『黄金迷宮の千年眼』
効果:???
「謎の用途不明のアイテムなんだが・・・・・これもクエストに必要なのか?」
「しっかりピラミッドと関わりありげな名前をつけられてるからな。で、まだバレーと騎乗レースが残っているけどどうする? やらずに砂漠の絵か炎のモンスターがいる砂漠に向かうか? 休憩時間もまだあるしさ」
情熱的なダンスの大会で優勝したらこんなアイテムが手に入った。ミィ達に訊けば判り切っていた返答をしてきた。
「炎や熱のダメージを軽減してくれる耐性や抵抗のアイテムが手に入るんだぞ。このまま行ったら死に戻りする可能性が高いから手に入れておきたいに決まってるだろ」
「そうだなー。炎の耐性はともかく熱の耐性はない俺達もスリップダメージでやられるよな」
「ハーデス聞くが、お前のスキルにフィールドダメージの軽減、または無効にするスキルはあるか?」
カスミに聞かれた内容に俺は当然のように告げた。
「どっちもある」
「「「あるんだ」」」
「だが、私に依存されては困るから自分達で手に入れられるなら自力で手に入れてもらうぞ、いいな」
「では、私達ができそうなものは・・・・・」
ミザリーが挑戦できる4つの競技を見回し、ミィ達も自分ができそうな競技に目を向け・・・・・それぞれ挑戦を始めた。クロム、シンは二対二のバレーをやり始めた。二人とも高めの身長だけどバレーは未経験そうだから勝てるかな? 心の中で応援はしておこう。
「試合終了!」
「「・・・・・」」
スリーポイントセットの試合はあっという間にクロム&シンの敗北で終わった。いやぁ、見事なサーブ、レシーブ、トス、スパイク、アタックだったね(NPCの)!
「・・・・・」
他の競技よりは難しくはないリンボーダンスに挑戦していたミィ達の方へ向けば、ミザリーとカスミは失敗したにもかかわらず何故かタゴサックよりもレア度と品質が高いアイテムをもらえてミィが貰えない不思議な事が起きていた。何故なんだ、とミィに訊かれても俺が知る由もなくNPCに問うと。
「目の保養にならない」
「露出が少ない」
「チッペェはペッ、だ」
・・・・・ここは変態しかいないのか。大体察したミィが暗い顔を浮かべ、逆にアイテムをもらえたタゴサック達は恥ずかし気に顔を赤く染めたり、腕で胸を隠す仕草をしたり、武器で殴ろうとした。マルクスの方は巨大なカルガモこと『スーパーカルガモ』に乗って砂地のレースの競技を挑戦し、ギリギリ辛勝した。乗っている方がグロッキーになるほどとても早くて動きが激しかったか、さっさと降りろと催促する風に座り込むスーパーカルガモの首にしがみ付いたまま動けないでいた。
「クロム、シン。お前らが熱耐性のアイテムを手にれないと困るぞ」
「分かってるけどよ。あいつらマジで強いんだ」
「そもそもこの砂地で滑るし、俺達はこのスポーツをした事がねぇんだ」
だったら何でそれを自覚してこの競技にしたんだ、って思わせる言い訳をする二人にスーパーカルガモへ親指を立てた。
「―――マルクスが辛勝したあの競技のレース、あれでも勝てなかったら性転換して踊りの競技をしてもらうからな」
「「っ!?」」
マジな目で脅したのが功を奏したか、一緒にやらず別々でレースを全身全霊で挑んだ二人はマルクスと同じアイテムを手に入れる資格である勝利をもぎ取った。その間にミィと砂地のバレーに挑戦していて―――
「ハーデス!」
「ああ!」
相手側から打たれたボールを俺が最初に受け止め、ミィにパスをして、ミィは俺が打ちやすいようコートより高く上げたボールに目掛けて跳躍した俺は相手コート内に鋭く、そして強くボールを3回連続叩き込んだ。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!
観衆達から沸き上がる歓声の中、ミィとハイタッチして勝者への贈り物としてアイテムをくれた。
『熱気球』
プレイヤーを乗せて空の移動ができる(搭乗人数は6人まで)
気球かよ! 俺だけか? ミィの方は・・・・・同じアイテムを手に入れたか。それならクロム達も乗せる事できるな。
「か、勝ったぞ・・・・・」
「疲れた・・・・・」
大の大人のクロムとシンが顔に疲労を浮かべるほど疲れた様子で戻ってきた。そんなに疲れるのかあのレース?
「お疲れ、何が手に入ったか教えてくれるか? こっちは6人乗りの気球だったぞ」
「気球だと? 砂漠の絵を見つけるために必要なアイテムなら納得できるな」
「手に入れたのはアイテム、というかあのスーパーカルガモを呼ぶ笛だった。テイムも出来るらしいぞ」
「行ってくる」
最後の競技だし、もしもコンプリートしないと手に入らない限定アイテムが貰えるかもしれない。レースに挑戦する話を持ち掛け、巨大化したカルガモの背中に鐙がない状態で乗り、いざ競技が始まるや否や・・・・・!
「おおお・・・・・!」
手綱を掴んで乗る者の安全など気にも掛けない速度で砂地を蹴って走り出したスーパーカルガモ。まるで天井や壁、シートベルトすら取っ払って椅子に座るだけの安全性がない新幹線を動かしている気分だ。顔にぶつかる風と空気の壁に身体が仰け反って、手綱を離してしまえばスーパーカルガモから落ちて砂漠に放り出されるのは間違いない。性転換したから長髪が後ろに流れるようたなびいてしまうほど速度で走るこの鳥は、乗り手より走ることを純粋に楽しみ、競争相手と走るのが好きな鳥なのかもしれない。そんな鳥に乗ってるNPCは、身体を限界まで小さく丸めて風や空気の抵抗を無くしている。
この競技のルールは、スーパーカルガモの手綱を離さない限り砂地に落ちても失格にはならないだった。・・・・・だったらこういうのも問題ないよな?
「クェ?」
手綱を掴んだまま鞍から浮いてそのままスーパーカルガモの速度に合わせて飛ぶ。そんな俺に気付いて尻目で見てくるカルガモに不敵の笑みを告げる。
「私は風になる。だからお前は気にせず好きなだけ走れ」
「・・・・・クエー!」
お―――。
俺の言葉にさらに走る力が増してどのスーパーカルガモよりも速く、前へ駆け出して一人だけ走っている体感を覚えているだろうこのカルガモはオアシスに戻る中継地点をぐるっと回って、駆ける速度を少しも落とさないまま誰よりも早く戻ってゴールで来た。
「楽しかったぞ。お前のおかげで勝てた、ありがとうな」
「クァー!! クエックエッ!!」
砂場でならフェルやセキトより速いスーパーカルガモをイカルには一人で乗せられないが俺は気に入ったな。そしてこのレースにも勝った俺にもスーパーカルガモを呼ぶ笛が貰えて・・・・・。
「素晴らしい。全種目を勝利した旅人はキミが初めてだ。まるで我が一族に言い伝えられている先祖だ。キミならば4大砂漠をも乗り越えられるだろう。どうかこれも受け取ってもらいたい」
『とある探検家の日誌』
「これは?」
「大昔、私達の先祖が遺したこの砂漠の歴史でもある日誌だ。男か女かわからないが、わかっているのは先祖だけが4大砂漠に挑戦し全て攻略して生き残ったことだけ。日誌にはどうやって攻略したのか記されているが、私達は攻略をするつもりはないから持っていてもいつか朽ちらせるだけだ」
デスワームを攻略した俺達になら役立つから貰ってほしいとも言われてしまえば貰うしかない。用は済んだ俺達は改めてミィ達が見つけた、オアシスの巨大な湖の中心に建てられた高級施設の部屋で休息を取ることにした。
「一部屋だけで一人50万Gも掛かるのかよ」
「高額に見合った広い部屋にサービスの飲食付きだから文句は言えないだろ」
「はぁぁぁぁ・・・・・カルガモより柔らかい布団だぁ~」
「素敵なお部屋ですね。オアシスの町が一望できますよ」
「ハーデスがそれができる唯一の部屋ごとこの施設をわざわざ買ったんだから、おかげで【蒼龍の聖剣】のマイホームのひとつになったがな」
「今は明るいから見れる景色だが、夜にしか見られない景色もきっと美しいだろうな」
各々寛いでいる中、配信を切って黙読する俺もハンモックに寝転んでいた。読めば読むほど、この日誌を遺した探検家は豪快な人間だったことがわかってくる。炎のモンスターを一撃で倒したり、黄金の迷宮を半月で攻略し、砂漠の絵の秘密と説き方を編み出し、赤い砂漠を半日で越えたらしいからな。
だからといってその真似を出来るのかどうか俺達プレイヤー次第なんだろうな。
「ハーデス、その日誌に攻略方法は載っているのか?」
横からカスミに話しかけられて視線を日誌から変えないまま返答した。
「ああ、確かにこれは4大砂漠を攻略した情報が書かれてある。が、攻略方法が分かったところで難しいのは変わりないぞ」
「そうなのか? どう難しいんだ?」
「砂漠の絵、その正体は巨大なパズルだ。どこにあるのか記されてないから探し出すのは苦労しそうだ。それも4つもだよ」
「炎のモンスターの方は?」
「奴らは攻撃を加える度に増え続ける特性がある。しかも与えたダメージの数値分な。100ダメージを与えたら100匹も増える理屈だ。だが、一番厄介なことに炎のモンスターがいるフィールドは特殊でな。太陽が出ている内は自動回復効果がモンスターに付与、そこにいるだけでプレイヤーのVITや防御系スキル、称号の効果を無視する灼熱地獄のフィールドダメージが1秒ごとに1ずつプレイヤーのHPを減らし、減らされたHPは炎のモンスターに回復する」
「それは厄介すぎるだろ!」
「どうやったら倒すんだ? モンスターはダメージを与えないと倒せないだろ」
「簡単だ。中途半端に倒すんじゃなくて一撃で倒せば増えることはない。炎のモンスターの正体は炎の塊なんだが、その炎の塊を生み出している本体を倒せばいいらしいぞ」
本体? と疑惑の声が異口同音で聞こえた。
「どこにいるんだ、その本体とやらのモンスターは」
「出没している炎のモンスターがいる砂漠の果て・・・・・この日誌の持ち主はスーパーカルガモに乗って向かったそうだ」
「ということは・・・・・」
「中途半端に炎のモンスターを増やすより、本体のモンスターのみ倒すためにはスーパーカルガモに乗って移動しなくちゃならないそうだな。他のプレイヤー的には太陽が出ている内にな」
「な、何で朝なの・・・・・?」
「朝より夜の方がめっちゃ強くなる。朝なら炎の分身体を三体まで増やせて、夜だと七体まで増えるそうだぞ。増えた本体の分身体からも炎のモンスターが生み出されるから時間との勝負のレイド戦になる」
マルクスが精神的に死んだ。戦うよりカルガモに乗るのがキツいのは顔が引き攣ったクロムとシンも一緒か。
「私みたいに手綱を掴んだまま空を飛べばいいじゃないか。引っ張られる感覚はあるが、激しく揺さぶられるよりカルガモについて行く感じで飛ぶならば幾分かマシの筈だ」
「お前まさか、あのレース中ずっとカルガモに物凄く引っ張られているように見えたのは、空を飛んでいたからなのか?」
「レース中は手綱を放さなければ砂漠に落ちても失格にならない。だったら手綱を掴んだまま空を飛んでも同じことだろ。さすがに飛行アイテムを使っての飛ぶ行為は反則だろうがな」
「「「・・・・・っっっ」」」
何だコイツ等、目から鱗が落ちたように驚倒一色じゃないか。
「まずは炎のモンスターを討伐する。砂漠の絵は最後だ。いや、最後に回すしかないがな」
「それはどうしてなんだ?」
「砂漠の絵を完成させるのに必要なピースは4つ。4大砂漠の攻略クエストも4つ。こんな偶然があるはずがない。探して集めないといけないピースが攻略の報酬だろうよ」
「それも日誌に?」
「いや、私の直感だ。直接どうやってピースを集めたか書かれていないが、この日誌の持ち主は最後に砂漠の絵を攻略したことを書いてある」
日誌を手渡して全員にも読んでもらう。ミィ達も日誌の記録を頭に叩き込んでいる間、デスワームと戦っている配信動画を見た。お、他のプレイヤーと交じって戦っているギルドメンバー達がいた。頑張れー。