バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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神獣討伐2

 

小休止も兼ねてマイホームに戻った。ペイン達が神獣〈辰〉を倒したらしく今回はこれでおしまいだな。

 

「にゃ~ん>ω<お姉ちゃ~ん!」

 

「にゃ~ん>ω<イカルちゃ~ん!」

 

ログアウトする前に【ガブリエル】の姿で身体を小さくし、猫耳を着けた俺に正面から抱き着いてくる。俺の頬にイカルは自分の頬を押し付けてスリスリして、喜んでいるのが嬉しそうに揺らしてるイカルの腰から生えた尻尾を見れば誰でもわかる。俺もイカルの頬をスリスリして抱き合いながら和んでるとマモリが現れて・・・・・。

 

 

『ゆ、百合にゃんだぁぁぁぁあああああああ(感動)!!!』

 

『か、かっ、かわっっっっ!!?』

 

『やぁあああああ!! 妹に超欲しい可愛さなんだけどぉー!!』

 

『アッ、アッ、アッ、アッ』

 

『・・・・・・・・・・・・・・・(昇天)』

 

『ロリ属性に加えて猫属性も加えてじゃれ合う配信をするとは・・・・・』

 

『俺、アメリカ人でそういう目で見ちゃいけないし犯してはならない罪の国出身だから、子供達のこういう光景を見ても何とも思わなかったんだが、この配信を見ると不思議な感覚が芽生えるこの気持ちはなんだろうか。胸が暖かいんだ・・・・・』

 

『へいへいアメリカンさん! そいつを知りたかったらこの後一緒に語ろうじゃないか! 新たな扉を開かせてあげるぜぇ~?』

 

『信じられない! 薄い本でしか見られない幻想が現実に!?』

 

『どっちもかわぇえええ!!』

 

 

「あ、ご主人様達、可愛い!」

 

「私達も交ぜてください!」

 

「にゃお~ん」

 

『オイラの方が愛嬌あるにゃー!』

 

「へぇ、主達、可愛いじゃん」

 

 

『うわぁ、なんだこれ。美女と猫だらけになったよ』

 

『美女と野獣ではなくて美女と猫で心から安心する俺がいる』

 

『いいなぁー! 直接見てみて微笑ましく和みたいー!』

 

『※どちゃくそでかいオオスズメバチが畑の他にもマイホーム中に飛び交っている光景が外から見えますので入れません』

 

『それな、同じギルドのプレイヤー以外は襲わないみたいで、フレンド登録をしてても警戒するみたいなんだよ』

 

『・・・・・なんで知ってるんだ?』

 

『へへへ・・・・・自分、白銀さんとフレンドなので、こっそり、覗かせていただいております。背後からフェンリルと九尾の狐にペガサスに睨まれながらね』

 

『コイツ、ガチ勢だった!!?』

 

『生の百合どころか子猫の姿で百合あっているのに幻獣や毒蜂なんかに怖がっていられるかぁー!!! うおおおー! スクショも忘れねぇー!!』

 

 

「あい?」

 

 

『あ』

 

『あ』

 

『あ』

 

『あ』

 

『あ』

 

『おっとー? 覗き魔の姿が座敷童子ちゃんによって公開されましたね』

 

『顔覚えた。今から裏山けしからんことしたお前を百回ぐらいキルしたるわ』

 

『プレイヤーネームもしっかり映ってるからな。言い逃れはできないぜ』

 

『え、あの、ちょっとお話をしませんか? あ、白銀さんとイカルちゃんこんばんわ! 決して不審者でも変態でも不法侵入者でもないから後ろの従魔達の殺気を納めてほしいのですが』

 

『全部悪い意味でそうなんだよ』

 

『いいわけなんて見苦しいわね』

 

『おおぅ、フェンリル達が変質者に厳しい目付きで牙を剥いてるぅー』

 

『そしてオオスズメバチに見つかって覗き魔を抱え持ってホームの外に向かってポ~イと捨てた先には・・・・・』

 

『いらっしゃーい、見守り隊主催の裁判を始めようじゃないか。まぁ、死刑以外宣告するつもりはないがねぇ!』

 

『いやぁあああああああああああああああ!!?』

 

『とあるプレイヤーが見守り隊のプレイヤー達に囲まれどこかへ連行されてしまった』

 

『もうそんな奴はどうでもいいのだ! 百合にゃんの続きを見せてくれぇーーー!』

 

『ん? なんかイカルちゃんと話してるな?』

 

『もしや死神の宴の打ち合わせかな?』

 

『今の俺なら何でも受け入れる精神でいるぞぉッ!』

 

 

「「(せーの)お兄ちゃん、お姉ちゃん、まだおうちに帰ってこれないの? にゃ~にゃ、さびしいにゃ・・・・・」」

 

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

 

「「もう先におねんねするけど、帰ってきたらぎゅ~って抱き締めて甘えるにゃん。おやすみにゃ~ん」」

 

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

『う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!』

 

『愛しの子猫ちゃん達が私の帰りを待っているわぁぁぁあああああああっ!!!』

 

『いま、妹属性に覚醒した俺が帰るから待っててくれぇー!!!』

 

『スズメバチがなんじゃクソゴゥラァアアアア!!!』

 

『二人まとめて抱き締めるわっ!!』

 

『俺はリアルの実家にいる猫に会いに行く。もう結構な年齢だから会える時に会わないと』

 

『俺もそうしよう』

 

『スズメバチ、覚悟しろやぁー!!』

 

『ああ、そんなっ。本当に二人はもうおねんねの時間なの!?』

 

『んもぅ! 寝顔まで可愛いなんてズルい! 手を握り合って寝てるから尚更可愛い!』

 

『天使だっ、天使がおられるー! 膝枕してやりてぇー!』

 

『激しく同意!!』

 

『男共はダメよ! 女の私にしか許されないわ!』

 

『フェンリル達が傍に居座って天使たちを守る姿勢もまた紳士だよねー』

 

『尊い・・・・・ッ!!!』

 

『樹精ちゃん達の微笑ましく見守るご尊顔もまたイイ・・・・・ッ』

 

『ああ・・・・・癒される・・・・・』

 

なんて視聴者達がそんな感想を言っていたことを気付かないまま、【蒼龍の聖剣】や無所属のプレイヤー達と協力して神獣討伐に臨んだ翌日。

 

「妨害に遭ってる?」

 

「主神を別の動物に変えられるのが嫌で抵抗してるプレイヤーが少なからずいるんだよ」

 

「今日は亥と卯と未だよね? それぞれのプレイヤー達が明日になるまでどかないという姿勢で、主神の屋敷の前で陣取っているのよ」

 

「でもペイン達と生産職にチェンジした元後略組と前線組が突破して卯と亥の神獣を破ったから破竹の勢いで未も倒すつもりだったんだけど・・・・・」

 

俺がくるまで倒せずにいたと? と訊くと居候兼同棲兼同居のギルドメンバーの二人が頷いた。現在ログインした俺は夕餉の最中で瑠美と梨佳に状況を教えてもらっていた。

 

「あの未、自分の毛を身代わりに使って攻撃を回避するすんだ」

 

「もぐら叩きみたいにねー。燃やすことはできるけど、減ったら羊毛を増やしちゃうの」

 

どうしたものだったか、と二人は小さく息を吐くのでその時の苦労は計り知れない。

 

「王様ならどうする? 二人の話を聞いてさ」

 

「何とも言えないな。俺自身が戦ってみないことには。情報ももっと欲しいな。ログインしたら挑んでみるよ」

 

ということでNWOにログインした俺は神獣〈未〉の屋敷へ。道中、フレデリカから神獣討伐を邪魔するプレイヤーが現れて交戦中らしい連絡を受けた。すぐに現場へ到着すると神獣の眷属側が他のプレイヤーの応援をしたか、あるいは事前に準備していたか無所属のプレイヤー達を囲むほど多かった。

 

「あっ、は、白銀さんだぁー!!!」

 

「いやったぁー!」

 

「くそっ!! こいつらを数で圧すぐらいしか勝てなかったのに魔王が来てしまったら勝ち目なくなるじゃねぇかよ!!」

 

「でも、神獣を変えられたら何を選ばれるかわかったもんじゃねぇよ!」

 

「こうなったら、粉骨砕身で一矢報いる!」

 

あー・・・・・俺達しか知られてない情報に不安がってるのか。教えたら倒させてくれるかね。

 

「神獣を変えてほしくなかったら、そうしてもいいぞ」

 

「は? 何言ってるんだよ。そんなこと出来るならなんで最初からそうしないんだよ」

 

「どうしようがこっちの自由だろ。未の眷属のプレイヤーの総意なら別の神獣に変えず倒すだけにすることも出来るって話だ」

 

「・・・・・その話、本当だろうな」

 

「【蒼龍の聖剣】は、そうすることが出来る。他の無所属のプレイヤーやギルドまでは確約できないぞ。ただ新しい神獣にするとその神獣のスキルが手に入るんだ。悪くはないと思うがな」

 

「だからどんな神獣に変えることが出来るのかわからないんだよ!」

 

「それじゃ教えたらいいんだな? 白銀さんの言葉を信じてくれるなら、今から言う新しい神獣を選んでやるぞ」

 

「・・・・・取りあえず神獣の名前だけ教えてくれ」

 

と、交渉に持ち込むことが出来て倒した暁に新しく変えることが可能な神獣の名前を十二匹も教えた。

 

「これで以上だ」

 

「・・・・・魚までいるなんてな」

 

「神聖な生き物として語られてるからじゃないか?」

 

「そういう基準で選べるようになってるのか。だけど申と辰と子も選べるのはなんでだよ?」

 

「そこだけは知らない。リサイクル的な感じじゃないか?」

 

「そうか・・・・・そういうことなら時間をくれないか? 話し合いをして決めたいんだ」

 

「10分までな。それ以上は待たないし駄々っ子になるなら強行突破する」

 

と、言えば相手は頷き未の眷属のプレイヤー達と掲示板で相談を始めた。その間に戦っていた無所属のプレイヤーは整備の点検やHPとMPの回復をし、スキルの再使用待機時間が経つまでその場から動かず待つ姿勢に入り、後から合流してきたプレイヤーに状況説明しながら加えて10分が経過した。

 

「時間だ。返答は?」

 

「・・・・・ーーーで頼む」

 

「それがそっちの総意ならそうしよう」

 

交渉成立した握手を交わした俺は皆を引き連れて神獣〈未〉の屋敷に訪れる。ペイン達ですら倒しきれなかった神獣と対峙してみれば、牧歌的な広い草原の上空に羊毛の塊が無数も浮いていた。なんというか羊雲そのものだな。

 

「もうあの状態からなのか?」

 

「うんそう。数も見ての通り見渡せるところまであるから倒しきれないんだよ」

 

空の上にいるだろう神獣〈未〉に対してどうやって攻略しろというんだって話はこういうことか。

 

「運営の攻略させる気がない悪意を感じるな」

 

「だろう!?」

 

「白銀さんにもそう思わせる運営の悪意に俺達はどうする事も出来ないんだよ・・・・・」

 

「これで白銀さんですらお手上げなら攻略なんて誰も不可能に近いって・・・・・」

 

だが、見渡す限りの羊雲の中には一つだけ実体がある。それを探し当てればいいだけの話なのだが、じゃあどうやってやるんだって話になるんだな。

 

「ハーデス、何とかできそう?」

 

「ん、やってみよう。召喚メリープ!」

 

「メェー!」

 

魔方陣から出てきた金色の羊毛を持つ羊を召喚した俺以外のプレイヤー達からの奇異な視線を受けながら、メリープに触れる。

 

「メリープ、お前の力を貸してくれ」

 

「メェー!!」

 

「【同化】!」

 

俺とメリープが一つになった姿で【発毛】してからすでに発生している羊雲よりさらに高く飛び上がった位置で―――【相乗効果】【雷雲】【極光】【範囲拡大】のスキルを使った。さらに【多重操作】でスキルで発生した効果を任意に操作、発動できる。【羊雲】から迸る雷光が全ての羊雲に貫きながら眩い閃光が雷鳴と共に空の青さを白く塗りつぶす。

 

「うわ、すごっ」

 

「雷が意思を持っているような動きをして羊雲を貫いて・・・・・あっ」

 

「当たった? いや、あれが本体か!」

 

「落ちたぞ! 急げ急げ! 囲むんだ!」

 

「結構遠いけど間に合うか!?」

 

「【次元跳躍】!」

 

「ペイン!? あ、そのスキルがあったー!!」

 

空の下で金髪の剣士が一つだけ地上に落ちる毛玉の元に転移して、誰よりも早く鋭く剣を打ち下ろした。が、肉を切るどころか羊毛すら斬れない事実にペインの目を丸くした。

 

「ペイン! 剥き出しの手足か顔を全力で掴んで逃がすな!」

 

「わかった!」

 

ペインが指示通りに眩暈の状態異常になってる神獣〈未〉の顔や首に脇で抱えるように固定してくれた。【同化】を解除してメリープを送還しながら俺も【次元跳躍】でペインの側に転移した刹那。

 

「【毛刈り】!」

 

スライムスーツの【堕天の王衣】の服から【形状記憶】で短刀を作りペインの剣を弾いた羊毛に斬りつけた。おっしゃ! 待望の神獣〈未〉の羊毛ゲットォー!

 

「うわあああああああ!? わ、私の毛がぁあああああああああああああああ!!!」

 

眩暈の状態異常から回復した神獣〈未〉の悲鳴が上がるが、俺は気にせず宇宙の星塊を出して獣の手足を縛り豚の丸焼きのように吊るしあげた。

 

「神獣〈未〉捕獲完了っと。さーて、あとはこんがり焼くための焚火の準備を・・・・・」

 

「待て!? 私を喰う気か!? 私は神であるぞ! なんて罰当りな事をしようとするのだ貴様!」

 

「俺、魔王だから罰当りも関係もないだろ」

 

何をいまさらと木材を出しながら呆れているとペインに懇願し出した。

 

「貴様、勇者であるな!? ならば今すぐこの魔王を打ち倒せ! 倒した暁には素晴らしい報酬を渡すことを約束するぞ!」

 

「その勇者はたった今、お前を攻撃したんだが? それでも命乞いをするのか?」

 

「く、ぅぅぅ・・・・・た、頼む・・・・・命だけは助けてくれ・・・・・! 望む事なら何でも叶えてやるぞ・・・・・!」

 

「叶えてやるぞ? 口の利き方がなっちゃいないんじゃないか?」

 

荒天の嵐神刀を出して神獣〈未〉の喉に突きつけた。誰からでも見て判るほど脂汗を流す神獣は、荒い呼吸を繰り返しながら声を震わす。

 

「か、叶えて差し上げます・・・・・! ですからどうか、どうかご慈悲を・・・・・!」

 

「神獣に二言はないな? な? ないよな? ないなら潔く降参しろ」

 

「は、はいぃぃぃっ! 愚かな私めの敗北を認めますぅぅぅぅ!」

 

泣き叫びながら降参した神獣〈未〉。

 

〈プレイヤーが神獣〈未〉を降参させました〉

 

撃破じゃなくて降参なのか。なら、倒しようがあるな。

 

「じゃあ、望みを叶えてもらおうか。まぁ、至極単純な願いだ。この場にいる俺を含めた全てのプレイヤーの願いを一つ叶えろ。いいな? そしたら生かしておいてやる」

 

「あ、ありがとうございます・・・・・!」

 

〈死神・ハーデス様が神獣を屈服しました。称号【神威】を獲得しました〉

 

 

称号:神威

 

効果:神に属するNPC、モンスターに対するダメージと会話の高補正が入る。

 

 

いや待って・・・・・こんな称号まであるのか? え、マジで・・・・・?

 

「・・・・・ペイン、神獣を脅迫すると称号が手に入るぞ。神に対するダメージと会話の高補正が入る」

 

「試してみよう」

 

するんかい! お前が誰かを脅すところなんて想像できないわな!? でもま、この先神と戦う機会があるだろうし手に入れておいて損はないだろう。

 

さてさて、この後の俺達は神獣〈未〉が約束通り願い事を一つだけ叶えてくれた。他のみんなは何を望んだか知らないが、俺は神獣〈未〉の羊毛と肉と乳を大量に定期的に貰える願いをした。拒否権? そんなのあるわけないだろ。なお、神獣を脅して手に入る称号のことをギルメンのみんなに教えたら。

 

『さすが魔王様パネェっす』

 

『神を恐れない魔王』

 

『神相手に脅迫するってマジ?』

 

って、みたいなことを掲示板で言われてしまった。

 

「ああ、そうそう。丑だけは俺に倒させてくれ。あの丑の肉と牛乳が手に入るかもしれないから」

 

『シェフの私的にも欲しいんですけどー!!』

 

「それなら一緒に行こうか。丑って戦闘力なさそうだけど・・・・・いや、まさかあんなことしないよな?」

 

『あんなことって?』

 

「丑の刻参り(うしのこくまいり)、丑の時参り(うしのときまいり)って、丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ちつける日本に古来伝わる一種の呪いだ」

 

『神獣がプレイヤーに呪うってありえるのか・・・・・?』

 

「さぁ? 運営がその通りに設定しているかそうでないか、実際に神獣〈丑〉のところに行ってみないとわからない。ま、呪いの耐性がある俺達ならなんとか勝てるだろう」

 

『あのー、その丑の刻参りって妨害できたりするんですかね?』

 

「藁人形に釘を打ち付ける行為を見たら、見られたら呪いの効力は失うことがあればそうでもないって曖昧な説があるからなぁ・・・・・見るんじゃなくて行為そのものを止めるか術者を倒すしかないかもな」

 

『・・・・・なんか、神獣の中でヤバい神獣だったりしないか?』

 

『暗闇の森の中の奥から・・・コーン、コーンと聞こえてくる何かの音が聞こえるエリアの中で神獣を探さないといけない想像をすると、めっちゃ怖いよな・・・・・』

 

『本当にヤメロォッ!? 夜道が怖くて一人で帰れなくなるじゃないかぁー!』

 

『ま、まぁすぐに即死の呪いを付与されるわけじゃないだろうし、見つけ出して倒せばいい話だ! そうだろ、白銀さん!』

 

「樹海のような広いステージだったら、めっちゃ厳しいがな」

 

『・・・・・確かに』

 

『運営がやりそうだなそれ』

 

『え、でも、夜中に行った場合の話だよねこれ? 午前中に挑めばいい話だよね?』

 

『白銀さんが言う戦うステージが樹海だったら、明るさの違いだけで差して変わらないだけだよ』

 

『実際に現実でどこからか聞こえる音を辿って探せる自信はあるかい? 実際にそんなことした体験や経験をしたかね?』

 

『・・・・・ナイデス』

 

『ねぇ、そもそも動物の丑が藁人形にどうやって釘を打ち付けるの?』

 

『・・・・・そう言えば?』

 

『確かに?』

 

「出来ないならできないでいいんだよ。出来た場合が厄介だなって話だからさ。仮にできるとしたら、代わりに呪いを受けてくれる消費アイテムを手に入れるか自分で作っておく必要はあるがな」

 

『それもそうだね。何個も持てたらいいんだけど、一個しか持てなさそう』

 

『身代わり人形かぁ・・・・・それが売ってそうな町に行って探してみるよ。あったら教える』

 

『俺も探すわ!』

 

それ以降、呪いをプレイヤーの代わりに受けてくれるアイテム探しに躍起になったギルメンのみんなを他所に俺はラプラスに呪いの解除ができるアイテムの制作を依頼した。

 

「それならば畑にある材料を勝手に使わせてもらうぞ」

 

「好きなだけ取っていいよ。それから彼岸の鬼鳴峠で手に入れた素材の件、そう?」

 

「うむ、我ながらいい出来栄えな物を作ったと言えよう。素材があるならば大量に生産も出来るから欲しかったらまた集めるといい。特に龍の牙を素材にしたアイテムはこの二つしか作れなかったからな」

 

受け取ったアイテムは、全プレイヤーが欲しがるようなレアアイテムばかりだった。そのレシピも受け取り、錬金術師のギルドメンバーにお裾分けしたところ。

 

「な、なんですかこれぇええええええええええ!?」

 

「こんな、こんなアイテムが作れるレシピが存在していたのか・・・・・!」

 

「これって売ったら確実に大繁盛するでしょ!」

 

「白銀さんのお抱えのNPC、凄すぎるってぇ・・・・・」

 

「これらの素材、全部彼岸の鬼鳴峠の冥霊山の先にある死の都の周辺から取れるって本当なら集めに行かねば!」

 

「ありがとうございます白銀さん! もしも集めてほしい素材があったらお願いしますんで!」

 

「行くぞぉー! 新たなアイテムの素材集めにー!」

 

「おおおおおー!!!」

 

と彼岸の鬼鳴峠の冥霊山へ向かう命知らずな錬金術師達を見送った後。エリンギとトンボに連絡を取った。

 

「二人は神獣〈未〉に何を願ったか教えてくれないか?」

 

『そんなこと俺達に訊くなんて珍しいな? もしかして虫関係だったり?』

 

「そうだな。捕まえたアイテムの素材になる虫を飼育して数を増やせる願いだったら嬉しい」

 

『それなら丁度ありますよ! どんな虫でも育てることができるマイホームを叶えて手に入れたばかりです! 白銀さんのおかげで虫テイマーの楽園が作れます!』

 

『虫テイマーの俺達しかできない、素材アイテムの虫を生きたまま捕獲できるようになったのも白銀さんのおかげだ。これで新大陸の全ての虫をテイム枠を気にせず集めることができる!』

 

「じゃあ、苦虫の量産も頼めるか? 苦虫も素材にして作るアイテムが今後必要になるんだ」

 

『任せてください! 百でも千でも、いくらでも数を増やします!』

 

『因みに苦虫ばかり欲しがる理由って、何かのアイテムを作るからだよな?』

 

「その通りだ。使用すれば一定時間の間、ステータスが増える薬を作れるんだ。二人にも役立つから無駄にはならない」

 

『それなら期待できるな。俺達も白銀さんに協力するから白銀さんも俺達に協力してくれ』

 

『お願いしますね!』

 

「当然だ。また虫を見つけたら協力する」

 

二人とそんな会話から一度ログアウトした。翌日の午前一時・・・・・。敢えて丑の刻に挑もうとする俺だけでなく酔狂なプレイヤー達が神獣〈丑〉の屋敷の前に集まっていた。それなのに心なしかみんなが緊張しているようで落ち着かないでいる。

 

「一応聞くけど、朝からでも挑戦していいんだぞ? わざわざ相手に合わせて夜中に挑まなくてもいいんだから。俺はするけど」

 

「いや、既に戦ったプレイヤーがタラリアに情報が売ってたんだ。朝でも真っ暗な森の中から何かを叩く音が聞こえたと思ったら、胸に釘が浮かんで音が鳴るたび釘が打ちつけられて、最後まで胸に釘が刺さったらHPが一気に全損したってさ」

 

「え、マジで?」

 

「呪いの耐性無効でも耐えられない呪いだったりするのか?」

 

「念のために身代わりの人形は確保してきたぞ。一つしか手に入らなかったけど」

 

「しかも小はHP1だけ残って、中はHPが一割、大はHPが三割、特はHPが五割残る効果だ」

 

「ムリムリ・・・・・特は無理だって・・・・・あんなクエスト、闇霊の隠れ里の攻略並みに難しいって」

 

「どうやったら攻略できるんだよあんなの・・・・・大体挑んだみんなが効果・大の身代わり人形を手に入れるのがやっとだって話じゃんか」

 

挑む前から暗くなってるしこいつら・・・・・。こんなんじゃ他の奴等にまで士気の影響を受けて勝てる戦いに勝てなくなるぞ。

 

「はい、注目!」

 

手を叩いて意識と視線を集める。

 

「ある程度の情報が既出されてるなら何とかなる。全員、東西南北に分かれて神獣〈丑〉を見つけたらすぐに居場所を報告するように連絡を密にしよう」

 

「「「「「わかった!」」」」」

 

「それから、魔獣ヘルキャットと征服人形と契約しているプレイヤーは召喚しておいて捜索するように。ヘルキャットはともかく征服人形は機械生命体だから呪いは受け付けない筈だ。彼女達の間にも連絡を取り入れるように頼んでおいてくれ」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

「―――ぶっちゃけ、隣で怖いあまりに騒がれるとこっちまで怖い思いするから、怖がらなくて冷静でいてくれる頼もしい存在は必要だろお前ら」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

無言で何度も頷くプレイヤー達。やっぱり今じゃなくて朝に挑むべきだろ。俺の指示に従う精神でどっちか、どっちも契約したヘルキャットと征服人形を召喚して、抱えたり手を握って気持ちを落ち着かせるプレイヤーは何気に多かった。

 

「それじゃあ、行くぞ」

 

「「「「「お、おおおおおっー!!!」」」」」

 

俺もサイナとフレイヤを召喚して屋敷内に入り、番頭に戦いを挑みに来た事を伝えた途端。目の前の景色がグニャリと歪んで一変し―――真っ暗な森の中に立たされていた。

 

コォォォォォォォン・・・・・。

 

そしてどこからか聞こえてきた音と同時に俺達の胸に一本の五寸釘が浮かび出して、ちょっとだけ刺さるように胸へ沈んだ。呪いを無効にするスキルを持ってる俺でも呪いの影響を受けるとはな。

 

「じゃ、みんな気を付けてくれ。幸運を祈る!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」

 

一斉に蜘蛛の子が散るように四方八方へ一寸先は闇でも突き進むプレイヤー達を見送り、俺を始めペイン一行とイズとセレーネ、イッチョウと数人の仲間達がまだ留まる。

 

「で、何かあるんだよなお前なら」

 

「出来たらヌルゲーなことがな。・・・・・ネコバス、来てくれ!」

 

上に向かってネコバスの名を叫びながら呼んでから数十秒後。猫の鳴き声と共に眩い光が森の向こうから差し込んできて、木々が駆けてくる存在から避けるように俺達のところに来てくれたネコバスと合流を果たした。

 

「ネコバスは戦うことは一切できないが、行きたい場所、会いたい人物のところに連れて行ってくれる能力がある。それを利用して神獣〈丑〉を見つけ出す」

 

「あ、確かに簡単に見つかるわね」

 

「だったら早く見つけて終わらせようよ」

 

「だな」

 

イッチョウ達をネコバスの中に乗ってもらいながら、破邪の大太刀に内包されてる【輪廻転環】のスキルを使ってAGIの数値をVITの数値の同等以上にしつつ語り掛ける。

 

「ネコバス、みんなを神獣〈丑〉のところまで送ってくれ」

 

『ニャン』

 

ネコバスの方向幕が『神獣〈丑〉』に表示されたら森の奥へと駆けだし始めた。俺も後れを取らずネコバスの上に飛びながら追従していくと、コーンと二回目の音が聞こえて釘がまた胸の中に沈んだ。五分おきに音が鳴ってそれに釘が反応するようだな。それからもう一回釘が胸に沈んだところで、赤い鳥居を発見して長い階段に沿って上へ目指して飛ぶと大きな木と、それに向いて金槌を振るって四回目の音を鳴らした白い着物、頭に二本の火を灯してるろうそくを巻き付けた長い黒髪の女の側に、探していた神獣〈丑〉が寝転んでいた。・・・・・お前、のんびりと寛ぎすぎやしないか?

 

「呪いの絡繰りは、そういうことかぁああああああああああああああ!!!」

 

「え、モウ見つかった・・・・・って、神獣!? 神獣の力を借りて見つけるなんてズルすぎる!」

 

「俺は神獣使いのテイマーだ! 神獣の力を借りて何が悪いんだよ!」

 

ネコバスを見て吃驚仰天し、逃げ出そうと動き出すから【相乗効果】で【鼠算式】と【天の鎖】と【アサルト・チェーン】で黒髪の女と神獣〈丑〉を縛り上げてスキルと動きを封じた。その隙に藁人形に釘を打ち付ける女の背後から迫り首を両断。首を刎ねられた彼女の鬼のような顔を拝みつつ絶命の絶叫を上げながら消えてなくなるのを見守るつもりだったが、首と身体が黒い靄に変わって一本の巨大な五寸釘になっては俺の身体に突き刺して貫いた。

 

〈死神・ハーデスに永続的の呪いが付与されます。【呪いの王】の効果で無効しましたのでスキル【丑の刻参り】を取得しました〉

 

そんなメッセージの青いパネルが表示されると俺の胸の五寸釘が消えたので、呪いの元は丑の方じゃなくて女の方だったらしい。やけにあっさり倒されたのが気になるが・・・・・。

 

「・・・・・さて」

 

「モウっ!?」

 

神獣〈未〉の時のように宇宙の星塊で拘束しながら上下逆さまに吊り上げる。

 

「ペイン、脅していいぞー」

 

「試させてもらうよ」

 

「え、ペイン本当にするの?」

 

「神獣を脅して称号を手に入れる現場を目撃するとは・・・・・あの、俺も称号が欲しいんで脅していいですかー?」

 

大いにやってやれ! あ、何でも願い事を叶える条件を呑むなら許すことも忘れるなよー? と許可すると、他にも称号欲しさのプレイヤーが神獣〈丑〉の周りを囲んで邪な笑みを浮かべた。あーあー、神獣とあろうものが情けない悲鳴を上げちゃって・・・・・お、俺達に降伏して屈服した。

 

「よっしゃー! 称号ゲットー!」

 

「おおー本当に『神威』の称号が手に入った!」

 

「いいねいいね! 久しぶりに手に入ったよ!」

 

手に入ったプレイヤー、良かったなー。さーて、またなんでも願い事を叶えてくれるし・・・・・お前の肉と乳を未来永劫で大量に用意してもらって定期的に貰う願いにしようじゃないかー。もちろん拒否権はないからな? って牝じゃないから乳は出ない? じゃあ、お前の肉・・・・・できない? は? ならここでお前を解体して肉を手に入れるわ。・・・・・他なら何でも? 言ったな? 言ったなー?

 

俺もまたわるーい笑みを神獣〈丑〉に向けて浮かべ無茶ぶりを要求する。なんなら首にスライムスーツで刃を潰した短刀で神獣〈丑〉の首に押し付けながらだ。そしたら歓喜の涙を浮かべて心から快諾してくれたよ。いやー、神獣の鏡デスネ! なんか周りがドン引きしているがな! 貰った物は仕事を終えてから確認しよう。

 

「白銀さん! この称号の情報は売ってもいいのか?」

 

「いいぞー好きにしな。それじゃ先に落ちるな。みんなお休み!」

 

「あざーっす!」

 

「お休みなさーい!」

 

「見つけれず願い事を叶えてもらうだけで申し訳ありませんでしたー!」

 

「鬼の里のイベント、頑張ります!」

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