バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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スキルの発掘5

 

 

1日はまだ終わらない事をいいことに、【雷のオーブ】を取得した間もなくゲーム内での夜―――この時間帯であるスキルの取得に臨む俺はサイナの協力の元オルト達と『影法師』を始めた。

 

「ほーら鳥の影だぞー」

 

「おおー! 本当に鳥のように見える!」

 

「次はウサギだ」

 

「かわいいー!」

 

サイナが持つライトに照らされてる障子の向こう側に立って手の形を組合わせて、イヌ・ネコ・キツネなど様々な影を表現する。それだけで【影法師Ⅰ】【闇を操る者】のスキルが手に入ったのを切っ掛けに影絵を始めることにした。手作りの切り絵を用いて童話の劇を始めると、オルト達が自分達もやってみたいと言い出されてしまい、台本作りまですることになった。用意した台本を読みながら影絵の劇をするオルト達は違う劇の度に代わり、切り絵を動かしながら台詞を読み、言語を操れないリック達には翻訳石を代わる代わる使わせて喋らせてた。マモリが配信していていようと【闇のオーブ】を取得するまで続けていた他所に。

 

 

『今夜も白銀さんと従魔達の影絵が楽しみだ』

 

『あの切り絵作ってるの白銀さんなら上手だって話だよな』

 

『いいなー! 私もオルトちゃんと一緒に影絵を見たいー!』

 

『みんな楽しそうだもんね。見ていて和むよ』

 

『小さい息子と娘と一緒にネットの動画で見ているよ。可愛いおっきなクマさんがいるー! って大はしゃぎしてた』

 

『子供達もいつかこのゲームを遊ぶ日が近いとみた。楽しく遊んでくれると運営もほっこりだろう』

 

『だが奴らの本性はイタズラと悪意のイベントやスキルを作るある種の魔王達!! 子供の為に討伐しなくちゃ(使命感)!!』

 

『同じ気持ちだ同士よ!!』

 

『シンデレラの劇は妙に迫真の演技を感じた反面、ところどころ面白いアドリブがあるのはズルいよ白銀さーん』

 

『昨日の金太郎なんて話の途中で影絵じゃなくて本人達で相撲をし始めた時は(;゚Д゚)って顔をしていた自覚はある』

 

『でも面白かったから(´∀`)b』

 

『白銀さんが出るまでクママちゃんの無双が見られたファンとして応援しないでいられなかった!!』

 

『フェンリルまで土俵の外に放り投げたのはヤラセだろうと、思わずスゲーって感心してしまったワイです』

 

『幻獣にも負けない、さいかわつよなクママちゃん!』

 

『配信の映像に交じってるプレイヤーの歓声が聞こえてくる度に羨ましいと思う』

 

『影絵ってどういうものなのかなと調べて実際に見たら「ああ、ふぅん、こういう感じの」って達観して面白味も感じなかったB級映画並み気分を、白銀さん達の影絵を見てたら素直に楽しいと思わされた昨日の俺は今夜の影絵を楽しみにしてる』

 

『童話の話を中心にしてるから、今度はハーメルンの笛吹男かな?』

 

『赤ずきんちゃん・・・・・逃げて赤ずきんちゃん! そのお婆さんは違うー!!』

 

『ピーターパン・・・・・は無理か』

 

『白雪姫と小人達の歌を聞いてみたい』

 

 

―――なんてどこぞの掲示板で話題にされていることを知らない俺は切り絵を作り続けていたある日の夜。

 

『全裸で待機して早くも1時間か。焦らせてくれるぜぇ・・・・・』

 

『明日学校だけど、劇を見ないと眠れない病気になってしまった責任を取っ手もらわねば』

 

『社会人の我々一同も同じであります!』

 

『そろそろ始まるぞ!』

 

『チケットの販売は!?』

 

『ダメだ! 既に完売だ!!』

 

『へへ、チケットなんて関係なく中に入ればこっちの・・・・・アッ、警備員もとい巨大バチに捕まってしまったあああああ!!!』

 

『くぅっ、警備が厳重なんて!』

 

『バカやってないで静かにしろ。もう始まったぞ』

 

始めた影絵の劇の内容は魔王討伐の為に人間界と冥界を繋ぐゲートを発見した神聖協和国の協会が、勇者を単独で送ったことから始まる。

 

未開の地と世界に送り出された勇者は人類の天敵あるはずの悪魔族を殲滅せず、最初に立ち寄った村を襲う巨大で恐ろしい数多の龍を単身で倒し退け、村を守ったことから村の悪魔達に感謝された。しかし、勇者である自分は魔王を倒す宿命と義務がある。悪魔も例外ではない。しかし力なき悪魔族も殲滅して本当に平和になるのか? 人も悪魔も種族が違うだけで心と言葉が交わすことはできるのでは? そう思った勇者は魔王がいる王都に向かい、直接魔王と会った。

 

 

≪問おう魔王よ。なぜ人類の敵となる?≫

 

≪それが世界が求めているからだ。善と悪の果てしない戦いを≫

 

≪世界が求めている?≫

 

≪逆に問おう勇者よ。悪を根絶して世界は本当に真の平和を得られるか?≫

 

≪・・・・・≫

 

≪目に見える目の前の大きな闇や悪は取り除けよう。しかしながら、人間個人の諍い、国の規模による人間同士の戦争はお互い主張をぶつけ合えば簡単に起きる。いつも流さなくていい血を流し、落とさないでいい人間の命を落とす。魔王が居ようと居まいが関係なしにな≫

 

≪では、お前達は一体何なのだ≫

 

≪世界に創造されし必要悪、世界一の被害者よ。―――勇者だった私が魔王になってそのことに気付いた時は、この世界に絶望したものだ≫

 

≪なっ・・・!?≫

 

≪勇者よ。冥界に来て民を殺さず邪龍を倒したな。貴様にとってどちらも人類の敵であろう、なぜ躊躇する≫

 

≪そ、それは・・・っ≫

 

≪ふっ、力なき者にはその勇者の剣が振るえんか。随分とお人好しの勇者であるな。故に断言しよう。お前は神聖国と教会によって勇者の称号と地位を剥奪され、人間界の全ての敵とみなされてしまうぞ≫

 

≪っ!?≫

 

≪何故だ、と言いたそうだな。当然だろう? 一人も悪魔を殺さず、私とも戦わず殺さず人間界に帰還すれば魔王を倒せない勇者は用済みとなる。次の勇者の誕生には既に存在する勇者が邪魔なのだ。勇者は世界にただ一人のみ。私の言っていることはわかるか?≫

 

≪―――――≫

 

≪その表情を察するに理解したようだな。そう・・・・・勇者は死なない限り新たなる勇者が誕生しない。神聖国と協会は新しい勇者に鞍替えするべく、お前をあらゆる方法で殺しにかかるであろう。それが世界の法則であり、魔王が滅んでもまた次の魔王が誕生することも神々が定めた運命なのだ≫

 

話し合いを経て、世界の真実を知ってしまった勇者はとてもではないが戦う意思を無くしてしまい「せめて邪龍の首だけ持って行け。奴らに邪龍の存在を知らしめておけばしばらく誤魔化せるだろう」という魔王の助言通りに数多の邪龍の首を持って人間界に帰還した勇者は、「ゲート付近にこの数十倍の邪龍が迫っていた。魔王討伐どころではなかった」と報告した。

 

その後、嘘から出た実として一度だけ邪龍が人間界に繋がるゲートから現れた。神聖国と協会は勇者の言葉を信じたので、勇者の一生を人類の希望と平和の盾にし、二度と人間界への帰還を許さなかった。冥界で暮らすことになった勇者はお人好しにも邪龍を幾度も倒し、困っている悪魔達を助け、悪魔族の女性と結婚して子を儲け、残りの余生を幸せに過ごしたことなど神聖国と協会は知る由もない。

 

―――冥界で言い伝えられている童話のような物語を影絵の劇で披露してみた。いつもと違う物語で不思議に思うだろうが、そんなこと知っちゃこっちゃない。

 

『【影法師】のレベルがⅩに達しました。これによりプレイヤーの系統:闇のスキルが10個以上あることで【闇を操る者】が【闇のオーブ】に進化しました』

 

 

【闇のオーブ】

 

闇属性のスキルの消費MPが2/1になる。

 

1日10回のみMPを消費しないで闇を意のままに操ることができる。威力はINT依存。

 

取得条件 

 

【影法師】を最大レベルの状態で1000人以上のプレイヤーに視聴される事

 

系統:闇のスキルが10個以上。

 

 

ようやく手に入ったこのスキル。よしっ、と拳を握って喜んだ後マリモに向かって視聴者に告げる。

 

「みんなのお陰で手に入れたかったスキルが取得したので、事前に言っていた通り影法師の劇はこれにてお仕舞いにしたいんだが」

 

 

『えっ? もう手に入ったの!? 早すぎじゃないか!?』

 

『そんなー! あと一週間ぐらい白銀さん達の影絵を見させてくれよー!』

 

『何気に影絵を楽しみにしていたから急に終わらされると・・・・・』

 

『もう少しだけ続けて欲しい。子供達が凄くガッカリするんだよ。というかしてる』

 

『俺達もガッカリするぜ白銀さーん!』

 

おおう、案の定なコメントが・・・・・どうしよう、こうなると思って事前に宣告したのに。

 

「自分達でやろうとは?」

 

 

『自慢じゃないが不器用なんだけど?』

 

『人を笑わせる才能がないので』

 

『切り絵なんて作れるかー!』

 

『白銀さんに切り絵と台本の製作の依頼をしたとしても、俺達じゃつまらないって言われるのがオチですので』

 

『白銀さんだからここまで人気なの自覚して?』

 

そこまで言うか。えー・・・・・どうしよう。

 

「因みに次は何を見たいか参考に教えてくれ」

 

 

『白雪姫!』

 

『もう一回だけ金太郎!』

 

『えーと、悪の親玉が実は主人公の父親だったオチの物語を』

 

『ざまぁ系の物語ってできますか?』

 

『桃太郎!』

 

『童話以外の劇ってアリ? 三國志とか西遊記とか』

 

『おい、三國志とか白銀さんを殺す気か。絶対長編作になるぞ』

 

本当だわ。ゲームどころではなくなるし登場人物が多くて大変だぞおい。・・・・・しょうがない。

 

「もう一週間延長だ。これで絶対に最後だからな」

 

 

『あざーっす!!!』

 

『やった! まだ続くぞー!』

 

『明日も楽しみにしてるよ!』

 

『ありがとう白銀さん。子供達も喜んでくれてる』

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