バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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ドワーフの国へ!

最初のイベントが終わってから、俺達は地底湖で【水泳】と【潜水】スキルのレベル上げに明け暮れていた。因みに、今日でもうレベル上げ始めてから二週間である。別にいつも時間を合わせてログインしている訳では無い。イッチョウもプレイ時間を別で確保して【水泳I】と【潜水I】以外にプレイを楽しんでいるし、俺は畑を着々と豊かにしていきながらも、ギルドランクに励みつつイッチョウの後に挑戦するために準備をしてきた。

 

「ぷはぁっ・・・!はぁ・・・・はぁっ・・・何分潜ってた?」

 

イッチョウが水面まで上昇してきて俺にタイムを聞く。

 

「四十分も潜ってたぞ。お互い【水泳Ⅹ】と【潜水Ⅹ】になって、イッチョウを基準にすればこれが今の俺達の最大ってことだから・・・イッチョウは片道二十分で奥まで辿り着けないと溺死ってことか」

 

「でも水中呼吸薬を使えば一時間近くは潜れるね」

 

そうだな、と頷く。陸に上がって小休止するイッチョウから視線を逸らし、辺りを見回す。

 

「プレイヤー、心なしか多くなってるな」

 

「私達が隠しエリアに行ったことに気付いた、あの時いたプレイヤーの誰かが情報屋に教えたらしいよ?」

 

あの時居合わせた閑古鳥が鳴きそうな程度のプレイヤーの数は、今や二十人以上も増えた。連日のようにここで活動している俺達を見て何かあるに違いないと便乗する形で探り出したんだが、魚がヒントであることもわからず、釣りや投網で魚を捕まえるばかりで進展していない。

 

「それでも、まだ気づいていない様子だな」

 

「最初はどうしてもわからないもんだよハーデス君。・・・・・よし、いよいよチャレンジしてくる」

 

「おう、頑張ってこい。倒せたら面白いスキルを教えてやるよ」

 

親指を立てるイッチョウは湖の中に飛び込んでいった。さて、その間俺は―――。

 

「なぁ、隠しエリアの行き方を教えてくれよ」

 

こーいう輩の相手をしなくちゃなぁ・・・・・。

 

 

 

何度もハーデスの付き添いでボス部屋のルートを覚えたイッチョウは、二十分以内に辿り着き扉をゆっくりと開く。中は巨大な球体の部屋に半分水が溜まった造りになっていた。イッチョウにとっての嬉しい誤算は酸素があったことだ。これで無理をして短期決戦に持ち込む必要が無くなったのである。

 

「ぷはっ・・・さぁ・・・こい!」

 

イッチョウの目が真剣な色に染まる。それに答えるように一点に収束した光が形を成し真っ白な巨大魚が現れた。

巨大魚はその巨体で突進攻撃をしてくる。

イッチョウはその動きを完全に見切り、体を捻りすれすれで回避し、すれ違い様に赤く輝く短剣で鱗と肉を僅かに斬り裂く。

 

「【スラッシュ】!」

 

赤い光の下の毒々しい紫に染まった刃は【状態異常攻撃】

それは巨大魚の体を毒で犯す。

ほんの僅かなダメージだが、巨大魚のHPバーは少しずつ確実に削られていく。

巨大魚は切り返して再び突進してくる。

理沙はそれを同じようにあしらい相手の体を削りとる。

 

「【ウィンドカッター】!」

 

赤いダメージエフェクトがいくつか水中に輝く。イッチョウの最大威力の魔法は鱗を浅く傷つけるくらいの力はあった。

繰り返される突進はイッチョウに傷を付けることが出来ない。

そして巨大魚のHPバーが八割を割る。

ここでイッチョウは集中を高めて、巨大魚の行動を注視する。

普通のプレイヤーなら先程と同じように見えるであろう突進はイッチョウには全く違って見えていた。明らかに、遅い。

 

巨大魚は途中で突進を止めて尾びれでの範囲攻撃を前方に繰り出す。

しかし、それもイッチョウには届かない。

イッチョウは行動パターンが切り替わるタイミングを敵の頭上のHPバーの減りから予測していたのだ。

巨大魚の体長から攻撃範囲を正確に見切り、一歩分下がることで目の前を尾びれが通過していく。その尾びれをスキルでもって切り裂く。

 

「【ダブルスラッシュ】!」

 

ここまで相手の攻撃を受けずに巨大魚に攻撃を入れてきたイッチョウの連撃ダメージUPは既に最大値。

今までより少し深く、赤いエフェクトが二回巨大魚の尾びれに食い込む。

それと同時。【状態異常攻撃】によって麻痺毒を注ぎ込み敵の動きを緩慢にさせる。

 

「【パワーアタック】!」

 

動きの鈍った巨大魚の体に短剣が根本まで突き刺さる。イッチョウはそれを素早く引き抜くと距離を取る。巨大魚のHPは五割を割った。行動パターンの変わりどきだ。

巨大魚の体の左右に白い魔法陣が浮かび上がりそこから泡が溢れ出る。

 

「【ウォーターボール】!」

 

イッチョウが泡に魔法を当てると泡は激しい音と共に爆発した。あの泡には触れられない。

イッチョウは巨大魚から逃げつつ泡を水魔法で爆破し、逃げ道を作る。

巨大魚の行動パターンがイッチョウの通った道を追ってくる追尾式になっていることに逃げ回っていたイッチョウが気付く。それならと。逃げていた体を反転させ水魔法で泡を爆発させる。イッチョウは一瞬だけ開いたその空間に体をねじ込み抜ける。

 

「【パワーアタック】!」

 

赤いエフェクトが巨大魚の背に赤い一本の線となって残る。

頭から尾びれまでを深く切り裂かれた巨大魚のHPバーが二割程吹き飛ぶ。そのまま体を回転させて尾びれを刃でさらに数回削る。

イッチョウの後を追って振り返ったその一瞬。体の速度についていけなかった泡の弾幕が薄くなった。

それを彼女は見逃さない。

 

「【ウィンドカッター】!」

 

泡を潜り抜けた風の刃は巨大魚の額を深く傷つける。そして遂に巨大魚のHPバーが二割を切って赤く染まった。

それと同時。巨大魚の体の左右の魔法陣が消えて、部屋が水で満たされる。

上下左右の壁に爆発する泡を発生させる魔方陣が現れる。

巨大魚がその大きな口をガパッと開ける。その口の中には泡の魔法陣よりも強い輝きを放つ魔方陣があった。

イッチョウがリアルで培ってきたセンサーがその体を反射的に動かした。

直後、さっきまでイッチョウのいた場所に向かって真っ直ぐにひとすじの青白い水がものすごい速さで放たれる。

彼女は焦る。あれを次に躱すためには流石に運が絡むだろう。

 

 

さらに泡も迫ってきている。

イッチョウの身体の動きが鈍る。

焦りは思考を停止させる。

  

 

こういう時こそ落ち着くこと。

イッチョウは自分に語りかける。焦る心を落ち着けて集中する。

まるで時間が止まったように。

泡も、レーザーも、巨大魚の動きも。

遅く、遅くなっていく。

危険な場所が、安全な場所が、全て手に取る様に分かる。

敵の体の微妙な動き、目線。

イッチョウはこれらからレーザーの位置を予測した。

 

泡の弾幕が次にどこへ広がるとまずいかを現在の泡の位置から予測し、先回りして逃げ道を作る。過去の経験とも照らし合わせ、生き残る確率の高い道を先手先手で作り出す。

それはもはや未来予知。

チートにも似た圧倒的なプレイヤースキル。

 

「【ウィンドカッター】」

 

静かに放たれた魔法はその度に泡のカーテンを綺麗にすり抜けて巨大魚を抉る。

 

そして遂に。

 

巨大魚のHPバーは空になった。

 

 

 

 

 

 

溜まっていた水が全て抜けていって中央に大きな宝箱が現れる。

イッチョウは喜ぶより先に地面に仰向けに寝転がった。

 

「つ、疲れた~・・・やっぱ本気で集中すると疲れるよん・・・・・」

 

レベルアップとスキル取得の通知が鳴り響くが、そんなものの確認は後だとイッチョウは寝転び続ける。

地上と違い水中戦は経験したことも体験もしたことがない。勝手が違う戦場での戦闘の上にあの弾幕と高速レーザーは手に余った。

しばらく寝転がっていたイッチョウはテンションを元に戻すと、宝箱の方に向かった。

 

「いざ、オープン!」

 

両手で勢いよく蓋を開ける。

中に入っていたのは海の様な鮮やかな青を基調として端には泡を思わせる白があしらわれたマフラー。

首元に白いファーのついたそれよりも少しだけ暗い色合いの厚手のコートとそれに合わせた上下の衣服。

そして光の届かない深海の様に暗い青のダガーが二本とそれをしまうことが出来そうな暗い青のベルト

 

イッチョウは全ての装備の能力を確認していく。

 

 

 

『水面のマフラー』

 

【AGI+10】【MP+10】

 

スキル【蜃気楼】

 

【破壊不可】

 

『大海のコート』

 

【AGI+30】【MP+15】

 

スキル【大海】

 

【破壊不可】

 

『大海のレギンス』

 

【AGI+20】【MP+10】

 

【破壊不可】

 

『深海のダガー』

 

【STR+20】【DEX+10】

 

【破壊不可】

 

『水底のダガー』

 

【INT+20】 【DEX+10】

 

【破壊不可】

 

 

 

「これは・・・私のスキルの取り方が影響したのかな?ふふふ・・・私好みの装備だよん。ハーデス君よりも装備が多いけど・・・【破壊成長】とスキルスロットは無いんだねぇ」

 

装備欄を弄って全て装備して、喜びからかくるりとターンする。ベルトは装備としてはレギンスの一部の様で、新たに装飾品のスロットを食うことは無かった。

ハーデスの時とはまた違った、ステータスの伸びが大きいユニークシリーズを身につけて、イッチョウは洞窟を後にした。

 

「おお~」

 

戻ってきたイッチョウをの晴れ姿に感嘆の念を抱いてボスを打倒した彼女に拍手を送る。

 

「はあ~格好良くなったなぁ」

 

「でしょー!靴は手に入らなかったけど町で買うにしても本当に苦労したよん!」

 

そして、二人で手に入れたスキルを一つ一つ確認していく。

まずは装備についているスキルからだ。

その後に新たに取得した二つのスキルを確認する。

 

 

【蜃気楼】

 

発動時、相手の視覚情報での座標と本当の座標とにズレを生じさせることが出来る。

対象は使用者以外全員。

使用可能回数は一日十回。

効果時間は五秒。また、【蜃気楼】で作り出したズレた映像に何らかの攻撃が加えられた際、【蜃気楼】は効果を失う。

 

 

【大海】

 

モンスター、プレイヤーが触れた場合AGIを20%減らす水を使用者を中心として円状に地面に薄く広げる。

空中では使用出来ない。

範囲は半径十メートルで固定。

使用者のみがその対象から外れる。

使用可能回数は一日三回。持続時間は十秒。

 

 

【器用貧乏】

 

与ダメージ三割減。消費MP10%カット。

 

【AGI+10】【DEX+10】

 

 

取得条件

 

武器・攻撃に関するスキル10個を取得済み

魔法・MPに関するスキル10個取得済み

その他のスキル10個取得済み

その中で最低スキルレベルのスキルが10個以上ある。

この条件を満たした後でモンスターを撃破すること。

 

 

 

 

「ハーデス君の言う通り、初回単独でボスを倒すとユニーク装備がゲットしたよ」

 

「だろ?これでイッチョウもユニーク仲間だ」

 

 

さて、今度は俺の番だな。

イッチョウに見送られる俺はボスモンスターと単騎で挑んだ。時間を掛けて戦える。水中呼吸薬を使って溺死もしなくなったことで存分に俺も水中戦を臨める。ボス部屋まで辿り着きここでイッチョウが戦っていたフィールドの中で戦意の炎を燃やす。

 

「さあ、いこうか!」

 

真剣な面持ちで臨戦態勢の構えを取る俺に応えるように一点に集束した光が形を成し真っ白な巨大魚が現れた。巨大魚はその巨大で突進攻撃をしてくる。俺はその動きに合わせて大盾で受け止める。地面がない足場では踏ん張りがきかず、受け止めれても凄まじい勢いで弾かれたり押し戻されたりする。繰り返される巨大魚の突進は、俺に傷一つ付けることができない。今までのモンスターでは体感したことがないこの突進力ならば大盾のスキルが手に入るかもしれない。そうして何度もどつかれること暫く耐えてると俺の頭の中に声が響く。

 

『スキル【大防御】を取得しました』

 

よし、キタ!この瞬間、受け身から切り替えて巨大魚の突進に合わせて硬質な背中の鱗を掴み、泳ぐ巨大魚にしがみつき合ながら背中の鱗を試しに噛んでみると硬くて歯が通らずの結果を知った。ならばと一度離れて巨大魚と逃げたり追いかけたりしながら、機を窺い巨大魚の柔らかそうな腹部に目掛けて泳ぎ何とか張り付くと、大きく口を開けてかぶりついた!

 

「ん~淡白な味で美味い!」

 

水中の中どうやって喰っているのかは秘密だ。喰い続けて巨大魚のHPを一気に三割削ると行動パターンが変わった。離れたら巨大魚の体の左右に白い魔法陣が浮かび上がりそこから泡が溢れ出る。【水中探査】で巨大魚の位置を確認しながら

 

泡に触れると爆発した魔法に連鎖して、泡は激しい音と共に爆発した。見慣れた泡の魔法に敢えて突進するように前進する巨大魚。俺を爆発する泡に当ててダメージを与える魂胆だろうが、【爆弾喰らい(ボムイーター)】で爆発系のダメージを50%カットするから一撃で死ぬということはない。故に俺を泡に触れさせて爆発して減らす筈のHPは―――0である!淡白な味を愉しみながら確実にHPバーを削られてる巨大魚が、凄い勢いで壁へ突っ込んで俺を壁に巨大な体で擦り付けるという言葉では生易しい、圧迫感と水圧で思わず巨大魚から手を放してしまった。離れて行ってしまった巨大魚はその大きな口をガバッと開ける。その口の中には泡の魔法陣よりも強い輝きを放つ魔方陣があった。大盾を構えず両腕を左右に広げて、全てを受け入れる姿勢の俺に向かって真っ直ぐに高速の水のビームが放たれる。

紙一重で回避しながら迫る俺に泡を召喚して姿を隠そうとするが、爆発する泡のカーテンを突っ切って、巨大魚の口から放たれるビームを片腕で受けながら接近して今度こそ巨大魚の捕食を臨んだ。

 

 

『運営陣』side

 

「げぇっ!?またやらかしたぞこのプレイヤー!」

 

「流石に水中の中はまともな戦いをしているなーと思っていたのに」

 

「巨大魚まで喰ってる・・・・・!」

 

「もうこいつの頭の中ではボスモンスターを喰えばユニーク装備やらユニークスキルが手に入るって確定しているんだろ。・・・・・実際そうなんだけどさ!」

 

「防御特化のプレイを目指していたはずなのに、毒竜の一件以来おかしなプレイをするようになってしまった」

 

「本当だな。全てのモンスターはお前の食事じゃないってのにさぁ・・・・・・」

 

「どうする。不味い味にして食べる意欲を殺ぐか?」

 

「それでもやりかねないと思うぞ」

 

 

 

何とかHPドレインで倒すことに成功した俺は取得した新しいスキルの確認をした。

 

※命名【古大魚喰らい(シーラカンスイーター)

 

水、氷を無効化する。

 

取得条件

 

巨大魚をHPドレインで倒すこと。

 

 

古大魚(シーラカンス)

 

古大魚の力を意のままに扱うことができる。

 

MPを消費して水魔法を使用できる。

 

取得条件

 

水無効を取得した上で古大魚をHPドレインによって倒すこと。

 

 

この結果に黒く悪い笑みを浮かべてしまう。

 

「くくく、これだからHPドレインは止められないのですよー」

 

もうモンスターの味もスキルも美味しすぎてハマっちゃって仕方がないってもんだよ。さてさて、このモンスターの水魔法は何だろうなー?

 

【水の牢獄】

 

球状の水の塊に、対象を閉じ込めるスキル。立て続けに発動することで、直径約二メートルずつ拡大させることができる。

 

 

【ウォーターカッター】

 

鋭利な水の斬撃を放つ。

 

 

【濃霧】

 

広範囲で霧を発生する。使用者を除く対象の位置を把握することができる。使用者以外の探知系のスキルを封じる。

 

 

【凪】

 

モンスター、プレイヤーが触れた場合AGIを50%減らす水を、使用者を中心として円状に地面に広げる。

空中では使用できない。範囲は半径十メートルで固定。使用者のみがその対象から外れる。

使用可能回数は一日二回。持続時間は二十秒。

 

 

【母なる海】

 

使用すると、使用者を中心に十メートルの半球状が出来上がり十秒で最大HPの3%HPを回復すると同時にVITを+100にする。効果持続時間は五分。消費MPは無し。

 

 

【水の波動】

 

半径五十メートル以内のモンスター、プレイヤーの位置を察知する。

 

 

主に探知系とVITとAGIのスキルばかりか。これならAGIが高い対象でもスキルを使用しようが、本来の速度ではなくなって戦いづらいだろう。しかもこれはコンボにも使える。ただしソロ限定の意味でだ。味方まで巻き込んでしまう使いどころが難しいな。

 

「ただいまー」

 

「お帰りー。私より遅かったね?どうしたの?」

 

「ちょっと凝った戦い方をしてた。おかげで新しいスキルを取得したがな。で、イッチョウ。これから周回をしたいんだけどいいか?」

 

「うんいいよー」

 

その後、時間制限の周回をするため巨大怪魚を何度も挑み十回ほどで止めて新しく手に入った共通スキルを確認する。

 

 

【海王】

 

このスキルの所有者のみ溺死がしなくなる。潜水時【AGI】と【DEX】のステータスが二倍になる。

 

取得条件

 

一定時間内にノーダメージでボスを規定体数倒す。

 

 

【海王】は俺が【悪食】でさっさと倒したことが原因かもしれない。水中限定のスキルだけど、今後のイベント次第では役に立つスキルだと思う。

 

だけど、それよりもあの時と同じ状況と条件を満たしたからもしかしたら?と【水中探査】で試みるが・・・・・変化はなかった。ここにリヴァイアサンに繋がるヒントでもあるのかなとは思ったんだがな・・・・・。

 

「ハーデス君。これからどうする?」

 

「イベントの時も言ったが第3エリアにいい加減行くつもりだ」

 

「きっとハーデス君だけだろうねぇ。第3エリアに行っていないプレイヤーは」

 

うるさい!自覚しているわそんなことっ!

 

 

 

だけどその前に寄るところがある。そこへ行かないといけない理由がある。俺は地底湖を後に真っ直ぐ鍛冶屋に足を運んだ。

 

「ヴェルフ」

 

「ハーデス、来たな。用件はアレだろ?師匠が完璧に研ぎ終えたぜ」

 

「どんな武器だった?」

 

「自分の目で確かめてみろ。弟子の俺でもビックリする代物だ」

 

それは楽しみだ。改めて裏から出入りさせてもらい、鍛冶場に入り込むとヘパーイストスが武器を持ってまじまじと見つめていた。

 

「・・・・・美しい」

 

それも初恋の彼女を見つけてしまったような眼差しでうっとりと・・・・・。あんな状態の鍛冶師に指さしてヴェルフに言う。

 

「・・・・・話しかけ辛いんだが」

 

「ああ・・・・・実を言うと、ここ最近はあんな調子なんだよ。師匠曰く、あの武器はやっぱりヒヒイロカネの鉱石で打たれた武器らしい」

 

「他もそうか?」

 

「他はオリハルコン。破壊不能の能力付きだった。でも、それ以上に凄いのがあれだったんだ」

 

研ぎ終えた風化した装備を見せてくれた。

 

「大剣と刃付きの大盾・・・か?」

 

「ああ、でも見た目は重戦士の武器に見えるだろ?まぁ、その見た目も長年ベヒモスの胃の中にあったから風化による劣化で研いでもこのボロボロの状態だが―――」

 

俺に持ってみろと言われてたので両手で握ると、ヘパーイストスから離れ部屋の隅まで移動する。周囲の物に気配る様子を窺わせ、ヴェルフから扱い方を教えてもらいながらその場で見せつけるように振るう。

 

「・・・・・は?」

 

大剣と大盾を結合すると、大盾が剣先にスライドし出して斧に変形した。更にはそのまま大盾としても扱えるのでこんなおかしな武器は見たことが無いと間抜けな声を出してしまった。

 

「―――この武器、二つで一つの特殊武器だ」

 

「特殊武器?」

 

「通常の武器はそれぞれ個の武器として役割を担っているが、武器同士で合体や結合する事なんて、どんな鍛冶師でもそんな摩訶不思議な考えは思い浮かばないんだ。でも、古代にはそんな鍛冶師は存在していた。その証明をする物がこの武器だ」

 

斧から大剣、大剣から大盾、大盾と大剣を分離させる俺にヴェルフは語り続けた。

 

「師匠も最初はこの武器の存在に舌を唸らせた。おかげで武器の可能性がさらに広がって新作を―――と思ってたんだがな」

 

今でもヒヒイロカネの武器を見つめているヘパーイストス。まだ戻ってくる時間が掛かりそうな様子である。

 

「師匠は最後に研いだあれの美しさに惚れてしまったんで、まだ手を出していないわけだ」

 

「納得だ。おい、ヘパーイストス」

 

ペシペシとガタイのいい背中を叩く。流石に自分の世界に深く沈んでいなかったか直ぐに反応してくれた。

 

「あん?おお、お前か。研ぎ終えて見せたぞ」

 

「ヴェルフから軽く教えてもらったから分かってる。それがヒヒイロカネの?」

 

「そうだ。俺も手にするのが初めてだもんでな。お目に掛かれて感動的になって感傷的に浸ってしまったぜ」

 

「それ以上の想いを晒していたぞ」

 

ヘパーイストスの手の中にあるヒヒイロカネの武器である刀を受け取り、俺も惚れ惚れする。

 

「長年風化していたとは思えない代物だな・・・・・・まだ死んじゃいないんだな」

 

「わかるか。ああ、その通りだ。劣化してもなお存在感を放つそれはかなり腕が立つ鍛冶師が打ったに違いない。俺もヒヒイロカネを手に入れて打ったとしてもこのレベルの武器にできるか・・・正直に言えばわからん。あの奇怪な特殊武器もそうだ」

 

大剣と大盾を見やるヘパーイストス。

 

「ヒヒイロカネとオリハルコンの事は教えたが、その二つは現在極めて入手が困難でな。今じゃ存在だけが知られているだけの幻や伝説的な代物と化して、誰も見たことが無ければそれで打たれた武器を触れたことすらないとも言われている」

 

「ほうほう」

 

「―――ただ、それらを極少数だが保有している噂の国がある」

 

・・・・・国?

 

「その国って?もしかして帝国とか?」

 

「あそこは違う。確かに強力な武器を生産して高い軍事力を有しているがユニーク装備を創り上げるほどの腕前の鍛冶師はいないはずだ」

 

「鍛冶師・・・・・となると・・・・・」

 

思い浮かんだとある種族の名を口にすれば頷くヘパーイストス。

 

「そうだ。俺も修行の為に足を運んだ場所・・・・・ドワーフの国だ」

 

「ドワーフの国か・・・・・そこはどこに?」

 

「まぁ待て。順を追って説明する」

 

おっと、急かしてしまったか?

 

「あそこの国はちょっと特殊でな。ドワーフ同士で鍛冶の腕前を競い合うのが日常茶飯事なんだ」

 

「そんな国にいたのかヘパーイストス」

 

「そこで鍛冶の腕前を鍛えたって言っても過言じゃないからな俺は。で、ドワーフの国は存在すら知らないととことん知られていない場所だ。他国と交流している国じゃないと会うことすらままならない」

 

じゃあ、殆どのプレイヤーも無縁な話か?というか、保有している国にドワーフがいることだけ分かれば十分だな。

 

「ただ、ここ数ヵ月。個人的に手紙で交流をしているドワーフからの手紙によると、ドワーフの国が保有している鉱山でトラブっているらしく、仕事が出来ないでいるみたいだ」

 

「詳細は?」

 

「鉱山に地龍が住み着いてしまった」

 

「モグラ?」

 

「そっちじゃない。土属性の龍族だ」

 

知ってた。しかし、地龍がいるのか。どんな感じなんだろうか?

 

「ドワーフでも勝てないのか」

 

「ドワーフの国でも戦えるドワーフは勿論いるが。相手は龍族じゃあ厳しい。地龍は存在する龍族の中では最高峰の防御力を誇っている。並みの武器じゃ到底倒すことはできないんだ」

 

ミスリルでも倒せないとしたらとんでもなく防御力が高いモンスターということになるな。

 

「だからか、友人や俺の師匠にあたるドワーフ達から討伐の協力を手紙で寄こしてきたんだ。いい腕の冒険者はそっちにいないかーってよ」

 

「・・・・・まさか」

 

ここに来てこのパターンですか?あ、ほら・・・・・ヘパーイストスから協力要請という名のPTのお誘いが来ていらっしゃる。

 

「悪いが手を貸してくれるか?この町にいる腕の立つ冒険者と言えば俺はお前しか信用できないんだ。俺を助けると思って・・・・・この通りだ」

 

深々と俺に頭を下げるヘパーイストス。そこまでするほどヘパーイストスにとっては重要な事か。普段頭を下げなさそうな鍛冶師だが・・・・・。

 

「ん、いいぞ。ドワーフの国にも行ってみたかったからな」

 

「すまない、坊主。恩に着る」

 

『ドワーフの国の救援』というクエストが発生して勿論受理した。

 

「ドワーフの国の場所は知らないけれど、イズ達も連れて行ってもいいか?」

 

「ああ、あの鍛冶師の嬢ちゃんか。いいぞ・・・・・達?」

 

メールを送って返事待ちする間の俺は、もう一件の話を持ち出す。

 

「対刃の武器は?」

 

「おう、ばっちりだ。中々良い出来栄えで俺達もいい仕事が出来たもんだと高揚したぜ」

 

壁に向かって歩むと掛けていた武器を手に取り、戻ってくると手渡してくれた。

 

 

『狼月【上弦】』『狼月【下弦】』 レア度:9 品質:★9

 

【STR +30】【DEX +25】【AGI +30】

 

スキル【狩人】 スキル【対牙】 スキル【対刃】

 

破壊不能

 

 

対となる刃の名は下弦、空に浮かぶ上弦三日月の刃を持つ剣。フェンリルの命と魔力の残滓が込められたそれは、真の姿を未だ叢雲に隠している。

 

 

【狩人】自身よりレベルの低い対象と戦闘する場合、【一撃必殺】のスキル効果が常時発動する。

 

【対牙】自身よりレベルの高い相手と戦闘する場合、【AGI】が+50%増加。1レベルごと+5%追加。一定回数攻撃を当てることで合体ゲージが蓄積される。

 

 

必要ステータス【STR 80】【DEX 80】【AGI 90】

 

 

必要ステータス?ユニーク装備とテイマーの初期装備以外、装備を入手したことないからそんな項目があるのか?一応、装飾アイテムで爆上げしてるから使えるけど・・・・・ハッキリ言って強過ぎないかこれ?合体ゲージって一体何よ?それと【対刃】ってのは・・・・・。

 

 

【対刃】

 

唯一無二の『狼月【上弦】』『狼月【下弦】』が揃わなければ発動できないスキル。対象問わずこの装備は倒せば倒すほどより強力になる。

 

「・・・・・」

 

ちょっと、剣士を育ててみたくなっちゃった。

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