【蒼龍の聖剣】をはじめ多くのギルドと神獣の眷属達が新大陸の攻略中で一週間も不在の始まりの町に新たなプレイヤーが水色のポリゴンと共にNWOの世界に飛び込んだ。開口一番に歓喜の大声を張り叫んだ。
「スゲー!!! 本当にここがゲームの世界かよー!!!」
「肌で感じる太陽の温かさと空気に風がゲームとは思えないほど再現されてるぺこ!!」
「うん、本当NWOの凄さに感動で言葉が失うよね」
初めての体験・体感に高揚する声の中で第三者の微笑ましい声に始めてログインした少女達は周囲を見渡しながら互いに振り向き、見覚えのある顔を見かけると一同の顔が輝いた。
「お前らー!!!」
「二人共!!」
「うわーみんな久しぶり!!」
久し振りに旧友と出会ったような喜びを露にする少女と女性達。その少女と同じ気持ちを長らく会えなかった少女達とも合流を果たし輪になって感動の再会の花を咲かせた。総勢三十人以上の少女達が声を上げて喜び合っている光景は他のプレイヤー達からすれば奇異と好機の視線を向ける対象であった。その視線に気づいた猫の獣人を選んだ紫色の長髪の少女が何度も手を叩いた。
「みんな、そろそろ動こうよ。他の人が見ているからさ」
「これから何すればいいんですかー?」
「それは―――」
ピンポーン
『プレイヤーが新大陸アトランティス帝国を解放しました!!』
告げようとした口が突然少女達の耳に入った運営からのアナウンスにみんなと耳を傾けた直後、周囲からざわめきが立った。
「【蒼龍の聖剣】がアトランティス帝国を攻略しやがったのか」
「また一段と強くなったよなぁ・・・・・勝てるわけねぇよ」
「まったくだ。南極のような感じのルールだったら勝ち目はあるけど個人の戦いじゃあどうしてもな」
「あの防御力をどうにか突破しない限りは無理だってば、どうにかしてくれ運営~!!!」
羨望と嘆きの声が【蒼龍の聖剣】の登場で多々と湧き上がった。少女達がNWOをする前にネットで調べれば直ぐに「最強のギルドは?」の問いに、全員が口を揃えて【蒼龍の聖剣】と回答するギルドなのだと知れただろう。そうでなくとも注目、有名なギルドだと認識するに簡単だった。
「さて、さっきの話の続きだけど先にチュートリアルでもしよっか。みんなが選んだ戦闘スタイル、戦闘系や生産系職業の戦い方や遊び方をNPCから学び―――」
「ねぇそこの彼女達。今日NWOが初めてで何も分からないならぼく達が手取り足取り教えてあげるよ?」
金髪で高身長に爽やかな微笑みで手を差し伸べる男性プレイヤーの背後に十人以上の上級な装備で身を固めるプレイヤー達が立っていた。が、人相は決して良い方ではなく彼女達を見る目つきと視線のいやらしさを隠そうとしない。それに敏感な少女達は警戒心を高めて身構える姿勢に入った。
「お気持ちはありがたいですけど、ボク達はボク達でのんびりと遊びたいからご遠慮させていただきます」
「でも、とある称号を手に入れたら誰よりも強くなれる方法は知らないよね?」
「このゲームで遊ぶ前に調べていたので大丈夫ですよー。『出遅れた者』ですよね? 一週間もモンスターと戦わずに過ごしたらステータスポイントが通常の三倍手に入るって効果の」
こう見えてぼくはゲーマーなんですよ? と差し伸べた手を打ち落とす行為をするおかゆに対面の金髪イケメンの男のマスクが徐々に剥がれてきた。
「ゲーマーだったんだ。奇遇だねぼく達もゲーマーなんだよ。同じゲーマー同士、一緒に遊ばないかな?」
「ごめんなさい。もう間に合っているんですよねー。見えません? 彼女達と一緒にこれから遊ぶつもりなんですよ。親切に声を掛けてくれたのはありがたいですけど、ボク達はNWOを始める前から約束していたので」
「だけど女の子ばかりじゃあ怖いプレイヤーと会ったらどうするつもりだい?」
「即通報しますよ。何度も断っているのにしつこく言い寄ってくるプレイヤーでもね」
言外にお前達がまさにそんなプレイヤーだ、と揶揄されたことを察したプレイヤー達が纏う雰囲気が変わった。黙っていたプレイヤーの一人が小さく低い声音で言い放ったのを聞こえた。
「生意気な女だな。さっさとおれ達の提案を受けいりゃあいいのによ」
「おいっ」
猫耳がピクリと無意識に動いた。やはりそういう狙いで声を掛けて来たプレイヤーだと認識したおかゆは、踵を返して見せつける背中で「拒絶」の意を示した。
「もうこれ以上のお話は平行線でしかないのでいいですかね? みんなと遊ぶ時間がこれ以上無駄にしたくないので」
「無駄、だと・・・・・!! お前、おれが誰だか知らずによくも無駄だと言いやがったな!!」
「知りませんよランキング上位にも入っていないプレイヤーの人なんて」
ブチッ!!
何かが切れた金髪イケメンのプレイヤーが考えるより前に手が動いて、おかゆの肩を強く掴んだ矢先だった。巨大な水晶の船が始まりの町の上空に浮かび出した魔方陣から出てきたのであった。
「ふ、船ぇ~~~!!?」
「空飛んでるし!! 宇宙船!!?」
「「すご~い!!」」
目を張る少女達など露知らない水晶の船がゆっくりと中央広場に降下したら、船底がハッチのように両開きとなって解放すると水晶の柱と共に螺旋階段が降りてきた。その後に階段を下って広場に足を踏み入れたたくさんのプレイヤーが続々と出てきたのだった。その他に甲板からモンスターの背中に乗って飛んだり、宙を歩いたりする彼等彼女等が全員船から降りたら水晶の船がポリゴンと化して宙に浮く一人のプレイヤーの腕に集束していく。フード付きの黒衣の外套で顔は見えないがその出で立ちだけでただ者ではないと感じてしまう。
「白銀さん達が帰ってきたのか! 丁度いいや、おーい白銀さーん!」
誰かが上空のプレイヤーに向かって叫んだ。その声が聞こえた風に顔を下に、視線を地上に落とす仕草をすると金髪イケメンのプレイヤーが盛大に舌打ちした。
「ちっ! 行くぞ・・・!!」
目をつけられてはどうせ邪魔されるし、勝てない相手に真正面からどうこうしたら自分の首を絞める行為だと認識できる知性はまだ持っているようで、金髪イケメンの顔は荒々しく凶暴的な怖い顔に歪めてプレイヤーが作った道に仲間達と歩いてこの場から去っていった。
「・・・・・白銀さんって?」
「あの人が現れた途端に迷惑な人もいなくなったから、かなり凄くて強い人なのかな?」
「とにかく助かったわー。おかゆ大丈夫?」
「・・・・・緊張したぁ~~~」
その場でペタリと腰を落として息を深く吐き、周りから労いの言葉を送られたおかゆの前に上空から降りてきた「死神・ハーデス」と名を頭上に表示されてるプレイヤー。
「なんか知らないが問題はあったか?」
「しつこい誘いを受けただけですのでー」
「初めてNWOするプレイヤーをギルドに勧誘するプレイヤー達、逆に入ろうとするプレイヤーの行動はどのゲームでもよくあることだが、こうして面と向かって話せる状況じゃあ見目麗しい女プレイヤーを勧誘する輩はいなくない。すぐに形だけでも自分達のギルドを結成した方がいい」
「教えてくれてありがとうございます。あの失礼ですがどうやってギルドを結成すればいいですか? もしよければ他にも色々と教えてくれると助かります」
「ナイスだよミオしゃ!」
狼の獣人の少女の乞いにハーデスはフードを脱いで長い銀髪に青い瞳を晒してから首肯した。顔や体つきのカスタマイズはできるとはいえ、中々に美形な顔立ちだなと少女達一同は思った。
「それならしばらく付き合ってやろう。久し振りの太陽の下で動きたいところだったからな」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
「「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」」
一同はそれからハーデスに始まりの町を案内してもらいながらどこにどんな場所があるのか、初心者には必須の知識と情報を伝授してもらった。
「このお店のデザートは美味いぞ。どれだけ食べても絶対に太らないのがまたいいことだ」
「本当に美味しい?」
「味はしっかりあるぞ。プレイヤーが店を構えることもできる」
「それって自分で料理を作れるってこと?」
「自分で創意工夫できることは何でもだ。リアルではできないこともこのNWOではできる。ましてやゲームの中で様々な練習をして現実で発揮できることもあるぞ」
「それって車の運転も? って、このゲームに車ないよね」
「あるぞ車」
「あるの!?」
「カジノにな」
「ギャンブルもあるの!? みこギャンブルやりたい!!」
「あそこは所持金100万Gを持っていないと入れない特殊なエリアだから初心者はまだ無理だな」
桃色の髪に鳶色の瞳の少女「さくらみこ」に言い返せば、それならと獅子の獣人の女性「獅白ぼたん」が挙手した。
「銃もそこで手に入る?」
「ああ、あるぞ」
軽々とインベントリからガトリング砲を取り出したハーデスに獅白ぼたんの決意が高まった。一時間以上程も掛けて最後に残した場所以外は見て回った一行はハーデスの背中を追いかけ、その場所へと足を運ぶと―――。
「最後にここがファーマープレイヤーやそれ以外のプレイヤーが農作物を育てる農業地区だ。今となってはこの景色を作ってから別名『桜花地区』と呼ばれている。みんなには一番見せたかった場所だよ」
「うわぁー!!!」
農業地区が巨大な木に桃色の花弁を咲かせる区画と変貌していた。通りの側に敢えて桜を植えて花を咲かせればNWO内限定で年中桜が咲いているエリアとなって、今ではプレイヤーの間で観光スポットの一つに数えられている。さくらみこが桜を見た瞬間に前へ出て大はしゃぎし出した。
「すごーい!! 桜がこんなに咲いているよ!!」
「本当にすごい。現実のような桜を育てることができるゲームなんてNWO以外初めて知ったよ」
「お前達も桜を手に入れるクエストができるから試してみるといいよ。一人一本しかもらえないが全員でやれば二十本以上の桜の苗木が手に入るだろうから、農業地区に負けない桜並木が出来上がるはずだ」
「やる! 絶対にやるよ!! みんなもやろうよお願い!!」
友達に懇願して回るさくらみこにほぼ全員が桜を育てる意欲を示したので大喜びした彼女を微笑ましく見ていたら、畑にいたタゴサックが顔を出してきた。
「ハーデス。新しい仲間を勧誘か?」
「いや、案内してあげていただけだ」
「その人はハーデスさん?」
タゴサックを知らない彼女達は紹介を求めた。
「彼女はタゴサック。この農業地区内にいるファーマー達のまとめ役兼リーダー的なプレイヤーだ。ファーマーに関して分からないことは彼女に聞くといいぞ。俺より詳しいからな」
「いや待て。俺よりお前の方が凄いだろハーデス」
「俺はファーマーに片足を踏んでいるだけのようなプレイヤーだぞ。そんな俺よりお前の方が適任なんだからファーマーで遊ぶプレイヤー達のまとめ役を任せる話し合いはしただろ。ここじゃあお前が一番なんだから間違ってはない」
「・・・俺はそんなガラじゃないんだがなぁ~」
頭を掻きながらボヤくタゴサックの背後からにゅっと湧いて出て来るプレイヤー達。
「いやいや、白銀さんの言う通りだよタゴサック!」
「いよっ、みんなの頼れる兄貴姐御!!」
「新人のファーマーの面倒を何かと見ている真面目なタゴサックさんの好さは私達が知っているよ!!」
「俺もこの間お世話になりました! ありがとうございますタゴサックのお姉さん!!」
ヒューヒュー!! とこれでもかとタゴサックに褒めちぎるファーマープレイヤー達。褒め慣れていないタゴサックは照れ臭いあまりに顔が淡い朱色で染まり羞恥心を爆発させて褒めまくったプレイヤー達を追いかけ始めた。
「すごく賑やかな人達なんですね」
「これからそういうプレイヤーがギルドにもっと増え続けるがな」
「ハーデスさんもギルドに入っているんですか?」
「寧ろ俺はギルドマスターだ。生産職とテイマーとサモナーを中心に集めて集まった【蒼龍の聖剣】というNWO最強ギルドのな」
蒼い二匹の龍が無限の形を描きながらそれぞれ咥えた一振りの剣を交差したエンブレムの大きな旗をインベントリから出してバサッと見せつけた。
「最強ギルドのリーダー・・・!?」
「生産職・・・・・もしかしてファーマーのプレイヤーも?」
「この農業地区にいるプレイヤーの殆んどと、他の生産職のプレイヤーも【蒼龍の聖剣】に所属している。途中から俺のギルドに入りたいがために生産職をやり始めたプレイヤーが殆どだがな」
「その生産職のプレイヤーって強いの?」
「俺と一緒に遊んでいる内にNWOのプレイヤーのランキングの上位は【蒼龍の聖剣】で占めているほどにな」
マジかという気持ちになってハーデスに教わったシステムを操作して調べると、1位から100位、その下までもが確かに【蒼龍の聖剣】に所属しているプレイヤーばかりであった。