三日目のイベントの朝―――。俺達は新しくパーティに加えた雛菊の詳細を知ることから朝を迎えた。
「雛菊、クエストをする前に雛菊のスキルを教えてくれないか? 勿論だけど俺達以外だけの秘密にするから。昨日の一件でびっくりしたし」
「あうううう、ごめんなさいです。スキルは仲間でも教えてはいけないって掲示板で知ったので」
「間違ってはないな。実際に俺だってイカル以外のイズ達のスキルは知らないし。教えてほしいとも思ってない」
「教えてくれるなら聞くけど、事前に何か仲間にも巻き込むスキルを使うなら離れてほしいって言うべきだったわね。雛菊ちゃんを助けようとしたサリーちゃんが巻き込まれそうだったし」
「ごめんなさいサリーさん」
「気にしないで。また同じことをしたら次は躱すから」
本当にそれが出来るんだから凄いよなサリーは、と感想を心中で漏らしながら話題を戻し昨日使ってみせた雛菊のスキルを見せてもらった。
【仙術】
スタミナを消費することで内包されている以下のスキルが使用できる
【仙法 蒼炎衣】
系統:悪のスキルを無効にする浄化の炎を装備に付与。スタミナ10%消費が必要
【如意自在】
一日に十回、レベル10毎に装備の大きさと長さ、攻撃範囲が一メートル増える
【大回転斬り】
プレイヤーを中心に半径四メートル以内の相手に攻撃する
【等価交換】
HPかMPまたは両方の数値分の消費、Gの消費量と選択したアイテムのレア度と数に応じて、攻撃範囲か一つだけステータスに一時的な増加の選択が可能
【戦域展開】
一日に一度、プレイヤーを中心に最大半径40メートル内にいるモンスターに対して範囲攻撃が可能
「・・・・・」
【仙術】に内包されてるスキルは【仙法 蒼炎衣】以外あるものの、魔王に対抗できるスキルが他にもある事に気付かされた瞬間だった。仙術って俺個人の解釈させてもらえば自然の力を集めて操る術だから、悪も光も関係ない攻撃されちゃあ持ち前の防御力で防ぐしかないわな。
「なるほどねー。雛菊ちゃんも凄いスキルが持っていたのね」
「あの白い炎は浄化の力でもあったんだ。妖怪と悪霊が一撃で全滅したのも納得だよ」
「今回のイベントは雛菊がかなり活躍できるね。それにこれからレベルを上げて行けば強くなれる伸びしろだってあるんだし」
「確かに凄いけど、私も負けない!」
イズ達も納得したと雛菊を称賛する。スキルも確かに強くてすごいのは確かだが・・・・・。
「雛菊はリアルで学校の部活は剣道部?」
「違うのです。雛菊のお母さまのお家が剣の道場があるのですよ。雛菊もお母さまから剣術を習ってます」
「やっぱりか、技術は足りてないが妙に経験者の立ち振る舞いを時折していると思ったよ」
逆に技術があればリアルではもっと強い剣士になれる。・・・・・さすがに剣聖とまでは言えないがな。未来のことなんて断言できないし。
「お師匠様も剣術を?」
「蒼天は全世界のあらゆる武術を学んでいるからな。その手の達人に教えを乞うこともあるぞ。例え小さな道場でも蒼天の生徒が学びに行くことだってな。雛菊のリアルの名前の家は知らないけど、きっとお前の道場にも足を運んだことあるはずだ」
「・・・・・じゃあ、雛菊が幼稚園の頃に同じ服を着た人達がたくさん来たのも蒼天の人なのです?」
「何色だったか覚えてる?」
「青なのです」
じゃあ、通わせたことある道場の一つだな。俺も雛菊の母親と顔合わせしたことがある。そう言えばある道場には母親に影に隠れてた幼稚園児がいたな・・・・・ああ、もしかして。
「・・・・・」
「お師匠様・・・・・?」
「いや、なんでもない・・・・・ふふふ」
世界は広いようで意外と狭いな。
「さて、今日もクエストをしに行くとしようか。それとも先にあの厄介な悪霊のモンスターを倒すか? あのレアアイテムを手に入れるために」
「私の護符のようにイベント限定のアイテムと交換できる唯一の方法だからするべきだよ」
「そうね。時間が掛かるから先に倒しておきましょう」
「頑張りましょう!」
思い思いに立ち上がってこの二日間ずっとしてきたことを今日も繰り返して夜まで過ごした。残念だけどレアアイテムの火種は複数の運を持つ俺でもドロップしなかった。本当に集めにくいんだな・・・・・。
「「「・・・・・」」」
集落の中、こういうことはたまにあると具現する俺とクリム、ペインのパーティがばったりと鉢合わせした。ペインのパーティにいるイッチョウとフレデリカを見るなり―――。
「へい三日ぶりだな! 会いたかったぞ!」
「うわっ!?」
「まったくもう、人前で大胆だよんハーデス君」
二人纏めて抱き着いてそのまま抱擁した。ふぅー・・・・・うん。
「よし満足だ。じゃーな」
「勝手に満足しないでよ! 会ったんだからついでに情報を交換しようよ!」
「そうだねー。いきなり乙女に抱きついて帰ろうとするのはセクハラじゃないかなー?」
ガシッ! とイッチョウとフレデリカに掴まれた。だが、俺の方が力は上なのでずるずると引き摺ってでも戻る。
「えーと、ハーデスのギルドの仲間のペインで合ってるね?」
「そうだ。君は?」
第一陣、このゲームのサービス開始から遊んで有名になってるプレイヤーは、第三陣のプレイヤーの間でもリアルで知れ渡っている。ゲーマーのクリムでも知っていて当然だろうな。
「私はクリム。ハーデスとサリーとリアルのゲーム大会で競い合っている仲だよ」
「因みにリアルのFPSの実力はサリー並みだ。このゲームを始めたばかりで第三陣だからまだレベル的に弱いが、それさえ解消したらかなり強くなるのは確かだから勧誘中」
「へぇ・・・・・また女の子を誘うんだ?」
フレデリカ、お前は知らないからハイライトするのか。イッチョウも無言で笑みを向けるんじゃないよ。
「クリムは男だぞ」
「あの見た目で? ・・・・・渡瀬ちゃん並みに可愛いよん」
「違う、リアルの方だ。キャラは女だけど、あそこにいるエルフの彼女が原因だ。本当なのか気になるなら聞け。ただし夜の時に会えたらな」
気持ちは凄くわかる。会わせたら一方的に絡みそうなほどこの出会いに喜ぶだろうさ。うーん目に浮かぶ想像だ。
「クリムとペイン。成績表を見たぞ。ソロより何とか行けてるか?」
「人手が足りない実感が湧いたよ。だからイッチョウに頼んで入ってもらってあとはクエストしつつ、野良のプレイヤーを探しているところなんだ」
「私の方は、私達って邪魔? って思わされるほど三人の戦いに圧倒されたんだけど。当たったら即死の十六のハンマーと装備が破壊兵器に変形するし、ブラックホールの絨毯爆撃をするし、モンスターにまで変身するって・・・・・」
ああ・・・・・初めて目の当たりにしたら茫然自失してしまうのは、うん、仕方がないな。それに・・・・・運営が用意した悪戯とネタと悪意のスキルはまだそんなものじゃないぞクリムよ。
「まぁ、頑張りたまえ。お前も目指せるレベルだぞ」
「目指したくないレベルだけど!? なに、そんなレベルにならないと新大陸はいけないのか!?」
そこまでではないけど、テイムした従魔と合体して遊んでるテイマーはこの集落にいるから。ああほら、丁度精霊とウサギと虫のモンスターが横切ったぞ?
「・・・それはそうと、二人に訊くが中ボスを倒したか?」
「いや見てすらいないよ」
「俺もだ。何でだ?」
「今日まで中ボスはいない代わりにエリアボスしか倒せてないから。ペインは覚えているよな。初めての村イベントで悪魔関係のギミックを」
「覚えてるよ。もしかして彼岸の鬼鳴峠の外に中ボスがいるかもしれないと?」
「いるとして一体以上は確実。あくまで可能性の話で実際に採掘場の奥にいるエリアボスっぽいモンスターが一体しかいない。鬼鳴峠の外のエリアってまだ採掘場と死の灰の大地しか行けないから、今日で何か次の展開が―――」
「そこにいたか。やっと見つけたよ」
言いかけた言葉を止めて聞こえてきた声の方へ振り向けば、数人の武装した女鬼人達を従えてるア=センがこっちに足を歩めてくる。
「久し振りア=セン。俺を探してた?」
「ああ、魔王殿とその仲間達の協力してほしいことができたのさ。今回は偵察をしてほしいだけだが、必要あらば討伐をしてもらうことになるかもしれない報告が挙がった。引き受けてくれるかい」
クエストが発生した。パーティ推奨で内容は怪しい三つの影の調査。イズ達にどうするか目を向けると俺の好きにしていいという意思を宿った目で見返してくれる。
「わかった引き受けよう。ただ、俺達だけなのか?」
この場にペインとクリム達のパーティもいるのに、と目で訴える俺にア=センは俺の言葉の真意に気付いたようでこう言った。
「ああ、今は魔王殿達だけ十分だ。調査報告次第で戦闘の発展に繋がるなら、そん時に戦闘成績が優秀な冒険者を募るつもりだ」
「そんなことはないと願いたいが、とりあえず調査はしっかりするよ」
「期待してるぜ。そんじゃあ頼んだよ」
去るア=セン達を見送った後、クリムとペイン達もそれぞれ違う方角に向かって俺達と別れる。
「ハーデス。まずどっちから行く?」
「三つの調査をするんだ。ここは効率的に同時にするぞ。雛菊と俺、セレーネとイカル、サリーとイズでそれぞれ調査対象のところに向かおう」
「仮に戦闘が起きても問題ない組み合わせだね。イカルちゃんと雛菊ちゃん、いいかな?」
「大丈夫です」
「はいなのです」
「私も問題ないよ」
異論はないと言ってくれる皆に頷き俺が決めた組み合わせで行動を開始した。その際だが俺は雛菊を背負って空を飛んだが、イカルは召喚したグリフォンでセレーネと二人乗りして移動し、サリーはイズが出した円盤型の乗り物に乗って三方に分れた。
「おい、空を見ろ! なんだアレ!?」
「ゆ、UFOぉっ!!?」
「このゲーム、あんな物まで作れんのかよ! 乗ってんの白銀さんか?」
オイコラ、何でもかんでも俺の名前を出すな! ―――そりゃあ思いっきり関わっているけれどさ!