目標数の泥だんごを作り終えたときのそら達。本来の目的の小休止はハーデスのホームでしていると、他の『ニューライブ』のプレイヤーが集まってきて和気藹々と姦しくなった。日本家屋の主は・・・・・。
「お姉ちゃんここで何をするんですか?」
とある山にイカルと来ていたのだった。しかしハーデスの行動がさっぱりわからない少女は歩きながら問えばこう返された。
「雷のオーブもあるなら、土と炎のオーブのスキルの取得は自分の手で産み出したから手に入ったように、電気も作って取得しないといけないはずだ。この山に来たのはさっきのドワーフの王弟や温泉宿の店主から電気を生み出す鍵となるアイテムが手に入る山なんだ」
グリフォンの背に乗るイカルと久しぶりに誘ったオルト達と未開拓の山の崖に足を運んでいたハーデスは、登山をするかのように麓を道なき斜面を登りながら採掘ポイントを探す目をルルカの姿に移す。
「それにナヴィゲーターの情報と一致している。まさかそういう情報まで精通しているとはな」
「冒険者様が求める場所を案内するのがナヴィゲーターですから当然です!」
ハーデスの前に歩き、ふんす! と鼻息が荒いルルカは久しぶりの仕事なので張り切っていた。
「ですが、どうしてあれをお求めに?」
「予想が当たっているならどうしても必要でな」
そうであってほしいと願望を心中に抱きながら、岩肌が剥き出しな崖を登り続けるハーデス一行は天に昇る白煙を見つけた。その場所へ向かって走るハーデスにグリフォンを走らせて追いかけるイカルと一緒に―――。
「見つけたぞ・・・天然の温泉、そして硫黄が採掘できるポイント! オルト達採掘の作業に取り掛かれ!」
「わかった!」
採掘ポイントにクワを打ち下ろして叩きつけるオルトーズとは別行動するドリモも、ツルハシで天然の温泉地帯がある周辺にある採掘ポイントへ向かっていく。その間にハーデスは耐熱性ある土器と薪にレンガをインベントリから出した。
―――その様子をここまで200m以上距離を置いて付いてきたプレイヤー達が見ていた。
「こんなところまで来て何をしようとしているんだ白銀さん達」
「この臭い・・・硫黄だ」
「お前、この異臭が何なのかわかるのかよ」
「家が温泉宿だからこの臭いは嗅ぎ慣れてんだ。ってことはあの湯気は温泉か・・・」
「何? ということは白銀さん達は露天風呂に入りに来たってことなのか」
「・・・スクショのチャンス、あるか?」
「それ言ったら混浴を申し出た方が100倍いいに決まってるだろうが」
「いや~・・・無理だぜそれは。見てみろよ、ずっとこっちをフェンリルと九尾の狐と赤い馬が見ているぜ」
「あ、もう俺達の存在は気付かれているんですかそうですか」
「赤いティラノさんやプテラノドンみたいな恐竜組も、いつでもこっちに襲ってきてもおかしくない姿勢でいらっしゃるからなー」
「俺達がいることも忘れるなよ~???」
「ヒャッハー・・・・・!!」
「我等がギルドマスター、そしてガンナーの救世主におかしな真似は許さんからな」
「ゲェ・・・!!! 世紀末のガンナー共いつの間に!?」
「敵に回したらおっかねぇ連中まで紛れ込んでいたのかよ。何で誰も気付かなかったんだっ!」
「わ、判ってるって。だからこうしてこんなに離れているじゃないか。白銀さんだけでなく【蒼龍の聖剣】はイベント以外敵に回すつもりはねぇよ」
「白銀さんがいなくなった後は俺達の自由だろ? ちゃんとその辺も弁えているから信用してくれ」
という話し声は聞こえていないハーデスとイカルは、焚火で熱している土器にオルト達が採掘で手に入れた硫黄を入れて溶かし始めた。時間を掛けて完全に溶けた硫黄ごと冷やした土器を割ると球状の硫黄の塊が完成した。
「よし、後は現実のようにできるか試すだけだ」
「どうやって試すんですか?」
「こうやって革で思いっきり玉を擦り続けるのさ。イカルやってみろ」
「わかりました!」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ・・・・・!!!
硫黄の玉を擦り続けるイカルの長い髪がウニのようにツンツンになった。
「へ? わぁああ!? か、髪の毛が何かおかしくなってるー!?」
互いが互いに反発し合っているようにまっすぐ伸びる自身の髪に慌てふためくイカルを微笑ましく見つつ手を差し出した。
「おお、人力でも静電気が出来るのか・・・・・イカル、両手を出してくれ。片方は球を持ったままで」
「は、はい・・・(バチッ!)ひゃっ!? ・・・あれ? スキルが手に入りましたよお姉ちゃん・・・の髪もとんでもないことになってるー!!」
「ああ、よし、成功だ! これを試したかった!」
【電荷Ⅰ】と【帯電体】のスキルを取得したイカルに呼応してハーデスも同じスキルが手に入った。予想通りの展開に喜ぶハーデスであったが、まだ満足はしていなかった。
「もう一つ硫黄の塊を作ったらまた移動するぞ。物のついでに手に入るかもしれない素材がある可能性がある。それがあろうがなかろうが次に磁石を作るぞ。ルルカ、この大陸でよく落雷が発生する場所を案内してくれ」
「かしこまりました!」
その日から【雷のオーブ】取得に精を出すハーデスとイカルだった。温泉地帯を中心に捜索するハーデス一行と追いかけのプレイヤー達。ハーデスがついでにあるかもしれない素材は30分ほど歩いた先の崖の下にあった。崖の下は窪みに広がるエメラルドグリーンの水の塊が。
「あった、多分あれだ」
「奇麗な緑色の泉ですねー」
「探していた原料なら、あの泉はプレイヤーにとって毒の泉だ」
「毒なんですか? でも私達なら毒は通用しないから平気だと思いますよ?」
イカルの純粋な信用と信頼に対して否定的に首を横に振るハーデス。
「【毒無効】を無視する毒のスキルがある以上、このゲームにも絶対はない。だから先に私が降りて確かめて来る。オルト達もここで待機してくれ」
「わかりました。気を付けてください」
躊躇なく窪地へ移動するハーデスに呼応して泉の水面が盛り上がって姿を見せた金髪に肌がエメラルドグリーンで天使のような翼を生やす巨人の女。
「ん? ・・・・・やっぱりか。長引いたらこっちが不利になるとは」
ステータスにデバフが付与されたことに気付く。それは【毒無効】を貫通し、回復アイテムが一切使えないどころか―――ハーデスの防御力すら無視するものだった。
「しかも一定時間に固定ダメージが入るとは恐れ入る」
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!」
足を振り上げてハーデスを押し潰さんと打ち下ろしてくる巨女から躱しながら飛ぶ。旋回しながら前進の確認をし、横凪ぎに振るい払ってくる腕を避けて懐に飛び込んだ瞬間。
「【相乗効果】【手加減】【悪食】【エクスプロージョン】」
炸裂した爆裂魔法をゼロ距離から食らった巨女は空を仰ぐように後ろから倒れた。HPは一気に5割も減ってあともう一押しといったところで巨女は立ち上がり咆哮した。大きく開けた口からエメラルドグリーンの煙を吐いて戦闘フィールドの上空は覆われた緑色の雲に塗り替えられたどころか数多の水滴、雨が降り出した。
「・・・・・毒の威力が更に増すだけでなく、装備にもダメージを与えるか」
『破壊成長』の効果を受け継いでいる堕天の王シリーズの装備は緑の雨に濡れてダメージエフェクトである赤い光のポリゴンを出すも、ただハーデスの防御力を底上げにしているだけでしかないが、HPの減り具合が更に増したのを確認、それだけでなく巨女のHPまで回復するという事実に手を天に衝き上げた。
「なら、雲を薙ぎ払うまでだ。【鼠算式Ⅱ】【アルマゲドンⅣ】【範囲拡大】」
緑色の雲がさらに上から落ちてきた無数の巨大な隕石で穴が開き、そのまま巨女と泉に直撃した。泉が水飛沫を上げて津波のように弾け吹っ飛び、巨女は窪地の底に倒れたのをハーデスは畳みかけに再び懐に飛び込んだ。
ドッカアアアアン!! ドッゴオオオオン!!
止まない緑色の雨の範囲外にいるイカル達は長引いている戦いに、戦闘音を聞き駆けつけた他のプレイヤー達と一緒に崖の下を見守った。
「なっ、あの白銀さんがダメージを受けてる!!?」
「あの緑色の雨に濡れているからか!」
「緑色の女型の巨人、もしかしなくても強いよな」
「旧大陸に白銀さんの防御力を突破するモンスターが存在していたなんて・・・・・」
もしかしたら、という可能性が浮かび上がるプレイヤー達の間で緊張が走り。
「・・・・・というか、俺達も参戦出来ないのか? ここダンジョンじゃないみたいだしフィールドならさ」
「だったらこの雨の中に突っ込んでみろお前」
「じゃあ手だけ・・・・・げぇっ!? 【毒無効】を取得しているのに毒状態になったぞ!? あ、ああ! 装備が侵食ってデバフで耐久値が削れていくー!!? 毒のダメージもハンパない!!」
怖いもの見たさの気分で緑色の雨に手を突っ込んだら、毒状態となってしまったプレイヤーの心配は誰一人せず寧ろ人柱になってくれた感謝すらせず、判明した効果の分析を始め出す前にハーデスが勝利した。
「【毒無効】を突破する毒の雨なのかよヤバすぎるだろ・・・・・あ、鬼の里で見た絨毯爆撃だ」
「エグイってあれ・・・・・!」
「さすがの巨女も堪え切れなかったか。お、トドメを刺したみたいだ。やっぱり白銀さん強ぇー」
「最後のトドメ、噛みついていなかったか?」
「ははは、そんなはずはないだろ? ・・・そうじゃないよな白銀さん?」
お姉ちゃーん! と言いながら窪地にいるハーデスの下へ向かうイカル。その後、元に戻った泉から毒の水を大量に採取してこの場を後にするハーデスがいなくなった泉に次は自分達が戦ってみようと酔狂なプレイヤー達が好奇心に窪地に足を踏み入れると、少しして再び巨女が出現して・・・・・。
「無理無理無理ィー!!」
「回復アイテムが使えないってどういうことだー!?」
「ぎゃあああああ!! 俺の装備が溶けていくぅー!!!」
緑色の雨の中で死に戻りするプレイヤー達の光景が出来上がり、戦闘を回避したプレイヤー達と世紀末のガンナー達は見守りつつ合掌した。ギルドマスターの防御力を無視するモンスターに敵わないと悟り、一度戦えば装備の耐久値を減ること判っててわざわざリスクを負う必要はないと、賢いか賢くないか本人次第であるが戦わないでよかったと安堵するのは自然かもしれない。
当然ながらそんなフィールドのボスらしいモンスターの情報がタラリアに持ち込まれ、新モンスターの討伐に乗り出したプレイヤーは一部を除き装備の消失と敗北が絶えなかった。
そんなことになっているとは露も知らずで温泉地帯から離れたハーデス達一行は、ルルカの案内で静電気山に訪れていた。この山のボスより格上のユニークボスが稀に落とす超強力な電磁鉱石が手に入るという、ルルカの話を聞きユニークボスのみ狙って戦うこと1時間。
「ラッキーでしたねお姉ちゃん! 何度もユニークボスのゴーレムが早く出てきて欲しかった磁石が20個も手に入って!」
「ああ、しかもだイカル。イズとセレーネに訊いてみたら電磁鉱石の存在を知らなかった。恐らく他のプレイヤーも手に入れているかもしれないが秘密に隠されていて、未だ誰も知らない新種として扱いにされてもおかしくない鉱石だった」
「おおー!」
「本当なら砂鉄を採取して、熱して砂鉄を鉄の棒にして(カクカクシカジカ)最後は天然の強力な雷に鉄の棒を当てて強力な磁石を作るつもりだったんだが・・・手間が省けるかもしれない」
ホームに戻ったハーデス達は火神霊工房の炉でヒカムが高品質な電磁鉱石のインゴットを2つ作って貰い・・・・・。
ガチンッ!!
「インゴットの状態でも磁力があるのか」
「くっついた!」
雷系の装備が作れそうであるがハーデスはインゴットを棒状に変えてもらった電磁石は一先ず放置。
「まずはこのスキルを最大まで上げ続けるぞイカル」
「頑張りましょう!」
硫黄玉と革を持って、今の中で必死に新しく手に入れたスキルのレベルを上げ続けた。それが一週間近くかかるとは思いもしなかっただろう。しかし【電荷Ⅹ】になっても【帯電体】を進化させ【雷のオーブ】を取得するのに必要な系統:雷の数が足りず取得できなかった。
「ということでこれからクラフト、大規模な物作りを始めたいと思う。電気に関する事だからスキルが手に入るかもしれない」
「どんなものを作るんですか?」
「人力での発電所だ」
「???」