茶苦茶にされてざまぁねぇーな!」
「はははっ! 大切な物を目茶苦茶にするってサイコー!」
「「「「「ヒャッハー!」」」」」
「おいおい、お前らまで世紀末の暴走族みたいな気合いを・・・・・」
「え? そりゃするだろう? だって・・・・・」
「「「俺達は荒野を駆ける【蒼龍の聖剣】のヒャッハーズだからなぁー!!!」」」
「「「なっ!!?」」」
「「「はっ?」」」
「^^^ギャアアアッ!?」
「うわぁあああー!?」
「逃げろッー!!」
「テメェ等! あ、あんなのいるなんて聞いてねぇぞ!?」
「は? 何言って・・・・・」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!! ×100
「どぅええええええええ!!?」
「ハ、ハチィー!?!?」
「しかも巨大オオスズメバチだぁー!!?」
「わぁああああああっ!!!」
「おぅらー!! 我等がギルマスの白銀さんの畑を荒らした報いを受けやがれぇー!!(バンバンバンッ!)」
「「「「「ヒャッハー!!!(ドゥルルルルルッ!!)」」」」」
「こっちはイカレた奴らが銃弾をぶっ放してきやがる!!」
「てかなんで俺達には襲ってあいつ等には襲わねぇんだよ!?」
「うわぁあああー!! 嫌だ、助けてくれっ! 助けーーー(ガブリッ)」
「あ、あああ!! 友達が喰われ―――おげぇえええ!? リ、リアルで団子にされてるー!!?!?!」
「うんええええい!? グロテスクな設定はないんじゃなかったのかよー!?!?」
「に、にげぇーーー(シュバッ!)ぶっ!?」
「うわっ! なんだこれ・・・蜘蛛の糸?」
「まさか、蜘蛛までいるのか!? どこだ!」
「あ、おい、屋根に何かいるぞ!」
「は? 蛾? 他に糸を吐いてくる大量の芋虫までいやがるぞ! 」
「どうなってるんだよ魔王のホームはぁ! お前ら、強いモンスターには数で押せばなんとかなるって言ったよなぁ! 話が違うじゃねぇか!」
「うるせぇ! 俺達も知らなかったことに文句言う暇があるならさっさとーーー!!(ドンッ!!)」
「このヒットが主犯の一人を撃ったぁー!!」
「一人も逃がすんじゃないぞー!! 晒しの配信動画もしっかりなぁー!! 名前もしっかり映せよー!」
「ヒャッハー! バッチリオッケーだぜぇ!!」
「【蒼龍の聖剣】のギルドマスターのホームに土足に踏み込み、白銀さんの努力の結晶を荒らしたらどうなるか馬鹿どもに思い知らせてやれぇえええええええええええええ!!!」
「「「「「ヒャッハーアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」
「・・・あいつ等が魔王討伐イベントが終わるまで家の護衛をさせてくれっていうから許可したんだけどさぁ。・・・・・やりすぎだって話なんですよこれ」
「もう、どっちがアレなのか、ねぇ・・・・・。捕まえたプレイヤーを薪代わりにしてキャンプファイヤーする動画まで投稿しちゃってさ」
「掲示板の方でもさー、白銀さんのマイホームに無断で入るとHPがない巨大オオスズメバチに襲われること、投稿されてるよ」
「これであなたのマイホームに侵入するプレイヤーはいなくなるでしょうけれど、襲われたプレイヤーは堪ったもんじゃないわよね。リアルの方でもハチの怖さが身に沁みちゃっただろうし」
後日、ログアウトした後で魔王討伐イベントの掲示板のプレイヤー達の投稿を読んでいたら、手を出したらヤバすぎる【蒼龍の聖剣】の話題を見てしまい、俺達は何とも言えない微妙な気持ちをされてしまった。