バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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最後の戦いとサメの少女

 

るしあが入り口を塞いだ鉄格子を開けられないかと思って揺すってみるが、ビクともしない。力技では無理だろう。

 

「先輩、ここって罠ですか?」

 

「いや、最終ステージだぞ。ほら陣形を組め。不知火フレアと兎田ぺこらは、前衛の宝鐘マリンと白銀ノエルと潤羽るしあの後ろに並べ。前衛の三人がモンスターの動きを止めた瞬間を狙って、声かけを忘れずに攻撃しろ。できるだけお互い味方に当てないように、当たらないように立ち回れ」

 

陣形を作る彼女らの後ろで待ち構えていると、ガコンと音を立てて天井が開くのが見えた。そして、そこから大量の水が部屋に降り注ぎ始める。

 

「えっ! 水が入ってくるんだけど!?」

 

「ヤバい溺れちゃうって!」

 

焦る彼女達を他所に、俺達を溺れさせようと錯覚させる大量の水は鉄格子の高さスレスレ程度で止まっていた。大部屋全域が水浸しになり、体育館くらいの面積の池が出現している。それに心なしか安堵する彼女達を落ち着かせる暇を与えさせないことがまだある。

 

天井に開いた穴からは、今度は水ではないものが降ってきたのだ。

 

「また虫ー!? しかもこんな狭いところで大群はいやー!!」

 

「うわぁ・・・10匹以上はいる。しかもその中に一際大きく、赤いのがいるよ」

 

名前はアメメメンボ。相変わらず名前が手抜きだな。だが、強化されてる以上気は抜けない。

 

「これって、マズいかもしんない・・・・・?」

 

現状、俺たちがいる鉄格子前で、水の深さは足首程度だ。だが、部屋の中央付近に行けば俺でやっと首が出る程度だろう。

 

となると足場にできる場所は、この円形のすり鉢状になっている部屋の、壁際付近だけとなる。しかも水で彼女達の動きが阻害されている。

 

「ボスのアメンボは溶解液を広範囲に撒き散らしたり、突進してくる。HPが一定以上も下がれば羽を使って速度を上げての突進を繰り返すから気を付けろ」

 

「手伝ってくれないの?」

 

「俺を頼らないとゲームができないんじゃ、この先だって何もできないことになるだろ。アドバイスはするから頑張れ。兎田ぺこらは虫が苦手で戦いたくないならモンスター達の動きを牽制しろ。敢えて当てずに味方の近くに誘導するか遠ざけるとか」

 

「そういうこともできるの? わかったぺこ!」

 

「不知火フレアは壁際を回りながら走って動きを止めてるモンスターを不意打ちか奇襲攻撃だ。絶対に中央に行くなよ。足場が深くて泳ぐ羽目になればアメンボの格好の餌食になる。それからぺこらもそうだがアメンボに追い掛けられたら宝鐘マリン達のところに誘導しろ。その後は全員で雑魚モンスターを倒せ」

 

「はい!」

 

「宝鐘マリン達は背中合わせでその場から動くな。三人が動かずとも向こうから近付いてくる。装備の耐久値が無くなろうと負けはしないはずだ。動き回る不知火フレアと兎田ぺこらを追い掛けるアメンボが来たら倒してやれ、一緒にな」

 

「「「わかった!」」」

 

始まったアメンボVSニューライブ。アドバイス通りに壁際に走り回る不知火フレアは三人が攻撃する近くにいるアメンボの背後から矢を放ち、兎田ぺこらも追い掛けてくるアメンボから逃げつつ誘導する。・・・・・なんでこっちに連れてくるだろうか。

 

「せんぱーいだけ何もしないのは不公平だー!! 働けー!!」

 

「いい度胸だな。今夜の夕飯は兎肉の唐揚げしよう」

 

「ちょ、なにその大きな火の玉はァー!?」

 

キャアアア!! と悲鳴をあげながら俺から逃げる兎田ぺこらに向けて放った火炎放射がちょうど彼女を追い掛けていた数匹のアメンボに当たってしまい倒してしまった。

 

「つよっ! 一撃で!? あ、でもこれなら・・・・・フレアー! ぺこらみたいに先輩に押し付けちゃうんだぺこ!」

 

「えええ!?」

 

「・・・・・」

 

「無理! 自力で頑張る!」

 

火の玉を向けながら一瞥すれば、不知火フレアは自力で倒す意思表明を示したので見逃す。

 

「あ、弾切れだ。リロードするからよろ~」

 

「剣で戦え~!!」

 

「ボスのアメンボが突っ込んでくるよ! 二人共避けて!」

 

躱す白銀ノエルの疾呼に潤羽るしあも避けたが、弾のリロード中に気付かないどころか動けない宝鍾マリンが突進攻撃をもろに受けて無様に床に転げ俺の横で「ぶえっ!?」と壁と衝突した。

 

「大丈夫か?」

 

「・・・・・大丈夫じゃ、ないよ!! あんのクソ虫がぁー!!!」

 

がばっと立ち上がってリロード終えた銃を片手に突入する彼女の背中を見送り、たまに五人が倒し損ねてこっちに来る零れたモンスターは【悪食】で対処した。その間に羽の推進力を使って高速で水面を滑り始めた赤いアメンボが五人を翻弄する。

 

「ボスだけになった途端に速くなった! 矢が当たらない!」

 

「動くなぺこー!」

 

「きゃ!」

 

高速移動しながら範囲攻撃と突進を繰り返すようになった赤いアメンボは、五人にとってその厄介さは想像以上だろう。速いせいで五人の攻撃が当たりづらいだけでなく、高速でスライドすることが可能だからまだ戦い慣れてなくボーリングのピンのように突っ立っている宝鍾マリン達に突進攻撃して吹っ飛すのだ。

 

「ハーデスさん! アドバイス!」

 

「一度五人集まれ。突進された一人を除いて四人で捕まえた状態で攻撃すればいい」

 

「いやいや!? 大きな虫を捕まえるなんて怖いんだけど!?」

 

「わ、私も無理・・・・・!」

 

・・・・・虫嫌いならこの提案は酷か。しょうがない。壁際から離れて五人と肩を並ぶ。

 

「動きを止める。止まった隙に攻撃しろ」

 

「わかった!」

 

赤いアメンボがこっちに突進してくる間に大将の動きを一時的に封じるスキルを発動した。

 

「【咆哮】! ―――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

「「「「「ッッッ!?」」」」」

 

突然の絶叫に五人が驚き、赤いアメンボも全身が硬直したようにその場で動きを止めた。

 

「ほら、動きを止めたぞ。攻撃しろ」

 

「は、はい!!」

 

弾かれるように動き出す五人は一方的に攻撃を繰り返してようやくついにその巨体が沈んだのであった。一拍遅れて申告する風に深い溜息を吐く五人はこっちに向く。

 

「さっきのスキルは何ですか? 叫んだだけで動きを止めてしまうなんてビックリしました」

 

「【咆哮】って声が届く範囲にいるプレイヤーやモンスターの動きを数秒間止める効果がある、一応誰でも頑張れば取得できるスキルだ」

 

「それってどうやって?」

 

「一度の十匹以上のモンスターを大声で追い払ったり驚かせるだけだ」

 

ボスが倒れたのに、鉄格子は解除されなかった。代わりに部屋の反対側の壁がスライドし、新たな通路が出現した。そこへ歩む俺についてくる五人を先導する形で通路の先にある小部屋へ足を運んだ。

 

部屋の四隅には強い光を放つ四角形の行灯のような物が吊るされている。その高原に照らされている白い布が蠢き俺達を見上げる。

 

「ここが最終地点だ。そして日本家屋を手に入れるために必要な鍵のひとつがコイツから手に入る」

 

「バ、バケ~・・・・・」

 

ホームにもいる「オバケ」のNPC。兎田ぺこらは俺が事前に渡しておいたオバケ用の食材アイテムを恐る恐ると手渡し、ヒビの入った小汚いビー玉を手に入れたのであった。

 

「先輩・・・これが日本家屋を手に入れる鍵の一つぺこ?」

 

「そうだぞ。他にも三つ昭和の遊び道具を手に入れたら、妖怪が暮らす街に訪れて四つのゲームをズルやチートを使わず制覇する必要がある。それが終わったら座敷童が満足するまで何度も遊ぶんだ。同時に途中で手に入るアイテムは絶対に取ってはダメだ。座敷童の絵だけ手に入れるんだ」

 

「絶対にダメなの? 途中で取ったらどうなる?」

 

「取ったら取ったで問題はないが、マヨヒガの誘惑に負けたら日本家屋を手に入れる機会は二度とない」

 

手に入れる物は手に入れた以上、この場に用はない。来た道に戻る俺達は下水道のダンジョンを後にして久しぶりの外の空気を吸えたところで五人を海人族が暮らす島、俺とペインとドレッドとドラグしか知らない場所へ案内した。

 

「あの壁の穴があるだろ。あの穴で五分間も嵌ってれば【小型化】のスキルが手に入るんだ」

 

「マジであの穴の中に? ・・・・・悪戯とかされない?」

 

「兎田ぺこら達がいるんだし、この場に誰もいないから問題ないだろ。それでも見られる抵抗があるなら仕切りを用意しようか?」

 

「・・・・・一応、お願いしよっかな」

 

白銀ノエルの要望で崖の周囲にカーテンで作った仕切りを用意して待つこと5分。

 

「スキルが手に入ったよー! どうすれば穴を抜けれるのー!」

 

「【小型化】を使え」

 

「分かった!」

 

聞こえた声からすぐに仕切りの奥から出てきた、身体が小さくなってる白銀ノエル。次に宝鍾マリンも挑戦すれば無事に【小型化】のスキルを取得できたところで造船所へ案内する。

 

「わぉ、港町風な場所じゃん。船を作るってここなんだね?」

 

「見ての通り、プレイヤーがその場所に突っ立って船を造ろうと真っ最中だ。必要な数の素材を集めたらこれから何時間も自分の手で組み立てるか、システムにお任せしてプレイヤーの代わりに造船してもらうんだ。集めた素材のレア度と品質が高いほど完成した船の強さが決まるらしいがな」

 

どこのギルドのプレイヤーかは知らないが、造船所のドックの前に立って真剣な表情でオリジナルの自分達の船を完成しようとしている。その横を通り過ぎて開いているドックを利用して【蒼龍の聖剣】の船『水瓏』を出した。

 

「おおおー!?」

 

「想像以上に奇麗な船だ!」

 

「これ全部水晶で・・・・・?」

 

「まるで宝石の船みたいで綺麗だぺこ!」

 

「本当にそうだね。こんな綺麗な船が大海原に進むなんて・・・・・」

 

宝石の船か・・・二人に教えたら喜んでくれそうな褒め言葉だな、と思いを胸に抱きながら船内を案内した後に宝鍾マリンには実際に船を操ってもらった。

 

「ねぇ車の練習より緊張するんだけど! 船の免許の取得試験に落ちた船長が無免許で船を動かすなんて!」

 

「でも上手いじゃん。次は私も動かしてみたい」

 

「私もー」

 

「海賊の船長が船を動かしてビビるんじゃねぇぺこよ」

 

「頑張ってマリン」

 

操舵輪の前で楽しそうにしている五人の様子を眺めていた時、誰かが連絡を入れてきた。誰かと思えば・・・。

 

『センパーイ。がうる・ぐらだよ~』

 

「久し振り、どうした?」

 

『センパイが教えてくれた二つのスキルのレベルがⅩになったからお礼を言いたくてー』

 

ほう? あれから一週間以上経ったがとても頑張ったようだな。

 

「それならもっと凄いスキルが手に入るかもしれない方法があるぞ。欲しいか?」

 

『欲しい!』

 

可愛さと元気のいい返事を貰ったので兎田ぺこら達に新たな用事を伝えて解散した。がうる・ぐらと連絡をしながら待ち合わせ場所として俺のマイホームで待ってもらい合流を果たす。

 

「あ、センパーイ」

 

「さて行こうか」

 

「はーい!」

 

がうる・ぐらを地底湖に案内する。辿り着けば大勢のプレイヤーが釣りをしていたり水中に潜って泳いでいる様子が見受けられた。

 

「おおー! 綺麗な洞窟!」

 

「久し振りに来たが懐かしい光景だ。それじゃぐらにはこれを渡しておく」

 

酸素の残量を回復するアイテムを譲渡する。ショートカットキーにセットしておけば一々インベントリから出さずとも使用できる方法も教えて。

 

「次にがうる・ぐらが手に入れるべきスキルは【水耐性】と【水無効】のスキルだ。基本的にボスモンスターの水攻撃を【水無効】に進化するまでひたすら受けないといけないんだ。大丈夫か?」

 

「大丈夫!」

 

「わかった。あとそれから、ボスモンスターが噛みついてきたり突っ込んできたりする動きをしたら全力で逃げることだ。水属性以外の攻撃は無意味だから」

 

「はい!」

 

「最後にがうる・ぐらが【水無効】を取得できたら両腕でこんな風に〇を作ってくれれば、俺がボスモンスターのHPを1まで下げる。そしたらがうる・ぐらがトドメの一撃はボスモンスターを食べて倒してくれ」

 

「モンスターを食べる? 美味しい?」

 

「白身魚の味がして美味しいよ。ちゃんと噛んで食べないと倒したことにならないから頑張ってくれ」

 

「わかった!」

 

勢いよく挙手する彼女を応援した後は、地底湖に潜ってボスモンスターがいるエリアに続く門を開いて長い通路を泳ぐ。そして懐かしい古代魚のモンスターと出会い頭、勇ましくあるいは無謀にも接近していくがうる・ぐらに古代魚が身体の左右に無数の強い輝きを放つ水属性の青白い水のレーザーを当ててみせた。が、いくらモンスターが強化されていようと攻撃を食らった彼女はビックリした表情を浮かべつつケロリとしていた。

 

「おお、ビックリ・・・・・」と言っていそうだなと他人事のように見ていると、次は青白い水を放つ魔方陣とは別の白い魔法陣が浮かぶ。爆発するスプラッシュバブル、爆発する泡か。・・・・・これもがうる・ぐらに直撃してもノーダメージ。続いては口を大きく開いて突進してくる古代魚のその動きを見てがうる・ぐらが捕食される側の魚になったごとく泳いで逃げ回った。逆に水属性の攻撃をしてくれば自ら攻撃を受けに飛び込む。そうでないなら躱し続ける。それを【水無効】の耐性を取得出来るまで繰り返した。

 

1時間後―――。

 

お? がうる・ぐらが戦闘中にこっちを向いて頭の上で両腕を〇の形にした。ついに【水無効】を手に入れたか。高速で近づいて【相乗効果】で【手加減】と【悪食】【パラライズシャウト】の合わせ技で古代魚のHPを一瞬で1だけに残した。

 

事前に打ち合わせした通りに動くがうる・ぐらが古代魚の腹部に噛みついては食べ始める。そんなHPドレイン行為を一回で済ませると古代魚がポリゴンと化して消滅した。

 

数時間後―――。

 

「みんな見て見て! 新しいスキル! すごいよ!」

 

「ぐらが凄い興奮してる。どうしたのかしら」

 

「新しいスキルが手に入って喜んでいるみたいだけれど・・・・・なにこれ」

 

「ぐらのためにあるようなスキルじゃないか?」

 

「実際どんな感じなのか見せてくれない?」

 

がうる・ぐらと仲がいい四人の前で次々とスキルを使って披露する。【古代魚】に至ってはモンスターを使役しているような感じだったので、見せつけられた四人は拍手を送った。

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