古びた建物の間に歩いて黒く染まったマップを開拓していきながら警戒していたが、モンスターと遭遇する愚か姿形すら見当たらない。そうすぐに出会えるはずがないと思っていたが適当に歩いて曲がり角に進んだ先にソレはいた。
体格は人型であるものの、身体は魚っぽい尻尾を生やし鱗に覆われている。半魚人かもしれないが全身がゾンビのように腐っているから改めて警戒せずにはいられない。―――あ、こっちに気付いた。なら鑑定させてもらう・・・・・ほう?
「珍しいな。レベルとステータスが表示されないぞ」
「つまり正確な強さが分らないまま倒せってこと?」
「モンスターの情報を閲覧できないプレイヤーにとっちゃあいつもと変わらねぇよ」
「ああ、だからって技までわからないわけじゃないぞ」
ギョエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!
「あんな感じで一つしかない【魚群呼集】ってスキルを使って仲間を呼び出す」
ドドドドドドドドド・・・・・ッ!!!
「数の暴力でプレイヤーを押し潰そうって魂胆が見え見えだよ」
地響きと一緒に聞こえてきた音で川の水の氾濫を彷彿させる量のモンスターが押し寄せて来る―――そう俺達は予測していた。だが実際は建物に挟まりながら迫ってくる三つ首のゾンビ鮫に俺達は言葉を失った。
「どの辺が魚群なんだァー!!! 【相乗効果】【悪食】【エクスプロージョン】!!」
噛みつかれる直前に至近距離での大爆発のダメージを与えた。モロに食らった三つ首ゾンビの鮫はその余波で数え切れない小さな鮫に散らばって俺達に牙を剥いて襲い掛かってきた!!
「ええええええええええっ!? そういう魚群っ!!? ス〇ミーかよ!! 【相乗効果】! 【咆哮】【パラライズシャウト】!!」
「【勇者の七閃・光爆】!」
「【魔風刃】!」
「【破壊の巨刃】!」
「【多重影分身】!」
「「【機械神】!」」
と―――全員で鮫の魚群を一斉掃射出来得るだろうスキルを発動して攻撃した。オーバーキルもいいところな事をする俺達の前に鮫達は段々と数を減らしながらも数の暴力を持って噛みついてきた。だがしかしダメージは思ったほどなくて、冷静に自分や互いに噛みついた子鮫を倒してファースト戦は俺達の勝ちで終わった。
「・・・・・ハーデス君の防御力、本当に助かる場面が多いよね」
「逆に言えばハーデスの防御力がないと新大陸のモンスターに勝てないって鬼畜過ぎなーい?」
「簡単に倒せたらそれはそれで面白みもないがな」
「色々と驚かされるけどな」
同時にあの三つ首の鮫を召喚した半魚人にはきっちりオトシマエをつけた。次も同じ類のモンスターと遭遇したら真っ先に倒しておかないと厄介だ。
「掲示板の方、私達みたいなモンスターとか半魚人に人魚、大中小の魚型のモンスターと遭遇したけど一方的にやられた投稿が多いよ」
「【蒼龍の聖剣】のメンバーはハーデスの防御力に助かっているって褒めちぎっているよ?」
「俺達と他のギルドの差が浮き彫りした瞬間だね」
「こんな調子で一週間も生き残らないといけないとか大変だぜこりゃあ」
イッチョウ、サリー、ドレッドが半径400m以内の偵察に向かっている間に俺達は三人の帰りを待ちながら掲示板で情報を収集する。
「ねぇちょっといいかな?」
「なんだ?」
「一週間も生き残らないといけないってクエストだけどさ。それができなかったプレイヤーはどうなっちゃうのかなって」
「何とも言えないな。掲示板だとセーブポイントの家があって、登録した後に死に戻ったプレイヤーはその家に復活したらしいが・・・・・」
【水の都アトランティス】我等人魚捜索隊!! PART1 【白銀さんあざっす!】
・できる限り情報を共有しましょう
・他ギルド同士協力しましょう。でないと新大陸では生きていけないので
・人魚の目撃情報を投稿してください!!
・他プレイヤーへの悪意ある暴言はNGです
シーマン:10
おいwww シーマンってふざけんなwww 改名しろ改名www
シーマン:11
え? シーマンって海の男の意味じゃ?
シーマン:12
昔の某ゲームにシーマンって人面の魚(オス)を育成するゲームがあったんじゃ若人よ
シーマン:13
「みてんじゃねぇよ」って言う生意気な魚・・・・・懐かしい(ジーン)
シーマン:14
もう懐かしく感じるほど成長して年も取っていたんだな俺達ゃ・・・・・
シーマン:15
やだっ加齢臭のおじさん達がいっぱい!! 一緒に洗濯しないでって言ったじゃんお母さん! もう最悪!!
シーマン:16
グハッ!!
シーマン:17
ゴハッ!?
シーマン:18
く、臭くないもん! 引き籠っても毎日三回は入っているもん!!
シーマン:19
≫18 潔癖症で引き籠りってニートですか
シーマン:20
≫19 職業は自宅警備員兼ゲーマーじゃボケェッ!!! このゲームで得た金は家に振り込んどるわ!!
シーマン:21
ヒキニートに優しい世界になりましたね
シーマン:22
でも許さない親はいるんだよなァ・・・・・(振り込んでいる経緯を認めも信用もしてくれない親に翌月から振り込まないことにした俺)
シーマン:23
引き籠りでニートの子供を持つ親からには大体愛想尽かれるか、信用も信頼もされていないのが現実よ。外に出て汗水たらして得た結果を証明しない限りは絶対にね(実体験談)
シーマン:24
現実の話をしたくば別板でしてこい!! ここはゲームの中の情報を共有する場ぞ!!
シーマン:25
知ってたか? そういうプレイヤーばかり集まったプレイヤーが結成した【自宅警備員隊】が存在するらしい
シーマン:26
安全も信頼も出来ないプレイヤーに俺達のギルドのホームの警備をさせたくねぇ・・・・・!!
シーマン:27
ただいま死に戻った俺からの報告だ!! プレイヤーでも入れる廃墟の家にはセーブポイントがあって、死に戻ってその家で復活するとエクストラクエストが失敗扱いされないぞ!
シーマン:28
あれ自分のギルドの船でもそう?
シーマン:29
それなら俺が教えるわ。 ≫27みたくセーブポイントに登録せず魚のモンスターに喰われて船に戻ってもクエストは失敗扱いされてない。もしかしたらセーブポイントを登録せず船もない状態で死に戻ったら失敗扱いされるんじゃね?
シーマン:30
ってことは、船を守る必要があるんじゃないかこれ? 一週間経ったらどうやって帰れるのかまだ判らないんだし
シーマン:31
おや、もしかしなくても一定時間が経過したら船を守る防衛戦が始まっちゃう系のクエストだったりする?
シーマン:32
・・・・・俺らより強ーい新大陸のモンスター相手に自分の船を守れると思う?
シーマン:33
む、無理ですぅ・・・・・なのでちょっとあるギルドを探していきます。探さないでください
シーマン:34
あ、私も急に用事を思い出したから離れますね
シーマン:35
近くにいてくれぇー!!!
シーマン:36
自宅警備員なんかよりも頼もしい防御力の持ち主のお方達の捜索を先にするべきだなんてェ!!!
シーマン:37
ドチクショウ!! バラバラにした理由がこれかよ!! おのれ運営めぇええええええ!!
・・・・・。・・・・・。・・・・・。・・・・・うん。
「可能性を考慮して船にいるわ」
「すまないハーデス」
「お前がいてこそ水瓏は破壊不能の船になるんだからな。俺達の拠り所を頼んだぜ」
「今度、水晶じゃなくてオリハルコンの船を創れるならそうしておけ」
一緒に掲示板を見たみんなも楽観ではいられない状況であると悟った。チームから離れ俺だけ水瓏に戻り艦橋の席に座って待機した。でも何もせず待つのは寂しいのでサイナを召喚して二人で遊べるものをして時間を潰す。
イッチョウside
偵察を終えてみんながいる場所に戻ったらハーデス君がいなかった。単独行動? と聞いてみたら・・・。
「彼は船に戻ってくれた。死に戻ったプレイヤーのセーブポイントの有無でエクストラクエストの失敗に関わるかもしれないという投稿された掲示板を見てね」
「そうなんだ。じゃあ今回もハーデス君は出番が殆どないかもね」
「幸いこの場には彼の力を共有しているイカルとメイプルがいる。簡単に負けることはないだろうが、彼の分まで俺達が頑張ろう」
「「「「はい!」」」」
そういう理由なら申し訳ないけどハーデス君はしばらく船にお留守番してもらう間に私達は坑道を開始した。廃墟の家でもセーブポイントがあるらしいから私達もそのポイントを探しつつ見つけたら登録、遭遇したモンスターと苦戦しつつマップの開拓をした。
「あのー」
「どうしたの雛菊ちゃん」
「かなりお船から離れたんですけどお休みする時はどうするんです?」
「それは・・・・・」
瞬間移動のスキルで、と言おうとした口を途中で止めた私は足を停めて、神妙な顔をするフレデリカ達と顔を見合わせた。
「・・・・・ここまで来るのにセーブポイントを登録できたのって一人一つだよね」
「遠くに行った場所で倒れたら一つしか登録できなかったリスポーン地点に戻されるわけだし」
「ログアウトする際の待ち合わせ場所も考えないといけないんじゃねぇ?」
「それどころか守るべき船を無防備に晒しているよね?」
後々になって先に決めておかないといけないことを浮上してきたところで私達の耳を不意打ち気味に―――。
ゴォーン・・・ゴォーン・・・ゴォーン・・・!!!
大鐘楼の音色が聞こえだした。その音を聞いて自然とリアルの時間を確認すると12時になっていた。
「お昼の時間に鳴る鐘みたい」
「そんなギミックが何の意味あるんだ?」
ドラグの素朴な疑問に誰も答えれない代わりに変化が教えてくれた。黒天から私達が見える範囲のみ何か無数の黒い塊が出てきた。私達の目の前に現れた黒い塊はクラゲに似ていて、目の前にいるプレイヤーを無視してゆっくりとどこかに向かって・・・・・。
「徘徊するモンスター? でも私達に気付いていないっぽいわね」
「大きいクラゲです!! すごーい!!」
「触手みたいなのがたくさんあって気持ち悪ぃ・・・・・」
「あれがボス? だとしたら倒しておくべきじゃない?」
「ていうか、勘違いだったらいいけど・・・・・私達の船に向かっていなかった?」
クリムちゃんの疑問を聞いた瞬間、私達の間で嫌な予感を覚えたように静寂と緊張に包まれた。それが正解だと言わんばかりに他にも現れていた黒くて巨大なクラゲの触手に、どこかのギルドの船が巻き付かれた状態で私達の頭上を通り過ぎて運ばれていった・・・・・。
『・・・・・』
今のが私達の船にも適用するなら、水瓏は別の場所に運ばれてしまう! と考えに至った私達は一斉に全員でテレポートしたけど、丁度水瓏に触手が巻き付かれて運ばれかけてる船の横に丸ノコが激しく回転していて触手を斬ろうと抵抗しているけど斬れずにいる! 地面に打ち込んだ錨が今にも外れそう!? でもなんで船から橋が伸びてるの? 前後のハッチも開いてるし中に入れってこと?
「ヤバいヤバい! 船が奪われちゃうよ!」
「別の場所に運ばせちゃダメ! もしかしたら水瓏がある別のマップに移されたら限られたセーブポイントを拠点にしなくちゃいけなくなる!」
「だったら船に乗ろう! 中に入れてって感じになってるし!」
「でもそしたら他のみんなが置いてけぼりにしちゃう!」
「ああっ、ハーデスさーん!!」
私達はこの状況の最適解を見出だせず、あたふたとするばかりで攻撃してもノーダメージな触手にますます焦燥に駆られてしまう、そんな時だった。
ブォオン! ブォン! ブオオオオオオオン! パラリラパラリラパラリラ~♪
「「「「「「「ヒャッハー!!!」」」」」」」
「俺達のマイシップを奪おうなんて許さねぇぞ!! ぶっ殺してやらぁー!!」
「暴走族!!? あ、プレイヤー!?」
「始めて見たなら勘違いしちゃっても仕方がないね。でも、バイクや車でもこんなに速く駆けつけてこれたっけ?」
「ヒャッハー! そいつはあのクラゲが現れた瞬間に危険を察知したんだぜぇい! 白銀さんに言われるまでもなくな!」
「その通り!」
あっ! 他のみんなも転移スキルで戻ってきてくれた! これでなんとかなるかも?
「急いで船に乗り込めぇー!!」
「錨の鎖やクラゲの触手にしがみついてでも船から離されるな!」
「早く船に! 置いてけぼりにされるぞー!!」
って、みんなが慌ててハッチや橋から船の中に入ろうとする!? 暴走族達もバイクを走らせたままハッチの中に入って行ったから乗り込めて、私達も遅れて船に戻った。
ガコッ! ボコッ!
全員が乗れたか判らない内に地面に突き刺さってた錨が抜けてクラゲの触手によって船が運ばれ出した。艦橋にいるハーデス君のところに行くと私達を見て一安心した表情を浮かべた。
「なんとか間に合ったか」
「連絡してくれたっていいのに」
「悪かったよ。手が離せない状況でそんな余裕なかったから」
「掲示板の方も自分達の船が運ばれたーっ、これからどうすればいいんだーって、大騒ぎだよ」
こんなギミックがある新大陸に一週間も生き残らないといけないなんてかなり厳しいよ!
「また船が運ばれて行くなら警戒しないとダメだな」
「リアルタイムで12時に運ばれるなら3時間か6時間ごとかもしれないな」
「できれば6時間ごとにしてほしいね。3時間は長くて短く感じてしまうから」
新たな可能性に掲示板にお知らせとして残す。だけど本当に・・・・・。
「ハーデス君があの時、船に戻ってくれなかったら確実に殆どが乗り遅れてたね」
「そうなんだけど、毎度こうやって船を運ばれるとマップの開拓もままならないぞ」
それもそうだね。うーん・・・・・運営の企みがこれだけとは有り得ないから警戒しないと。