三匹のモンスターを倒した俺とバハムートは改めて話し合うと思ったが、頭の上に乗れと催促されてその通りに乗るとどこかへと向かいだした。
≪捕まえたモンスターを嗾けず己のみで戦う神獣使いは汝が初めてだ。それが神獣使いの強みではなかったのか≫
「俺はどちらかというと戦士だ。神獣使いになったのはなるべくしてなった程度だよ」
≪なるほど。であるからあの強さか。そのおかげで我は静寂を得ることができる≫
「そもそもこの世界は一体何なんだ? 俺はそれが分っていないんだ」
真っ暗な空間に草木が一本もない大地。湖も海もない世界でよくもモンスター達が生きられるなと不思議でいっぱいだ。バハムートは淡々とこう答えた。
≪ここはかつて、森と海で自然が豊かだった星だ。人間とも共存していた。しかし、我々は人間より知能と力が高いことに傲慢となり、人間を滅ぼしてしまったことで神々の怒りを買い、森と海と太陽を消してしまい我等ごとこの星を捨てたのだ≫
「・・・・・」
≪しかしながら、何故か汝のような特定の人間のみがこの地に足を踏み入るようになった。汝で四人目だが汝のような人間は他にもいるのか≫
「モンスターを従える人間はたくさんいるが、神獣使いは神獣の協力を得ることができないとなれないんだ。それも簡単じゃないから今のところ俺だけだよ」
そうか、と短く相槌を打ったバハムート。それから沈黙がしばらく続いたがバハムートが目的の場所についたか降下し始めた。
≪降りろ≫
躊躇なく下りたら、巨大な卵が鎮座しているところに送られたらしい。
「これ、お前の?」
≪蟲の卵だ。強大な力を持つ四匹の我等は、王のように君臨していたことから人間達に『四王』と呼ばれていた。故に王が死した時、新たな別の王が誕生する。汝等神獣使いはこの卵を欲してこの地に来ているのだと我等はそう解釈、認識していた≫
「え? 何も分からない世界に来て、こんな卵があるなんてどうしてわかるんだ? 先代の誰かが四王を倒したのか?」
≪汝以外誰もいなかったが、我等の卵を一目見たのは事実だ。そして欲して戦いに挑んだが敗北してこの世界から逃げて行った≫
そりゃあ、俺みたいに三匹の天災、四神を倒したわけでもないし創世神話の神々に認められたわけじゃないもんな。てか! 四王の内二匹に寄ってたかって攻撃されたら俺以外死ぬわ! 簡単に倒したけどさ!
≪今ならお前の力で四王の力を受け継ぐ者を手に入れられるがどうする≫
「百足竜、さっきの虫とは別のモンスターが産まれるんだっけ?」
≪そのようになっている。実際、我以外の四王は何度も殺し合ってまったく別の四王が誕生している≫
そうなんだーと思いながら触れると、『この卵をテイムしますか?』とメッセージの青いパネルが浮かび上がって、YESを押すとこの大きさでそのままテイムできた途端に、ヒビが大きくなり、卵の内側から眩い光が溢れ出した。久しぶりの演出だが、後には白い光の球がフヨフヨと浮かんでいた。
「お、こいつは・・・・・」
ペルカが産まれた切っ掛けの特殊演出『未分化の力』! うわー! うわー! ちょっと待てよ、そんな心の準備ができてないのに!? 未分化の力に使うアイテムを選ばなくちゃ!
「・・・・これ使ってみるか」
『女王オニスズメバチの王冠』。これは虫と格と潜在と王が★10以上だった。強い虫系が出てきてもおかしくない。百足竜の素材は虫と格と潜在と風と貫通が★10。あと他にも選択してみよう。
「どんな虫が出てくるのか、楽しみだ」
俺はドキドキしながら決定ボタンを押した。インベントリから選択したアイテムが失われ、光の球が案の定輝き出す。ワクワクしながら待つと光から人影が浮かび上がって俺の前に出てきた。
―――うーん、虫っぽい要素はある人型の昆虫か。しかも、アリですね? オニスズメバチのように全体的に鋭角的かつ機械的なフォルムなアリだ。二対四枚の翼があるし飛行能力も備わっているのか。翅のあるアリって女王と女王と交尾する雄アリしかないはずだったな外国のアリは。
≪―――お初にお目にかかります、主君≫
アリのモンスターはその場に跪き俺に頭を垂らした。しかも主君って・・・・・。
≪どうか私に真名を与えてください≫
名前か・・・・・そうだな・・・・・。
「ベルアンでいいか」
≪ありがたき幸せ。以後我が名はベルアンと名乗らせていただきます≫
名前:ベルアン 種族:ANNOUN
契約者:死神・ハーデス
HP:900/900 MP:500/500
【STR 800】
【VIT 690】
【AGI 1100】
【DNT 520】
【INT 470】
スキル:【超高速飛翔】【神速】【剣舞】【王の号令】【軍団アリ】【死爪】【脱皮】【危機感知】【栄養補給】【フェロモン】
装備:なし
かなりの弱体、というよりプレイヤーより強くさせてはいけない運営の方針の表れだろう。それでもしばらくはベルアンの一興になるが、しばらくの後はベルアンを追い越すプレイヤーは必ず多くなる。
≪終えたようだな。次に行くぞ≫
「あ、やっぱりまだあるんだ。バハムートの卵もテイムできる?」
≪欲するなら持って行くといい。我は静寂を得れば何でもいい≫
「俺的にはバハムートを俺の世界に連れて行きたいんだけどな」
≪・・・・・我の力を欲するか≫
何を勘違いしているんだ。俺の前の先代達はバハムート似合って仲間になってくれと言ったのか、絶対に言ったんだな。
「ただのエゴだよ。自然と命溢れた世界の中で泳いでみないかって」
≪汝にそれを可能にすることができるのか≫
「一度お前をテイムしなくちゃならないが、俺の世界に来たら自由に泳いでくれて構わない。バハムートの力を一度も借りないことを誓う上でだ」
≪・・・・・≫
「もしも困ったことがあった時は、お前のこと助けに行くよ。どうだバハムート」
ジッと俺を見つめるバハムートの六つの目から何を考えているのかさっぱりわからない。俺からの提案の返答がないまま、ラージャングと怪獣の王の住処にもある巨大な卵をテイムして、この二つも未分化の力の演出が発生して、手に入れたばかりのモンスターの素材と他の素材を使って新しいモンスターをテイムした。そして最後にバハムートの住処にある卵の前に送ってくれた。この卵もテイムできて当然のように未分化の力の演出が発生した。
「さーて、何を使うか・・・・・」
≪・・・・・神獣使い≫
「うん?」
≪先の提案、汝の世界に赴くことだが、我はこの世界を捨てることはできない。産まれた故郷故に離れることに抵抗感が覚える≫
「傲慢な考えを持ったから神々に自然と太陽を奪われたのに?」
うぐっ、と唸りぐうの音も出ない様子のバハムートさんだった。
≪・・・・・自業自得であることは受け入れている。だからこそ罰を受けねばなるまいと―――≫
「静寂の中で悠々と生きているのが罰なら、ゆるーい罰だなそれ」
≪なんだと?≫
「本当に罰を受けたいなら、いや、罰を受けて楽になりたいんじゃないのか? しかも自己完結、自己満足だよなそれ? この世界を捨てた神々が今更お前に罰を受けてほしいと思ってるのか?」
≪・・・・・≫
「人間を滅ぼした傲慢なモンスターしかいない、神々から自然と太陽を奪われた世界で生きていたいというなら誘わないけどさ。でも罪や罰の意識を持って生きているなら、何か償うことを一度でもしたのか? この世界の命を奪った四王の一匹のお前が」
≪・・・・・≫
押し黙った。何もしていないんだなコイツ。俺には関係ないけど、そーいうことならしっかり言っておかないといけない気がするわ。
「バハムートにとって罪と罰の意識が軽いのか? 本当に罰を受けているつもりなのか? 俺はそこを疑うなー」
≪ならば、汝にとって如何様な罰を受けねばなるまいと思っているのか教えてもらおうか≫
「迷惑をかけた分、奪った命の分、役に立って守ってやることだ」
≪・・・・・それだけで罪と罰が帳消しになるのか≫
「なるわけないだろ。罪悪感を一生抱えて生きていくんだ。助けた誰かに感謝の言葉や念を向けらながらだ」
≪・・・・・それが人間の罪と罰の意識と概念なのか≫
全員が全員そうじゃないがなー。
≪・・・・・わかった≫
「そうか。なら話は終わり―――」
不意にバハムートが光の塊を撃ってきた。はっ、なんでっ!?
≪神獣使い、我と戦って死ぬがいい!≫
「何でそうなるバカヤロー!」
【至高の堕天使】を使い、INT極振り状態にする。コイツ、百足竜より激しく俺を狙って魔法を撃ってきやがる。本気で殺しにかかってるな!?
「上等だ、お前も倒して卵の栄養分にしてやる!」
≪できるものならやってみるがいい!≫
突然のバハムートの乱心により俺は最後の四王と戦う羽目になり、互いに大規模の魔法を撃ちあう戦いをする羽目になった。
40分後―――。
≪グッ・・・・・やはり、汝は、他の神獣使いより凌駕している・・・・・≫
「最初からお前と戦っていたら、こうまで苦戦はしなかった。強かったよお前、私の世界にいる四匹の神のモンスターよりもだ」
力なく地面に横たわるバハムート。ただし姿はクジラじゃなくて立派な翼を持ったドラゴンだ。運営この野郎! バハムートに二段階の形態を盛り込むなよ! クジラから龍になるなんて驚いたぞ! しかも強さが倍になるんだから四神より強いってのはお世辞抜きで本当に強かったわ! 百足竜達が揃って挑もうとした理由はこれか! 納得したよ! 俺もHP一割しかないから死に掛けた! 死に掛けたからマジでさ!
≪ならば汝に勝てる生物はどの世界にもいない。いるとすれば神か・・・・・≫
「言っていなかったが、私自身は半分神だぞ」
バハムートの目が「マジか」ってなった。うん、マジなんだよゴメンなー?
≪は・・・・・汝に勝てぬわけだ。半神にすら勝てぬのに神に牙を剥いた我々の傲慢は、神々の怒りに触れたことも当然か・・・・・だが、楽しくはあった。全力を出した戦いは久しぶりだった、半神の神獣使いよ・・・・・≫
最後のトドメとしてHPドレインした後、言葉を残しポリゴンと化したバハムート。獲得した称号とスキル、インベントリに素材が大量に収まって戦後の余韻を浸る暇もなく未分化の力の待機時間が残り少ない中、バハムートの素材と様々なアイテムも追加して決定ボタンを押した。
「・・・・・よう、初めまして。また会ったなと言いたいがそうじゃないよな。でも、さっきはよくもやってくれたなと言いたい気分だよまったく。さて、名前は・・・・・ああ、これしかないな。お前の名前は―――だ。よろしく頼むぞ」