イベントから戻って来た俺はメールに届いたメッセージと運営からのプレゼントボックスを確認した。レイドボス戦で手に入れた三体の動物の厄払いの小さい像と『鬼哭啾啾の魂』というビー玉ぐらいの大きさの用途不明のアイテムが手に入った。他にも全サーバー順位が1位だったからその追加報酬、これも全サーバ順位で餓鬼と悪霊の討伐数がパーティの方が1位、ソロの方も1位に繰り上がったからその報酬も追加されて色んな称号とアイテムが手に入ったぜ。
称号は『彼岸の鬼鳴峠の英雄達』『悪鬼の征伐者』だ。前者は鬼人族の好感度がアップして会話時に高補正が入り全ステータスが1.5倍も増える。後者はゴーストとアンデッド系のモンスターに対するダメージ補正が入る。
手に入れたアイテムは『力の護符』『守りの護符』『昇華の秘薬』だ。秘薬以外は一度手に入れたから調べるまでもないが・・・・・。
名称:昇華の秘薬
効果:使用したプレイヤーのレベルが10増える
ほう、レベルを上げる秘薬だったのか。これは後で使うとして今は・・・・・。
「白銀さんですね? 自分はローレルって言います! よろしくお願いします!」
イベント中に人魚の情報を持っているプレイヤーから協力を望んでいると知り、俺も人魚の居場所を知りたい利害一致したため受け入れて始まりの町の中央広場の噴水で待っていると、黒髪黒目の剣士が声をかけてきた。
「よろしく。早速どの方角に行ったらいたのか教えてくれ」
世界地図、全ての新大陸を網羅した地図をインベントリから出して広げるとローレルは西側の港町から地図上では数センチ離れたところの海域を指先で大きく円を描いた。そしてもう一枚の地図、水の都アトランティスへの航海地図も出して人魚の出現場所と重なっているか確認した。
「・・・・・ローレル、お前とお前のギルドは運がいいな。人魚がいる海域には【蒼龍の聖剣】がいつか攻略しに行く新大陸の一つ、水の都アトランティスがあるぞ」
「新大陸が!?」
「まず間違いない。でも、問題は海底に沈んでいる点だ。ローレルたちは長時間も水中での活動がまだできないなら海域に連れて行くだけで終わる。ローレル達の【潜水】と【水泳】のスキルの熟練度は?」
「まだ最大レベルまで上げてないです。ここ最近発見したことなので【潜水】と【水泳】のスキルも手に入れたばかりなんですよ」
「じゃあ来週の日曜まで上げれるだけ上げておいてくれ。・・・・・いや待てよ?」
ローレルの頭上に卯表示されている神獣の名前を見て、俺はある事を思いついた。
「やっぱりウンディーネをテイムしなくていい」
「え? なんでですか?」
「運が絡むけど、もしかしたらローレル達が泳ぐために求めるもの全部手に入るかもしれない。一先ず【水泳】と【潜水】のレベルの熟練度を上げることに専念してくれ」
神妙な顔で一先ず分かったと風に首を縦に振ってくれたローレルに感謝の念を抱く。
「人魚をテイムするついでに新大陸の水の都アトランティスに一緒に行かないか? 神獣〈寅〉の眷属のみんなと」
「俺達のギルドだけじゃなくて眷属全員?」
「ああ、さっき言った運が絡むことが上手くいったら俺達についてこられるはずだからな。俺の予想が的中したらその後すぐに誘ってくれ。そうじゃなかったらローレルのギルドだけでいい」
「わかりました」
それから来週の日曜、西の港町で落ち合うことを約束したローレルと別れた。本当に美味くいってほしいところだが・・・・・さて、次はホームに待たせている二人を連れてドワルティアに行く約束を果たさないとな。
―――ドワルティア城
「エレン、久し振りだ」
「久しいな魔王殿! 新しい鉱石でも見つけてくれたのか?」
「見つけたけど、ここにはいないユーミルでも扱えるかどうかわからないぞ」
「・・・・・どんな鉱石だ」
本当にどこから現れるんだって思わされるユーミルの神出鬼没に慣れてしまったな俺も。『瞋恚鉱石』と『八百万の瞋恚鉱石』を見せた途端にユーミルが目元を険しくした。
「・・・・・禍々しい鉱石。この世にこんな鉱石が眠っていたのか」
「鬼人族って知っているか? そいつ等しか扱えない鉱石で主に妖刀を作るんだ」
「・・・・・鬼人族。一度だけ襲われたことがある。逃げるのに精いっぱいだった」
「兄者が逃げるしか選択がなかっただと? そのような種族が同じ地にいるとは知らなかったな」
実際、ドワーフより鬼人族の方が強いと思う。体格も膂力もそうだけど、何より鬼人族は技を持っているからな。
「鬼人族じゃないとこの鉱石から発する負と呪いを受けるらしいが、いるか?」
ユーミルが受け取れるよう差し出してみたが、意外なことにユーミルは首を横に振った。
「・・・・・これだけは、遠慮する」
「あ、あの兄者が鉱石を拒絶した、だと!? この世界が崩壊してでも鉱石を手放すつもりはないだろう兄者が・・・・・し、信じられん!?」
エレンですら愕然とするほどかよ。
「記録に必要だろう?」
「むぅ・・・・・保管しておくと呪われそうで恐ろしい。記録に残したら取りに来てほしい。手元に残したくない」
ドワーフは呪いに恐れるのかい。実際エレンは二つの鉱石を直接手ではなくて火箸で挟んで受け取った。
「それでそこにおる二人をここに連れてどうしたんじゃ?」
「図書館にある本を読ませたくて」
「それならワシの断わりなど気にせずとも好きなだけ利用してくれて構わんぞ。借りたいなら必ず返してもらえるなら持ち出しも許可する」
「ん、一応一言入っておかないとと思ってたが、ありがとうエレン」
「・・・・・新しい鉱石、手に入ったら呼んでくれ」
ユーミルはブレないな・・・・・。
「じゃあ、月で手に入れた鉱石ならいる?」
「・・・・・欲しい」
「待て兄者! 月の鉱石は先に記録してからじゃ!」
「・・・・・俺のだ」
「「・・・・・(睨み合い)」」
おーい、二人の分があるから喧嘩するなー! っと言いながら今にでも喧嘩しそうな二人を仲裁に入って何とか落ち着かせてからそれぞれに月の鉱石を渡した。
「・・・って時間は掛かったけど二人の要望は叶ったぞ」
「「ありがとうハーデス」」
衛兵に案内してくれた図書館の中は石造りで如何にも古代の遺跡の雰囲気を醸し出している。長年誰も立ち入らずとも清掃だけはしっかりされていて埃っぽくはないが、本棚に収まっている数え切れない本は古びているのが当たり前のように多かった。
「この本の中からあるとは思うが、頑張れそう?」
「きっと見つかるはずだから頑張って探してみるわ」
「私達だけじゃあ気付かなかったから助かったよ。ありがとうハーデス。あとは私達で頑張るね」
「ああ、また協力が必要になったらいつでも連絡してくれ」
要望通りになった二人を置いて、最後はペイン達を異界に案内して終わる。
「砂漠の奥にこんな場所があったなんてな」
「ここまでこないと誰も知らないわけだぜ」
「本当に行くわけー? ベヒモス並みの巨体と強いモンスターが水晶モンスターみたいに群れで襲ってくるんでしょ?」
「負けたら次の機会まで強くなってからまた挑むさ」
ジズの姿で乗せた四人を下ろしてから元の姿に戻って渋るフレデリカを諭す。
「一回だけ挑戦しておいて損はないと思うぞ。この三人が死に戻ったら異界から出ればいいだけだ」
「・・・・・それもそうだね」
すんなりと納得したフレデリカだった。まぁ、この三人が無理なら自分も無理なのは当然って認識してるのかもな。
「おいおい、俺達は死に戻りする前提かよ」
「じゃあドラグは一人で三大天災のどれか一体倒せる?」
「ぐっ・・・・・無理だ」
「ま、だとしてもさっさと行ってみようぜ」
「ドレッドの言う通りだ。ハーデス、パーティのリーダーとして入れてくれ」
ほいよっと。パーティに申請して四人を加えたら光る魔方陣の中に入り、異界へ跳んだ。そして異界に踏み込んだ俺達を出迎えたのが、巨大なモンスター達である。少し先に歩いただけで巨壁の上から完全に餌を見る目で睨んでくるモンスター達に歓迎してくれた。
「ようお久し振り! 今回はお友達も連れて来たぞ一緒に遊ぼうぜ!」
「「待て待て!?」」
「倒し甲斐があるね。ハーデス、この世界のモンスターのレベルは?」
「レベルはない! HPとMPにステータスが軽く四桁超えてる高いモンスターばかりうじゃうじゃといる! お前ら頑張れ!」
「・・・・・ハーデスの側から絶対に離れないからね」
やー、フレデリカも四桁のステータスがあるから負けないと思うがな。それはペイン達も同じであって、さっそく戦い始めると。
「ぐはっ!? ・・・・・ダメージ、そんな大したことがねぇ?」
吹っ飛ばされて壁に激突したドラグが身の変化に不思議がったのを、無数の斬撃を飛ばすモンスターの攻撃を躱すドレッドがドラグの疑問を解消する。
「そりゃあ俺達はハーデスの素の防御力の恩恵を受けているんだ。ステータスの補正効果ある称号も持っているんだから簡単に負けることはねぇだろ」
「俺達が与えるダメージは少ないが、ただ一方的にやられるだけはないようだね。それなら思いっきり戦って倒せることができる」
確実にダメージを与えた隙を狙われて何度もダメージを受けるペインでもただでは済まないでいる。それに比べて俺は【闇影の兵士】に【相乗効果】で【悪食】を付与しているから一方的な殲滅を繰り広げている。
「ハーデスの影のモンスター。水晶系のモンスターが少なくない?」
「この世界のモンスターにチェンジしているからな」
「・・・・・プレイヤー同士の戦いに使っちゃダメだからね。主に相手が可哀想な理由で」
「使うとしたら集団戦だけだよ。他のギルド、神獣の眷属のプレイヤー達も強くなっているんだから今使わず何時使うんだって話になる」
フハハハ、倒していく傍からユニーク装備がインベントリに増えていくぜー! と心中で高笑いして異界で大暴れしたその後―――現実の方で事件が起きることをこの時の俺は知る由もなかった。