バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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水の都アトランティス帝国

 

 

西方面の港町。そこで水瓏を停泊させて船に乗り込む【蒼龍の聖剣】を目撃して見守るプレイヤーが朝から多くログインしていた。その中には神獣〈鯨〉になった眷族プレイヤー達が勢揃いしていた。ただ人としてではなくて鯨に変身した姿で俺達の出航を待っていた。さらに隠したつもりはないが漏れた情報を得たからか、俺達の行動に便乗しようと他のギルドのプレイヤーの船まで港町から少し離れた位置で停泊している。その光景は俺達の動きを窺っているのは明らかだ。

 

「クジラに変身できるプレイヤーか。今後、俺達にとって厄介になるんじゃないか?」

 

「海の中だったら確かに驚異的になるだろうが、陸の上、空の上にいることができないと思うぞ」

 

「うわー、クジラがすげぇいっぱいだな」

 

「あ、誰かが鯨の上に乗って潮吹きで吹っ飛ばされたぞ。ちょっと楽しそう・・・・・」

 

「でもさ、何であんなにいてこれから白銀さん達とどこかへ行こうとしているんだ?」

 

「そりゃお前、新大陸か新発見した何かを便乗する為だろ」

 

「へへへ、これから俺達もそうするんだけどなー?」

 

何も知らない、知っているプレイヤーの数多の視線を受けながらも出航した。水の都アトランティスへ目指す俺達を囲むように一緒に進むクジラと化したプレイヤー達。そして便乗勢のプレイヤー達。

 

「海の中に新大陸かあるなんてね。普通に見つからない場所だよ」

 

「本当それな。地図がないと探しようがないだろう」

 

「でも、アトランティスって実際どんな都だったのハーデス?」

 

「いやいや、流石に知らないだろ? な、ハーデス」

 

そうだなぁ・・・・・。

 

「ネットの情報だと水の都アトランティスって、大西洋にあったとされる巨大な島に帝国があったらしく、アトランティス島は資源の宝庫で、必要な物質の大半を島で補うことができ、農産物も豊富で、畜産も盛んだった上に、そこにあった帝国は、大西洋を中心に地中海西部を含んだ広大な領土を支配していたそうだ」

 

「お、おう・・・・・そうなんだ・・・・・」

 

「そんで、帝国の王家って海の神ポセイドンの末裔だったようだ」

 

「ハーデスさん、物知りなんですね。すごーい!」

 

「いや、ネットでの情報だからなメイプル」

 

「じゃあ、どうしてアトランティスは沈んだのかも情報としてある?」

 

そりゃあー人間の性としか言えないだろうな。

 

「ポセイドンの子孫と人間が混じるにつれ、神性は失われていき、アトランティス人は物質主義に走り、さらなる富と領土を求め、暮らしは荒廃してしまって、これを見た北欧の主神ゼウスは神々を集め、アトランティスにどのような罰を下すか話し合い、周囲の国々への侵略侵攻、征服戦争をする帝国の敗北と島の破壊を決めたからだ。まぁー簡単に言えば、自分達の欲望が神様達の怒りを買ってしまったからバチが当たったってことだ」

 

「「「なるほどー」」」

 

ちなみにだが、俺の後ろに回転する椅子とテーブルを用意して座ってるいつものイッチョウとペイン一行、イカルとイズとセレーネにメイプルとサリーだけでなく、たまたま西方面を攻略中だった雛菊とリコリス、晴れて【蒼龍の聖剣】の加わることに決めてくれたクリムとフレイとフレイヤまで居座っている。

 

「・・・・・てか、何でみんな揃ってここに落ち着いてんの」

 

「ハーデスさんと居たいからです!」

 

「私もー」

 

「もういつものことじゃん?」

 

「だな。お前といると必ず何かが起きるし、その対処するなら一緒にいた方がいいだろ」

 

ほーう、そう言うんだドラグさんよ。

 

「なら、もしもの事があったら、プレイヤーの十倍分の働きをして対処をお願いしようかなー」

 

「おい、十倍は勘弁してくれ。てか、沈んだ大陸に俺達が戦うモンスターなんているのかよ?」

 

と、言うドラグに向かって言葉が向けられた。

 

「いるでしょ」

 

「絶対にいるね」

 

「新大陸で戦わなかったことなんて一度もないからね」

 

「モンスターとNPCの特徴は十中八九、魚系だな。人魚とか魚人とか」

 

「とにかく、用心に越したことじゃないってことだね」

 

そう言うことだ。揃えたアトランティスへの海図通りに進んでいるが、もうそろそろ着くはず・・・・・お、この辺りだな。他のプレイヤーには悪いが、海中まで来られないのは自分達の準備不足だと諦めてほしい。こっちは【潜水】スキルがあるから水瓏は海中に潜ることができるもんで―――。

 

ゴロゴロ・・・・・ッッッ!!!

 

突如、快晴だった空が嵐の前触れと言わんばかりに黒雲が発生した。俺達がいる周辺は夜の帳が降りて如何にもこれから何かが起きるという予兆が起き出した。黒雲から稲妻の雷鳴と稲光が落ちてきて、波も荒々しくなっては船に乗っている俺達を激しく揺さぶる。鯨のプレイヤー達も多少なりも影響を受けて入るっぽいな。

 

「うわわっ!? どうなってるのー!?」

 

「うーん、この後俺達はどうなると思うか言い合ってみようか」

 

後ろに振り返って凄く落ち着いているイッチョウ達に質問したところ。

 

「大渦が発生して呑み込まれるよん」

 

「大津波に呑み込まれる」

 

「大雨が降るのです!」

 

「え、えーと・・・・・」

 

おっと、もうタイムアップのようだ。正解は・・・・・。

 

―――最初に火山の大噴火の如く莫大な海水が天を衝く勢いで水柱となって立ち昇り、俺達全員その柱に沿うように上昇していくのだった。下から逆らえない、抗えない押し上げる水圧にジェットコースターに乗った気分で移動させられる。

 

「ど、どうなってんのー!?」

 

「水流に押し上げられている! 目指す海底じゃなくて空に打ち上げられてる感じがする!」

 

「ね、ねぇ! それっていつか落っこちちゃうんじゃない!?」

 

「・・・・・気付いてしまわれたか。大丈夫、みんなで死に戻りするだけだから怖くはないぞー。【蒼龍の聖剣】以外のギルドの話だがな」

 

「ああ・・・・・可哀想に・・・・・ハーデス君の口車に乗ったばかりに・・・・・」

 

オイコラ、人の所為にしていないかイッチョウさんよ。

 

なお【蒼龍の聖剣】以外のプレイヤー達からの視線だと。アトランティスに着くまで神獣〈鯨〉の全プレイヤーに配信動画をしてもらうようお願いしたからすぐに船の外の違う視点が確認できる。当然ながら他のプレイヤーの声も聞こえるわけで、

 

『うおおおー!? 海水で出来たジェットコースターに乗ってる気分ー!』

 

『なんだこれ楽しいー!』

 

『わははは! 配信動画を見てるみんな、いま俺達は空に向かって噴火してできた水柱の海流に乗って移動してるぜー!』

 

『鯨の姿でこんな体験をするなんて夢にも思わなかったぜー!!』

 

神獣〈鯨〉のプレイヤー達が水瓏と共に海流に乗って上へと目指していた。彼らの背後の数多のギルドの船も続いて追ってきている。

 

「でもこれ、どこまで続くの?」

 

「それは運営のみ知ることだ」

 

―――と言ってたら不意に浮遊感が覚えた次の瞬間。

 

「あ・・・・・大渦に飲み込まれる」

 

「「「「え゛」」」」

 

また船全体に衝撃が襲っただけでなく、艦橋と神獣〈鯨〉の配信動画から見える範囲で多数のクジラと船が俺達と一緒に逆らえない引力に渦の中心に引き寄せられると、今度は水柱の内側の海流に乗って下へと滑り落ちていくのだった。そのまま俺達は海の深淵へと誘われるように突き進んだ。

 

 

〈一定数以上のプレイヤーが隠しレジェンドエリア『伝説の大陸 深淵のアトランティス帝国』を発見しました〉

 

〈この瞬間から全てのプレイヤーはクエストが終わるまでの間ログイン&ログアウトが可能にしつつ『深淵のアトランティス帝国』から脱出不可能の強制的な拘束がされます〉

 

〈全てのプレイヤーにエキストラクエスト『一週間の生存』が発生します〉

 

 

そんなアナウンスを聞きつつ、螺旋を描きながら海底の中に沈んでいるバウムクーヘンのように何重、幾重の層が石造りの防壁の役割を果たしているその周辺には海の中だというのに森が群生している。全体的に石造りで建造された国とその中心に伸びる長大な橋が四方にあり各町がある層と繋がっている―――そんな大陸を包み込んでいるシャボン玉のような透明な膜に俺達は突っ込む形になって・・・・・。一瞬の抵抗の後にスポーンと【蒼龍の聖剣】と他のギルドの数々の船が散らばるように落ちて行った。

 

「ぐっ!」

 

「きゃ!」

 

「いでっ!」

 

シートベルトしていたから全身に衝撃が襲われた程度で痛みはないはずなペイン達から悲鳴が聞こえてきた。

 

「一応聞くけど、大丈夫か?」

 

「なんとか、ね」

 

「お尻が痛いです・・・・・」

 

「シートベルトがなかったらもっと痛い目に遭ってたねこれ」

 

「他のギルドはシートベルトなんて用意してねぇだろうからそうなっているだろうよ」

 

そう思うと鯨に変身したプレイヤー達はあちこちにその身一つで落ちてしまったんだからダメージは相当受けたかもしれないと心中で合掌した後、艦橋から出ながら空高く浮き上がる。深海に沈んだ大陸であるから何も見えないほど真っ暗、マップも見る限り俺達がいるところ以外周囲は完全に闇で包まれて覆われている。これは厄介だな・・・・・。

 

「ハーデス君、外はどう?」

 

降りる俺にイッチョウが話しかけてきた。

 

「どこもかしこもマップを見ながら進もうとしても闇しか見えない。進んでマップを開拓するしかなさそうだな」

 

「だとしたら一人で行くのは危ないかな?」

 

「闇の向こうからモンスターが襲い掛かってくるならな」

 

艦橋の中に設けられた通信用の水晶に触れながら全員に告げる。

 

「全員聞け。新大陸アトランティスに着いたが上に飛ぼうとしてもマップでも闇で真っ暗だ。多分だが移動しながら開拓しなくちゃならない設定かもしれない。よって今回だけは全員パーティかチームを組んで行動してくれ。レベルが判らないモンスターが襲い掛かってくる可能性もある。そういうことだから全員、マップを開拓しながら十分気を付けて自由に行動してくれ」

 

言いたい事を言ったのでこれからは俺も自由行動をする。そのつもりだったんだが。

 

「このまんまのメンバーでチーム組むなんて考えなかったぞ」

 

「【蒼龍の聖剣】の主力オールスターだね」

 

「わ、私も主力なの!?」

 

「ヒーラーがいないギルドだからねー。期待してるよ」

 

「よかったなフレイヤ 責任重大だ」

 

「頑張れフレイヤ」

 

「ヒナギクも頑張るのです!」

 

「わ、私もなの・・・・・!」

 

第三陣のプレイヤーもいるから必然的にこうなるのも自然だったか。しかしどこもかしこも町だらけで損傷していない建物はないのが多いな。マップの方も歩くだけで暗闇が晴れて地図が見やすくなってる。

 

「これって飛んでマップを埋めることできたら直ぐに終わるのにねぇ?」

 

「運営はプレイヤーを楽させてくれないんだ」

 

地上から離れた移動でマップを開拓しようならば暗闇は晴れないまま進むことできる。が、マップを開拓するのがクエストなので地道に歩くしかない。

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