〜〜〜数分後。
「・・・・・いいですよ、手伝います」
説得と言う話し合いをした末、すごく渋った顔で妥協してくれたイカルに、安堵で胸を撫で下ろしたイッチョウ達のパーティーに加わった少女と別れて一足早く素通りした黄金の金字塔に戻った。
「ハーデス、イカルに何を言った?」
「今日の代わりに今度私と1日遊ぶ約束をしただけだ。イカルは完全にペイン達のパーティーに加わるから」
「そうか。懐かれると苦労することがあるな」
「お前も似たようなものだろ」
うっさい、と照れるタゴサックにマルクス、カスミと俺の編成で後衛に、前衛はミィとシンにクロム、ミザリーの編成でピラミッド内に突入中だ。前後どちらも殿が出来る大盾使いを分けて警戒しながら進んでいるが、他のプレイヤーとはまだ鉢合わせしていない理由がある。
「どうやらこの中も一定数のプレイヤーが入ると他のプレイヤーとエリアごと分けられている感じだな」
「じゃなきゃ缶詰め状態になるわな」
外と隔離された石造りの通路でまだモンスターと遭遇していない。そうであろうと警戒しながら進む俺達の足は何時しか止まる時がある。
「お、分かれ道だぞ。どっちにする?」
「二手に分かれて途中まで調べてみるか?」
「ハーデス、お前はどうだ?」
「その案でいこう。お互い動画を配信と通話状態にして一人がその動画の状況を見て伝え合うことができる」
「こまめな報連相ですね」
「情報は何時の時だって必要だからな。仮に私達が戻れず分断された場合はそのまま進むぞ」
「わかった。では、タイミングは扉か部屋、分かれ道を見つけたらこの場に戻ろう」
異論はないと配信動画の準備と報連相の担当を決めてから二手に分かれた瞬間、ドンッ! と後方の通路に壁が落ちて後戻りができないよう閉ざされた。
「マルクス、ミィ達の状況はどうだ」
「ま、待って・・・・・ミィ達も僕達と同じみたいになっているよ」
「このピラミッドを挑戦したプレイヤー達の動画を見ても、こんな展開はないぞどうなっている?」
「ハーデスの言う通りになってしまったな。これでは先へ進まざるを得ないか」
早速未知の展開が俺達を迎えてくれるそうだ。
「取り敢えず進むぞ。マルクス、リアルタイムでミィ達の状況を逐一報告してくれ」
「わ、わかったよ・・・・・」
後戻りを封じられたまま前進を強いられた俺達は、ミィ達の安否を気にしつつも合流かゴールを目指すべく停めていた歩を動かした。
「それにしても、現実の世界のピラミッドの中もこんな感じなのだろうか?」
「石で作られた空間の事か」
「ああ、その通りだ。古代の人間がブロック状の石を積み上げてピラミッドを作ったというのは誰しも知っている知識であるが、実際に見たことがないから感慨深いのだ」
カスミが石壁に触れて思ったことを口にした。
「現代でもピラミッドを作ることは不可能に近いのだろうか?」
「いや、出来なくはないだろう。雪をブロック状に押し固めてかまくらを作る工程とほぼ同じだ。熊本城や大阪城の土台となっている石垣もそうだからな。橋だってそうだ」
「じゃあ、このゲームの中でも大規模な建築が出来るってことなのか?」
「出来たら奴隷のように働くことになるぞタゴサック。フルメンバーで石を集めて、計算と設計を考えないといけないのだからな。そもそもカスミの疑問を付け加えるなら、一つだけでも数トンもするこの大きな岩はどこから調達したのか現代の学者達でもわかっていないことだぞ」
そんなこと調べて意味あるのかと興味がない人間が言うだろうが、歴史が好きな人間的には気になる一つだと思いたいな。
「確かにそうだな。では、ハーデス的にはどこから調達したと思われる?」
「遠方から調達したのは確かだろうな。だとしたら広大な砂から隆起していた岩を削って運んだと思う。恐竜が滅んだ時代、隕石が地球に落ちた際に大津波が発生しようと、世界規模の火災が広がっていようと、全ての生物の命と時間を止める極寒が訪れようと、大地が沈もうと必ず世界のどこかで変わらず残っている山がある。今ほど砂漠も広がってはいないだろうし、その名残の大地があってもおかしくはない」
―――実際、元の世界でピラミッドを作っていた人間達を見ていたエジプト神話の神々に教えてもらったことはあるがな。
「・・・・・ハーデスって趣味は何なんだ?」
「急になんだ。まぁ、答えるなら―――」
「話はそこまでだ。見ろ」
カスミの制止と足を停めたことでタゴサックとの会話を中断した。前を見れば今まで歩いた通路より広い空間が広がっていた。砂だらけで床が隠れてしまっているし白骨化した人間の成れの果てが至る所に転がっている。そんな空間の、25メートル先の奥には他の場所と繋がっている石造りの通路の出入り口が俺達を待っていた。
「明らかに罠がある部屋だって物語っているじゃないか」
「そうだな。それを暴いてやろうじゃないか」
「どうやってさ」
はいここにインベントリの肥やしもとい泥だんごをたくさん取り出しました。それをスキルで人型に変えながらHPを100程譲渡すれば俺の命令に従う土人形が完成します。
「行け」
無言で砂らだけの部屋の中を進んだ矢先、砂から巨大な顎が飛び出してきて首だけ残して泥人形の身体を喰らいながら砂の中に戻った光景に俺達は無言になった。
「・・・・・今の見せれたかタゴサック」
「ああ・・・・・ハーデスがいなかったら確実に一人か二人、最悪全員が丸呑みされて即死していたな」
「ど、どうする? ここ以外に進む道はなかった筈だよ」
マルクスの言う通り、ここまでは一本道しかなかった。もしも隠された通路があるなら探したいが、そもそれで罠を作動させてタゴサック達と分断されたら困る。
「ハーデス、何か方法はないか?」
「色々と試してみよう」
泥だんごを一つ砂の上に落とすとトラップは作動しなかった。もう一つ泥だんごにHPを100付与してから放り投げると砂に落ちた直後でトラップが作動してHPがある泥だんごを喰った。果物を投げたらそれを喰らって、鉱石を投げると無反応、HP回復薬を落とせば反応し、MP回復薬も落とすとそれまで反応し、ユニーク装備の盾を落とせばそれも喰らって・・・・・あ、硬くて喰えない物だと分ってはいたか。なら別のユニークの大盾を遠くに放り置くと反応して喰らってはまた吐いた。
「わかった。ステータスに反応する罠だここは」
「ステータスに? 回復アイテムや果物にはステータスはないぞ」
「回復アイテムと果物にはHPとMPを回復する数字の量がある。逆に鉱石は回復効果がないから無反応で喰おうともしなかった。HPを付与した土人形が喰われたのもまさしく前者だったからだ」
「じゃあ、大盾は食べたのに吐いたのは?」
「ステータスがあるものの【破壊不能】や【破壊不可】のスキルがあるから、人間が石を食べようと硬すぎて食べられないみたいな感覚だったのだろう。破壊が出来る大盾だったらそのまま食べられるかもな」
つまりここを通り抜けたくばどうすればいいのか、それは・・・・・。
「あれはモンスターではなくて罠そのもの。攻撃してもダメージは受けないからステータスや数字がない物を置いてその上に歩くしかないかもな」
「そんな物、私達が持っている筈がない」
確かにステータスが関わっている物以外持っていないプレイヤーはほとんどいない。だが、全プレイヤーが共通してステータスがない物はある。それを捨ててまで罠を突破しないといけないのかと異議を唱えるプレイヤーがいるだろう。だが―――俺はそれをしてみせたのだ。金色に輝く硬貨を砂が覆い隠すまでばら撒いてな。そしてその上を歩いてもトラップは反応しなかったことで、タゴサック達も来れた。
「・・・・・なぁ、どれだけ捨てたのだ」
「念のために5000万Gは捨てた。なに、このゲームの中でならはした金だ5000万Gなんてな」
「・・・・・お前の行動には脱帽するしかない」
「僕、今更ハーデスの凄さと恐ろしさを知った気がするよ・・・・・」
何でだ、解せん・・・・・・。こうして最初のトラップを越えたからいいじゃないか、と三人の反応にちょっぴり不満を抱き前進した。
「マルクス、ミィ達の方はどうだ? 私達みたいに進んでいるのか」
「えっと・・・・・うん、まだ罠がある部屋に入ってなくて通路を進んでるみたい」
「左の方が罠がない安全なルートだったか」
「いや、それはない。楽あれば苦ありという言葉通りになるなら、そろそろ強烈な罠がある場所とぶつかる頃だ」
どうやらこっちもまたそうみたいだがな、とカスミとタゴサックの足がまた止まったから予想した。前に出て確かめると壁際に砂の滝が流れていて、巨大な刃とスパイク付きの大鎚の振り子が複数も一本道の真上に滑るように大きく揺れ動いていて、ぶつかれば貫かれて即死な剣山の底がある空間が俺達を待ち構えていて、この部屋以外の道はない。
「先が見えないな。かと言って他に道がないのも事実・・・・・」
「えええ・・・・・あのおっかない場所を通らないといけないの?」
「ハーデスは行く気満々だぞ」
よくお分かりで。
「偵察に行ってくる」
「気を付けてくれよ」
擦れ違い様にカスミから心配の言葉を向けられながら、刃物と大鎚の振り子をスルスルと躱して前へ進んだ―――が、足を止めざるを得ないことが発覚して三人のもとへ戻った。
「どうだった?」
「確認したが、通路はなかった。見た目は完全に行き止まりだ」
「え、行き止まりって・・・・・でもここ以外進む道はなかったよ?」
「そうだな。どこかに隠し通路を開くギミックがあるかもしれない。もしも本当にあるならの話になるが」
俺達はうーん、とここで初めて足止めを食らって悩む。取り敢えずみんなにも入って振り子の前に止まって見てもらうが砂の滝と振り子、そこの剣山のみしか見受けれない。
「隠し通路、ではないけどさ。意外なところに通路があったりしないか?」
「意外な所か・・・・・なるほど、確かめてみるか」
宇宙の星塊を使って最初に壁際の砂をどかして隠された通路がないか確かめた。すると砂によって隠れていた一面の壁の内の一つだけぽっかりと開いた穴が、隠し通路が見つけた。しかもそこは大槌の前にだ。
「怪我の功名を体現させたいようだな運営は」
「・・・・・まさか、敢えてあの棘付きのハンマーにぶつかって隠し通路に飛び込めと?」
「それ以外ないだろ。ほら、行くぞ」