各々と誘いに乗ったアメリア達がホームにやってきて、ロックを会わせ精霊の種を渡した。その前に先に赤星ニャーとイワンと来てそのまま居座るように畑を見回っていたウルスラから問い詰められた。
「白銀さん何あれ! モンスターを一つ前の進化前に退化する効果がある若返りの泉って! しかもプレイヤーを死に戻りから復活できる効果もあるなんて!?」
「あれか。今のところ状態異常の回復すらも使い道がないオブジェクトだがな。欲しいなら採取していいぞ」
「いいの!? ありがとう!」
「俺もいいかニャー?」
「是非俺も」
「一向に構わない」
「白銀さーん! お邪魔しまーす!」
「俺も来たぜー!」
全員が揃ってわいわいと賑やかになる。エリンギもログインしているが来る気配はない。今頃何しているのやら・・・・・。
「白銀さん考え事?」
横から顔を覗き込んでくるアメリアに肯定的に言い返す。
「ここにいないエリンギが何してるのかなっと」
「エリンギ?」
「ん? エリンギならホームの改造もとい改装に忙しいみたいだぞ」
ぜってー昆虫博物館並のホームに魔改造しているかもしれないとオイレンシュピゲールが言ったところで、苦虫の事を思い出した。
「エリンギのホーム、行ってみるか。頼んでた事があるし」
「頼んでた事? 虫関係で?」
「あるアイテムの合成素材に虫が必要だからさ、その虫の増殖が可能なホームを持ってるインセクトテイマーコンビに依頼していたんだよ」
「エリンギ、そんなホームを持っていたのかよ。ってことは今頃ホームの中は虫だらけってことか。アメリアとウルスラは大丈夫か?」
「まぁ、ゲームの中だから現実よりマシだと思えば」
「白銀さんを盾にするから平気よ」
おいコラ、と俺も含めウルスラ以外の男性人がアメリアにツッコミを入れた。彼女もエリンギのホームに行く俺をついていく主張したので、自然な流れで全員昆虫博物館もどきになっているかもしれないエリンギのホームへ足を運んだところ。
「ここ、なんだな」
「エ、エリンギ・・・・・なんてホームを持ってるんだよ」
「そもそも今のいままで俺達がこんなホームの存在に気付かなかったのも驚きなんだよな」
「気付かなかったのは白銀さんのホームとギルドホームばかり行き来していたから、個人のホームなんて誰も関わらない限り気にしないと思うわよ」
「あー・・・・・納得だねー」
「ていうか、見続けると今にも動きそうなホームだな」
初めて訪れた身内のホーム。外見は大きな緑の居城に見えるが実際は頭部だけの虫の顔だ。見た目はオニヤンマ、無数のテレビ画面がくっついたような複眼が窓ガラスのようにびっしりと張り巡らせてあって、それがトンボの目のように左右にある。ホームの出入り口はオニヤンマの口になっていて、俺達は自ら口の中に入らないと行けない感じになっているそんなエリンギのホームの大きさは、上から見たら比較的に例えやすい東京ドーム並みだった。ゲームの中でしかできないことを、想いを具現化したプレイヤーに圧倒されている俺達の目の前に、二匹の人型のキメラ昆虫が開かれた扉から出てきた。
「やぁよく来てくれた。ギルドメンバーでもみんなが初めての訪問だ」
「ようこそ!!」
歓迎してくれているのは分かるが、人によっちゃあ近寄りがたいホームとプレイヤーが現れると心構えをしてしまうよなこれ。
「こんなホームに上がってみたいプレイヤーは虫好きか怖いもの見たさな奴しかいないって」
「ホームの見た目的にも近寄りがたいしね。虫の頭がホームなんて気持ち悪いし怖い」
「あと本人達の姿が怖いし、気持ちが悪いって思われるし」
「「「うんうん」」」
そ、そんなっ・・・・・と心底ショックみたいで四つん這いになって落ち込み出すエリンギとトンボに催促する風に話し掛けた。
「早速なんだけど、本題に入る前に中を見せてくれるか? 興味があるからさ」
ガバッ!!
「「喜んで!!」」
一瞬で元気になった虫達に詰め寄られて、手を掴まれて中に連れていかれた。アメリア達もついてきては俺と一緒に目の前の光景に目を奪われた。
「え、ホームの中に森?」
「虫が暮らしやすい場所の一つといえば森だろ」
虫の顔だから「何言ってるんだ」ってエリンギ表情がわからねぇ・・・・・。
「因みにここは見ての通り玄関で、名前は森の天道と付けましたです」
「森の天道?」
「はい、他には上の階ごとに洞窟の部屋の闇の暗天道、湿気が多い湿地の天道、砂漠だらけの熱砂の天道、渓谷の天道といくつか部屋があります。白銀さんが求めてる苦虫は渓谷で繁殖してますよ」
トンボの説明にこういうホームもアリなんだなと俺は素直に感心した。
「各階にこれだけ広い規模のルームがある個人のホームなんて凄いな」
「いや、俺達のホームはギルドホームになってるんだ白銀さん」
「え、そうだったの? だったらどうして言わなかったのよ。他のみんなもこういう自然あふれてるホームは嫌いじゃないと思うよ?」
「俺達の楽園を無造作に歩かれたくないからだ。入っていいのは白銀さん以外なら虫好きのプレイヤーかお前達だけだぞ」
おやま、嬉しい事を言ってくれるな。それならこういう手土産を持って来た甲斐があるものだ。
「エリンギとトンボ。持って来た手土産だ。種類によっちゃあ餌にもなるだろ」
「え、お土産? ありがと・・・・・・オニスズメバチのロイヤルゼリーとエルフ特産の花のロイヤルゼリー?」
後者に至ってはリヴェリアの父親、あのマッチョエルフ長が普段娘が世話になっているお礼として里帰りから戻ってきたリヴェリアに持たせたものだ。その味は花の香りを嗅がせしばらくは虫系のモンスターとの遭遇率を高めるベルアンの好物の一つだ。他にも野菜や果物も渡すと恐縮しつつ受け取ってくれた代わりに、渓谷のルームへ案内してもらい森の奥でたくさん繁殖していた苦虫を確保させてもらった。
「ねぇ、自然だらけのルームなのはわかったけど二人の個人の部屋ってないの?」
「このホームの至る所が俺達の部屋だぞ」
「はいそうです」
・・・・・至極当然のように言うこの二人に脱帽した。自然こそルーム、その発想は思いつかなかったと。
「こいつら、完全に自分も虫だと認識していないかニャー」
「いつか絶対自分が人間だったことを忘れてるだろ」
「それ以前にこの二人は蟲人に転生しているんだからもう人間じゃないだろ」
「蟲人を選んで遊ぶ他のプレイヤーは今のところ見掛けないけれどね」
エリンギとトンボはガチのガチ勢になったからここまでして遊びたいプレイヤーは希少なはずだ。その希少の枠に収まったプレイヤーは色んな意味で凄くなりそうだがな。
「最近掲示板に顔を出さないけど、そんなにホームの事で忙しいの?」
「ホームじゃなくて虫集めだ。新種の虫を探し回っているから」
「モンスター図鑑に載っている虫系のモンスターを全種コンプリートするのが僕達の目標なんですよ」
トンボの言葉を聞いてモンスター図鑑を見ると、この二人の熱意がどこまでなのかわかりやすくなっている。気にしていなかった、気付かなかったから虫系のモンスターが50種類以上も発見されていることになっていた。オニスズメバチとその女王バチ、デスワームもそうだ。
「運営の中に虫好きがいるってわかりやすいな。まだ発見されていない100種類以上の虫がいるんだし」
「そうなんですよ。だから探し回っているんですけど今では全然見つけられなくて」
「それなら普段プレイヤーが行かないか行けない場所に、図鑑に載っていない虫系のモンスターもいるかもしれないな」
アドバイスのつもりで行ってみたら、アメリア達がふと思い出した風に口にした。
「行かないか行けない場所か~・・・・それだったら星域にもいたよね」
「いたわね。見た目が台所の黒い悪魔とか蜘蛛とか」
「身体の色や模様は格好いいけどな」
「二度と出会いたくない虫モンスターなのは変わりないニャー。一匹が一匹、めっちゃ強いし馬並みに大きいかったし」
イワンと目の前にいるエリンギ達も行ったことがあるか知らないけど星域にも確かに虫のモンスターはいた。
・・・・・なんだ、人をジッと見つめてよ。
「白銀さん、他にも俺達の知らない虫とか見掛けてますか?」
「俺は知らない。心当たりがありそうなNPCがいるし探せそうなアイテムが一つあるが」
「どこに行けば会えますか?」
エリンギが期待に満ちた虫目・・・・・近い、近いわ!
「NPCは俺のホームにいる。訊いてみようか」
「「お願いします!」」
土下座をするほど凄く頼まれてしまい、一同は俺のホームにとんぼ返りをすることになった。プレイヤーより情報を抱えているナヴィゲーターである彼女に久々の仕事をお願いしてみたところ。
「申し訳ございません。虫の情報は専門外でしてわかりません」
「ということは専門にしているナヴィゲーターがいると?」
「いえいえ、ルルカ達にはいないだけでこの大陸の虫が集まる場所だけ知っているんです。ご案内致しましょうか」
「「よろしくお願いいたします!」」
俺が言う前に廊下に待たせていたエリンギとトンボが機敏に反応して顔を出したので「ぴぇっ!?」と異形な虫を見るなりルルカは俺の背後に隠れた。
「お前らしばらく人の姿に戻れ。ルルカが怯えて案内できないぞ」
「「そんなっ!?」」
「だから二人には入らず待ってろって言ったのね白銀さん」
「というか、この子は誰なんだニャー? ナヴィゲーターって言ったけど」
その質問に対してルルカ達の種族の事を教えれば、全員驚いて目を丸くした。
「旧大陸ならどこでも未攻略や未到達の場所へ案内してくれる!?」
「アイテムの情報も知っているぞ。ルルカ達を雇うことができたら前線組や攻略組のプレイヤーより先に見つけることができるしな」
「それって俺達も雇えるのか?」
「もう無理だ。『出遅れた者』の称号を持ってないと雇えないんだ。それと複数のホーム持ちと契約料金10億Gも必要だし」
「あ、本当に無理な条件だわ。でもそのことを知っているのは白銀さんだけ?」
「ペイン一行とイッチョウ、それから『出遅れた者』の称号を持っているイカルだけだ」
「何も知らず『出遅れた者』の称号を持っている第3陣のプレイヤー達は、わざわざ複数のホームと10億Gを持つことはできないだろって話だよな」
「お金の方は何とかなるけど、ホームはなぁ・・・・・」
絶対にしないだろうな。俺のプレイを真似るガチ勢ではない限り、絶対にだ。
「ルルカ、俺達が未だに知らない未知の場所とそこにいる虫のところへ案内できるか」
「わかりました! 鬼人族より怖くはないので安心ですよ!」
「ん? 鬼人族が怖いの?」
何も知らないこいつらにさらっと教えた。
「あいつらは元々人間を鍋の材料にして喰う種族だぞ」
「ははは・・・・・そんなこと、ないよな白銀さん?」
事実みたいなんだから嘘は吐けない悲しい事だよオイレンシュピーゲル君。さて、こういうことになったから・・・・・。
「ベルアン、出掛けるからお供してくれ」
≪かしこまりました主君≫
「「ッッッ!?!?」」
人型のアリが音もなく登場して、ベルアンの姿を見たエリンギとトンボが蛇に睨まれた蛙のように硬直しても気にせずルルカだけでなくリヴェリア達も声を掛けて、久々に全員で出掛けることにした。