彼女達はその日の内にギルドを結成するならホームは必要だと言うハーデスの言葉にお互いにホームついて友人達と語り始める。
「ホームを買う前に一度みんなの目で確認してこれがいいと思った物件を多数決で決めない?」
彼女―――「ときのそら」の提案に一同はハーデスに「した方がいい?」と気持ちを込めた視線と実際に訊いた返答は肯定的だった。
「ギルドが持てるマイホームの数は複数だ。現に【蒼龍の聖剣】が保有しているギルドホームの数は五つ以上だし、なんならギルドメンバーのプレイヤーは個人のマイホームを持っている」
と言うハーデスに鬼人族を選んだ白髪赤眼の少女「百鬼あやめ」が挙手した。
「ハーデスさんのギルドホームって入れますか? どんな家なのかも気になります」
「入れるぞ。ただ、あんまり参考にできないホームばかりだがいいか?」
参考にできない? なんのことだろうと心中で首をかしげるときのそら達は、NWOをするプレイヤーなら誰もが知っている『白銀さんのホーム』に案内され日本家屋のホームに招かれた。
「ここが俺個人のマイホームだ。中には数人のNPCと暮らしているからよろしく頼む」
「ギルドのホームじゃないんだ。それにNPCと一緒に暮らせることができるなんてすごいねー」
「ただいまー」と言いながら玄関から入ると、靴がポリゴンと化して素足になったハーデスが木造の床の上を歩くのでときのそら達も靴を履いたまま上がろうとすれば、靴の装備が消失して勝手に素足となった。
「うわ、楽でいいねこれ」
「寝る時も勝手に着替えるのかな」
「それはどうなんだろうね・・・・・?」
ゾロゾロとハーデスの背中を追い掛けて歩く彼女等は庭と面した縁のところに足を運んでいたことを知り、目の前に広がる庭を見て圧倒された。巨大すぎる樹木が数本、数え切れないほどの作物や植物が育っている光景は現実世界では見ることができないゲームならではの凄さが溢れ返っていた。
「ハーデスさん、あの大きな木が何本もあるんですけど・・・」
「全部畑で植えたもんだ」
「畑? 畑!? えっ、なんか畑の広さと入る前に見たホームの広さがおかしい気がするのは私だけ?」
「不動産屋で畑と庭を拡張することが可能でな。庭と畑があるホームは外からじゃあ拡張した様子は見られない仕組みになっているんだよ」
「へぇーそういうことだったんだ。じゃあ、ホームの中で騒いでも外には?」
「防音対策完璧。でも同じホームの中にいるプレイヤーには丸聞こえだ」
すると、畑の方から家の中から同時に駆け寄ってくる人や獣達に抱き着かれつつ押し潰されるハーデスだった。
「・・・・・こんな風にな」
「「「「「・・・・・」」」」」
後にハーデスが仲間にしたモンスターであることを教えられ、羊の獣人族を選択したプラチナブロンドの髪に角を生やした「角巻わため」がメリープを見て眼を輝かせた。
「ハーデスさん。この可愛い羊は?」
「メーアという種族のモンスターだ。名前はメリープ」
「メェー」
「か、可愛いっ・・・・・抱き締めてもいいですか?」
角巻わための問いにメリープは彼女に近寄り、触ってもいいと言わんばかりに体を差し出すようにごろんと横になった。
「いいらしいぞ」
「ありがとうございます! じゃあ触らせてもらうねー。・・・うわぁ、すごく柔らかいー、毛がフワフワのモフモフでモコモコだよー」
「「フワモコのこと?」」
「違うからね」
犬の獣人族の髪がクリーム色でそれぞれ水色と桃色の瞳を持ち、片や長い髪と片や短い髪の顔の容姿が似ている少女達が自分を指で差しながら首をかしげると、狐耳と尻尾を生やす白髪の少女「白上フブキ」が突っ込みながら胸元に桃色のハートマークがある巨大な九本の白銀の狐を見ていたので、隣にいた黒い長髪から狼の耳と腰にふっくらとした尻尾を伸ばした狼の獣人族の少女「大神ミオ」から言われる。
「あの大きな狐、フブキのお母さんじゃない?」
「なに言っているんだよミオ。それ言ったら隣にいる大きな狼だってミオのお父さんっぽいじゃん」
「狼はフェンリルだぞ。ちなみにこっちが人狼のサラだ」
「がうー!」
大神ミオと同じ黒い長髪と尻尾を持つ少女がハーデスの横から抱きつき、大神ミオを見や否や好奇心が湧いたのか彼女に近寄りスンスンと鼻を鳴らしながら嗅ぐ仕草をした後に「がうー♪」と笑みを浮かべながら胸の中に抱き締めた。
「えっ、ちょ、何っ?」
「仲間意識が芽生えたみたいだな。それか自分の妹として扱いたいか、あるいは両方?」
「えええ? って、ひゃっ、こっちもー!?」
フェンリルのフェルまでサラと同じように匂いを嗅ぎ、大きな舌でペロリと大神ミオの頬を舐めた。
「フブキとミオと同じ種族のモンスターがいるなら、ボクと同じ猫のモンスターいないかな?」
「いるぞ」
興味本位で訊いた猫又おかゆにフレイヤ、ネコバス、タマにラミアースを紹介した。ちょっぴり羨ましそうにしてる犬の獣人族の「戌神ころね」にはポチを紹介すると。他の面々もハーデスの従魔と触れ合いたいと要望を言い出したので、しばらくはオルト達と触れ合えさせた。
その後、満足した女性達が案内された先で立ち止まったのは、ホームの廊下の突き当り。茶の間のすぐ脇である。ハーデスがそれに触れるとホームのトランスポーターと全く同じ画面が立ち上がる。これで転送先を選んで、扉を開けばその場所に繋がるのだと教え【蒼龍の聖剣】のギルドホームを案内した。ハーデス達が保有する数々のホームにときのそら達は―――。
ジブリに登場する空に浮かぶ天空の城のホームにジブリ映画を見たことある少女は、自分達が有名な城の中に飛び込む形で入れたことに大はしゃぎし、壁に埋まっていたり動いていたりしているあの自立起動型ロボットを見てさらに興奮して教わったスクショで記念撮影をする。
南国の島では海水を掛け合ったり砂遊びをしたり、リアルのように感じさせる熱い日差しと潮風を浴びながら少しばかり過ごした。
某魔法使い達が学園生活を送っていた石造りの学校の中を見渡しながら回転する階段、生ある絵画、横長のテーブル、複数あるプレイヤーが住まう宿舎、どれもこれも魔法使いの映画の学園内とそっくりで少女達は感動した。
これもまたジブリ映画に登場した温泉旅館で、ときのそら達は実際に入って温泉を全身で堪能した。
動く機械の家の中を興味津々で見て触れ回り、外に出てどこを目指して歩いているのか分からないものの、見える景色は人の手が加えられていない自然を記憶に残した。
太古の昔に滅んだ遺跡のような都の周囲にはプレイヤーが手を加えた広大な田畑が広がり、豊かな肥沃の地であるのが一目でわかる。少女達は感動するあまりにスクショして記念に撮った。
ジャングルの中にあるホームから一度出れば、某有名な恐竜映画に出て来る恐竜達(魔改造施し済み)の出迎えに驚く少女達は、絶叫と悲鳴を上げ追いかけてくる恐竜達から逃げ惑った。
巨大な岩山を鬼の頭蓋に模したホームの中は和風の作りで、とても広々とした空間の中を歩いて天井に出ればたくさんの桜が咲き誇っていて、さくらみこがまた感動した。
誰もが見たことも訪れたこともある歌って踊るステージ会場まであるとは思わなかった少女達。ここで一体どんなプレイヤーが披露するのか一度見てみたいという気持ちを抱いた瞬間、ハーデスは寒気を覚えた。
「―――とまぁ、こんな感じで普通に手に入らないギルドホームがあるわけで参考にならないだろ」
【蒼龍の聖剣】のギルドホームの見学&観光するだけで半日が経ってしまい、全て見終えたそら達は鬼ヶ島の広間で腰を落として目の前に佇むハーデスの言葉に耳を傾けた。
「普通じゃ買えないってどうやったら買えるの?」
「このゲームは称号というものが手に入る。現状手に入る称号の数は100以上ある事が確認されている分、多種多様な副次効果も得られる。それらは二度と手に入らない称号があれば特定な条件を満たせばだれでも手に入る称号がある。案内した一部のギルドホームも特定の条件を満たせば買えるようになる。日本家屋は称号を手に入れなくても買えるが条件を満たさないと買えないがな」
「それってどんな条件ですか?」
「東西南北に隠しダンジョンがある。ダンジョンの奥には特定の作物を渡せば昭和の遊び道具をくれる四匹のNPCがいてな。四つのアイテムを手に入れた状態で―――」
長々と語るハーデスの説明を聞き感嘆の念の息を吐く。説明口調で語っていたハーデスは一区切りつけて口を閉ざした。
「ここまで教えたが何か質問あるか?」
「はい!」
白上フブキが挙手した。
「お金ってどうやって集めればいいのかな?」
「他のゲームと同じクエストをこなすかモンスターが落とすドロップアイテムを売る。また自作した装備やアイテムを他のプレイヤーに売買すれば手に入るぞ」
「簡単にたくさん手に入る方法ってあったりする?」
「それはカジノが一番だろうな。逆に一度で破産するリスクがあるがな。他に聞きたいことがあるか?」
再度他の少女達に問いかければ、金髪の少女が挙手した。
「ホームの内装、模様替えはどうやってできるの?」
「生産職のプレイヤーに依頼するのが一番いい。NPCからでも買えることは買えるが自分だけのオリジナルを求めるなら直接プレイヤーに自分の要望をぶつけてみろ。多少の時間は掛かると思うけど待っている間は金策するなりレベル上げをするなり冒険を楽しむといいさ。みんなの装備もプレイヤーに依頼すれば可愛い・格好いい、強い装備を製作してくれる」
「それって現実とまったく同じ服が着れるってこと?」
「100%ではないな。口頭だけで製作する側が頼みたい側の全ての考えをそのままトレースすることはできない。作ってほしい素材、イメージ、イラストを用意してこういうのが欲しいと頼めば100%近い装備を製作してくれるはずだ。それでも納得するかしないかは頼む側次第だがな」
なるほど、と零す金髪の少女の問いはそら達も考える仕草と表情をさせていた。
「頼む時は分かりやすく絵を描くことをオススメする。リアルで着ていたお気に入りの服があるならな」
「その服の写真をこのゲームに持ち込む事って」
「できないぞ。NWO内で撮影したスクショを現実に反映することはできるが」
「そっか~。それじゃあ自分で覚えて書くしかないな~」
現実の世界で思い入れのある服でもあるのかとハーデスは思い訊いてみると。
「一応、仕事の制服のような物が。私達が着ている服は製作してくれた人が用意したものなので」
「その人と知り合いか今でも交流あるのか? 交流あるならその人もNWOさせて同じ制服を製作してもらえばお前達が望む制服を着れるはずだ。もしくはその人の頭の中にあるイメージを熟練の生産プレイヤーに伝えれるとか」
「「「「「「あ」」」」」」
「「「「「それだぁー!!!」」」」」
「「「「「その手があった!!」」」」」
大体の少女達が大いに叫びながら納得した。それならばとこれ以上の助言は不要だろうとハーデスは口を開く。
「それじゃホームの案内はこれでお終いだ。今度は俺から質問するけどいいか?」
「私達のスリーサイズは教えないよ?」
「そんなどうでもいいことを訊くか。訊きたいのはゲーム内での行動方針だ。純粋に楽しむか、誰よりも生き急ぐように強くなりたいのかって。称号『出遅れた者』を知っているか? 知らないなら取得方法を教えるが」
「それなら事前に調べたので大丈夫ですよ」
「知っていて当然か。じゃあ全員、モンスターと戦わず始まりの町で一週間過ごす予定なんだな。もしそうなら頑張れよ」
「それってどんな称号なんですか?」
知っているのはどうやら「猫又おかゆ」というプレイヤーだけのようで他の少女達は知らない様子にハーデスは教えた。
「レベルアップする際に得られる五つのステータスに振るポイントが常時3倍、5ポイントから15ポイントに増えるんだ。レベルが2、4、6、8の偶数のレベル時に15ポイントずつ貰え、レベルが10の時は30ポイント。総計で90ポイントも得られるんだよ。逆に『出遅れた者』の称号を持っていないプレイヤーは、レベル10まで手に入るステータスポイントは30ポイント。この3倍の差はとてつもなく大きいから、楽しむなら絶対に手に入れておくべき必須な称号なんだよ」
「30ポイントと90ポイント・・・・・たくさんも貰えるならたくさん貰いたいよね」
「でも1週間もモンスターと戦わず何をしていればいいの?」
「始まりの町では様々なクエストがある。それをしていればいい。なんならNPCの老人に話しかければ1週間も続けるゴミ拾いのクエストを受けられるぞ。ゴミ拾いのクエストを完了したら樹木の精霊のNPCに会える鍵が貰えるし」
「樹木の精霊? に会える鍵は持っていた方がいいですか?」
「テイマーとか精霊好き、美少女好きのプレイヤーなら一度会ってみたい思いで手に入れるが、そうじゃなくて興味が無くて会うつもりはないなら鍵の方は記念に持っておけ。ゴミ拾いのクエスト以外にも他のクエストが出来るから気分転換にやってみるといい」
それから、とハーデスは言い続ける。
「幾ばくか全員に金をプレゼントしよう。1週間後、モンスターと戦うに必要なアイテムや装備は消耗品だからな。依頼した装備したい制服代の支払い、ホームの購入費用にも必要になるし」
「太っ腹ー!!」
「そこまでしてくれるなんてかなりのお金持ちなんだな!」
「おう、全プレイヤーの中で腐るほど金がある一番の億万長者だからな。これだけプレゼントしてもまだまだあるんだぞ」
最初にときのそらへ幾ばくかの金を譲渡しようとしたら、彼女の思考が停止しかけた。
「・・・ハーデスさん、本当にこれだけのお金を貰っても大丈夫? 後で請求しない? 闇金じゃないよね?」
「請求もしないし闇金じゃねぇわ。安心して受け取れ後がつっかえている」
「う、うん・・・・・」
恐る恐ると受け取り自分の所持金を信じられない目でいつまでも見続けるときのそらを他所に、ハーデスは他にも億の額の金を譲渡して少女達に阿鼻叫喚させていった。一部狂喜のあまり小躍りしたが受け取った際に驚いたのは全員同じであった。
「すごーい!! 2億円貰っちゃった! ・・・あれ、なんかメッセージが届いている。億万長者?」
「称号を手に入れたな? プレイヤーの行動、戦闘の実績、他にも様々な称号とスキルが何気ないリアルでは当たり前な事が称号とスキルとして送られることが珍しくないんだ。大きく背伸びして5分間そのままの姿勢でいたら身長と力のステータスが一時的に50も増えるスキルも手に入るほどにな」
「たったそれだけ? ちょっと試してみよっかな」
「身長がもっと欲しい船長としては一時的にでも手に入れたいスキル-!!」
「すうも!!!」
戌神ころねに触発された少女達も試しにその場で背伸びしながらバンザーイの姿勢を5分間続けた結果。ハーデスの言う通りのスキルが手に入り、すぐに使ってみたスキルの効果で誰から見ても身長が伸びた友人に驚嘆の念が漏れた。
「他にも私達でも手に入る称号とスキルがある?」
「そういう情報はタラリアという情報屋が集めてプレイヤーに対して売買している。始まりの町にいるから他のプレイヤーに訊けばすぐに場所がわかる。始まりの町にいない時もあるからいなかったらフレンド登録してもらうよう頼んだ方がいい」
「へぇ、情報屋か・・・・・そういう職業とかあるんだ?」
「ないぞ。中規模のギルドで情報屋として遊んでいるだけだ。俺も何度かお世話になっているし情報を売っている。誰も知らない情報を売ればそれなりの額で買ってもらえるから、そういう情報になり得る発見をしたらタラリアに持ち込んでみるといいぞ」
「さすが先にNWOを遊んでいる先輩だね。頼りになるよー」
「よく言われる。だからそら達がどんな風に遊ぶか見守らせてもらうよ。頑張る姿を配信をするなら見させてもらうし」
不敵な笑みを浮かべるハーデスに対してときのそら達は配信の言葉に反応した。
「配信ってVTuberみたいなこと本当にできるの?」
「そのVTuberが職業の一つになっているからなできる。運営の考えは理解できないがVTuberをするプレイヤーは少なくない。そら達もそれをするためにNWOを?」
「うん、ハーデスさんも知っていると思うけど私達『ホロライブ』なんだよ」
「・・・・・ホロライブ?」
キョトンとした顔で鸚鵡返しをするハーデス。ホロライブを知らないプレイヤー、人間と交流していたことにそら達も初めて知りつつ話を進める。
「知らないならこれから知ってほしいな。でも、私を含めて他の女の子が卒業してるから過去の映像しか見れないけど見たら絶対に楽しいからね。『ときのそら』の事も見てほしいです」
「わかったよ。リアルに戻ったら過去の映像も見るが、現在の『ときのそら』はNWOで見れるなら楽しみにしているよ」
「!!」
ハーデスから差し伸べられた手と一緒に掛けられた言葉に目を丸くしたそらは、次に微笑んで自らも手を伸ばして大きな手を握って握手をした。
「うん! 応援よろしくお願いしますハーデスさん!」
「そらだけずるい! あくあのことも応援してよね!」
「シオンのことだって!」
「みこもみこもー!」
何故か他の少女達も応援を求め、応援すると約束したその後。カジノに連れていった。黄金の輝きに包まれる東京ドームの何倍も広いカジノの中を見渡す彼女達の驚愕と歓喜の声はカジノで遊んでいるプレイヤー達のざわめきの声に飲み込まれた。
「行ってくるぅっー!!」
「はやっ、ギャンブル狂いか」
「結構ギャンブルに強いよみこちは」
「そうなんだ?」
「負ける時は負けるけどね」
猛ダッシュして行ったさくらみこを、長い青髪に黒い瞳の少女「星街すいせい」も見送りながら教えた。
「カジノって未成年は遊べない?」
「遊べるぞ。さすがに酒は飲めないけど」
「「お酒あるの!!?」」
「プレイヤーでも作れるぞ。ビールにワイン、日本酒にエールに作れるなら何でもだ」
一部の女性プレイヤーが唾を飲み込み飲みたそうな顔をしだした。
「ゲームでお酒が飲めるなんてすごいね。でも味は大丈夫?」
「大丈夫だぞ、しっかりリアルの酒の味を再現されてるし、酔いまで体験できるけど、飲み過ぎるあまりに耐性がついて酔えなくなるがな」
そこまでいうなら後で飲んでみたくなった少女達は各々賭けに興じようと動く前に。
「ああ、銃が気になってる・・・・・獅白ぼたん? このカジノのVIPルームに銃火器やロボット、車があってだな。所持金とメダルを1億集めると入れるぞ。他にもVIPルームに行ってみたいなら一緒に来てくれ。そうじゃないならカジノでしばらく遊んでいてくれ」
二つの提案を用意したハーデス。ときのそら達は二手に分かれて行動する前にVIPルームに入る前の工程として2億Gから1億枚のメダルを手にした。自分についてくる者だけ、条件を許されたプレイヤーだけ許される部屋へと案内したら・・・・・。
「へへへ・・・・・」
「ヒヒヒッ・・・・・」
「ヒャッハー!」
スキンヘッドや色とりどりのモヒカン達が、スパイク付きの肩パッドを装着して上半身裸か革製の黒い服で身に包んでいた集団が巨大な船と立ち並んでいる巨大ロボに車とバイク、さらにはメダルと交換できる装備やアイテムがある空間に屯っていた。
「なんじゃこりゃあああああああああああ!?」
「世紀末の荒くれ者達がいるなんて聞いてないけど・・・・・ある意味リアルじゃ絶対に会えないこんな人達も見られてラッキー?」
「わーお、凄い人達でいっぱいだ!」
驚倒しそうになる光景に気圧されていた彼女達の存在に気付き、荒くれ者プレイヤー達が獲物を見つけた猛禽類の如く近づいて取り囲んだ。
「おーおー、新しい子ウサギちゃんがまた来たぜぇ~!」
「ここはお子様が来るところじゃないぜぇ? 怖がるなら帰ってママのおっぱいを吸ってなぁ~!」
「だが逆に覚悟の上で来たってんなら歓迎してやるぜぇヒャッハー!!」
拳銃、ショットガン、スナイパーライフル、ガトリング砲、ロケットランチャーを見せつけながら挑発的な笑みを浮かべる荒くれ者達。彼等彼女等の手に持っている武器を見て獅白ぼたんがのんびりとした口調で問うた。
「私、ガンナーと傭兵の職業で遊ぶつもりなんだけど。ここで銃を買ってもいい?」
「ヒャハハハー! 俺達の楽園の宝物を奪おうなんていい度胸じゃねぇか女ァ!!」
「まだ初心者の癖に図々しい女だが気に入ったぜ俺はよォ!!」
「好きなだけ買えばいいさ!!」
「おうよ!! そして最初に自分の相棒を決める時間は誰にも邪魔はさせねぇ!!」
「邪魔者は表で待ってやらぁ!! てめぇらずらかるぞ!!」
「「「「「ヒャッハー!!!」」」」」
ゾロゾロと出入り口の方へ足を運ぶ荒くれ者達。全員がいなくなった後にボーイッシュな顔立ちの少女が呟いた。
「なんか、色々と濃いけど悪くない人達みたいだったね」
「見た目で判断しちゃいそうになるよね」
「気を遣わせてしまったから銃を買おうっか」
ガンナー、傭兵に限らず銃器類は一定のステータスが求められる武器である。購入こそできるが装備はできない獅白ぼたん達は初期装備の銃器類しか使えない現実を突き付けられ、今後使いたい銃火器を買ってキープ、ステータスの振り分けをする方針を定めた。
「早く撃ってみたいなー♪」
「すごい! 本物を持っているような肌触りと重さ!」
「ゲームの中ならば合法的に人、じゃないプレイヤーを撃てるのもいいね」
「最高じゃないかNWO」
「レベルも上げて他の銃も使って撃ちたいなー撃ちたいなー」
「「バンバン!!」」
和気藹々と銃を片手に英語を日本語に変換されている会話の花を咲かせる少女や女性達の声を聞いてしまったボーイッシュな少女「大空スバル」は戦慄した。
「English組が当然のように銃を手にする光景を見ることになるとは思わなかったぜ」
「自由に所持を許されてる国だから不思議じゃないよスバル先輩。私もコントローラやマウスで撃つんじゃなくて自分の手で撃つ感触を早く実感したいね」
「ぼたんも見たことがないぐらい顔が輝いているよ!」
銃は買った。弾もたくさん購入して手に入れ、移動手段として車やバイクも手に入れた彼女達はカジノ内に戻ろうと出入り口の壁に寄りかかっていたハーデスと合流した。
「手に入れたか?」
「使いたい銃は一定のステータスの数値にしないと使えない状態ですがね」
「これからレベルを上げていけば使えるさ」
「あのー銃を片手ずつ持つことって出来ないですか?」
「できるぞ。かなりリスクはあるが、まずはSTRの数値が100必要になる」
「STR100・・・!?」
そこまで必要なのか、と絶句する彼女達に初期のステータスポイントをそこまで振っていないのが火を見るより明らか。
「そうだ。だからこそ最初はそこまで普通に上げるのに40レベル以上は必要になるわけだが質問していいか?」
「質問?」
「猫又おかゆが言っていた『出遅れた者』という称号を全員で手に入れる予定だったか?」
「いや、このゲームにそんな称号のような物が貰えること自体知らなかったから」
「NWOを介して皆と会って皆と遊ぼうって言うぐらいの認識しかしていなかったよ」
「ガチ勢ってわけじゃなくて、のんびり遊ぼうって感じです」
そういうことだったか、と納得する。
「それなら『出遅れた者』という称号を手に入れておいても損はさせないと思うぞ。二丁拳銃を使いたいために必要なSTR100はレベル20以内で直ぐに貯まる。逆にそこまで強さを求めていないならそれでもいい個人の自由だ」
「その『出遅れた者』って称号は人気なんですか?」
「NWOをする前にゲームをしたら最初に何をすればいいのか、どうやったらすぐに強くなれるのか下調べしたら、100人中100人が今後のゲーム活動には『出遅れた者』の取得が必要不可欠だーって答えるぐらいはな」
「その称号を取得の有無の差が3倍ですもんね。人気じゃない筈がない」
「でも、どうやって取得できるんだっけ?」
「ゲーム内で1週間もモンスターと戦わずに過ごすことだ」
「長いですね。それじゃあずっと退屈になるんじゃないですか?」
「そうならないために始まりの町には様々なクエストがあるし、色んな景色を見れたり生産職だってある。自分で物を作ったり作物を育てたり、NPCとコミュニケーションもすることもできる。先にNWOをしているプレイヤーのギルドに入るか自分達のギルドを設立するとかもな」
最初の内はやることたくさんあるから退屈することはない。そう伝えるハーデスに大空スバル達は自分達が思っていたよりNWOは奥深いことを何となくでも察した。それから賭けに夢中になってるときのそら達を呼び集める中、さくらみこが競馬場にいて・・・・・。
「やったぁー!! 大当りぃー!!
見事に的中してメダルを稼いでいた。