ボルボ達も一緒に同じクエストをすることになり、同じ方角を目地して移動を開始した。バイクの速度に合わせてもらっても速く走って移動するスーパーカルガモが立ち昇らせる赤い砂煙を見る暇もなく遠ざかる速度に、イカルは俺の胸から顔を離さないまましがみつく。身体で感じる空気の圧力と風切りの音で前に向くことができないのもまた事実だろう。眼下に荒ぶる金髪がたなびいてイカルの今の表情が見れない。その一方、ミィ達(女性陣)の方は?
「・・・・・っ」
「くっ・・・・・」
必死になって手綱を掴んで乗っているか、引っ張られながら飛んでいた。俺以外は余裕を持てないで嵐が過ぎるのを待つ風に新幹線並みの速度に耐えている。半日で着く目的地まで頑張れ〜!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・ッ
うん? 何だこの震動、地震か? 無自覚か無意識に何かのギミック―――。
ドッバァァァァァァァァァァッッッ!!!
突如として俺達の真横に砂漠が爆発した。砂の中に埋まっていた地雷のような爆発物が作動したのかと彷彿させる大規模な爆発の影響で大量の赤い砂が大量に舞い上がると共に巨大な影が宙に躍り出てきた。
ヴォオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・!!!
「―――は?」
砂中から何かが飛び出して弧を描いて俺達の真上に通り過ぎる。俺達のように視聴者達もしっかり見ていて呆然していたらしいが、それを知るのは後で今は俺達に影を落とす正体が・・・・・優に五百メートルは超えているのと、砂漠に飛び込んで潜ったのか姿を消したあとに、後方からまた砂漠から現れ俺達を追ってくる二本の牙を生やした鯨みたいなモンスターなのがわかった。
『ナニアレ、ナンナノアレ』
『あんなモンスターいるなんてキイテナイキイテナイ』
『なんで砂漠に鯨もどきがいるんだよぉー!?』
『完全にプレイヤーを狙ってるし!』
『というか、カルガモのスピードに負けてないけど大丈夫!?』
確かにすごいよなあの巨躯で砂を海のように泳いでいるのは・・・・・へぇ、なるほど。
「この砂漠地帯にしか生息していない龍らしい。主に鉱石を食べるが、雑食だからデスワームすら捕食対象だってよ。つまりデスワームより強い捕食者のモンスターだ」
『あ、あの砂ミミズを食べるって・・・・・』
『あのデカさで何を食べて生きているんだろうと思った矢先に納得しちまったわ』
『・・・・・あの、白銀さん? 速度が落ちてないか?』
『いや待て、まさか白銀さん?』
『トンデモないことをしようとしてないよね? ね?』
よくお気づきで・・・・・鉱石を食っているモンスターなら当然アレがある筈だ。ミィ達にも協力してもらうぞ。
「お前ら!! 少しの間だけ囮になってくれ!! このまま真っすぐ走れ!!」
「はっ!?」
「何を・・・・・まさか、あのモンスターと戦う気か!?」
「おいハーデス!」
ミィ達は当惑する反応を示してこっちを見るが、ヒット達はその逆でさらにバイクやクルマの速度を上げだした。
「ヒャッハー!! こういう展開があるなんて、白銀さんのところ来て正解だったぜぇー!」
「大型モンスターとカーチェイスもとい飛ばしながらバトルできるのはゲームしかできなかったからな! できることなら体験してみたかったんだ!!」
「NWOもゲームだぞー!」
「そうだったな!!」
「行くぞお前らぁー!!」
『世紀末の暴走族達、スゲー目や顔がキラキラ輝いてる件について』
『見方を変えれば確かに巨大なモンスターと乗り物で移動しながらバトルをする展開はすごく楽しそう。俺もやってみたくなってきちゃったじゃないか』
『◯◯ハンっぽいことができるのかよ! アレだけデカくて鉱石も食べるなら採掘ができたりするのか? ・・・・・あっ、白銀さんもしかしてあの鯨の身体にあるかもしれない採掘ポイントを狙ってるな!?』
『あー、だから急に囮になれーって言ったのか。そもそもあのモンスターってレイドボスですかね』
『仮にレイドボスなら、世紀末の暴走族達みたいに移動しながらバトルするしかないんだが』
『途中でずっと乗っていた船が大破した場所が戦場となるからワンチャンそこで戦えるはずだ』
『お前、アンコウモドキのことを忘れてないか。あの鯨もどきのモンスターも砂中から飛び出して襲うんだぞ。しかもアンコウモドキより攻撃範囲が凌駕してる』
『ああ、だからあの速すぎるカルガモの足が必要になるのか!』
『やっぱりカルガモがクエストのカギの一つになるな』
『話している間に蛇行しながら攻撃して、鯨の意識をしっかり引きつけている暴走族達が白銀さんの存在を隠しているぞ』
『そしてその白銀さんはカルガモを巧みに操って砂中から出てきた瞬間を狙って左鰭の上に乗って、そこから山脈を彷彿させる背鰭が生え揃ってる広い背中へ飛び移ることに成功した!』
『なーるほど、勉強になるぜ。他にもいけそうな場所がいくつかありそうだけど、俺もこれから試してみよっと』
『で、白銀さんはカルガモに乗ったまま後方に移動して採掘ポイントを探しているっぽいけど・・・・・あ、止まった』
『ピッケルを振ってる! 本当に採掘ポイントあったんかい!! くそ、俺もやりたくなった!』
『もう採掘ができなくなったのか移動した。お、また止まった』
『モンスターの背中でよくもまぁ採掘できるよなぁー』
『俺達もこれから挑戦するつもりだが、お前はしないのかね?』
『ハッハッハッ、そんな怖いことするわけないじゃーん(ピッケルを片手に持って移動中)』
『やだーすでにやる気満々じゃないですかー』
『あ、さすがに無視できなくなった鯨もどきが背中を激しく捩らせて白銀さん達を振り落とした』
『ノミを追い出した気分かな』
『例えが嫌すぎる』
『でも、イカルちゃんを乗せたままのカルガモはなんなく着地したけど、白銀さんは・・・・・まって、何その拳の光るエフェクト』
『その拳をぶつける気まんまんですね?』
『おお、猪突猛進! 速い! そして殴ったぁーあああ!?』
『ぇぇぇぇぇ・・・・・殴られた鯨が転がってるよ』
『その前にスゲー音が聞こえたぞって、鯨がポリゴンになった!? 今の一撃で倒したってのかよ!!?』
『どーやらレイドボスみたいですね。どんな素材やアイテムを手に入れたのか気になるな〜』
『後で聞こう!』
よーし、倒せた! レベル100程度だったが、余裕で倒せるモンスターなのは確かだ。イカルを乗せたカルガモに戻りミィ達と合流すると問い詰められた。
「よくも戦おうと思うなお前。倒したみたいだがどうだった。俺達も経験値だけ貰えたがお前は何を手に入れた?」
「鯨の素材と希少なアイテムっぽいのがそれなりに。それから希少な鉱石も手に入った。あの鯨からしか手に入らない限定な鉱石みたいだ」
「イズが知ったら目の色を変えて挑みそうだな」
絶対にそうだろうな。俺もクロムに同感だ。当然強い盾と矛に協力を仰いでだ。
「次は1人かパーティーで挑んでみたいな。倒せば確実に称号が貰えるぞ」
「私も手伝います!」
「元気だねイカルちゃん。僕には無理だよあんなのと戦うのは」
「そうですか? みんなと戦えば勝てると思いますよ?」
「そうですね。私もそう思いますよ。ハーデス、先ほどのモンスターのレベルはわかりますか?」
ミザリーが同意しながら微笑み、詳細を求めたので把握したことを告げた。
「レベルは100だ。【蒼龍の聖剣】が束になって戦えば勝てる。ただ、常に移動しながら戦わなければならないから一苦労はするだろう」
「あの巨体でそのレベルなら納得だが、本当に俺達でも勝てるのか?」
「信用できないならしなくていいさ。私の感覚で言っているだけだからな」
「―――俺達は信じるぞ白銀さーん!」
配信動画を介してみていたか、聞こえていたかバイクに乗っているヒットが寄って来てカルガモと並走しながら話しかけてきた。
「白銀さん、もっかいやろうぜ! あんなモンスターと並走して戦えるなんてここしかできないし面白かった!」
「私がこの四大砂漠クエストが終わった後ならいいぞ」
「やっほーう!! だったらさっさと終わらせようぜ!! お先ぃー!」
先行するヒットに遅れてなるものかと他のガンナー達もアクセル全開で俺達を追い抜こうとする。それを黙って見ている筈がないだろう1羽の鳥に話しかけた。
「お前の走りを見せてやれ」
「クェー!!」
「―――え」
あ、イカルが正面に向いたままだった・・・・・ま、慣れは大切ってことで。ひゃああああああああああああああ!!? と悲鳴を上げる少女の叫びが赤い砂漠に響いたのだった。暴走族をあっさり追い抜いてみせたカルガモはヒット達にドヤ顔を見せつけたのは正直面白かったのは内緒だ。
「カ、カルガモに負けてられるかぁー!!!」
「相棒、お前の力はこんなもんじゃない筈だぁ!!!」
「走り屋のプライドに懸けて負けられねぇえええええええ!!」
あーあ、あいつらのハートに火が点いてしまったようだ。となると・・・・・。
「うわっ!? こいつ急に加速し始めた!」
「待て待て! 落ち着けお前ぇ!」
「あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~あ~!!!」
「くっ、制御が効かん・・・・!」
「ハーデス、お前ぇえええええええええええー!!!」
ミィ達のスーパーカルガモ達も刺激を与える結果になってしまったみたいだ。みんな、ごめーんね!
―――しばらくして~~~~
「「「・・・・・」」」
チーン、と何名か精神的に死んでしまった原因が俺だろうと反省しない。赤い砂漠の深奥、その先に半日より早く辿り着いた俺達を出迎えたエリアの光景を眺めた。
「こいつは凄い・・・・・骨だらけじゃないか」
「こんなエリアもあるんだな」
「色んなモンスターの墓場の砂漠だね。これ、手に入らないかな」
「無理っぽいぞ。完全にオブジェクトだ」
代わらない赤い砂漠に大中小のモンスターの骨が散在しているエリアの中を小休止している間に、ガンナー達は仲間を先遣隊として先に送った。俺はヒット達の休憩場を用意するとスーパーカルガモの速度に慣れずグロッキーなクロム達が早速利用した。スーパーカルガモ達には水と餌を与えれば慌ただしく飲み食いして、ヒット達の方はバイクと車の燃料の補給やメンテナンス作業、銃火器の銃弾の装填をしていて次の戦闘準備を小休止の間に済ませようとしていた。
「ハーデス、ペイン達もあの四つのクエストを済ませてこっちに向かっているそうだ。合流してから進むか?」
「いや、このまま先に向かおう」
「いいのか?」
「すでに30人以上もいるし、これ以上増えるとレイドボスの制限人数に引っ掛かる可能性がある。後続組のペイン達まで合流したらペイン達と来たプレイヤー達がハブれてしまうさ。それに戦力が十分すぎると思うし」
「今のところ私達は何もしていないがな」
「これから死に物狂いでしてもらうから安心しろ」
それから10分ほど経つと先遣隊が戻って来てマッピング情報を提供してくれた。立体映像のマップを広げてくれながら自分の目で見た物を公表するのはボルボ555だ。
「この先に行けば岸壁に挟まれた一本道があった。確かめに走ってみたら3Kほどで抜けた先に枯れたオアシスの町があったぞ」
「枯れたオアシスの町? 無人の町か」
「そうだ。何でかNPCの代わりに町の至る所にサボテンが育っていて、前にはあっただろう泉の場がカラッカラでとても昨日今日で枯れた感じではなかったな。代わりにそこにも巨大なサボテンが生えてたけど」
その町の風景をスクショしたボルボ555の言う通り、オアシスとは思えない枯れっぷりに急を要する事態だけは把握できたが疑問が残る。んー? 秘宝を守る門番はいずこに? とな。この砂漠にいるんじゃなかったのか? 取り敢えず次にするべきことは見えたな。
「わかった。先遣隊の小休止やメンテナンスが終わり次第、そのオアシスに行こう。クエストの手掛かりがその町にある可能性を考慮してな」
「無かった場合は?」
地道に探すしかないだろ。日誌にも詳細まで記されていないんだからトライ&エラーだ。
―――10分後。
全員の小休止と諸々の準備を済ませたガンナー達と次のオアシスの町に移動開始した。情報通り岸壁に挟まれた一本道を通り問題なく次の町のエリアに到着した。スクショではなく生で見るオアシスの町には本当にサボテンだらけで、町の建物より見上げればどの方角からでも見ることができる巨大なサボテンが存在感を放っていた。鑑定するまでもなく、あれがモンスターなのは俺の直感がそう訴える。念入りに『南極大陸の観察者』の効果で鑑定したら・・・・・やはりそうだった。
「―――全員! いつでも奇襲に対応できるように警戒しろ! 相手がサボテンだ!」
「それは勘かハーデス?」
「いや事実だ。サボテンを鑑定で来た。モンスターとしてな」
俺達が町に入るや否や、直立不動だったサボテン達が、根っこを足代わりにして動き出して襲い掛かってきた。
「本当にサボテンが襲ってきたぁー!?」
「撃ちまくれぇー!!」
「うらぁああああああああ!!」
ガンナー達の銃声がけたたましく轟く中、俺達は武器と魔法で町中から湧いてくる『サボーテーン』を蹂躙していく。
「・・・・・ハーデス、サボテンは植物だよな」
「何を当たり前な事を・・・・・ああ、サボテンの種類の中では水を貯えるサボテンがある。それ以前にサボテンは熱の耐性が高いから炎の耐性も高いよう設定されているようだな」
火達磨になっても一向に倒れないサボテンを見てミィの言いたいことが悟った。
「クエー!!!」
「ん?」
なんかスーパーカルガモが嬉しそうな一声を発したと思えば、一体のサボーテンに飛び出してあろうことか棘があるにも拘らず齧って食べ始めた。
「・・・・・もしかして、美味しいのか?」
「クエ!!」
齧られたサボーテンの中はみずみずしくて真っ赤だった。あの色合いを見てしまうとスイカに見えてしまうのは俺だけかな・・・・・。あ、ミィ達のスーパーカルガモもサボーテンを齧り出した。
「系統:炎の魔法が効果ないなら、倒れるまで燃やすか武器で倒すしかないな」
「効果が無いのにか」
「ダメージは入るんだ。倒せるぞ。それでもどっちも出来ないなら・・・・・餞別にこれを渡そう」
インベントリからスキルスクロールを取り出してミィに渡した。中身を確認した彼女は無言でスクロールを使って新たなスキルを取得した。
「―――【ファイアボルト】」
炎を纏った雷がミィの手から解放されて燃えているサボーテンを含め他のサボーテンまで貫き、一撃で倒して見せたINTが高い証拠を示してくれた。
「使い心地はどうだ」
「・・・・・悪くない。感謝するハーデス」
「ここで負けたら猫耳を付けることを忘れるなよ」
不敵な笑みを浮かべてミィに背を向けて、先に前へ移動する。ガンナー達も決して弱くはない。常に一緒に戦っているなら同士討ちなんてこともしないだろう。なら俺達は―――。
「巨大なサボテンのところに行こうイカル」
「はい!」