バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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一時の誘拐事件

 

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!

 

「雄二大変だ! 前衛が突破されそうだよ!」

 

「なんだと、ハーデスと松永どうした!」

 

「持ち堪えてはおるのじゃが、波状攻撃を受けて足止めを食らっておる!」

 

今日も今日とて2-Sに挑まれて2ーFは窮地に陥っていた。いつも通りなら鉄壁の二人が教室の扉を守っていたが今回は違った。雄二は苦く苦しそうな表情を浮かべ命令を出した。

 

「お前ら戦死してでも二人を助けに行け! あの二人がいなければ俺達がS組に勝てる見込みはねぇ!」

 

「ちょっと坂本! ウチらが戦死してもいいってわけ!?」

 

「一度や二度程度の戦死でがたがた文句言うなら、あの二人の代わりにS組全員の足止めできるのか島田」

 

「うっ・・・・・!」

 

「あの二人が俺達の生命線であることを忘れるな。いいか、姫路を中心に全員が特攻隊となってハーデスと松永を助けに行け。それから教室の扉を固く閉ざして戦争時間終了まで籠城する」

 

島田の異論を黙らせる雄二の命令に明久たちは教室の扉を開け放ち、自爆特攻の横槍を入れる。敵味方関係なく自爆する戦場と化した中、ハーデスと燕の脱出の道が出来たことで、助けられた二人は教室に戻り味方を見捨てて扉を固く閉ざした。

 

「今日はちょっと危なかったよん」

 

「・・・・・面倒」

 

表にいる味方は全員戦死したようで、教室の扉を強く叩く音が聞こえる。二人以外のクラスメートが扉を開かせないように抑え込んで抵抗する他所に二人は通路を歩いて教室の机に座っている雄二達のところに戻った。

 

「戻ったか。二人が無事なら戦線は維持できるぜ」

 

「毎日毎日、戦争ばかりする日々でしかも私とハーデス君だけばかり戦わされると面倒くさくなるよん」

 

「相手がSクラスじゃなきゃ他の連中を戦わせるんだがな。Sクラスを真正面から相手にできるのは二人しかいないんだ。俺達のために頑張ってくれ」

 

「・・・・・面倒」

 

「今日一日の辛抱だ。踏ん張ってくれ」

 

その後、2-F対2-Sの戦いは2-Fの勝利で終わったものその日の内に3年F組から戦争を宣戦布告を受けて―――もちろん同意はしなかった。

 

「おい大和~! なんで私からの挑戦を拒むんだ!」

 

「文句は俺じゃなくて坂本に言ってくれ。大体上級生と戦ってもあんまりメリットがないんだよ」

 

「舎弟と私の妹と愉快な仲間達と遊ぶことにお前はメリットを考えてるのか!」

 

「ぎゃあああああ~!!?」

 

不満を抱えて元Sクラスの教室に入り込んで大和を折檻する百代を遠くから眺めるハーデスと燕。風間達は何時もの日常と受け入れて助けようとしない辺り仲がいいのが窺える。

 

「仲良しだねぇ~モモちゃんと直江クン」

 

「・・・・・ライオンかトラにじゃれつかれている飼育員にしか見えないがな」

 

「私にも、じゃれついていいんだよん?」

 

「・・・・・ゲームの中ならいい」

 

「ふふ、帰ってからのお楽しみが出来た♪」

 

柔和に笑みを浮かべる燕と鞄を持ち、帰宅するハーデスに猛獣が狙いを定めた。

 

「おい待て死神。私と勝負しろ。人をライオンだのトラだの言っておいて遊んでくれないのか?」

 

「・・・・・(ダッ!)」

 

「あっ! 逃げ―――速いな!!?」

 

燕をお姫様抱っこして一瞬で教室から抜け出したハーデス。男の腕の中に抱えられて収まってる少女は家にいる恋のライバルに自慢できたことを打ち明ける楽しみも増えたと破顔したその頃ーーー。

 

 

「楓、先に帰るよー」

 

「待ってよー里沙ー!」

 

とある女子高生二人が下校時間となってそれぞれの家に帰宅しようと下駄箱へ足を運び、靴に履き替えて学校を後にする。

 

「ログインしたらどこに行く?」

 

「うーんとねぇ・・・・・」

 

NWOの会話で花を咲かせる二人の女子達が使うキャラクターの名前はメイプルとサリー。黒髪黒目でアホ毛が特徴の小柄な少女と栗色のポニーテールの少女が第二陣のプレイヤーの正体である。今日も夕飯を食べ終えたらNWOにログインして親友とどんな冒険をしようか帰路に着く途中・・・・・二つの鞄が取り残された状態で持ち主が行方不明となった。

 

 

ブーッ! ブーッ! ブーッ!

 

「王様、携帯鳴ってますよー?」

 

「みたいだな」

 

燕の手の中の携帯が一人で浮いて料理中のハーデスの所に移動した。調理を中断して濡れた手を拭いてから蒼天で買った携帯を掴み通話状態にした。

 

「もしもし。 ああ、里沙のお母さん? ・・・・・そうですか。いえ、なにも知りません。・・・・・わかりました。ではどこの県と住所を教えてください。・・・・・ええ、友達がもしものことが遭った時にこの番号を書いた紙を渡したようなものなので。俺の知り合いに人を探すのが得意な人がいますのでその人に・・・・・」

 

何やら、ただ事ではない会話が聞こえて三人が自然とハーデスの傍に集まった。また一人で浮いてハーデスの手元に移動したペンと紙が意思を持っているかのようにペンが紙に文字を書き始め・・・・・。

 

「はい、直ぐにそちらに伺いますますので、その間に何か新しいことがわかったら連絡してください。はい、失礼します」

 

携帯の通信を切って六つの視線を向けてくる女性達と向き合う。

 

「誰からだったの?」

 

「サリーの母親だ」

 

「サリーのお母さん? なんで王様の携帯番号を知ってるの?」

 

「現実のクリムにも俺の番号を渡してる。念のために家族にもな。二人自身か二人の家族の身に何か遭った時は俺に電話しろと言っておいたんだが・・・・・サリーどころかメイプルまで行方不明何だとよ。二人の学生鞄だけが路上に残ったまんまでな」

 

「「「っ!?」」」

 

誰かに連れ去られた、つまり誘拐―――と三人の頭の中で過る事件。よもやゲームの仲間がそんな目に遭うなんて思いもしなかった三人は、二人の安否を気にせずにはいられないが蒼天の王はそれどころではない。

 

「そう言うことだから俺自身が二人を探すために動く」

 

「直ぐに見つけられるのですか王様?」

 

「当たり前だ燕。俺は出来ないことは言わない主義だ。今日中に見つけ出す」

 

「気を付けてね」

 

「・・・・・無茶しないでよ」

 

瑠美と璃香からの言葉に二人の頭に手を置いて撫でた後、ハーデスはサリーが暮らしてる他県の住所の住宅の下へと蒼夜の下をすさまじい勢いで飛んだ。

 

 

誰も寄り付かない山奥の場所。人口は百人も満たない限界集落の家のひとつにもライフラインは繋がっていて、そこには十人程の青年から中年男性が集まっていた。

 

「よっしゃー! 大成功だぜー!」

 

「運がいいよな俺達! 何せ【蒼龍の双剣】のプレイヤーを偶然見つけてしまってよー!」

 

「大金を手に入れられるチャンスを逃してたまるかってんだ!」

 

「身代金をたんまりいただくぜ!」

 

「あの白銀の魔王からたんまりと金をもらってるはずだからな。十億は絶対にあるって!」

 

「二人あわせて二十億! 一人頭二億だかんな!」

 

「二億もありゃあ海外に逃げて遊んで暮らせるよ!」

 

「ギャハハハ! 酒がうめー!」

 

木造の家の広い居間は、酒が空になった瓶や缶、食い散らかした袋やプラスティック、洗濯がされてない衣類、まったく掃除されておらず溜まっているゴミやパンパンに詰まったゴミ袋。清潔感とは無縁な部屋の中で酒盛りしているそんな彼等から離れた壁際に、天井の柱と縄で繋げられて立たされてる白峯里沙と本条楓がいた。しかし、後のお楽しみをしようと目論んでいる様子で制服を剥ぎ取って裸にされていた。当然意識ある楓は涙目でこれから無理矢理されてしまう恐怖と怯えていて、里沙は何とか手首を縛ってる縄をほどこうとしている。

 

「おーおー、必死に抵抗してんなーサリーちゃん。だが無駄だ。ゲームのようになんとか出来ないのが現実だぜ?」

 

「後で二人のお腹に俺達の種をしこたま注いでやっから楽しみにしておけよ」

 

「もちろん、直ぐに気持ちよくなれるお注射をしてなー?」

 

この集団はこの手の犯罪に慣れている。最後まで捕まらず失踪した人間は最終的に行方不明扱いされて最後は誰も探さなくなる。ほとぼり覚めた頃にまた自分達の快楽と欲望を満たす玩具を探しては拉致し、飽きたら外国に売り飛ばすという手口を何度もしてきた男達の魔の手に二人に伸びてしまったのだ。

 

 

 

時間を掛けていられる状況ではない。最悪な展開が起きてもおかしくないことをハーデスは考えて訊き出した二人が住む県内に転移した後、携帯のマップを確認しながら音速を越えてまで里沙の家まで飛び、やっと彼女の家に辿り着いた。名前のプレートを確認してから電話を掛け、理沙の鞄を持って玄関に出るように伝えてから一分ほどで家の扉が開き、男性と理沙に似た女性が出てきた。

 

「あ、あなたが・・・・・?」

 

「疑うのは無理はないが時間がない。悪いがその鞄を借りさせてほしい。彼女の居場所を突き止める目印の役割を果たすものだから」

 

「本当に娘を見つけてくださるのですか・・・・・?」

 

「必ずだ。蒼天の王の名に懸けて誓おう」

 

「「っ!!?」」

 

おっかなびっくりをする両親を無視し、女性から鞄を掴み取り足元に魔方陣を展開した。そこに置いた理沙の鞄が光に包まれて一人で勝手にどこかへと飛んで行ってしまった。遅れてその光を追いかけるハーデスに理沙の両親はポカーンと間抜けな表情で見送ってた。

 

「理沙は何時の間に蒼天の王様と交流していたんだ・・・・・?」

 

「わからないけれど、あの方に祈るしかないわ・・・・・」

 

と、藁に縋る思いで娘の理沙の無事を祈る両親を露知らずな理沙は、大量のアルコールを摂取して顔が赤い男達に迫れていた。楓の横でゲスでいやらしい笑みを浮かべ汚らしい笑い声を漏らす男達で視界がいっぱいの理沙は腕に注射の針を刺されても気丈に睨み返した。

 

「早くしろよ。もう我慢できねぇんだからよ」

 

「焦るな焦るな。待った分だけ楽しくなるんだからよ」

 

弄ぶように二人の反応を見守るつもりの男達だったが、辛抱が堪らんと中年の男性が理沙に顔を近づけた。

 

「げへへ・・・・・サリーちゃんのファーストキスをおじさんが貰うぜぇ?」

 

「っ・・・・・!」

 

「そっちがその気なら俺もメイプルのファーストキスもらおーっと」

 

「い、いやぁー!」

 

抵抗が出来ない二人の初めてを無理矢理奪わんとする男達との距離が目と鼻の先まで近づいて来た。二人を助ける、守る者はこの場にいない、現れないと高を括り嘲笑を隠さず漏らす男達に―――光が突っ込んできた。

 

「うん? ぶべらっ!?」

 

理沙にキスをしようとしていた男の横から光が飛んで来てぶつかった男を吹っ飛ばして楓にのしかかってた男も巻き込んで倒れた。一同は、何が起きたのかすぐに理解できず唖然としていると理沙の視界に四角い物が落ちているのを映り込んだ。

 

「私の鞄・・・・・?」

 

ここへ拉致される前、路上に捨てられた鞄がどうしてここに? と心底不思議がった理沙。

 

「ぐっ、何だよ・・・・・! これからお楽しみだってのに誰が邪魔した! あ”あ”!?」

 

吹っ飛ばされた男が怒り心頭で仲間を睨み回すが、誰一人としてそんなことしていないと否定的に首を横に振った直後。

 

「―――俺だよ」

 

男の声が聞こえた直後。激しい衝撃で部屋が揺れるほど屋根が光に呑み込まれて消失し、満月の光が電気の代わりに一同を照らした。絶句する面々の視界には満月をバックにして浮いている黒いコートを着た男がいた。

 

「・・・・・」

 

腕を組んで眼下にいる一同を見渡し、楓と理沙の前に降り立つ男の背は―――。

 

「ハーデス、さん・・・・・?」

 

「ハーデス・・・・・?」

 

NWO自他共に認める最強のプレイヤーがゲームから飛び出したような出で立ちで二人の前に立ち背中を見せつけた。対して男達は突然の乱入者に向けて、刃物や拳銃を片手に持って攻撃態勢に入った。

 

「どうやってここまで来たか分からねぇが、バレた以上はテメェを殺すしかねぇな!」

 

「リアルで白銀の魔王のコスプレをしてるバカがいるなんてな!」

 

「今俺達がいるのはゲームじゃねぇ、ここは現実だ! ゲームのようにご自慢の防御力も現実じゃあこの銃の―――」

 

刹那―――。

 

「黙れ」

 

一人の男の懐に音もなく潜り込んで、抉り込むように拳を腹部に突き刺した男の身体がくの字となって、床から足が浮くほど離れた状態で壁を突き破るほど殴り飛ばされた。

 

「っっっ・・・・・!!?」

 

「て、てめ―――」

 

「黙れと言った。耳障りなんだよ」

 

突き刺してくる刃物を突き出した掌で粉砕、そのまま男の顔面を掴むと床に叩きつけて首まで埋めた。

 

「うらあああああああ!」

 

拳銃を持つ男が至近距離で発砲した。普通の人間なら当たり所が悪ければ即死であるもの、黒衣の男の身体に銃弾が当たっても鋼とぶつかったような音を発して弾が床に落ちる。

 

「・・・・・」

 

「嘘だろ!? 当たってんのに、当たっているのに何で死なねぇ!?」

 

馬鹿みたいに撃ちまくる男に銃弾を受けながら近づく黒衣の男が、男から銃を奪い引き金を引いた。狙った場所は男の股間。

 

「ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

 

絶叫しながら体を丸めて蹲る男の後頭部にかかと落とし。床板を破るほど沈めたら瞬間移動して、別の男の股間もまた潰す勢いで蹴り上げ天井にぶつけた。

 

「お、おい動くなよ!?」

 

「・・・・・」

 

「動くなつってんだろテメェ!?」

 

「人質が見えないのかよ!」

 

二人が楓と理沙の後ろに回り、ナイフを持って黒衣の男に脅しをかけるがそんな手は通用しないと他の男達の粛清を続ける黒衣の男。結局最後は脅す二人のみとなってしまって酷く焦る二人の男。

 

「言っておくが、その二人を殺した後。いったいどうやって俺から逃げるつもりなんだ?」

 

「「・・・・・っ!?」」

 

「だがまぁ、その二人に掠り傷でもつけてみろよ。―――一瞬で死ぬよりも長い激痛の中で死なせてやるからな」

 

顔を隠すフードの奥で猛禽類のような垂直のスリット状の瞳が鋭い眼光を放ち、今まで感じたことがないとてつもないプレッシャー・・・・・生物として死、目の前の捕食者から逃げろと二人の本能が激しく警告する。

 

「・・・・・いや、どうやらもう掠り傷をつけていたようだな。お前ら、死ぬ覚悟できているんだろうな」

 

「へぁ!? な、何言ってんだ!? 俺達はこいつらを傷つけた覚えはないぞ!」

 

「二人の腕に無数の血が滲んでいる痕跡があるのにか? 二人に何を注入したかわからないが、注射の類の針を刺しただろう」

 

「「―――!!!」」

 

ギクッッッ!!! と身体を硬直してしまった。さっき仲間が何度も少女達に強力な媚薬を注射して体内に入れたばかりだ。その跡が黒衣の男の言葉通りまだ残っているので隠しようがなかった。

 

「お前らが直接していないにしても、誘拐した上に心と体をボロボロにした後、二人を闇に葬るつもりだったんだろう。これまで何十人何百人も女達をそうしたように」

 

何を言っているんだこの男は? と怪訝と焦燥に駆られて必死に二人から離れようとせず少しでも自分達の優位になれるよう脅迫を続けようとしたが。

 

「お前らは気付いていない。自分達が憎悪と恨みを抱いた女の霊達に囲まれている時点でもう手遅れだぞ」

 

「れ、霊だと・・・・・? そんなもの、存在する筈がないだろ!」

 

「目には見えていないだけだ。見せてやるよ」

 

軽くパチンと指を弾いた瞬間。世界が一変した。

 

《ニ・・・・イ・・・・・》

 

《ユ・・・・・サ・・・・・》

 

《コ・・・・・ス・・・・・》

 

急に見えるようになった黒い靄を纏う女達。眼窩にあるはずの目玉がなく赤い血を流す女が、充血したように深い血の色をした目の女が、人の原型が保っておらず怪異と化した女が、元々美しかった顔だったろうが歪みに歪んで醜くなっている女が、他にも色んな女の霊達が・・・・・。

 

《ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ》

 

《ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ》

 

《コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス》

 

《シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ》

 

《ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”》

 

それぞれ男達を囲んで呪詛の如く同じ言葉を繰り返していた。そんな女の霊達と目が合った二人は正気を保っていられるはずがなく涙目で絶叫を上げた。

 

「もうそいつ等を見えてしまった以上、お前達は絶対に逃げられない。寺に駆けこもうが霊媒師に除霊してもらうことも祓ってもらおうと、怨念が強すぎてできないと言われるのがオチだろうよ」

 

粛々と気絶した男達を縄で縛りあげながら天井に吊り上げていく黒衣の男に正気じゃないと男が唾を吐きながら叫び散らす。

 

「お、お前はなんでそんな平気でいられるんだよ!?」

 

「女の霊の対象は俺じゃなくてお前らだし、寧ろ俺が女の霊達より格上だから襲われないのもあるな」

 

「なんだよ格上って・・・・・そ、それより、俺達を助けてくれよ! 助けてくれたら金とかやるからさ!」

 

「いらねーよ。女を食い物にして得た金なんざ。そこの人達、二人から解放してやってくれないか?」

 

黒衣の男がそう言いだすと女の霊達が動き出した。楓と理沙の首に回していた腕を掴みあっさりと引き剥がし、男達を思いっきり壁に吹き飛ばした。少女達は何も見えていないため、何が何だか理解できないでいる。

 

「うわああああああああああ!?」

 

「は、放せ! 放してくれ!」

 

捕まった男達は黒衣の男のところに引きずられて、他の男達のように天井に吊るされた。最後に楓と理沙の縄を切って優しく抱擁を交わし自分の服を着るように促した後、女の霊達へ一言述べた。

 

「ありがとう。後日みんなを供養する墓を建てる。出来れば成仏して、来世は幸せな人生を過ごせるといいがな」

 

《ア・・・・・ア・・・・・リリリリリリ、ガ・・・・・・オオオオオ》

 

「ハハ、霊にお礼を言われる日が来るとは思わなかったよ」

 

制服姿になった二人と忌まわしき家を後にした途端。二人の男の苦痛の絶叫が聞こえだしても、黒衣の男と楓と理沙は無言で振り返らず暗い夜道を歩いた。

 

「・・・・・ねぇ、ハーデス、なんだよね? どうやって私達の居場所を探せたの?」

 

「それは内緒だ。ごまかしの言葉を言うなら・・・・・NWOでは俺と結婚しているから愛の力だと言わせてもらうよ」

 

「「あ、愛ッ・・・・・」」

 

カァァァァァと初心な二人は顔を真っ赤にし、携帯を取り出してどこかへ連絡を入れる黒衣の男ハーデス。

 

「もしもし、はい・・・・・ええ、今助け出したところです。今代わります。サリー、お前のお母さんだ」

 

「・・・・・そっか、お母さん。私が言ったことを忘れずに覚えてくれたんだ」

 

「俺が念のためだとお前とクリムに渡した電話番号のことを、律儀に家族にも伝えてたから今のお前とメイプルがいるんだ」

 

サリーのお母さんは誠実な人だよ、とハーデスは言いながら携帯を渡した。もう二度と会えないと思った母親と話をして、次にメイプルの両親も一緒にいるのかメイプルにも携帯が渡り、彼女も涙を浮かべて話をする。

 

「拉致られた理由は何だったんだ?」

 

「ハーデスから大量に貰っているお金だよ」

 

「・・・・・あいつら、どうやって引き下ろすつもりだったんだ?」

 

「何も言っていなかったけど私の家族にゲームにログインさせて、私のキャラでリアルの銀行に引き下ろさせるつもりだったと思う」

 

「通帳は?」

 

「無いよ」

 

無いなら作るにしても時間は掛かる。その分の時間の間は二人を凌辱していたに違いなく、やはりあいつ等を堀の中の牢屋に入れるのは生温い処置だなと嘆息するハーデス。

 

「ハーデスさん、理沙のお母さんからです」

 

「ん、もしもし、代わりました・・・・・ええ、これからすぐに理沙さんのご自宅にお二人を送り届けます。既に警察の方にも連絡しているかと思われますが、俺のことは明かさず謎の人物が娘さんを助けたことにしてください。その方が色々と都合がいいのでね。はい、そうしてください。それじゃあ」

 

通信を遮断して携帯をポケットの中に仕舞うハーデスを見上げる楓と理沙。

 

「メイプルとサリー、少しだけ目を閉じてろ」

 

「こうですか?」

 

「・・・・・閉じたよ」

 

「ああ、俺がいいと言うまでそのまま閉じてくれ」

 

素直にハーデスの言う通りに閉じる二人を胸の中に抱きしめて、足元に展開した魔方陣の光に包まれる三人。数秒後にハーデスから目を開けるように促すと、楓と理沙がよく見知った家の前にいることに気付き、目を閉じた間にどうやって移動したのかと唖然する。ハーデスがインターホンを押すと家の中からバタバタと足音が聞こえ、扉が勢いよく開いて玄関前に無事な姿の娘達が立っていて両親は安堵で涙を流しながら「理沙!」「楓!」と我が子に駆け寄り抱きしめた。

 

「誘拐犯に薬を打たれた跡がある。念のために病院に診てもらえ」

 

「わかりました。娘を助けていただきありがとうございます。・・・その誘拐犯は捕まっているのでしょうか」

 

「それを知る必要はない。もう解決したことだからな」

 

「・・・・・はい」

 

娘を救ってくれた恩人が言う以上、従う他ない男は追求しない姿勢を一瞥して踵返して帰ろうとするハーデスを呼び止める声。

 

「ハーデスさん、助けてくれてありがとうございました!」

 

「ありがとうハーデス。いつか必ずお礼するからね」

 

「当然のことをしたまでだ。またゲームの中で会おうなメイプル、サリー」

 

と、ゲームキャラクターの名前で呼ぶと呼び直すように自分の本当の名前を打ち明けた。

 

「私、本条楓だよ!」

 

「もう知ってるだろうけど、名前は白峯理沙だから」

 

「・・・・・そうか。なら次はプライベートで会う時にそう呼ぶよ」

 

フードを外して中に隠れていた長い真紅の髪を表に晒すハーデス。金と黒のオッドアイの瞳を楓と理沙に向ける。

 

「この蒼天の王が守った以上、二人を何人たりとも触れさせるつもりは毛頭もないからな」

 

「「―――――」」

 

「いつか、蒼天に来い歓迎してやるぜ楓と理沙」

 

背中から金色の六対十二枚の天使の翼を生やし、一同の前で光の軌跡を残しながら月に向かって飛んで行った。

 

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさい。二人とも助けられました?」

 

「当然だ。俺を誰だと思ってる」

 

「そうなのね。よかったー。心配でゲームできなかったわ」

 

「本当だよ。でも、二人もしばらくログインできないんじゃない?」

 

「そうだな。病院に身体検査、警察の事情聴取を受けるかもしれないから早くて三日か五日じゃないか」

 

「それで、二人を誘拐した犯人ってのは?」

 

「NWOのプレイヤーだった。二人が持っている大金をリアルの通帳に下ろさせる算段だったようだが、今頃はもう死んでいるんじゃないか」

 

「・・・・・何したの」

 

「俺が、じゃないよ璃香。メイプルとサリーのように他にも数多の女性が拉致・監禁・誘拐され、闇に葬られて悪霊となっていたんだ。だから今頃そいつ等に呪われて祟られている筈だろうってことだ」

 

「ハーデスって、霊感があるの? 幽霊が見えるの?」

 

「普通に見えるし。何なら三人に寄り添ってる霊も見えてるぞ」

 

「・・・・・怖い?」

 

璃香の質問に首を横に振る。燕には戦国時代の甲冑を着た武士、璃香には雀みたいな小さい鳥が、瑠海には二人の男女・・・・・おそらく彼女の両親の霊だろうと予測して敢えて言わないハーデスは明日に備えてログインせず就寝についた。

 

 

後日。山奥の一軒家の前にいつの間にか立派な真っ白な慰霊碑とお供え物が用意されていて、連絡を受けた警察が来て家宅捜査したところ、天井に吊るされた十人ほどの裸の男達が惨たらしい姿で死んでいるのを腰を抜かした警官が発見した。生気を吸われたかのようにミイラとなってたり、身体中が引っ掻き傷だらけでだったり、腹部を引き裂かれて臓器だけがなくなってたり、皮という皮が剥がされてたり―――そして一番の共通点があった。十人の足元に切断された首が置かれていて、どれもこれも恐怖と絶望に壮絶な苦痛で歪んだままであった。

 

これだけでも大変な事件であるのにも関わらず、さらにその家から周辺、数軒の家を除いて大勢の警察官が訪れたら、その家に住まう者達まで酷似した死に方をしていたのだった。警察はさらに調査していくうちに死んだ者達は組織的な犯罪者集団であることが判明、中には隠されていた大量の人骨も発見して組織と繋がっているバックの者達は自分達では手が終えない巨大な組織なのがいると明らかで、警察は調査を打ち切りこの事件はなかったことにして闇に葬ったのだったが・・・・・。

 

「クラウディオ、これに興味はないか」

 

「御拝見いたします・・・・・ふむ、これは・・・・・」

 

「個人的に調べた結果だがそこの近くには九鬼家財閥の会社もあったよな。後顧の憂いを除いておくべきじゃないか?」

 

「ありがとうございます。さっそくヒュームと向かい更なる調査した上で処理します。しかしどうしてこの情報をあなたが?」

 

「なに、友達を救った際に知った情報だ。それじゃ頼んだ」

 

警察が出来ないことを秘密裏に蒼天の王が九鬼家に情報をリークして全て処理させたのだった。

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