樹母神と別の場所で出会いを果たしてから、エルダーエルフが管理していないエリアでエリンギとトンボが虫取りに精を出した。帰りは俺達が最初にこの場に転移したところに戻れば転送陣があると教えてくれたので、各自自由にしようと決めた。
「ほわあああああ! か、格好いいカブトムシがいますよぉー!!?」
「あの蝶々が抱えている物は何だろうか・・・・・気になるな」
あんな活き活きとした二人は見たことない(ガワはキメラ昆虫)俺達は二人を放置して様々な発見と発掘に専念することにしていた。本来の目的は新しい昆虫がいる場所の探索だったから果たしたんだしな。
「ここにもボスモンスターっているのかしら」
「闇神がいた月にも強いモンスターいたもんね」
「この辺りはいなさそうだな。いるとしたら奥の方にいるんじゃね?」
「虫のモンスターか、はたまた別のモンスターか」
「樹精ちゃんを見つけたいニャー」
俺達もバラバラになって探索することにした。ていうか、俺の場合はリヴェリア達NPCや従魔のオルト達を連れて来たから集団行動は大変である。だからオルト達もバラけてもらい、採取できる物を見つけてほしいと頼んだ。そしたらみんなが色んな物を持ってくるからそれすら大変だった。採掘できるオルトーズやドリモに至ってはどこで掘ったのか分からない鉱石を集めてくれた。
「「「キュキュ!」」」
「お、この世界にあった木の実か? 家に帰ったらすぐに植えよう」
「主、サラとスカー達と奥の方に行ったら巨大な蜘蛛がいて倒しておいたよ」
「怪我はしなかったか? スカー達もよく頑張ったな、蜘蛛は強かったか?」
≪主君、この蜜を試食してみたところとても美味でした。献上致します≫
「ありがとうベルアン」
「クックマァー!!!」
「クママさん!? 蜂の巣を持ってくるのはいいが怒り狂っている蜂まで連れて来るな!!」
「主の危機はこのラミアースが守り通す!」
「頑張れラミアース!」
こんな感じでオルト達と思い思いに神の領域で過ごした。その後はホームに戻って育てることができるアイテムを畑に植えて一瞬で育つ瞬間を目の当たりにした。
「うん、相変わらずすぐに育つチート畑だなー」
「ああ、まったくもってその通りだな」
独り言で言ったのに聞き覚えのある声に返され、後ろへ振り返るとタゴサックが腕を組んで佇んでいた。
「珍しいな。ここまで来るなんてどうした」
「お前・・・・・あんな動画を見せられた俺達の気持ちをわからないのかよ」
「動画? なんの・・・・・あっ」
そういえばマモリも連れて行ったんだった。今のマモリは見えるもの全て配信できる状態になって、それをOFFにしていなかった。だから樹母神のところに行くまでの活動は撮られているのは当然だわ。
「因みにあの動画を見たのは俺だけじゃないからな」
「つまり、ファーマーにだけ限らず身内のプレイヤーも行けるなら行ってみたい、ということか」
タゴサックの首が肯定の意味で頷いた。
「話が早くて助かる。あのどデカい花のモンスターとの戦いぶりも見たが、地面の中にいる本体を攻撃しないといけないなんて俺達じゃ厳しすぎる。かと言ってお前のようなスペックがあるわけでもないから、他に倒し方があるなら参考に教えてほしいんだが」
「まだ試したわけじゃないからわからんけど、リアルと同じことをすればいいんじゃないかって思っている。ほら、除草剤を掛けるとか」
「除草剤、なるほど・・・・・つまり毒のスキルを当てればいいってことか」
「もしくは錬金術師が作る毒のアイテムとかな。あとは氷系のスキルがあれば動きが鈍くなるかもだし。だが見ていたなら知っているだろうけど、定められた日にならないと挑戦できないようになってるぞ。そんで地面から本体を引き剥がすには魔法使いの勇者スキルが必要不可欠だ。それができないとおそらく絶対に倒すことは不可能だぞ」
「樹母神なら創世神話で例えれば木曜日だな。魔法使いしか使えない勇者スキルなら勇者になった身内を探せばいるかもしれない。で、あのモンスターと戦うのに必要なアイテムがあるってことなんだが」
ほい、と食寶の実を大量に譲渡した。価値も対価も見合ってなくて悪いと言いつつ、タゴサックが自身の畑で育てた作物のアイテムをたくさん交換してくれた。いやいや、俺が持ってない新種の物ばかりだから十分すぎるんだが? ・・・・・ってこれは。
「トリュフじゃないか!」
「ハーデスのおかげで手に入れた物だぜ。その反応からして持っていないのか?」
「キノコ類のはあんまり縁が無くて・・・・・」
まったくもって本当にないんだよ。としょんぼりな俺に「意外な事実を知ったな」と言うタゴサック。
≪おお、帰って来たのか丁度いい!≫
≪すぐに来るがいい。あの卵が孵ったのだ!≫
鳳凰が俺のところに来てそう急かしてくる。あの卵と言うことは、金色のコケッコー達が産んだ卵の事か。タゴサックも連れて牧場の方へ、鶏舎へ足を運ぶと金色のコケッコー達の側に虹色の卵の殻を食べている鳥がいた。羽毛は虹色で鶏なのに鶏冠がアホ毛―――顔がめっちゃ不細工。お前、鶏から産まれたんだよな? 醜いアヒルの子か?
「ハーデス、あの鳥は一体・・・・・」
「金色のコケッコーの間で産まれた新種のモンスターだ。名前は・・・・・ビリオンコケッコー?」
ビリオンコケッコー
古代に産まれた全ての鳥の祖。天敵が多く種を残す手段として襲われるたびに無限にタマゴを産み落とすという手段を会得。その異常な繁殖力ととてつもなく永い寿命から「家畜の王様」「億年食える鳥」と呼ばれていた。
「だ、そうだ」
「はー、全ての鳥の祖に家畜の王様か。無限に卵を産むってのも純粋に凄いじゃないか」
もしもの時が来たら産んでもらおう。そんな日が来ないことを願うばかりだがな。ヒョイッとビリオンコケッコーを持ち上げて挨拶をする。顔が不細工だろうが産まれたからには可愛がるのが当然だ。
「産まれて来てくれてありがとうビリオンコケッコー。これからよろしくな」
「コケー!」
ていうかこいつはモンスターなのか? ・・・・・家畜なのにモンスターなのか。・・・ん?
「モンスター図鑑のビリオンコケッコー、アホ毛が∞の形になっているなこいつ」
「オスとメスの違いなんじゃないのか? もしくはユニーク個体なのかもしれないぞ」
「単為生殖で有精卵をほぼ無限に生み続ける幻の鳥だぞ。家畜にノーマルもユニークも関係あるのか・・・・・」
この謎が分りそうな、例のアイテムで調べるしかないな。タゴサックの目の前でインベントリから鏡を取り出し質問を投げた。
「ビリオンコケッコーの鶏冠が∞の形ではないのは?」
―――ビリオンコケッコーに与える餌が必要
「それはどんな餌?」
―――『インフィニティ・グラスホッパー』
「インフィニティ・グラスホッパーはどこにいる?」
―――華中紗
マジかー。まだ行ったことがない新大陸に行かない限りビリオンコケッコーの真価が発揮できないのか。
「ハーデス、何か分ったのか?」
「新大陸の華中紗にいる虫を食べさせないと鶏冠が∞状にならないことがな」
「まだ行ったことがない新大陸にか。だけど今は運営のアップデート中で行けなくなっているよな」
「ああ、しばらくお預けだ。そしておまけに一つだけ判明したことがある」
華中紗は大量の食糧が必要になる。マジか、という顔を浮かべるタゴサックは考える仕草をして思いついたことを打ち明けてくれた。
「華中紗って中国をモデルにした新大陸なら、どんなイベントがあると思う」
「国獲り合戦じゃないかな。国を築くためには何十何百万のNPCが必要で、そいつ等を食わせる食糧の確保だって不可欠だし」
「・・・・・だからハーデスのチート畑が存在するのか」
チート畑って・・・・・否定できないから何も言えないぜ。
「あと蝗害ってイベントもありそうでな。すぐに足りなくなると思うしさ」
「ネネネがブチ切れっぞ。てか、その蝗害のバッタがインフィニティ・グラスホッパーって奴じゃないのか?」
「・・・・・あり得る可能性を示唆してくれてありがとうタゴサック」
絶滅するまでバーサーカーモードに入るぞネネネの奴。だとしたら蝗害の対策をしないといけないわけだが、さてどうしたものか・・・・・。
「ハーデス、いま蝗害の事を考えても仕方ないと思うぞ。一応訊かせてもらいたいが、闇神と樹母神以外の創世神話の神がいる場所の目途は着いているか?」
「特定はまだだ。でも、ここにいそうだなーって神が一柱、いる」
「どこなんだ?」
「そんなに気になるか? じゃあ一緒に探しに来るか?」
タゴサックの首が肯定と頷いた。となればあの神の属性とピッタリなプレイヤーとその一行も誘ってみるかね。場所を―――にして先にタゴサックと【次元跳躍】で向かって待てば、待ち人がやって来てくれた。
「待たせたかハーデス」
「誘ったのは俺なんだ。待つのは当然だから気にするな。じゃあ先に訪ねたいところあるからそこに行こう」
「どこなんだ?」
「ん、ここ―――ルナマリアの女王の城に」
待ち合わせ場所として決めさせてもらったルナマリアの城下町、そして誘ったミィ一行を従えて我が物顔で城の中へと足を運び門番には顔パスとみんなの事を仲間であると伝えればあっさり通してくれた。
「おいおい・・・・・誰も入れなかった城の中に入れてしまったぞ」
「どうなっているんだよ。ハーデスはどうやって入れるようにしたんだ」
「ハーデスだから、と受け入れるしかないぞ。NPCの城に入る事なんてハーデスには朝飯前なんだ」
「そうか・・・・・それならばそうしよう」
妙な受け入れ感をされた気がする・・・・・ま、どうでもいいけど。王座の間まで案内してくれる門番の兵についていき、強固な扉の前に俺達を立ち止まらせて先に中に入って行った兵を待つ。すぐに戻って来て謁見を認めてくれた女王と久しく会うことができた。
「ほう、また来たかと思えばそいつらがお前の仲間か」
「そうだ。黒竜との戦いにも奮戦してくれた。デザートワームの一件以降どうだ?」
「殊勝だな。わざわざそれを聞きに来たのか」
「本来の目的は砂漠の事を知りたくてな」
「砂漠を知りたい?」
そんなこと訊いてどうするんだとつまらなさそうな表情を隠さず見つめてくる女王にもっと言い続ける。
「砂漠にもしかしたらあるかもしれない、でも具体的にそれが何かまでは分からない求めている物があるんだ。例えば広い砂漠の中で一番熱いところとか、誰も挑んで帰ってこなかった場所とか、危険な砂漠のこととか」
「・・・・・ほう? この我が治める砂漠にあるのかもわからぬ眉唾な何かを求めているのか。いい退屈凌ぎになりそうだな」
本当に退屈していた様子の女王は立ち上がり、従者に用意させた俺の目の前で砂漠の世界の地図を広げてくれた。
「お前がこの砂漠の世界で何をしたいかは分からぬが、確かに眉唾な話がこの王宮に届いている。例えば―――」
―――砂色と異なる血のように真っ赤で一度入れば体中の水分が蒸発し一瞬にしてミイラと化するほど太陽光と熱砂が民を苦しませる砂漠。
―――古代の砂漠の王が遊びで民や兵士達に永遠に壊れない絵を描かせ、未だにその名残が残っている砂漠があるらしい。
―――誰かが行ったか定かではないが、広い砂漠のどこかに黄金の金字塔を見掛けた砂漠があるようだ。
―――そして、近づけば奴らの仲間入りとなる身体が熱と炎の魔物が蔓延っている砂漠が確認されている。
「これらの砂漠すべては呼吸するだけでも喉や肺が一瞬にして焼けるような痛みを伴うそうだ。それでも向かってみる気か?」
「それが冒険者の性だ」
「そうか。では誰も攻略も踏破したことがないこの四つの未踏の砂漠の調査・攻略をしてみせよ。何人でもやらせても構わない代わりに必ず成功させよ。そしてお前達の冒険譚を聞かせよ」
「しばらく退屈させない冒険譚を聞かせると約束しよう」
「ふふふ、期待しているぞ」
≪EXクエスト『四大砂漠の攻略』を受けますか?≫
やっぱりコミュニケーションは大事だな! 女王からEXクエストを受注できたぜやったー!
「「マジかよ」」
「えええ?」
「凄いですね。会話でEXクエストを発生させるとは」
「ああ、私達も見倣うべきことだろう」
「これが【蒼龍の聖剣】のギルドメンバー達、死神・ハーデスというプレイヤーが成せる業だぜ」
「脱帽ものだな」
「因みに、何人でもやらせてもいいという話はどうやって俺達と同じことをさせられるんだ?」
「これからこの国に来た冒険者達にも挑戦できるよう、ルナマリアが治めるすべての町にお触れを出す」
「わかった。それなら後から来ても誰でもできるな。じゃあ、一足早く行かせてもらうぜ」
「楽しみにしているぞ。だが、死ぬことは決して許さぬからな」
女王から激励の言葉を貰い。王座の間を後にして王宮から出た途端―――。
「と、いうことになったから俺と同じEXクエストをしてみたいプレイヤーは砂漠の世界に来い!」
「「「「「え?」」」」」
『サスシロー!!』
『スライムの駆除に続いて俺達も参加できる他のEXクエストを発掘してくれてありがとう!』
『今砂漠の世界に到着した! さっそくパーティーでEXクエストを受注できた! 出遅れてるプレイヤー諸君、先に失礼するぜ!』
『待てぇー!! クエストの報酬は俺が先に手に入れるんじゃー!』
『そう言えば報酬は何なんだ?』
「それは俺もまだ知らされていない。でもま、冒険譚を聞かせる約束だから夜まで語ることになるだろうな。あの女王のことだ。面倒くさいことに同じ部屋二人きりで全て話してもらうまで寝かしてくれなさそうだ」
『本当にそれだけ? 違うだろ、なぁ皆の衆よ!』
『その通りだぜぇ、なにせ同じ部屋の中で男女がいたら?』
『何にも起こらないはずがない!』
『否! 俺達が起こすんだ!』
『熱く語らい! 甘く囁き!』
『砂漠の熱気で汗を掻いても仕方がないよねー?』
『お風呂の中でも可、でありますよー』
『ならばそうなるよう俺達は何をすればいいのか語るまでもないだろう』
『なんぼのもんじゃいEXクエスト!!』
『行くぞー!! 褐色肌のエッ□な女王様と夜の時間を過ごすためにぃー!!』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
砂漠の熱で欲望に忠実になってしまった男達の頭がヒートショックを起こしてしまったようだ。
「ハーデス、もしかして配信をしていたのか?」
「していた。別に独占をする気なかったし、女王は何人でも構わないと言ったからな。俺達の本来の目的は別件だ。クエストはついでに過ぎない」
「EXクエストをついで扱いするのかよ」
するぞ。優先順位は下だからな。さて、熱さを凌ぐアイテムや他に必要そうなアイテムを集めたら行こうかねー。