たくさんのスライムを確保し弱体化させればいつも通りキングスライムとなってレイドボス戦が始まった。ニューライブにとって初めて戦うモンスターであるが、彼女達より強いプレイヤー達が奮戦したことで誰一人欠けずキングスライムが倒れてスライムとビッグスライムの討伐が完了した。
「お疲れ、休憩が必要ならしばらく自由時間にしようか」
「時間は大丈夫ですか? 時間が経ったらクエストが失敗するとか」
「今日中にクエストを達成しろと時間制限のクエストではないから大丈夫だけど、メタル装備を持っていないニューライブだけでメタルスライム達を倒すことは不可能に近いから」
「メタル装備かぁー。先輩ならたくさん持っていないんですか?」
「前回の【蒼龍の聖剣】の祭りイベントで全部使ってしまったから無い。だからスキルで倒すしかないの。それでも当てにくいがな」
「逃げ足が速いから?」
それは実際に戦ってもらえばわかる、と敢えて教えずしばらく猫のNPCと交流、街中を歩いて散策、無人となっている所々に破壊された跡がある城内を探検したりと自由時間を過ごすことにしたニューライブ。そんな時間を経て海水で隠されていた洞穴が引き潮で口を開けたので、ニューライブを呼集してから向かった。
「こんな洞窟の中にメタルスライムがいるなんてね」
「誰も気付かないよこんな場所」
「そもそも洞窟の中で戦わないといけないなら大変じゃない?」
彼女達の声が洞窟内だから反響してよく聞こえる。道中の絶壁には『宇宙の星塊』で螺旋階段の形にして楽々と上がって障害を越えた。それから長い洞窟の中を歩いて行けば幻想的な光で広い洞窟を照らす空間のエリアに辿り着いた。
「うわ、きれー!」
「本当だね。写真を撮っておきたいぐらいだよ」
「真ん中の湖も光ってるよ!」
始めて訪れた場所、神秘的に見える光景を目の当たりにして感動すら覚える。だが、それはプレイヤーを引き寄せる罠でもあり最初にその罠の餌食となった俺だからわかるので、湖に近付くさくらみこを始め十数人が頭上から落ちてこようとする鈍色の塊に気付かない。『宇宙の星塊』を使って細長く伸ばし、彼女の胴体に巻き付けると鈍色の塊が湖を蓋する風に着地する直前に引っ張って間一髪のところを助けた。
「むやみに動くな。ここはメタルスライム達と戦うエリアなんだから警戒しないとダメだ。ほら、戦闘準備。もう戦いは始まっている」
び、びびったぁ・・・・・と漏らすさくらみこの頭に軽く叩いて催促させる。
「ハーデス先輩。メタルスライムの弱点って?」
「弱点はない。メタルスライムのスキルと防御力を上回る攻撃や魔法をするしかない。一番有効なスキルは【悪食】と【エクスプロージョン】のようなスキルだ」
「他のスキルはダメなの?」
「それを確認するために戦ってみろ」
すでに始まったメタルスライムとの戦闘。魔法使い達の魔法が放たれるも、キングメタルスライムの身体から触手のような鈍色の塊が鞭のように飛び出して、スパパパパンッと数多の魔法を打ち払って迎撃してみせたことでニューライブのメンバーは大きく目を張った。
「ボク達が知ってるメタルキングスライムじゃないねぇー」
「弓ならどうだろう。・・・・・あ、あっさりと弾き落とされた」
「どわはああああっ!!?」
「ああっ、スバル先輩が大きいメタルスライムにド突かれたー!!」
「硬いよっ~!? わためハンマーの威力は100も超えてるのに ダメージが1ってなんでなの~!!」
「遠距離からの攻撃はメタルキングスライムに無効化されて、近付こうとしたら突っ込んでくるメタルスライムにビッグスライムに吹っ飛ばされて攻撃がしづらい!」
メタルスライムとの戦闘で悪戦苦闘する彼女達の様子を高みの見物中の(実際に宙に浮いてる)俺から伝える。
「メタルスライムのHPは10、メタルビッグスライムのHPは50、メタルキングスライムのHPは100だから頑張れ」
「「「「「手伝って(よ!!)くださいよ(先輩)!!!」」」」」
「手伝って欲しいならせめてメタルスライムを半分ぐらい自力で倒せ。それに私のスキルを付与したままだから使ってみようと思ったスキルの効果を確認してから攻撃しろ」
甘えは許さん、とニューライブを突っぱねる俺に対して彼女達は俺のスキルを確認し始める。
「えーと、【悪食】ってありとあらゆる攻撃をMPに変換するスキルらしいよ」
「足りないMPの量をそれで補うことができるなら・・・・・」
「ボク【機械神】と【機械創造】と【機械人】って興味あるかも」
「吾輩は【至高の堕天使】と【滅殺領域】と【届かぬ渇愛】! というか、今使う!」
「我輩も!」
あ、待てーーーと言い掛けたが【混沌】のスキルがあるから系統:闇のスキルのダメージは無効になるか。危険な赤黒い色のサークルと迸る放電が発生する中、二人が黒い翼を複数背中から生やして頭上に足元のサークルの同じ色の輪っかが浮かび上がり、銀髪と赤よりの桃色の髪が黒く染まったラプラス・ダークネスと魔乃アロエ。二人の足元から広がるサークル内にいるニューライブにはダメージすら受けてないぐらい何の影響が起きていない様子だった。
「おおー二人とも堕天使になったじゃん」
「でも前に見たハーデス先輩のような髪色と翼じゃないんだね」
「それでもカッコいいよ二人とも。足元の魔方陣から雷のようなエフェクトが出てるし」
そりゃあ俺の【至高の堕天使】とは別のスキルを使ってるからだわな。
「ちょこも堕天使になってみたら?」
「私は悪魔なのだけれど?」
「それならこの【溶岩魔人】ってスキルがあるから使ってみたら? いかにも魔族っぽい名前じゃん」
癒月ちょこが回りに勧められた形でスキルの効果を見ても、実際はどんな感じなのかよくわからないまま【溶岩魔人】を使った彼女は、上半身が巨人の形をしたマグマの中に戸惑った表情で固まっていた。
「ちょ、ちょこちゃーん!?」
「大丈夫なの!? 熱くない!? 苦しくない!?」
周囲が溶岩の中に閉じ込められた仲間に慌てふためくが、当の本人は今の自分の現状にまだ把握できていないだけで特に問題なさそうであることをニューライブは気付いていない。
「・・・・・えと、どっちもそんな事はなくて、あのハーデス先輩、これってどうすればいいですか?」
「移動したいなら頭で意識して動かしてみろ。手はプレイヤーの動きに真似して動くから。そこから出たいときは『解除』って頭の中で浮かべるか口にすれば抜け出せる。因みにその状態だとHPが1000と固定されていて、HPが全部なくなったら解除してしまうから気を付けろ」
「わかりましたやってみます。えーと・・・あ、動いた動いた! ちょっと楽しいかもー」
ゆっくりとメタルスライム達の方へ進む溶岩の塊。メタルスライム達は自ら溶岩の塊に突進して、癒月ちょこが赤々な手で受け止めようと動かしたら、その手の中に自ら飛び込んでしまったメタルスライム達は燃焼ダメージ=スリップダメージを1ずつ受け始めた。
「え、なんかスライムがダメージを受けてるよ?」
「【溶岩魔人】の身体は溶岩と熱の塊。操るプレイヤー以外は全て耐性がないとあんな風にスリップダメージを受けるのよ。でも身体が大きすぎて水魔法なんかで攻撃されたらあっさり負ける。移動だって遅いしな」
「そうなんだ・・・・・じゃあ、このまま任せても大丈夫? ちょこ先輩メタルスライムを倒してるから」
「そうとは限らない。ほら見ろ」
メタルキングスライムが体から伸ばした触手で何度も溶岩の体に叩いていく、体を縮めて固まってしまった癒月ちょこのバリアの役割になっていた溶岩の身体がHP0となったことを証明するように崩壊して彼女が無防備で地に落ちていく。
「今のように楽観的にいられないからな」
地面に激突する直前の癒月ちょこの身体を受け止めた同時に【次元跳躍】でメタルスライム達から一瞬で離れる。何故か目が合ったら顔を赤らめる胸の中に収まった癒月ちょこを下ろす。メガホンをインベントリから出して全員に伝える。
「言っておくけど、私のスキルは広範囲攻撃が多い。仲間に当たらないようにするのは、この限定的な空間の中では絶対に無理だから」
「じゃあどうすれば?」
「遠慮なく巻き込め。私の防御力と色々と無効にするスキルがあるし、即死してしまうダメージを受けても一度だけHP1で耐えられるスキルもあるから簡単には死に戻りしないと思う。仮にもし死に戻ってしまった人がいたら後で私と再挑戦をしよう。いいな?」
「わかりましたー。じゃあ、みこちとスバルは一番前に行ってもらおうか」
「「おいふざけんな!? なんで俺(みこ)が生け贄みたいに行かなくちゃいけないんだよ!」」
「大丈夫大丈夫、先輩の言うことを信じれば簡単には死に戻りしなおって言ってたかぶべっ!?」
あ、メタルキングスライムの触手が猫又おかゆの横腹に当たって、錐揉みしながらぶっ飛んだ。それを見てある意味自業自得だと笑うさくらみこと大空スバルと対照的に猫又おかゆを心配するかびっくりするときのそら達。
「各自、このクエストを達成することだけ意識しろ。なんならスキルを使う前に【手加減】というスキルを使えば、モンスターのHPが1だけ残るように、プレイヤーもHP1だけ残せるようになるからな」
「了解でござる!!」
「はーい!」
改めて攻撃を始めるか再開するニューライブの彼女達の中には銃で攻撃する女性がいて、メタルスライムに当たる銃弾は確実にダメージを蓄積していき他の誰よりも多く倒していた。それでも飛び道具や遠距離からの攻撃には敏感に反応するメタルキングスライムに防御されて簡単には倒させてくれないでいるが。
「メタルスライムの数がやっと半分になったよ!」
「これで手伝ってくれるよねハーデス先輩!」
「まったく、私まで駆り出させなくてもいいだろう」
彼女達の頑張りでメタルスライムの数は始めて戦うときよりも減った。故にどうしても俺に手伝ってもらいたい精神の一人に困ったものだと思いつつ、左腕をただ、横凪に振るった直後。俺の目の前に具現化した七つの閃光がメタルスライムの真上から落ちて爆発が生じた。その威力はすべてのメタルスライム達のHPを1割以下にしてしまうほどだから、ときのそら達は驚きながらも楽々とスムーズに倒し、メタルキングスライムも獅白ぼたんの銃弾で沈んだ。
「やっと倒した~! ってちょ、レベルがすごく上がっているんだけど!」
「えええ~!? こ、こんなにあがるのー!?」
「あ、ヘルキャットが産まれた!」
「このアイテムって何に使えるんだろう?」
「うわぁ、ステータスポイントがたくさんだ。どれに振ろうか迷うなぁ・・・・・」
和気藹々とその場でステータスポイントを振ったり、元々の目的が達成できて喜んだり、お互い労いの言葉を掛け合う彼女達に呼び掛ける。
「すぐにここから離れるぞ。他のプレイヤー達もここにやって来るから私達がいつまでもここにいたら邪魔になるだけだ」
「「「「「はーい!」」」」」
地上に戻る転移陣を選択してダンジョンから離れる。ケットシー王国の出入口の前に転移されると常闇トワから質問を受けた。
「先輩、このメタルスライムのジェルって何ですか?」
「用途不明の物だ。今までは何に使えばいいのか常闇トワのように誰もわからないアイテムだったが、それを繊維にしては布に、衣類に作ることが今のところ用途になっているぞ。当然武器の素材にもなれる」
「服の素材に?」
「それだけでなく普通のスライムのジェルも服の素材にすることで新たな装備が出来上がるのさ。しかもその二つの服を合わせると面白いスキルがあるから備わる。それを完成させたのが私が着ているこの装備の元、名付けられたのはスライムスーツだ」
スクショしておいた三つのスライムスーツの性能と詳細を常闇トワに見せた。聞き耳を立てていた他の面々も常闇トワの横や後ろから覗き込み感嘆の息を漏らした。
「【装備スロット】ってスキル凄く便利そう! レベル50毎に一つスロットが空くのは大変だけどね」
「ハーデスさん、スーツしか作れないんですか?」
「他のも作れるはずだ。服を作る専門のプレイヤーに頼めばな」
「因みにこの服を作ってもらおうとしたら、二つのスライムのジェルってどのぐらい集めないといけないんですか?」
「30人ぐらいのプレイヤーから回収しないといけないぐらいやっと一着が作れるが何か?」
あ、結構大変そうだ。って雰囲気を醸し出すニューライブ一同。
「ま、いまさっきメタルスライムの恩恵、経験値がたくさん手に入る体験をしたばかりのお前達にはその苦労も魅力的に感じるはずだ。あと何回かメタルスライム達を倒せば今日中にレベル50は余裕で超えるさ」
「「「「「・・・・・」」」」」
「因みに今回のクエストは達成したから、メタルスライム達がいるさっきの洞窟はもう一度EXクエストを受けずとも、気軽に何度も出入りが出来るダンジョンとなってるからな」
「え、そうなの? じゃあ、あの洞窟があるところには今度潜っていかないとダメ?」
「それ以外にも引き潮という海水が沖に引く時間を待ってから洞窟の中に入ることもできるが、今度は私の協力無しでメタルスライム達を頑張って倒せ」
そ、それはキツいよ・・・!! と、誰かが漏らした。
「またあのダメージ1の苦労をしなくちゃいけないの?」
「いや? 全員にメタルスライムのジェルや他のアイテムが手に入ったなら、それを武器の素材にすればいいだけだ。それが手に入ればメタルスライム相手にダメージ1ではなくなるぞ」
「そうしようとしたら武器の素材に使うメタルスライムのジェルってどのぐらい必要?」
「一から作るんじゃないなら武器によって必要な数は変わる。それでもいいならまたジェルを集める周回でもするか? 付き合うぞ」
俺からの提案に彼女達はしばらく話し合い、休憩の後ならしたいという考えを決定したその結果。
ニューライブ全体の平均レベルは50を超えた。ステータスポイントが450も増えた彼女達は、レベル150並みの強さを得たと道理になるな。しかし強化されたモンスター達はまだ戦い慣れていない初心者プレイヤーにとって強いので油断や怠慢、傲慢などできやしないので今後の彼女達がどうなっていくのか楽しみだな。