バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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最初の一夜

 

 

 

「ハーデス。ギルドのみんなにも教えておいたよ。これから鬼人族達からクエストを受けるってさ」

 

「ご苦労、ありがとうな。実際最終日のイベントにどう転ぶか分からないが、不安要素は向き合ってこなしておかないと」

 

「それじゃあ私達も休憩を終わりにしてまたクエストを貰いに行きましょうか」

 

「はいです!」

 

「どんなクエストでも頑張るよ」

 

宿屋を後にして集落内にいる鬼人族達と交流する俺達は、積極的に鬼人族と話し合うプレイヤーの姿を度々見掛けてながら発生したクエストを受注して夜までこなすと。

 

「おい待ちな」

 

「え、私達?」

 

「アンタらだね。集落の中で動き回ってアタイらのために何でも手伝っている余所者達は」

 

宿屋に戻ろうとしたところで虚無僧傘を被った女鬼人に声を掛けられた。

 

「一つ訊きたいが、餓鬼と悪霊が怖いって奴ぁこの中にいるかい」

 

「・・・・・私だけど」

 

サリーが名乗ると顔を隠す女鬼人が彼女に問うた。

 

「理由は何だい? 見た目かい?」

 

「・・・・・だったら、なに」

 

「そうかい、それなら・・・・・」

 

質問の返答次第で何かが起こるかもしれない、そう心の中で警戒していると胸元に手を突っ込んだ女鬼人は手に何かを掴んでいて取り出したそれをサリーに渡した。

 

「とっときな。これから必要になるもんだ」

 

「え、あ、はい?」

 

「夜になると餓鬼と悪霊の強さと数が増す。男衆がいない間、集落を守るのはアタイらだからアンタたちにも頑張ってもらいたい」

 

―――唐突に発生した討伐クエスト!? あ、パーティ推奨のクエスト! なんだこれ?

 

「どうして私達に? 他の余所者達の方に話しかけた方がいいんじゃないか?」

 

「アタイが話しかけるのは朝一度も餓鬼と戦わず、夜まで集落の鬼人の手伝いをしている者だけだ」

 

そう言い残して去ってしまう女鬼人。彼女の背中を見送りながらサリーに何を渡したのか気になったイズ達と一緒に確認させてもらった。

 

 

名称:認識阻害の護符

 

効果:イベント限定アイテム。所持していると妖怪・ゴースト系のモンスター限定で姿と形が変わったように見える護符。どう変わるのかはプレイヤー次第である

 

 

―――お、こいつは! 運営め、粋な計らいをしてくれる。元々用意してあったのか、願いを聞き届けてくれたのか分からないがどっちかでもとてもありがたい。特にサリーにとっては鬼に金棒のアイテムだ。

 

「すぐに行こうそうしよう! 確かめないと!」

 

「え、急にどうしたのハーデス。まぁ、クエストが強制的に受注されたから達成しておかないといけないけどさ」

 

「どう変わったか採掘場に行ってみる? あそこなら悪霊だけでいっぱいいるし」

 

「もしもいたら100体倒した方がいいぞ。ゴースト系のモンスター限定のダメージ補正がされる称号が手に入る」

 

「サリーさん、行きましょう!」

 

行こう行こうと推す俺達に若干圧倒されたようなサリーと採掘場の入り口へ転移した。先に俺が確認しに歩くと、朝よりたくさんの悪霊がいたのでその報告をサリーに伝えたところ。

 

「か、帰ろう? もう帰ろう?」

 

「遠くから見るだけでも確認しろ。ほら、手を掴んでいいし抱き着いてもいいから。片目だけでも目を開けて確認できるだろう」

 

「ううう・・・・? うううう・・・・・!」

 

「なんなら私が悪霊を一匹だけ捕まえて連れて来ようか?」

 

と、提案するとフルフルとポニーテールを左右に揺らしながら否定の意を示し、俺の横におずおずと寄っては顔を押し付けた。

 

「・・・・・このまま、お願い」

 

「わかった。しっかり掴まっていろ」

 

サリーを抱えながら空を飛ぶ。採掘場の崖の上に降り立ち、悪霊達が俺達の存在に気付かず下の方で彷徨っている様子を見ながら縮み込んでいる少女に教える。

 

「片目だけでもいいから見てみろ。高い場所にいるから奴らは気付かない」

 

「・・・・・っ」

 

「私がお前を守る」

 

ビクッと肩が震えた。人の胸に押し付けた顔を半分だけ横にずらして眼下の悪霊達を一目見たと思うサリーを見下ろす。しばらくそうしていると彼女は私から離れて一人だけ崖に立った。

 

「何が見えるサリーの目から」

 

「・・・・・お菓子がたくさん浮いてる」

 

「お菓子?」

 

「うんだから―――これならイケる」

 

両手にダガーを装備したサリーが崖から躊躇なく飛び降りた! そして俺からすれば悪霊、一人の少女からすればお菓子の群れに飛び込んで、戦える頃の戦闘力を存分に発揮した。

 

「やった、やったぁー! お菓子を斬っているようにしか見えない、思えないから怖くなーい!」

 

次々とポリゴンを漏出しながら消失していく悪霊達の攻撃が届く前に、アハハッ、アハハハーッ!!! と高笑いする夜闇の暗殺者と化したサリーに切り刻まれて倒されるばかり。それからしばらくして100体を倒したことで『ゴーストバスター』の称号を手に入れて戻ってきたサリーと三人のところへ帰ると。

 

「うぇえええええ~~~ん!!! お、お姉ちゃ~~~ん!!!」

 

「どうした?」

 

「凄かったのよ。もうこの世の物とは思えない怖い笑い声がここまで聞こえて。また悪霊のボスと戦ってたの?」

 

「見えない分、ちょっと怖かった・・・・・」

 

イカルが泣きながら抱きついてきて、理由を知るとサリーの方へ視線を向けた瞬間。バッ! と全力で明後日の方へ顔を逸らす蒼夜の死神少女が・・・・・。

 

「まぁ、そんなところだ。サリーも悪霊が空に浮かんでいるお菓子にしか見えないということだから、張り切って倒してくれた」

 

「そうだったんだ。じゃあ、そういうことなら一緒にクエスト出来るね」

 

「う、うん・・・・・頑張るよ。その、色々と? 迷惑を掛けたっぽいから」

 

「迷惑? それにどうして疑問形?」

 

「な、何でもないっ。早く行こう、すぐクエストしよう!」

 

慌てて催促するサリーに神妙な顔で見つめる二人と、俺と俺の胸の中にいるイカルは死の灰が降り注ぐ大地へ足を運んだ。今度クリムに会ったらサリーの武勇伝を教えよう。蒼夜の死神サリーの凄さを。

 

「―――さて、役割を決めよう」

 

夜間でも餓鬼を倒そうと意気込む無所属のプレイヤー達が屯っている場所で俺達も交ざった。ちらほらと別ギルドのプレイヤー達もいて、必然的か同じグループ同士で固まり次の挑戦まで待っている姿勢が多く見受ける中で俺達は顔を突き合い出す。

 

「イズとセレーネは後方、俺とイカルは真ん中、サリーが前衛だ。パーティ枠が一人空いてるから私の従魔でサリーと戦わせていいか?」

 

「構わないわよ」

 

「みんなと一緒なら私も援護射撃ができるよ」

 

「大丈夫です!」

 

「何時でも私は行けるよ」

 

確認し合ってからこのメンバーでクエストを達成するために戦場へ臨んだ。受注したクエストの内容は30分の耐久戦。指定された時間までモンスターを一度でも橋に通してはいけない。そして撤退が不能なこのクエストは敗北すると鬼人族の好感度が下がる。なので頑張らないといけない場所で俺達も戦い始めたが。

 

「ハーデス、色んなお菓子がいっぱい押し寄せてくるから精神的攻撃をされてる気がしてしょうがないんだけど」

 

「戦いが終わったら甘未を食べさせてやるから集中しろ! それから美味しそうだからって食べるなよ!」

 

「食べないよ!」

 

灰色の大地の世界に立ってすぐに配置に着くと、最初のウェーブで餓鬼と悪霊の数が50ぐらい攻められた。もしソロで挑んだ場合はどのぐらいの数で現れてくるんだろうか?

 

「召喚―――ベルアン」

 

機械的なフォルムの人型のアリモンスターを召喚した。四人は見たことがないモンスターに目を丸くしてベルアンを凝視した。

 

「ハーデスの新しいテイムモンスター?」

 

「新大陸で捕まえたのかな?」

 

「アリ・・・・・?」

 

「ハーデス、フェンリルじゃないんだ? 種族は虫?」

 

「話は後だ。ベルアン、30分経つまで目の前の敵を狩り尽くせ」

 

≪承知いたしました≫

 

四つの翅を広げて虫の如く飛翔してモンスターの群れに突貫した。その鋭利な爪の一振りで軽く10体以上を屠ってみせてくれた。

 

「え、速っ、私の出番もしかしてない・・・・・?」

 

「今だけだ。30分も耐えないといけないんだ。これから当たり前のように100個以上のお菓子が押し寄せてくるかもしれないぞ」

 

「くぅぅ、精神攻撃ぃ~! ああっ、チョコレートケーキが、マカロンがー!?」

 

怖がることはなくなったけど、女の子にとって生殺しで辛い思いをされているのか・・・・・。

 

「お姉ちゃん。サリーさんはモンスターのことお菓子に見えているんですか?」

 

「私から見ても絶対に美味しいお菓子には見えないが、女鬼人からもらった護符を持つサリーの目はお菓子に見えるようになっている様だ」

 

「・・・・・私も、お菓子を食べたくなりました」

 

「終わったら食べよう」

 

「はい!」

 

これ、ミミックみたいな何かに偽装して近づいた存在に襲うモンスターがいたら危ないな。お菓子を食べたら実は虫だった、何てトラウマを植え付けられそうだ。

 

10分後―――。

 

「みんな、新種のデザートがたくさん湧いてきたよ! 結構速い!」

 

「ベルアン! 空を飛んでる猫を駆逐しろ! 一匹も倒し損ねるな!」

 

≪承知!≫

 

「可愛いです! テイムしたーい!」

 

「また今度ねイカルちゃん」

 

「・・・・・そこっ!」

 

20分経過―――。

 

「鬼人族・・・・・! ハーデスごめん、いったん下がる!」

 

「あんなに大量にいてかつ密集されちゃあ攻めにくいのは当然だ。サリー、私とイカルと配置を交換だ。私達が前に出る。イズとセレーネは私達に気にせずスキルを使え。爆弾を使っても私達はノーダメージだ」

 

「「わかった!」」

 

「行くぞイカル」

 

「はい!」

 

30分達成―――。

 

「全員戻るぞ。時間だ」

 

クエストの方も達成として認められ、長居は無用と俺達と隔離する氷壁を張ってから悠々とこの場から離脱した。専用エリアから出てきて俺達を出迎えるプレイヤーは意外とまだ多い。だから当然のように話しかけられた。

 

「白銀さん、もしかしてパーティで戦えたのか?」

 

「ああ、クエストを受けたから出来た。その分厳しい条件を付けられるがな。ソロの方が条件が緩くて戦いやすいだろう」

 

「条件って何だ?」

 

30分間の逃亡不能と一体でも橋に渡らせないのが条件だと言えば、パーティ推奨なのがそれなら納得だとそんな顔を浮かべるプレイヤー達を視界に入れる。

 

「パーティで戦った感じ、どうだった?」

 

「苦戦は絶対にする。空飛ぶ妖怪と死者になってた鬼人族の軍団が現れた。力も非常に強かったぞ。普段から固定パーティで遊んでいるプレイヤーでも簡単にクリアできないクエストだ。もしも失敗したら鬼人族の好感度が下がる」

 

それから、どんな職業を組んで挑めばいいのかは私も分からないから答えられないぞ。と先に釘を刺しておいた。軽戦士、大盾使い(テイマー)、鍛冶師の俺達のパーティ構成が正解とは絶対に言えないからだ。転移して鬼鳴峠に戻った俺達に、ア=トゥが何故か温泉宿屋の前で待ち構えていた。

 

「待ってたよ」

 

「待ってた?」

 

「お前達の活躍を小耳に挟んだからね。飯も風呂もまだなら特別に魔王の仲間達も案内するよ」

 

誘いはありがたいが、既に個室を借りてるから―――と言おうと口を開きかけた俺を遮るように、もうわかっているかのようにア=トゥに言われた。

 

「お前達が借りてた宿の主と話をつけておいた。泊まる場所を勝手ながら変えさせてもらった」

 

「どこでそんな情報を・・・・・ア=トゥにも仲間にも教えていない宿だぞ」

 

「狭い里にいると聞いてもいない話や情報が聞こえちまうのさ」

 

地獄耳ッッッ・・・・・!!! 思わずにはいられない女鬼人の聴力に絶句しつつもア=トゥの案内に従うしかない俺達は別旅館に赴いた。そこは石の階段を登った先にある高級旅館の一つ―――。

 

「今日は疲れただろう。先に汗を流してきな」

 

「そうか」

 

マイホームとリヴェリア達とならともかく、それ以外の連中と入るのに女のままではいかん。すぐにスキルを解除して男に―――ん? なんでだ?

 

「ア=トゥ・・・この旅館って何か特別な力でも働いているのか?」

 

「・・・・・」

 

あ、ニヤァって笑って・・・・・こいつ、確信犯だ!?

 

「ハーデス、どうかしたの?」

 

イズが俺とア=トゥの間でしか分からないことに疑問を抱いたようで訊いてきた。ゆっくりと彼女達に振り返って深刻な事態を告げる。

 

「・・・・・スキルが封印されてる。男に戻れない。なんなら装備も含めた全ステータスもだ」

 

「「「えっ」」」

 

「そういうことだ。観念しな」

 

「「「えっ」」」

 

プレイヤーを無力化させる建物があるなんて知らないぞ運営!!!

 

「お姉ちゃん、早く入りましょう!」

 

「ま、待ってイカルちゃん・・・! ハーデスは後で一人だけ入ってもらおう・・・・・?」

 

「そ、そうして欲しいっ。いくら性別が変わっても男だよ?」

 

「なんだい、裸を見られる程度で恥ずかしいのかい。それなら布で身体を巻いて入りな」

 

「「それでも恥ずかしいし、恥ずかしいから・・・・・!」」

 

・・・・・もしかして、女鬼人って巻かない派? まぁ、別にいいけど。イカルの手に引っ張られながら女湯の脱衣所に入り、女好きの男なら一度は見てみたい女の裸を晒す空間に入り込んだ。遅れて脱衣所の様子と俺を見るなりもっと赤面するセレーネとサリーと違ってイズは木製のロッカーを開ける俺の隣に寄って来て・・・・・。

 

「イズは恥ずかしくないのか」

 

「もちろん羞恥心はあるわ。でも、一度全部、何時間も見られているから今更じゃない?」

 

「・・・・・」

 

「それにゲームしかできないことをしてイッチョウやフレデリカに自慢してみるのもアリかなーって。あ、リアルのように服を脱げれるのね。下着も着けていた状態だったのも初めて知ったわねハーデス」

 

「・・・・・そうだな」

 

躊躇なくユニーク装備を脱衣するイズが堂々と下着姿に―――そういえば、下着の装備なんてないよな? 俺も装備を全部脱いで下着姿になると、イズと違うデザインの下着であったことが確認できた。イカルはインナーだった。

 

『プレイヤーが下着の概念を認知しました。一部の職業のみ下着の制作が解放されました。一部のシステムが解放されました』

 

ちょ・・・・・このタイミングでそれぇぇええええええええええええ!?

 

 

とあるプレイヤーの話。

 

「下着の制作が解放された、だと?」

 

「ま、まさか・・・・・スカートの中を見られるようになったのか?」

 

「・・・・・お前、リアルは男だから試しに覗いてもいいか?」

 

「はっ? ・・・・・まぁ、お前ならいいか。何時でも覗いていいぞ」

 

「じゃあ、失礼して・・・・・・(ゴソゴソ)あ、お前白い下着を履いてる・・・・・ん? 称号『初めて神秘の空間を除く変態男』を獲得しました?」

 

「ブッ!? お前、なんだその姿は! 全身真っ黒になってるぞ!」

 

「え? ・・・・・な、なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ?!?!?」

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