オアシスの町に凱旋をする俺達を、両手を挙げて歓喜の声や祝福の言葉を贈ってくるたくさんのNPCと交じってるプレイヤーが待ち構えていた。あ、ペイン達も当たり前のようにいる。
「旅人達よ!」
日誌をくれたNPCとその隣に炎のモンスターの討伐クエストを受注する女性が近づいてきた。
「凄いな! あの炎の化け物を封印するしか倒せなかった先祖を超えたことをするとは!」
「感謝します。これであの人の魂も救われたはずです」
い、言い辛い・・・・・イフリート・ノヴァ諸共ブラックホールに吸い込ませてしまったから天に召されていないかもと言うことを・・・・・!
「ところで二人の関係は?」
「親子だ。聞いたよ。赤の他人の親父の仇も取ってくれていたんだとは。あの炎の化け物がいなくなったいま、このオアシスも真の意味で安泰で、あんたらのことは太陽神様もお認めになってくれるだろう」
太陽神って・・・・・ラーの事だよな? でもこのゲームに限ってそうじゃないならもしかして・・・・・。
「しかしよく炎の化け物を倒せたな? 見たところあの化け物に傷を負わせる感じには見えないんだが。もしかしてここに来る前に方法を知っていたのか?」
「知っていた? それは、どういうことだ?」
「いや、これは日誌には載っていないことなんだが。先祖代々の言い伝えじゃあ、炎の化け物と同じ力で戦わないと傷すら付けられないんだ。そうすることができる方法が黄金の金字塔の方にあるって話でさ、攻略しない俺達じゃどんな方法なのか知る由もないんだ」
「「・・・・・」」
「でもその前に赤い砂漠を越えた先にある秘宝が必要なんだ。それを守る番人を倒さないとならないが、あの化け物を倒したからもう二つも攻略してからここに来たんだよなあんたたち。すごいぜ!」
止めて! 褒めないで! 俺達は色々とすっ飛ばしてしまった大間抜けなですぅー!! なんのヒントもなしにイフリート・ノヴァを倒してしまった非常識なだけだぁー!!
「これであと一つ、砂漠のパネルを完成させるだけなんだな。俺達は行けれないが、先祖のように4大砂漠の攻略を頑張ってくれ旅人達!」
「・・・・・ああ」
彼のNPCとこの場から離れてタゴサックと買い取った高級館に逃げ込むように早足で進み、一番上の部屋に辿り着くと。
「そんなこと私達が知るかぁー!! あの母親のクエストもイフリート・ノヴァと関わっていたからボスを倒せば一石二鳥じゃないか? って気分で先に難しい方を選んでなんとか倒しただけなんだ! 実際そうだったから良かったのにイフリート・ノヴァを倒すヒントが用意されてるなんて知るかクソぉー!!」
「俺達って意外とヌケてるのかもな・・・・・そもそも本当に4つの砂漠を攻略する順番があるとはな」
苛立ち、嘆き、呻き、地団駄踏む俺達の部屋に入って近づくプレイヤーがたくさん。
「ハーデス君とタゴサックさん、どんまいだよん」
「ヒントなしでレイドボスを倒したのは後にも先にも二人だけだ」
「お疲れさまですお二人とも」
「ほんと、よく倒したもんだぜ」
苦労を労いに来たのは確かなんだろうが、何人か笑いを堪えているよな・・・・・?
「よかったなお前等。私達のように間抜けを晒さずに済んだぞ。配信を見ているお前達もな。私達の失敗を学んで越えてゆくといいさ」
『いや、何というか・・・・・お疲れ様です!』
『お疲れ様です!』
『お疲れー!!』
『お疲れ様でしたー!!』
『白銀さんや。例え砂漠を回る順番を知らずにクエストの中で一番難しい方を真っ先にしちゃっても、そんなの些細なことだから気にしない気にしない』
『むしろ4つの砂漠の回る順番を知れてラッキーであって、NPCからそれを暴露してくれた二人には感謝しかない!』
『それにどちらにしろイフリート・ノヴァを倒さないとクエストがクリアできないから二人のこと笑えない』
『というか、白銀さんが強すぎるから先にモンスターを倒しておきたい気持ちが先に出ちゃった感がある』
・・・・・確かにそうかも。しかし俺が戦いに欲求不満なのか?
「イッチョウ、デスワームにどうやって勝ってきたか教えてくれるか」
「ハーデス君の言う通り、目覚まし時計を罠にして音が鳴りだした場所に飛び出してきたからフルボッコしたよん。一つにつき一匹ずつ、デスワームも含めて全部で十三匹、二十分ぐらい掛かったかな?」
「その時のメンバーはこのメンツと他は?」
「イカルちゃん達はいなかったよ。サリーちゃん達もいなかったし、来るか分からないかな」
「そうか。それなら次の砂漠に向かうか。今度は回る砂漠を間違わないぞ」
「何気に根に持っちゃってるねぇ」
「意外なところを見られたな。でだ、ハーデス。この町で手に入れられるアイテムは手に入れておいたほうがいいのか?」
無駄なアイテムはないと思うぞ。スーパーカルガモは特に、と首肯した。
「あのカルガモってめっちゃ速いって言ってたけど本当?」
「小型化した新幹線に乗った気分の速度で走る。手綱を掴んで空を飛びながらカルガモついていく感じが座ってしがみつくより負担はそれなりになくなる」
「飛べないプレイヤーはしがみつくしかないのか」
「度胸があるならサーファーみたいに鞍の上に立ってみるのもありだな」
なんだその呆れ顔はドラグさん。何、できる奴がいるのかって?
『ちょっと今から試してくる』
『両手を組んだまま立つことができるのかもな!』
『面白い発想をしてくれるね白銀さん』
『これ、全員がスーパーカルガモを手に入れられたら俺達でレースできるんじゃん?』
『お、確かにそうだ。実現できるように身内にも挑戦してもらおうかね』
これから現れるかもしれないみたいだぞ。
「タゴサック、ミィ達。赤い砂漠に向かうつもりだがどうだ?」
「乗りかかった船に降りる奴いるかよ。今度は俺も最初から戦う」
「私達も不甲斐なく離脱してしまったからには二度と不様な姿はしないと誓う」
「ほう、その言葉を違えるなよ? もしもまた離脱したら・・・・・そうだな、猫耳と尻尾をつけた姿で私とイカルと配信をしようじゃないか」
「なっ・・・・・!?」
『うおおおおおおおおっー!!』
『ヨッシャァアアア!!』
『眠れない夜になりそうなイベントきたじゃないか!』
『また負けろォッー!!』
『ユリニャンは俺達の栄養なんだ!!』
『うーん、想像だけでも飯は3杯はイケる!』
『ちょっとその妄想を詳しく』
『ミィ、心が枯れた俺達のために潤いをくれー!』
『俺的にはミザリーとカスミも見てみたいな〜。白銀さん、お願いできなーい?』
「ミザリーとカスミ、視聴者からお前も猫耳と尻尾を付けた姿が見てみたい要望があるんだが」
「そうなのですか? うーん、恥ずかしいですが私もミィと同じ罰ゲームをしましょう。お誘いしてくださったのにまだ何もお役に立っておりませんからね」
「わ、私もかっ!? ・・・・・服はこのままでいいなら、構わないぞ」
「だ、そうだ視聴者達。・・・・・狂喜乱舞、凄く喜んでいる変態共しかいないのか。・・・・・連帯責任としてクロム達もぶっこんでみるか?」
「「止めろッ!」」
「勘弁してよぉ・・・・・」
それからタゴサックと小休止をしている間、ペイン達はクエスト用アイテムを手にするため四つのクエストを挑みに向かった。ミィ達は小休止を終えた俺達と共にルナマリアへとんぼ返りをして、東方面に飛んで移動した。目指す砂漠は赤い砂の世界、通称『血染めの暑熱寒獄』。色んなプレイヤーがその砂漠を挑戦しに暑い日差しを受けながらやっとの思いで遠く離れた砂漠に辿り着いたもの、赤く熱せられた砂の大海原に一歩足を踏み入れただけでHPと装備の耐久値が減る事実を知って以降、誰も行かなくなったらしい赤い砂漠の前に到着した。
「先に確かめてくる。私の防御力でも二十分で三分の一もHPが減るのかをな」
「熱のスリップダメージを軽減するアイテムの所有の有無の違いではっきりするな」
「頼んだぜ」
皆に見送られながら砂色の砂漠から赤色の砂漠へ足を踏み入れた途端、まるでサウナの中にいるかのような気温と熱気が全身に襲い掛かった。今の俺の防御力でどれだけHPが減るか一分間待った結果。
「ここも私の防御力とスキルの効果を無視する固定ダメージのフィールドだった。日誌の通り、半日で秘宝とやらを守る門番を倒さないといけない可能性が出て来たな。熱によるダメージ減少の装備アイテムがあると言えど回復アイテムが使えないならスキルで回復するしかないが、そもそも悠長にHPを回復する余裕があるとも思えない」
「ということは、イフリート・ノヴァがいる砂漠と同様・・・・・」
「スーパーカルガモの足が必要だ」
またスーパーカルガモを喚ぶ。もう一度よろしく頼むな、と込めているスーパーカルガモの首を撫でた。
「次は一緒に行くぞ」
「ああ」
ミィ達もスーパーカルガモのレースに勝ってそれぞれ召喚笛を手に入れている。今回はそれぞれ一人で乗ってもらおうと提案を言おうとしたら。
ブォンブォンブォン!! ブォオオオオオッ!! パラリラパラリラパラリララララ〜!!
なーぜか砂漠の世界に聞くはずがない騒音と音色が、こっちに近づいているのか音の強さが増してきた。
「・・・・・ハーデス、この音はまさか」
「そのまさかみたいだ」
ヒャッハァッーーーーー!!! お姉ちゃーん!!
幻聴かな、狂ったような声に混じって可愛らしい魔王の妹の声まで聞こえてくるぞ。一度目を閉じて、深呼吸してから目を開けて・・・・・。
「お姉ちゃーん!」
・・・・・幻聴でも幻覚でもナカッタカー。唖然とするミィ達はあいつらと交流したことは殆ど無い感じのようだな。俺とタゴサックは何とも言えない神妙な顔で走り屋もといガンナーのプレイヤー一同を迎えた。
「ヒャッハー! 間に合ったぜ白銀さんよー!!」
「やっとお姉ちゃんに会えました! 私もお姉ちゃんとクエストしたいです!」
うん、どっちから聞くべきかな。
「揃いも揃ってどうした百波達」
「そりゃ白銀さんがとんでもねぇカルガモに乗って走っているのを見たら、俺達も愛車を走らせたくなってはるばるここまで来たんだぜ!」
「それに白銀さんに報告したいことが二つできてな。直接言いたくて来たってのもある」
ヒャッハーに続いてヒットも理由を語ってくれるが、報告とはなんだ?
「報告とは?」
「はい! それは私から教えさせてもらいます!」
頭が緑色のモヒカンで両目に大きく星のマークを描いたビキニ姿の女性プレイヤーが挙手をしながら前に出てきて、何故か俺の前に跪いた。
「神獣鯨の眷属にいるフレンドから教えてくれた情報ですけど、月にある闇神の神殿と似た神殿のオブジェクトが深海で発見したそうなんです」
「・・・・・ほう? そいつはどうだった?」
「いえ、残念ながらプレイヤー達を神殿に立ち入られせない門番の如くいる人型の女NPCとの戦いに敗れて入ることは叶わなかったそうなんです。今のところ鯨の眷属達が独占していますが、白銀さんの協力が得られるなら場所を教えると言っています。どうしますか?」
「聞くまでもない。密かに探し当てたかった海神の神殿だ。喜んで【蒼龍の聖剣】の力を貸すと伝えてくれ」
「わかりました!」
ああ、それと、と言いながら彼女にを立たせると正面から胸の中に寄せた。身長的に彼女の顔が俺の胸に埋まるので苦しくない力加減で抱きしめた。
「いい友達を持ったご褒美だ。嬉しい情報を報告してくれて感謝する」
「〜〜〜〜〜っ!!?」
耳元で囁く感謝の言葉と一緒に背中を優しくポンポンと触れる。
「協力する日は来週の日曜日の21時とも伝えてくれ。それから待ち合わせのことも聞いたら連絡してほしい。いいな?」
「ひゃ、ひゃいっ」
抱擁を解いて離れた瞬間、彼女が仲間達に拉致されるように人垣の奥へ引きずり込まれた時間はわずか3秒であった。
「おい、裏山けしからんことをされてぇ・・・・・! どうだったんだっ、言えっ」
「・・・・・とても柔らかくていい匂いしたぁ・・・・・。そっちの気がないけど、白銀さんなら抱かれていいかも・・・・・」
「やべぇ、ガチの目だぞコイツ」
「羨ましいぞ、俺も抱きしめられてぇのにぃ・・・・・!」
「情報次第では白銀さんのご褒美が貰えるなら、他の神獣の眷属と繋がりを持って情報共有できるパイプを作る必要があるな」
「その通りだな。よし、このクエストが終わったらご褒美のために奴らと交流するぞ!」
動機が不純すぎる。マジでその為だけ他の神獣の眷属プレイヤーと交流するつもりか。
「むぅ〜〜〜」
こっちはこっちで、頬を膨らませて不機嫌になったイカルが人の胸に抱き着いては子供のコアラみたいに離れてくれなくなった。いや、これはこれでいいか。
「タゴサック、悪いがお前ひとりでカルガモに乗ってくれ。イカルはこのまま連れて行く」
「・・・・・その状態でか?」
「寧ろこの状態の方がイカルの精神的に助かる。速い乗り物が得意じゃないからな」
ああ、納得と言った風な顔で俺の提案を受け入れてくれた。
「イカル、クーラードリンクを持っているか? この先の砂漠はとてつもなく熱いぞ」
「・・・・・持ってません」
「なら渡すからすぐに飲め。お風呂に入るより全身が熱くなるからな飲まないと。クーラードリンクの効果が切れたらすぐに飲むようにな」
「わかりました」
こんなことあろうかと大量購入しておいて正解だったな。改めて召喚したスーパーカルガモの鞍に乗ると、ミィ達も全員スーパーカルガモに騎乗したのを確認したら一斉に赤い砂漠へと突入をした―――。