一週間までまだ日がある『ニューライブ』は今日もゴミ拾いのクエストや他のクエストをこなす活動をそれぞれしていた。ゲームの世界、ある種の異世界ファンタジーに飛び込んだような体験と感覚を堪能して楽しんでいるときのそらは仲間達と小休止を兼ねてマイホームに戻ろうとした時、見知らぬ男のプレイヤーに話しかけられた。
「ねぇ彼女達~。今暇なら俺達と一緒に遊ばな~い?」
「ごめんなさい。『出遅れた者』の称号が欲しいからモンスターと戦えないんです」
「じゃあ、俺達がこの町の事を色々と教えてあげちゃうよ」
「大丈夫でーす。私達は【蒼龍の聖剣】のメンバーなので先輩達から教わっていますからー」
「あ・・・そう・・・じゃあ、俺達は失礼するわ」
知る人ぞ知るギルドの名を出せばナンパ目的、下心ありありなプレイヤーがすぐに退散するほど絶大な効果を発揮する。初心者のときのそら達を守る看板として役目を果たしており、そのおかげでNWOを楽しめる―――。
「おい! お前ら! 配信動画を見ろー! 白銀さんがまた何か仕出かそうとしているぞー!!」
「「「「「っ!!!」」」」」
突然一人のプレイヤーが叫び出した。ざわっと場がざわめき出したプレイヤー達は案山子のようにその場で足を停めて配信を見始めた。
「なんだ・・・何しているんだ白銀さん?」
「イカルちゃんもいるじゃないか。二人で・・・泥だんごを作っているのか?」
「泥だんごなんか作ったってスキルが・・・・・ゑ?」
「イカルちゃんの手の中にある泥だんごが形を変えたぞ? 四角い・・・レンガ?」
「白銀さんなんてとてつもない量の泥だんごを触れただけで像に作り変えていくぞ。何だこのスキル?」
「【土のオーブ】ってスキルらしいぞ。もしかしたら触れた土を自由に変えるスキルかもしれないな」
「・・・・・有用性あるか?」
「正直わからん。だけど、白銀さん達が見つけたスキルだぞ? 【悪食】とか【エクスプロージョン】並みの凄さがあるスキルなら・・・・・」
「試してみるか・・・・・」
「ああ、作った泥だんごを投げ合っているオルトきゅん達が可愛い!!」
「うわあああああああああ!! ロ、ロリ猫の白銀さんとおニャン子のイカルちゃんがまたユリユリしてるぅうううううう!!」
「「「「「「「なにいいいいいいいい!!?」」」」」」」
何とも愉快な人達が多い事だとと微苦笑を浮かべながら、マイホームに戻ろうとしたがちょっと気になってしまったのでハーデスのマイホームにお邪魔した。出迎えてくれたエルフのNPCに案内してもらい、いざハーデスとご対面したら。
「「にゃんにゃーん!」」
猫又おかゆのように猫耳と長い尻尾を生やす幼女と少女が見ていて微笑ましいぐらい絡み合っていた。そのそばには着物を着た子供、座敷童子のマモリが配信カメラを回していた。
「可愛いっ!!」
「「え?」」
さくらみこが思わず叫んでしまって二人だけの世界が終わり、その声を反射的で振り返りときのそら達の存在に気付いた。そして・・・顔が一気にリンゴのように真っ赤になったハーデスが背中を丸めて土下座をする姿勢で顔を床に埋めて両腕で頭を抱えた。
「・・・・・穴に入りたいぃぃぃぃ」
キュンッ!
羞恥心のあまりの言動であり、その姿が猫そのものでときのそら達の胸の内が甘い疼きを覚えた。
なお、その様子は配信動画にも流れており見ていたプレイヤーにも悶えさせていたこの日・・・マモリの配信は歴代最高視聴者数を記録した事で。
ピンポーン
≪おめでとうございます。NPCによる配信動画の視聴者数が合計1億人、再生数が10億回に達成しました。これによりNPCの活動範囲が拡大します。また配信カメラも『座敷童マモリ』に変わります≫
「・・・・・え?」
「あい?」
ハーデスにしか届かないアナウンスを聞き、思わずと顔を上げて首を傾げた童顔で着物を着た座敷童のマモリを見た。
「マモリ、お前外に出られるようになったのか?」
「あい!」
宙に浮いていた配信カメラがなくなっていて、本当に彼女自身が配信カメラとして変わってしまったのかハーデスはまだ判らなかった。それよりもハーデス達は神妙な顔で微妙な雰囲気の中で見合わせると。
「あの・・・可愛いですねハーデスさん」
「くっ、いっそ殺して!」
「ぶ、はははは!? くっころだー!!」
「男・・・幼女からそんなこと聞く日が来るなんて思わなかったよ」
「でも可愛いなー。抱きしめちゃおと」
「白上も触りたい! 合法的にロリを抱きしめることができる!」
「お持ち帰りはダメだぞフブキー!」
猫又おかゆがハーデスを、白上フブキがイカルを後ろから抱き締めては可愛がり始めた。変わる変わる彼女達からの可愛がりの最中で、紫色の長髪をツインテールにした悪魔族の少女『常闇トワ』が問うた。
「どうしてそんな小さい姿になったんですか?」
「【幼齢期】っていうスキルだよ。効果は見ての通り幼児の姿になれるんだ」
「それってどこで買えますか!?」
「中央広場のスーパーマーケット。この前教えたスキルを買うことができる場所にあるけど」
教えた矢先に「買ってくるー!」と毛先が黒い白い尻尾と一つに結った長い白髪をなびかせながら颯爽と走って行った白上フブキ。自分で使いたいからかわからないが絶対に手に入れたい強い意志を感じさせた。
「んーと、そっちは順調か?」
「やることが多すぎて退屈な思いはしていないです」
「それは何よりだよ。もしも戦闘訓練したかったら従魔と戦わせるよ」
「本当ですか? ありがとうございます。それからここに来る前、何か他の人達があなたのことで盛り上がっていたんですけど何か遭ったんですか?」
「スキルの発掘をしていただけだよ。その最中に盛り上がっただけー」
「どんなスキルが?」
「省略して言えば、MPを消費することで泥や土の形状を意のままに変えることができるスキルだよ。それからHPを消費して与えることで土人形、ゴーレムっぽいのが作れる」
「強いスキルですかね?」
「HPがある盾代わりが増えると思った方がいいかな。HPがある限りゴーレムを無限に作れると思うから」
「私達もそのスキルを取得できますか?」
「出来るけど簡単じゃないよ。最後までやり遂げてみせるって熱意があるなら教えるけど」
どうする? と尋ねられた彼女達は自分達も配信動画をしていたので視聴者から様々なコメントが送られてくる。
『半端な覚悟でやらない方がいいぞ!』
『白銀さんの大体のスキルはどれもこれも強力な分、取得がかなり困難を極めて諦めるプレイヤーが後を絶たない!』
『女の子には絶対取得できないスキルがあるほどだからな!』
『【土のオーブ】の取得方法は知りたいけどなー』
『【八艘飛び】なんて途中に襲ってくる巨大な鮫から回避しないと行けないほどだぞ』
『とりま、取得方法だけ聞けるようにお願いできませんかねー』
『白銀の魔王のスキルを手に入れば自ずと俺達も強くなれるのがこのゲームの常識化となっている』
「えっと・・・視聴者の人達がやらない方がいいとか教えてほしいとか、色々と・・・・・難しいんですか?」
「最初に必要な事は、目標達成するまで何時間も延々と繰り返してやらないといけないぐらいだよ」
「それだけ? それなら配信じゃ当たり前のようにやってるからできるよ」
「そう? だったら自分ができそうだと思う人は一緒に来て」
そう言って桃色の長髪に獣耳と腰に尻尾を生やす『博衣こより』の腕から抜け出して畑に行くハーデスは、イカルと一緒に泥だんごを作っていた場所にまでときのそら達を案内した。
「まずはあの泉の水を使って、この畑の土で泥だんごを1000個作って」
「泥だんご!? 1000個も!?」
「それからレア度と品質☆5以上じゃないとスキルが手に入らないから頑張ってねー」
「そこまで必要なの!?」
「それに関しては泉の水と畑の土は元々レア度と品質が高いっぽいから気にしなくていいけど、泥だんごを1000個作らないといけないのは確実だよー。途中で中断してもスキルの取得条件は継続したままだから、自分なりのペースで泥だんごを目標の数まで頑張って」
ときのそら達をそう告げてイカルを残して不動産屋へ直行したハーデス。畑の拡張をしてくるという言葉を残して。残された彼女達は、教えられた通りに泉から水を汲んで畑の土に掛けて泥だんごを一つ作ると―――。
「あ―――スキル【泥たんごⅠ】とスキル【土を弄る者】を取得できた!」
「こんな子供の遊びをしたらスキルが手に入る仕組みにもなっているんだにぇ」
「でも、どっちも攻撃用のスキルじゃなくて土の形状が良くなるだけみたいだね」
「確か数字があるスキルは熟練度を高めればレベルが上がっていく話だったね」
「最大はⅩだから、そこまで上げるには1000個も作る必要があるってことかー」
「今日は100個頑張って作ってみるぞー!」
小休止する目的が泥だんごを作ることに変わってしまったが、ときのそら達は特に気にせず子供の頃に戻ったかのように泥だんごを楽し気に作り続ける配信は、視聴者も真似て泥だんご作りに駆けさせたのだった。畑の拡張を終えたハーデスが女堕天使の姿で戻ったら、イカルとまたスキルの発掘の遊びを再開する。
「イカル、今度は火起こしをしよう」
「火起こし?」
「木と木を押し付けながらこうやって素早く回す。そうすると先端の部分が擦れて熱くなるんだ。その熱で出来る火の粉、火種を燃えやすい物に燃やして焚火に必要な火を作ることを火起こしと言う。この方法以外にも色々な火を点ける道具ややり方があるから試してみよう」
「はーい!」
最初は先端が丸い木の棒と用意したかんなくず(結晶樹)、ゆぐゆぐ達の協力で鍵穴みたく削ってくれた火切り板を地面の上に置いて昔ながらの火起こしを始めた。
「やっぱりこういう作業はPSでしかできないか」
「つ、疲れます~・・・・・これ、いつまで回さないといけないんですか~?」
「煙が出てから本番だイカル。ほらこんな風に」
黒く焦げた木屑に交じって煙を発する小さな赤い火の粉。それを見ているイカルの目の前で地面に落ちた火種をかんなくずで包み素手で持ったまま振り回し続けるとさらに煙が発生し、ついにハーデスの手の中でかんなくずが燃えた瞬間。
『スキル【火を熾す者Ⅰ】を取得しました。スキル【原始の炎】を取得しました』
「あっ、スキルがまた手に入りました!! ・・・お姉ちゃん、手、熱くないんですか?」
「私達はマグマを泳げるのだから熱さなんて関係ないよ」
「そうでした!」
「でも、リアルではこんな方法で火を熾してはダメだからねイカル」
「はい!」
『ちょ―――! また白銀さん達がスキルを発掘したっぽいぞ!?』
『火熾しで取れるスキルがあるのかよ!!』
『まぁ、そもそも俺達はあんな方法で火を必要としないプレイヤーだし、料理人のプレイヤーだってキッチンで火を使うから』
『もっと言えば魔法や道具で火を点けるから。それに誰もあの昔のやり方をしない便利な世の中を生きる現代っ子の俺達よ』
『となるとまだ他にも発掘が可能なスキルがあると・・・・・?』
『お、思いだせ俺ぇー! 白銀さんより先に取得できるスキルの、現代に通ずる何かがあるはずー!!』
マモリの配信を見ているプレイヤー達が大いに騒いでいる間にもスキルのレベルを最大まで高めようと、火を熾し続けた。それも何時間もかけて1枚の板に10個の鍵穴状の溝で火を熾した。イカルは早々にバテてハーデスの応援と手伝いに徹することにした。
数時間後―――。
『【火を熾す者】のレベルがⅩに達しました。これによりプレイヤーの系統:炎のスキルが五つ以上あることで【原始の炎】が【炎のオーブ】に進化しました』
【炎のオーブ】
火属性のスキルの消費MPが2/1になる。
1日10回のみMPを消費しないで炎を意のままに操ることができる。威力はINT依存。
取得条件
3分以内に火を1000回熾すこと。
系統:炎のスキルが5つ以上あること。
二つ目のスキルを進化させることができたのだった―――。