「吸血鬼っ娘が銀の道具を持つってシュールな光景だな」
「このゲームじゃあ生物の弱点は属性の魔法だけみたいだし、陽の光を浴びても全然倦怠感がないよ」
俺と雛菊が守っていた山にクリム一行が資材を運び込んできた。他にギルドの身内や無所属のプレイヤーも大勢資材を運んでは女鬼人が指定した場所に置いて適当な場所で小休止をする。クリム達も長時間の歩行で疲れの色が滲み出て俺の側で寛ぎながら雑談をする。
「クリムは吸血鬼の国にはもう行ったか?」
「いや、まだだよ。なんで?」
「行けば吸血鬼らしいスキルかアイテムが手に入るクエストが発生するんじゃないかって思っただけだ。実際に俺はそういう物を手に入れたからな。その上、魔王しか使えない専用のスキルがあるんだから、種族ごとの専用スキルがあるはずだ」
「なるほど、異なる種族の専用スキルか。強くなりたいならクリムは手に入れた方がいいかもね」
「はいはーい、私達エルフの専用スキルってあるー?」
エルフの専用スキル・・・・・男のエルフを思い出してもエルフのスキルって何だっけ? って気持ちを抱かされる・・・・・。
「わからない。男のエルフはボディビルの如くのマッチョで沢山だから」
「何でマッチョなの!?」
「僕の身体が筋骨隆々になってしまうのか・・・・・?」
「フレイがマッチョ・・・・・ハ、ハハッ!」
うん、俺も想像したら笑えるフレイの身体になるな。
「興味あるなら自力でそれぞれの国や里に行ってみるといいよ。なんならイベントが終わったら家に来るか。エルフと吸血鬼の王族が住んでいるから」
「どうやったらNPCの王族をプレイヤーの家に住まわせることができるんだよ」
「偶然の出会いとコミュニケーションの力だ。でも、クリムは気を付けた方がいいぞ」
なんで? と小首を傾げるクリムに真実を打ち明ける。
「吸血鬼の女王は女好きだ。色々な意味で襲われないように気を付けろよ」
「色々って何? 俺、どんな意味で襲われるの? ねぇハーデス?」
「・・・・・俺の口からは、とても言えない」
「おいいいいいいい!?」
頑張れクリム、負けるなクリム・・・もしも襲われたら身代わりになってやる。仮に両方だったら、どうしようもないよな。
「ハーデス。今後のイベントはどうなると考察している?」
クイっと眼鏡を触りながら俺に問いかけるフレイ。こいつもゲーマーなのか、それとも俺がこのゲームの先輩だからか分からないが先を見据えたい気持ちは一緒のようだ。
「そうだな。敵がこの山頂に配置させるつもりだった三体の動物は鎖に縛られたモンスターなのはまだ知らないな?」
「え? うん、知らないよ。こんなところにモンスターを置く理由ってなんなの?」
「考えられるとしたらバフ的な理由じゃないか? リアルでも犬と猿と雉・・・雉は鳥の意味で縁起物としてそれぞれの獣を象った置物がある。俺達を弱体化させるデバフ、もしくは味方の強化をするために運んでいたかもしれない」
その代わりとなるのが、今から作られようとしてるお社だろう。これが完成するまで俺達はここにいなくちゃいけないわけだが、妨害される可能性は・・・・・。
「―――た、大変だっ! 神獣の眷属のプレイヤー達が餓鬼と悪霊達と一緒にここへ目指して登ってきてるぞー!!」
現実となったな。俺達をまだこの山に留まらせる理由はこういうことかよ運営めっ。
「そりゃそうだ。こういうパターンにお約束的な展開がないなんてあり得ないよ」
「タイムリミットはお社の完成だろうね」
「が、頑張るよっ」
いや、違うっ。ギルドメンバーと通信状態にしながら俺は息を吸って思いっきり叫び散らした。
「全員! 全力で資材と鬼人達を守れ! 餓鬼は女鬼人を集中的に狙う! 山頂に登らせず餓鬼と悪霊を全て倒すまで守りきれ! ここが正念場だぞ! 急いで配置につけ! 恐らく坂道以外にも崖を登って俺達を囲むぞ!」
「「「「「っっっーーー!!!」」」」」
バッと動き出すプレイヤー達は資材へ駆け付け、山頂から窺える断崖絶壁の下へ視線を落としたようで「本当に餓鬼が崖登りしてるー!」と叫んだ。それならばとーーー。
「【蒼龍の聖剣】が崖の餓鬼を駆逐する! 俺達なら宙を立つことができるぜ! 行くぞー!!」
「道の方はお前達に任せた! 頼んだぞー!」
「任せろやー!!」
二手に分かれるプレイヤー達。崖から躊躇なく飛び降りて、見えない足場に立つと今でも崖を登る餓鬼に武器を振るいスキルで倒していく一方、山頂までの道に餓鬼と悪霊に交じって敵プレイヤーへ迫るプレイヤー達があっという間に衝突した。
「雛菊、俺達は麓に行くぞ」
「ここで戦わないのですっ?」
「山の麓でなら敵以外誰もいないから戦いやすい上に、俺達が坂道の入口で戦い続ければ、崖を登る餓鬼以外は山頂に行けなくなる」
「なるほどなのです! さすがはお師匠様!」
ということで、雛菊を片腕で抱えながら麓まで降りると坂道を登ろうとする輩が集っていた。
「肩に乗れ」
「わかったのです」
小学生らしくまだ肉付きが少ない細い脚が俺の肩に乗っかったのを感じたところで。
「【鼠算式Ⅰ】【アルマゲドン】」
いつもより多めの巨大隕石が空から降ってきて地上に多大な破壊力をもたらす。
「い、隕石が落ちてくるぅっ~!? 逃げろぉ~!!!」
「安心しろ! 白銀さんのスキルだから俺達には当たらないっ!」
「こんなスキルまであるのかよっ! あ、本当に当たらない・・・・・うわっ!? スゲー爆発と揺れてるんだけど!?」
「このぐらい白銀さんにとって序の口だって。他にももっととんでもないスキルがあるんだぜ?」
「ま、マジかよ・・・・・味方でよかったぁ・・・・・」
土煙が晴れる頃にはあれだけいた敵の姿はもういなくなっている。が、それも少しの間だけのようで地面から餓鬼が湧いて出てきた。
「崖に登る餓鬼以外は倒す。自分の疲れとスタミナの残りを気を付けろ雛菊」
「はいっ!」
身体から青い炎が発火するように燃える雛菊と一緒に餓鬼へ立ち向かった。山頂にはマイとユイにメイプルがいる。何の憂いもなくこの場での戦いに専念できる。
イズ&サリーside
「イズさーん! 爆弾の追加お願いしまーす!」
「ちょっと待っててねー!」
イズとサリーが守っていた山にもモンスターと敵プレイヤーが押し寄せていて、苦戦を強いられていた。イズのユニークスキルで生成した爆弾で道から登ってくるできるに迎撃してるが、如何せん数が多すぎて上がらせないでいるのがやっとだ。サリーが宙を駆けて【蒼龍の聖剣】のプレイヤーと崖から迫る餓鬼の対応をしているお陰で一定の安定を保っていた。
「お金がどんどん減っていくわ。ハーデスが装備の耐久を回復させるアイテムを買った気分はこんな感じなのね・・・・・」
誰かのためとは言えど、湯水のように消費していく大金の減り具合を見せつけられると何とも言えない気持ちになってしまう。残り八桁になったところで一報が届いた。
「イズ! 白銀さんから伝言だ! 援軍はいるかって!」
「ハーデスが来てくれるの?」
「いや、テイムしたモンスターを向かわせるらしい。どうする?」
「一気に殲滅できるモンスターなら大歓迎って伝えて!」
「了解!」
モンスターを寄越すハーデスからの連絡。アリのベルアンと呼んでいたあのモンスターを送ってくれるのかと思うが、どちらにしろこの状況を理解しているならば、これから来る強力なモンスターに期待せずにはいられない。それまでは持ちこたえるイズはせっせと爆弾を量産する。
―――クォオオオォォォォォォォォォォォン・・・・・。
戦いが始まって未だに敵が止まらず、味方にも被害が出始めた頃。綺麗な音が聞こえたのはイズとサリーだけではない。なんだ、と誰もが聞こえだした音の発信源を手が空いてるプレイヤーが周囲を見回したところ。
「なんじゃありゃああああ!?」
蒼い空の下で悠々と泳ぐ超巨大な毛の塊・・・・・否、魚である。その姿は汚れを知らない純白金の皮膚に覆われ、鰭と尾びれに輪光と火焔光、頭と背中に巨大な二重円光と火焔光が合わさってまるで太陽を彷彿させる光背を浮かばせ、蒼と翡翠と金の瞳を六つもあるクジラであった。
「クジラァ!? なんでここにクジラが、空に飛んでるんだぁー!!?」
「えーと、まさかだけど・・・・・敵じゃないよな? だったら死ぬ、絶対に死ぬ」
「は、白銀さんのテイムモンスターであることを全力で祈るっ・・・・・」
山頂にいるプレイヤー全員が固唾を飲んで頭上にまで泳いで近付いてきたクジラを見上げる。
カッ!
クジラの全ての光背が発光した。何をするつもりなのかと戦闘の途中であるのに見上げてしまうプレイヤーを他所に餓鬼がプレイヤー達の横を通りすぎ、一緒にクジラを見上げてしまっている女鬼人に飛び出した直後。イズ達プレイヤーとNPCの鬼人達の身体を包む光の膜に触れた餓鬼が塵となって消滅した。
「はっ?」
「え、今何が起こった?」
「もしかしたら・・・・・あ、やっはりだ。今俺達、スキルが付与されてる! 【陽光の聖衣】ってスキルだ!」
「なになに? 【陽光の聖衣】を付与されたプレイヤーのMPが続く間のみモンスター、NPCからの系統:悪のスキル無効と状態異常無効、プレイヤーのレベル以下のモンスターに即死効果・・・・・」
「なん、だと・・・・・?」
「ってことは・・・・・」
「「「「「・・・・・(スッ)・・・・・」」」」」
インベントリからMPポーションを両手で持つプレイヤー達の視界には餓鬼と悪霊のみしか映っておらず・・・。
「「「「「ウラララララララアアアアアアアアアア!!!」」」」」
餓鬼のレベルは30台。よってレベル100超の【蒼龍の聖剣】にとって消費するMPを維持し続ければ限定的な無敵モードになる。他無所属のプレイヤーも似たようなもので、第三陣はまだそこまでレベルが上がっていないプレイヤーがいるも、頼もしい効果とプレイヤーに囲まれているためどこぞの部族の言語しか言わなくなった先輩達に交じってMPポーションを片手に餓鬼と悪霊へ突進する。なお、継続して消費するMPは一秒あたり5MPも減る。
「ふははは! ぶつかるだけで餓鬼と悪霊が吹っ飛ぶぞー!」
「なんだこれ楽しぃー!」
「もっと来やがれー! 今の俺達は無敵だあああああああ!」
「どすこーい!」
「ごっつぁんです!!」
「ヒャッハアアアアアアア!」
山頂から下っていなくなってしまいながらはっちゃけてるプレイヤーを無視し、しばらく爆弾の量産は必要なさそうだとイズは判断しながら明後日の方へ視線を向ける。
「・・・・・これでなんとかなりそうね。あとは・・・セレーネの方はどうなっているかしら」
セレーネ&イカルside
「うん、こっちは大丈夫。イカルちゃんやイッチョウちゃん達が頑張ってくれているから」
イズからの連絡を受けたセレーネ。どう頑張っているのかと言えば、最初は【悪食】が付与した溶岩のリヴァイアサンの状態で山の麓まで降りて敵プレイヤーと餓鬼、悪霊を蹂躙しながらペイン達が通る道を作り、それが終われば山の斜面を沿うようにぐるぐると回りながら崖を登る餓鬼を妨害、溶岩の熱でスリップダメージを与え山頂にいる鬼人達を守っているのだ。麓まで降りたペイン達は真正面から敵プレイヤーとモンスターを破竹の勢いで倒し続けているそれ以外のセレーネを含めた十人程度のプレイヤーは鬼人達の護衛に徹している。
「そっちはどう? ・・・そうなんだ。じゃあ、お互い頑張ろうね。それじゃ」
ハーデスの方は心配する必要はない。イズのところにもメイプルがいなければ消去法でハーデスのところにいる。二人の魔王が揃っているのだから負けることは絶対にない。そう確信と信頼を心中で抱き通信を切ってセレーネ達に守られながら、お社を作っている鬼人達の作業の様子を後目で見守るセレーネ。まだ土台すら作られていない状態だ。もしかしたらかなりの時間が掛かるに違いないその予感は当たっていて―――陽がとっぷりと沈んだ。
「お社が完成した! ここから何とか抜け出して彼岸の鬼鳴峠に戻るぞ!!」
「―――こんな状況でどうやって抜け出せってんだよぉーーー!?」
満月が蒼夜天を淡い光で照らす地上では、意志を持った黒い海―――餓鬼が朝より何十倍の数で山頂まで押し寄せて脱出が不可能な状態に陥っていた。しかし見えないバリアにでも阻まれてるかのようにこれ以上近づけない、近づこうとしない餓鬼達に絶望感に襲われているプレイヤーは数知れず、鬼人の号令に一人のプレイヤーが悲鳴染みた叫びでツッコミを入れるのも無理はないだろう。
「なぁ、どんどん重なって高く積み上がっていくぞあいつ等・・・・・」
「待て待て、なんだそれ、冗談じゃないぞ・・・・・!」
地上へ続く下り道を塞ぐ餓鬼の群れがお社を避けるようにしてドーム状に覆い出す。セレーネ達はただただその様子を見て黙ってはおらず、プレイヤー達が攻撃するも数の暴力には勝てず月光を隠す暗黒の空間の完成を許してしまって――――ギラッ! と無数の血のような真っ赤な目が鬼人達とプレイヤー達を見つめる風に開眼、目から赤い液体が流れ落ちる。
「「「「「「「「「「ぐああああああああああああああああああああ!!?」」」」」」」」」」
女鬼人達が突然狂ったように叫び出した。同時にプレイヤー達のステータスに呪いのバフが受けた。それに気付いたプレイヤーが声を荒げる。
「げぇえええええ!? 【死印】って呪いを受けたー!!」
「今死に戻りしたら、全ステータスが90%もイベントが終わるまでダウン!!?」
「―――あ、もしかして発狂してる鬼は俺達を死に戻りさせるんじゃ?」
「・・・・・最近、鬼に襲われる体験をしました」
「た、倒しちゃダメなんだよな・・・・・? HPが表示されているんだけど・・・・・・」
「味方なんだからダメに決まってるだろ!? なんとか取り押さえるんだ!」
鬼人達の数はプレイヤーより少ない。絶対に倒してはいけない事情があるプレイヤー達は一斉に無手で発狂する鬼人達に飛び掛かり、数で抑え込もうとする。
「イカルちゃーん! 白銀さんのスキルで・・・・・」
「・・・・・zzz・・・・・zzz・・・・・zzz」
「ね、寝てるぅー!? しかもちゃんと畳と布団を用意して!」
「しょうがないよ! まだ子供なのに崖登りしてくる餓鬼を休まず何時間も阻んでくれた疲れが出てしまったんだ! こんな状況だからって誰も責めちゃいけないからな!」
「ペイン! お前なら何とかなるか!?」
「やってはいるけれどね」
【蒼龍の聖剣】随一の剣士に懇願する味方の声に応じてスキルを発動、暗黒の壁に向かって発光する剣を横斜めに振るいながら斬撃を叩き込んだ。
「おおっ! ・・・・・うそぉん」
「見ての通り、既にぶ厚い層が出来上がっているみたいだ」
攻撃したヵ所の奥は外の風景を見せず餓鬼の姿しか覗けないどころか、瞬時に欠けた部分を修復するように餓鬼が埋まって元に戻った。
「さ、再生付きかよ・・・・・」
「剣の【勇者】奥義を使えば穴が開いてプレイヤーだけなら・・・・・ドレッドのAGI並みならば何人か抜け出せると思うけれど、その先にも餓鬼と悪霊が待ち構えている」
「絶望じゃん・・・・・ってことは。白銀さんともう一つの山の方も・・・・・・」
「同じ現状に陥っているだろう。ドラグ、そっちの方もダメかい」
「ダメだ! 採掘をしている気分で穴ができねぇ!」
壁に向かって攻撃する度に爆発する戦斧を叩き込むドラグ。ドレッドとフレデリカも壁に攻撃しているがペインと同じ結果で脱出は出来ないでいる。となれば・・・・・。
「ハーデスと同じスキルを持っているイカルなら、この状況を打破することができる筈だが」
「疲れ切っちゃって寝ちゃっているからなぁ・・・・・悪いが起きてもらうしかないな」
「じゃあ、私がするよ。とっておきの魔法を使ってね」
イッチョウが買って出て、畳の上に敷いた布団の中で眠っているイカルに近づく。
「イカルちゃん、イカルちゃーん」
「・・・・・んんんー」
「悪いけど起きてくれないかな? とーっても大変なことが起きてるの」
「・・・・・んぅ・・・・・?」
薄目で瞼を開くイカル。まだ完全に意識が覚醒しておらず殆どぼんやりと訊いているところに・・・・・。
「―――イカルちゃんのだぁいすきなお姉ちゃんがね、いまたくさんの変態なモンスターにエッチな事されちゃってるの。助けてあげないと、このゲームからいなくなっちゃうよん?」
悪魔の囁きを少女の耳元で零した瞬間。閉じかけていた眼が カッ! と見開きガバッと起き上がって状況把握のためかキョロキョロと周りを見渡し、イッチョウを見るや否や「お姉ちゃんはどこです!?」と詰め寄った。
「連絡で聞かされただけだから場所は分からないよ。探したいなら、私達を閉じ込めるモンスターを全部倒してからじゃないとイカルちゃんをずっと邪魔するよ」
「―――――わかったよ」
普段のイカルから聞くはずがない心底冷たい声音が口から洩れた。「あ、後で謝らないと怒られる」と思うほどイッチョウはイカルの何かを変えた気がしてならなかった。
「【相乗効果】! 【溶岩魔人】! 【太陽神鳥】! 【海竜神】!」
溶岩の身体を持った翼を生やすリヴァイアサンと化したイカルが、ペインですらできなかった外に繋がる穴をぶち開けて、餓鬼の呪いの包囲網を突破してみせた。
「お姉ちゃんを助けるんだ、邪魔するなぁーーー!!! 早く死んじゃええええええええ!!!」
ゴウッ!! と身体から極大の火炎を放ち山を覆うようにいる餓鬼を周辺の森ごと山もろとも燃やし尽くす。イカルの心情を露にしているかのような炎が絶えず燃え盛り、山頂にいる餓鬼の塊には燃える黄金の翼で何度も叩き払った。幸運にもプレイヤー達は狂乱状態の鬼人達を取り押さえる専念をしていたため、イカルの翼に巻き込まれずに済んでいた。
「・・・・・ねぇイッチョウ。イカル、ブチ切れてない?」
「切れた魔王はコエーぞ」
「俺は関わりたくない」
「ありがとうイッチョウ。キミのおかげで全滅が回避できそうだ」
「ア、アハハハハ・・・・・・」
お姉ちゃああああああん!!! と叫ぶ火の鳥が仲間を置いてどこかへと飛んで行ってしまったが、当のハーデスと同じ山にいるプレイヤー達と鬼人達は・・・・・・。
「助けに来たぞお前ら! よく持ち堪えてくれた!」
「「「「「うおおおおおおおお! 白銀さああああああん!!!」」」」」
既に自分達の持ち場から脱出していて、サリーとイズがいる山を覆う餓鬼達を一撃で吹き飛ばし、味方を解放していた。希望の歓声が沸く中で狂乱状態の鬼人達を攻撃せず取り押さえている光景に安堵して、イズとサリーの存在に安心した笑みを浮かべる空飛ぶ水晶船と白いクジラを従えながら宙に浮くハーデス。
「すぐに脱出だ! 【蒼龍の聖剣】は鬼人達を船に乗せろ! それ以外のプレイヤーはバハムートの背中に乗れ! 【蒼龍の聖剣】は脱出する味方の援護だ! まだ餓鬼と悪霊が襲ってくるぞ! 攻撃だ!」
「「「「「おおおおおおおー!!!」」」」」
船から伸びる渡橋、山頂に寄るバハムートの背に飛び乗り、先に乗っていたプレイヤー達と合流して労いの言葉を掛け合う。船へ運び込まれる鬼人達は甲板に固まっていた鬼人達に引き渡され落ち着く。その間でもモンスター達は襲い掛かってくるが、ハーデス達の登場に士気を取り戻し宙に留まることが可能になっている【蒼龍の聖剣】以外、完成したお社がある山を置き去りにして離れるまで警戒した。
「残りはイカルとセレーネ達が居る山だな。イカルがいるから全滅はしていないと思うが・・・・・」
完全に擦れ違っていることを気付かないまま、ハーデス達はセレーネ達のいる山へと移動したその後。鬼人達だけは誰一人欠けずクエストが達成できて四日目の朝を迎えた。