ギィン! ガキン! ドンドン! ドッカーンッ!
幽霊のNPCと開戦してから早くも数分が経った。このNPC、ゼ=ノンより確実に強い!! セレーネの弾丸を弾き逸らし、イズの爆弾の爆発を斬って無効にして、雛菊の刀術を赤子のように見極められ、イカルの【機械神】の砲撃、ビームまで斬り捨てやがった。
「HPの無い相手と戦うのはもうゴメンなのに・・・・・!」
「ハーデス、これ勝てるようになっているの?」
「正直言って勝てる感じがしないよ」
「お強いのですこの幽霊さん!」
「ううう・・・・・!」
状態異常は通用しない。ゴースト系だからと言われるとそうではない。スキルを斬られて当たらないだけだ。直接攻撃ならば当たりそうなんだが、一切の隙が見当たらない相手にダメージを与えることは難しい。それよりも何だかこの幽霊・・・・・俺ばかりに攻撃を向けて来るのは何故なんだ。
「桜姫、どうしていいか教えてくれ! こいつを倒せるのか、倒していいのか!」
「そ、それは・・・・・!」
サリーと一緒に桜の木の陰に避難している桜姫の声は戸惑いが籠っていた。
「あなた達が何と戦っているのか分からないわよ! お母様の刀が浮いてあなた達を襲ってるようにしか見えないわ!」
―――なんだと? ということは、墓にお供えした俺達しか見えないのか。
「桜姫ちゃんに似た女の鬼人の幽霊が刀を持って襲っているの!」
「―――お母様が!?」
セレーネの言葉におっかなびっくりと仰天する桜姫。クエストが発生した、させた覚えがないからHPがない特殊なエリアボスなのかもしれないが、こんな相手と長々イカル達が戦い続ける精神と体力がない。
「ハーデス! 来るわ!」
イズの警告の直後、幽鬼が横凪ぎに振るった刀から地面を裂く無数の斬撃が放たれた!
「【影の世界】!」
俺だけでなくイズ達も地中に沈めて幽霊の斬撃から回避したことで俺達は揃って息を吐いた。上を見ればまだ消えず佇んでいる桜姫の母親と思しき幽鬼が下に視線を落として俺と目が合った気がして・・・・・いやいや、まさかな? とあり得ない想像をした俺を嘲笑うかのように幽鬼が俺達と同じ場所に沈みながら凄い勢いでこっちに来た・・・!
「ふざけるな運営!! プレイヤーのスキルに干渉するNPCを設計しやがって!!!」
「一体何なのよ!」
「ここって地中なんだよね? 気付かれない筈じゃあ・・・・・?」
「く、来るのですよ!?」
「お姉ちゃん、落ち着いてぇー!!」
だが、ここは影の世界―――闇の中だ! つまりは、あいつは俺の土俵に自ら飛び込んできたってことだ!
「【闇神の加護】―――【ミエザルテ】」
闇の空間の至る所から無数の手が生えて幽鬼を捕えようとする。その手に向かって刀を振るい、飛ぶ斬撃を放ったりして蹴散らすも暗い場所、闇の世界、夜の間ならどこからでも生える黒い手だ。幽鬼の身体から出てきたそれが幽鬼の手足を蛇の如く纏わり締め上げて蓑虫状態に拘束した瞬間。ズババババッ! と刀を振るったわけでもないのに黒い手が斬撃によって切り刻まれて幽鬼が解放された。だが―――。
「ようやく隙を見せたな!」
【次元跳躍】で幽鬼の懐に飛び込むよう転移し、彼女の腕と胸倉を掴んで背負い投げして地面に叩きつけた。そのまま刀を持つ手を捻りあげた。セレーネが狙いやすいように!
「セレーネ! 刀だ!」
「はい!」
狙いを定めてからドンッ! と火縄銃から放たれた弾丸が幽鬼の手の中に握られている刀の柄尻に当たり、その衝撃ですっぽ抜けて無手となった幽鬼にHPが表示された!? 急に暴れ出す幽鬼の身体が霞のように俺から離れて刀の方へと向かって飛ぶ―――が!
「理由は分からないが、もう安らかに眠って成仏しろ! 【相乗効果】! 【悪食】! 【エクスプロージョン】!」
ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!
向かう場所が分れば【次元跳躍】で先回りすることができる。刀の前に立ち突き出した手から即死級のスキルをゼロ距離から食らった幽鬼のHPが一気に全損した。幽鬼の身体も闇に溶け込むように刀を残して消失していく光景を見守り、今度こそ安堵のため息を吐きたいところだが上の二人が心配なので刀と鞘を回収してから地上に戻った矢先―――桜姫の母親の幽鬼が墓石の前に立っていやがった!
「まだいたのです!?」
・・・・・いや、般若の仮面を被ってない。だからといって油断はしないが刀を元にあった場所に置いてもらうのは、避難していた桜姫に頼むか。呼び掛けて桜から出て来てもらい刀を返すようお願いした。
「お母様を倒したの?」
「そう思っていたのだがな。墓の前にいるんだから何とも言えない」
「そう・・・・・」
俺から受け取った刀を墓の前まで運び静かに置いてくれたところで幽鬼が桜姫の頭に手を伸ばした。物理的に触れることができる幽鬼は桜姫の頭を優しい手つきで撫でた後、俺達の方に向けた顔を頭ごと垂らした。謝罪の意を示しているのか分からないまま、突然吹いた風と桜の吹雪で幽鬼の姿が一瞬で見失った。お供えした酒と団子も一緒に。これでようやく終わりかと思ったら、俺達の頭上から桜色の光が六つ落ちてきてスッと胸の中に消えた。
【桜園の誓い】
効果:一日一回の使用で指名した二人のプレイヤー、このスキルの所有者のスキルが使用可能。待機使用時間三日間
アイテム『八百万桜の苗』を獲得しました。
「桜姫、戻るか」
「・・・・・ええ、そうしましょう」
あの刀が手に入るわけでもないし、この満開の桜並木を見れただけでも十分だ。踵を返してこの場から立ち去り、里に戻ったら桜姫と別れて茶屋で小休止する。
「ハーデス、この苗を受け取ってくれる?」
「私よりハーデスの方が適任だからね」
「・・・・・隠れてばかりで何もしなかったから私も受け取って」
「お師匠様、雛菊のもどうぞなのです!」
おい、デジャブだぞこれ。具体的に言えば何時ぞやのユグドラシルの時と同じだぞこれ! まさかまた樹精が出て来ないよな? ええいわかった、ありがたくもらうよ!
「ということは、サリーもスキルが手に入ったのか?」
「お供えをしたからなのかわからないけど、何もしてないのにスキルまで手に入っちゃった。ごめん、明日は全力で頑張るから」
「あまり気に病むな。後者に至っては是非ともそうして欲しい。それで、スキルは何が手に入ったんだ?」
報告会と称してまずはサリーから質問した。
「・・・・・【桜園の誓い】」
「あら、サリーちゃんもなの? 私も同じスキルよ。ハーデスは?」
「同じく【桜園の誓い】だ。セレーネは?」
「えと・・・・・私も同じ【桜園の誓い】。イカルちゃんと雛菊ちゃんは?」
「雛菊も【桜園の誓い】なのです!」
「私もです。皆さんと一緒なんて珍しいですね?」
・・・・・つまりこういうわけなんだな。【桜園の誓い】を使ったら一枠が空いている分、俺のスキルが使い放題な八人のプレイヤーが誕生するわけか。
「それじゃあ、今日はまだしていなかった餓鬼と悪霊と戦いに行ってみるか? 試しにソロで」
「私達が一人でどこまで戦い続けられるか?」
「というか挑戦の意味でだ。それから私のスキルに慣れれば二人はもっと強く、神匠になれる日が更に近くなると思う」
「神匠に・・・・・」
イズとセレーネが互いに顔を見合わせた。
「ハーデス、いま私達が神匠になるために必要なのは強さじゃなくて古代の知識なのだけれど」
「まだだったのか?」
「一応探しているけど手掛かりすら見つからないの。ハーデスなら何か知ってる?」
俺が知ってる・・・・・うーん・・・・・あっ。
「実際に見たことはないが、古代の知識がありそうな場所はあるぞ」
「そこはどこ? 私達でも行けれる?」
「私と一緒ならいける筈だ。ドワルティアの城の図書館にな」
「「ドワルティアの城の図書館・・・・・!」」
何故かテーブルに突っ伏して項垂れる鍛冶師の二人。ああ、知らなかったのと気付かなかったのと、盲点だったのか。
「何か落ち込んでるけど、大丈夫なの?」
「遠回りしすぎた反動の衝撃を受けているだけだ」
「「?」」
イカルと雛菊もキョトンとした表情をするが気にする必要はないからな。おーい、行くぞーと二人に声をかけて冥霊山へと足を運んだ。最初は肩慣らしに採掘場の奥にいる中ボスを倒してから、死の灰の大地でイズとセレーネにはソロではなくパーティで慣れてもらい、それからソロで挑んでもらった。俺もソロでテイムモンスター達とどこまで戦い渡れるか挑戦する。最低でもペインの記録を越えるぐらいは戦い続けてやろう。
【も~もたろうさん♪】彼岸の鬼鳴峠防衛戦を語るスレPART3【ももたろうさん♪】
・情報を共有する語り掲示板です
・掲示板の荒らし、プレイヤーへの悪口を言うプレイヤーは征伐しに行きましょう
・分かった情報は積極的にかつ任意で公表しましょう
515:桃太郎
明日で最終日だな。一体どんな戦いになるのやら
516:桃太郎
外で戦うにしろ大変なのは変わりないがな
517:桃太郎
話題を変えさせてもらうけど、みんなのサーバーの戦績ってどんな感じ? トップだと何か貰えるのかな?
518:桃太郎
称号か金銀のメダルが妥当じゃないか? 今回はどれだけの数を倒したのかわからないようにされているけど、俺はソロよりパーティの方で頑張ることにしたから10位以内にランクインできた
519:桃太郎
一位ではないにしろ≫518が羨ましい。俺は掲示板にも載ってないからランク外なのは間違いない
520:桃太郎
あーあ、明日が終わればリアルの意味で明日が終わったら月曜日で仕事だよーイヤだよー
521:桃太郎
現実の話をヌルッと愚痴るなぁああああああああああああ!!!
522:桃太郎
このままゲームの中に永住してぇ・・・・・目が覚めたらゲームが現実の世界!? ってことにならないものか
523:桃太郎
ラノベを読み過ぎだよキミィー
524:桃太郎
てか、明後日は寅と午と戌の眷属じゃん? 白銀さん達は律儀にその日の曜日ごとで神獣に挑んでいるけど
525:桃太郎
今はなりたい神獣の眷属は特定の曜日になるまで待たずとも眷属になれるようになってるのにな
526:桃太郎
もう残りは三つだけとか。魔王軍の進撃が止められねぇー
527:桃太郎
止められないというか、止めていないというか・・・・・
528:桃太郎
俺、寅の眷属だけど神獣を変えてくれるならクジラがいい
529:桃太郎
何でクジラ。海の魚がどうやって陸に暮らすんだよ。ライオンにしなさいライオンに
530:桃太郎
≫529 人魚に会うために決まってるだろうが(使命感)!!!
531:桃太郎
≫530 お、おぅ・・・・・
532:桃太郎
なるほど? 水中での活動を可能にしたいからか。そもそも人魚なんていたか? 未発見なだけだろうが
533:桃太郎
ほい⊃□
534:桃太郎
いたああああああー!? 岩の上に下半身がお魚で上半身が裸のお姉様達がぁあああああああー!!!
535:桃太郎
ボンッ・キュッ・ボンッ!!!
536:桃太郎
お、お美しぃ・・・・・
537:桃太郎
≫533 白銀さんでもまだ見つけていないモンスターを見つけるとかスゲーなお前!
538:桃太郎
≫533 で、捕まえたのかい?
539:桃太郎
ムリ・・・・・人魚との出会いに騒いじゃって逃げられちゃった。だからギルドのみんなと水中で活動できるスキルを探してたり一生懸命泳げる練習をしているんだ。俺、カナヅチだけど
540:桃太郎
が、頑張れー!!?
541:桃太郎
スケベ心が時に人を熱く動かすとは・・・・・!
542:桃太郎
うーん・・・・・白銀さんから助言、もしくは協力を求めれば? って言わない方がいい感じ?
543:桃太郎
≫542 もう言っているようなものだが?
543:桃太郎
よしわかった! 同じ無所属サーバーにいる俺が白銀さんにこのことを伝えてやろう!
544:桃太郎
なんかいたぁー!
545:桃太郎
え、マジ協力してくれるなら心強いこの上ないぞ≫539。仮に一緒に人魚テイムしに行くことになった感想を言ってくれ
546:桃太郎
みんな・・・・・先にユニークの人魚をテイムして来るよ。指を咥えて俺がマーメイドとツーショットするまで待っていてくれ( ・´ー・`)ドヤァ
547:桃太郎
ず、ずるい・・・!!
548:桃太郎
≫546 俺も人魚に会いたい! あわよくば人魚の住処で永住する!
549:桃太郎
あの、ウンディーネちゃんではダメなの?
550:桃太郎
ウンディーネちゃんはウンディーネちゃんでいいが、やはり男は美女の人魚の方が憧れているんだ。例えるなら女堕天使の魔王のお姉ちゃん大好きっ子のプレイヤーが男の魔王と女の魔王のどっちが好きなのか、言うまでも聞くまでもないだろう?
551:桃太郎
謎の説得力がある、だと?
552:桃太郎
・・・・・俺、女の魔王も好きだけどロリおにゃの子の方が好き(ボソ)
553:桃太郎
何時ぞやの純白のウェディングドレスのお姿をまた見たい
554:桃太郎
≫552~≫553の白銀さんをミックスしたらもっといいのでは?
555:桃太郎
≫554 お前、天才か!? 大人版もロリ版も俺にとってご褒美じゃあああー!!
556:桃太郎
≫543だ! ≫546よ! 白銀さんは場所の情報共有してくれるならイベントの後に協力するってさ! 始まりの町の噴水前で待ってるぜ!
557:桃太郎
するするー! もうフルオープンするよー! 白銀様が協力してくれるなら百人力どころか一騎当千ぐらいに頼もしい! ギルドの仲間にこのことを伝えに行くよ! じゃーな!
558:桃太郎
裏山! 俺も便乗させてもらうぜ!
559:桃太郎
待ってろ人魚! お前の心と血肉と涙は全て俺のもんじゃー!
560:桃太郎
野蛮なプレイヤーは逃げられるのがオチだろうに・・・・・