バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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ルナマリアでのEXクエスト 四大砂漠の攻略 10

 

「ぐえ!」

 

「ぐっ!」

 

「うわ!」

 

スパイク付きの大槌の打撃を受けながら砂の滝に隠された通路に飛び込んでくる三人。ダメージもしっかり入っているが誰一人欠けずに揃って合流できたので次に進んで以降、迫る天井や床、どこまでも追いかけてくる岩球、落とし穴、壁の穴から飛び出す槍、毒の霧といった数々の罠が俺達を待ち受けその度に乗り越えた。

 

「なんか、さっきから殺意が高いトラップが多くなっているような気がするんだけどっ」

 

「そりゃあそれぐらいなきゃ罠とは言えないだろう。トラッパーとして勉強になっていいじゃないか?」

 

「それにしては難なく罠を突破しているハーデスは凄いが、リアルのピラミッドにもこんな仕掛けは無いよな」

 

「あったら死人が出ているぞ。しかしピラミッドに限らず世界を渡り歩く探検家なら一度や二度ぐらい仕掛けある迷宮を攻略しただろうな。特に人間にとって魅力的な宝とか古代の王の墓とかある遺跡は特にな」

 

「まさか、ここもそうだと言いたいのか?」

 

「まだ判らなかったのか。ピラミッドはそもそも古代エジプト人の王の墓場だぞ、そうじゃないって説もあるが。どちらにしろ私達はこの中に眠るピースと言う宝を探しに、王の墓を荒らしている不届き者そのものでもある事は変わらないがな」

 

ギョッと目を丸くする三人と話し合っているうちに次の通路を見つけた。今までのより意匠が凝った一方通行の壁面の間を進み・・・・・ん? この壁、壁画か。興味深いな・・・・・。

 

「ハーデス、どうした?」

 

タゴサックに呼び掛けられたからカスミ達も進む足を停めてこっちに振り返った。

 

「壁画を見ていた。グラン・モーランやイフリート・ノヴァの絵もあるから、この先に必要なヒントかもしれない」

 

「何でそう言えるの?」

 

「私とイッチョウだけが知っている隠しエリア内に謎解きのギミックがあったからだ。砂漠の絵はピースだからこういう関係なさそうに見える物でも、ヒントだったりする事もあるから見落としてはいけないのさ」

 

スクショして記録に残す。絵はそれぞれ四つ描かれている。一つはグラン・モーランが砂から出ている絵の次にサボテンと対峙している人々の絵、二つ目はイフリート・ノヴァと人型の炎のモンスター達の柄、三つ目は神の化身達の絵、四つ目は人々が包帯を巻いた人々に追われているような絵と太陽の仮面を被った人々が宙に浮く黄金の仮面に跪いている絵だ

 

「太陽みたいな仮面・・・・・これをつける必要があるみたいだな」

 

「クエスト用のアイテムの仮面をここでか?」

 

「この壁画を見る限りにな」

 

「ならば本当に必要か確かめる意味も兼ねて進もう」

 

カスミの指摘に止めていた足を再度動かす俺達は一方通行の道をひたすら進み、次の広い空間に続く出入り口を潜った先は―――。

 

「うぇぇぇぇぇ・・・・・」

 

入った矢先にマルクスが嫌そうな顔と共に呻く。無理もないし分からなくはない。覗き込めば壁中、それも蜂の巣のようにある無数の六角形の空間に収まっている数々の棺、棺桶があるんだ。それも闇で閉ざされて底が見えない下に続く螺旋階段の先までずっとある。一体どれだけあるんだ。何十何百、もっとありそうだな。

 

「棺桶の中にミイラがいるのか? 階段を下りる最中に棺桶から出てきて私達を襲い掛かりそうだがな」

 

「有り得そうな展開だな。この下にレイドボスがいるとすれば、もうそろそろミィ達と合流してもいいと思うのだが」

 

一旦ここから出てミィ達を待つために待機。タゴサックとカスミもそれぞれ感想を言いながらマルクスに目を向けた。俺もどうなんだ、と的に視線を向ければ俺達から視線を一身に浴びるマルクスは配信動画と連絡に集中した。

 

「ペイン達が突破できなかった虫だらけの部屋をギリギリ何とか突破できてからは、ずっと歩いているけれどどこに向かっているのか分からないみたい」

 

「遠ざかっているのか接近しているのか、本人達も動画越しでもわからない状態だな。となると方法は一つしかないな」

 

「どんな方法だ?」

 

「音だ。私のスキルではなくてイカルのスキルで、普段は使えないものだからようやく使う時が来たな。【相乗効果】【ダウジング】【エコーロケーション】【咆哮】【範囲拡大】」

 

叫び散る俺の声音が石壁を越えてどこまでも広がったことを具現化した立体的な3Dマップが教えてくれて・・・・・あー・・・・・。

 

「近くまで来ているが、ミィ達と完全に別の道を進んでいる。しかもマップを見る限り、さんざん歩かせて上の階の出口としか通路が繋がっていない」

 

「「ミィ・・・・・」」

 

微妙な顔をするカスミとマルクス。あの虫しかいない部屋は、この先に行っても無駄だからここで倒れてねーって運営の配慮だったのかもしれない。となるとペイン達、再戦に熱が入ってたっぽいから・・・・・。

 

 

「・・・・・は? 出口、だと?」

 

「おいおい、あの虫だらけの部屋とぶつかった時点で外れのルート確定だってことかよ。せっかく突破で来たってのに」

 

「ハーデス、出来ればもっと早く・・・・・あ、イカルちゃんも出来たんだった」

 

「そのイカルは、凄くご立腹になってしまったみたいだね」

 

「・・・・・」

 

「ご、ごめんイカルちゃん!! 怒らないで、ねっ?」

 

 

―――ってことになっているだろうなぁ。

 

「どうするハーデス。先に進むか待つか」

 

「待っても無駄だ。私達と同じピラミッドの中に入れる保証はない。別の新しい迷宮内に入って今度こそミィ達だけ攻略する羽目になる」

 

「じゃあ、先に進むか?」

 

「それしかない。が、それは少し待ってくれ。試したいスキルがある。もしも成功したらこっちに来られるかもしれない」

 

ってことでマルクス、ミィ達に伝言をよろしく。―――【次元跳躍】を使ってくれと。

 

―――数分後。

 

「【次元跳躍】のスキルの存在は失念していた。すまないハーデス」

 

「やっとお前らと合流できたぜ。こんなことならもっと早く思い出したかったな」

 

「賭けが大きかったけどな。でもま、これからは同じエリア内ってことなら離れていても、他のプレイヤーと合流できることが分れば安心だな」

 

「先に行かず正解でした。声を掛けてありがとうございます」

 

俺達の目の前に転移スキルで現れたミィ達と合流できたところで、手に入れた太陽の仮面を被った状態で分断される前の編成と変わらず先にミィ達から進んでもらい、続いて遅れて俺達も入った。スタスタと足音やガチャガチャと擦れる金属の音以外静寂に包まれた螺旋階段がある空間の中を歩く。

 

「・・・・・後ろから岩の塊が落ちて来たら階段から落ちて回避するしかないな」

 

「落ちた先に即死系のトラップがあったらどうするのさ」

 

「私が先に落ちてお前達を受け止めてやるさ。嬉しいだろう?」

 

「頼もしいことは確かだが、珍しく刀を装備しているのだなハーデス」

 

「広範囲攻撃ができるスキルが使えないからな。ましてや階段を降りている最中に棺桶が開く事態となれば小回りが利く武器が有効なのさ」

 

延々と歩かされる螺旋階段の先の最終地点にはまだまだ遠く、壁の穴から俺達を襲う敵への警戒心を解かず突き進むこと30分。

 

「やっと着いたようだな」

 

クロムの一言が俺達の心情を代弁してくれた。最後の階段から降りて見渡せば壁や床は黄金で固められて、びっしりと色んな絵が彫られていた。これだけでも現実世界にもあったら世界的文化財と認定されてもおかしくないなー。

 

「で、いつまでこの仮面を付けてりゃいいんだ?」

 

「少なくとも奥にいるこのピラミッドの主と思しき奴の正体がわかるまでだ」

 

黄金の空間の奥にいる金色の玉座に深く座っている黄金の鎧とツタンカーメンとは違う黄金の輝きを放つ仮面が俺達の方を向いている。

 

「壁画で見た絵の仮面と一緒だ」

 

「全員、警戒態勢だ。何時でも攻撃と防御が出来るように。ミザリーは状態異常と回復のスキルの準備だ」

 

臨戦態勢もする俺達は玉座へと近づく。謎の仮面は沈黙を保っていたが10メートルまで距離を縮めたところで輝き出した。

 

《よくぞ数々の試練を乗り越えここまで来たな。砂の民ども》

 

その一声に俺達の足を同時に停めさせた。そして瞬時に壁画の絵を思い出して跪いた俺に遅れて真似をすればいいのかという考えかミィ達も跪いた。

 

《我が下に来たのは言うまでもなく我が秘宝を欲する為であろう。だが、易々とくれてやるつもりはない》

 

「・・・・・」

 

《しかしながら我は寛容なこの国の王だ。我が秘宝をくれてやる条件―――その肉体を我に差しだせば前向きに考えてやらんことはない。しかし拒否するならば容赦はせんぞ》

 

それ、絶対に後でやっぱりダメっていうパターンだろ。と内心ツッコミを入れた1秒後に。

 

《拒否するか。ならば無理矢理にでも生気満ち溢れたその肉体を奪ってくれる》

 

「「短気にもほどがあるだろ!」」

 

後ろから男女のツッコミが聞こえた。ほんとそれ。答える暇すら与えてくれなかったぞ今の。どこが寛容の王だよと愚痴を考えていたら黄金の仮面が姿を暗ました途端、顔全体に何かが張り付いたような感触がした―――ん? なんだこれ?

 

≪黄金の呪いの仮面が死神・ハーデスの身体を乗っ取りました。討伐されるまでプレイヤーは操作を受け付けません。プレイヤーの装備の変更、スキル使用、アイテム使用不可です≫

 

は?

 

 

タゴサックside

 

ハーデスが不自然に硬直したように見えたと思ったら、黄金の椅子にあった黄金の鎧が中身の骨を残して分離してハーデスの全身に装備する風にくっついて・・・・・あいつのプレイヤーネームが赤くなったどころか黄金の呪いの仮面に代わってHPバーが表示された。

 

《くくく・・・・素晴らしい! 我が望んで止まなかった強靭で強力な力を秘めている! 今の我は神も当然だ! この肉体があれば神などおそるるに足らん! 今こそ我が軍勢と共に神の叛逆をせん!》

 

ミィが恐る恐ると呼び掛けるもハーデスは気が狂ったかのように笑いだした。まさか本当にプレイヤーのアバターを乗っ取ったっていうのか! しかもよりにもよってハーデスに!!

 

「おい、ヤベェ展開だろこれ」

 

「ハーデスのスキル・ステータスがそのまま引き継がれていたら余計にな」

 

「か、勝てるわけないよそんなの・・・・・!」

 

「プレイヤーを乗っ取るボスがいるとは思いもしなかったな」

 

「困りましたね・・・・・」

 

心の底から同意するぜ。このゲームをして以来一番ムリゲーだって思わされたことはない。これから俺達はハーデスに負けるような戦いをしなくちゃならないなら、これならペイン達も連れてくるべき―――

 

《む・・・なんだ?》

 

ハーデスを乗っ取った呪いの仮面が自分の手を見下ろした。訝しむ俺達の目の前で黄金の籠手に包まれた手が突然弾けて、指辺りに強い光が輝いていた。あれは何の現象だ? と見守っていればその光からある巨大なモンスター達が薄い身体で現れた。

 

「あれはベヒモス?」

 

「ジズとリヴァイアサンもだ」

 

「・・・・・ねぇ、あのモンスター達も戦わなきゃいけないってことはないよね」

 

マルクスの絶望的な予想にそれが現実になったらと思うとワラエナイ。だがそれは杞憂に終わるようでベヒモス達は俺達ではなく呪いの仮面へ襲い掛かった。

 

《なんだ貴様らは! ぐ、ぐわあああああああああああああああああああ!!?》

 

肉体がないベヒモス達が呪いの仮面の黄金の両足と籠手と肩を含めた腕部を破壊した! あのモンスター達は破壊するだけ破壊してすぐに消えてしまったが、俺達に微かな希望を見出してくれた。

 

「なにがなんだかわからないが、どうやら絶望しなくていいようだぜ」

 

「黄金の鎧は破壊可能、同時に鎧が砕けるとHPも減ることがわかった」

 

「ああ、ならば私達だけでハーデスを助けよう」

 

後で聞くにしても今は鎧の破壊を優先だな。俺達の戦う意思を察した呪いの仮面はどうやら、まだ絶望的になっていない俺達を気に食わないようで次の手を打った。

 

《馬鹿め! 我が軍勢もいることを忘れるな! 出でよ我が下僕共!》

 

ミイラでも召喚するのかと予想したが、それよりも強力だろうと思わさせるハーデスの従魔達が勢揃いでこの場に現れた。おい、それはそれで俺達にとって絶望の象徴なんだが?

 

《フハハハハ!! この肉体の持ち主の軍勢だ。貴様等ごときでは勝てやしない! さぁ目の前の下賤な輩共を殺せ!》

 

命令をする呪いの仮面に応じて動いたのが巨大な銀色の狼フェンリルだ。静かに足を動かし俺達の目の前で掻き消えた直後。

 

ガルルルルルルルルルァ!!!

 

呪いの仮面の真後ろに現れて黄金の胸部に鋭い爪を立てて貫いたんだ。それだけで胸部の鎧も砕け散って残りは頭だけとなった。

 

《なぁ・・・・・!? な、何をする! 今は我が下僕であろう!? なぜ我に牙を剥く!》

 

「当然です。我がマスターの身体を乗っ取った不届き者」

 

征服人形サイナが冷たい声音でその理由を答えた。

 

「私達が従うのは死神・ハーデスというマスターのみです。マスターの身体を今も凌辱する寄生虫のあなたに従う道理はありません。この場に現れたのは寄生虫を駆除する為です。―――行きなさい」

 

サイナが手を突き出すとオルト達が雄叫びを上げて呪いの仮面へ襲い掛かった。その光景がとても胸を熱くするほど凄いというのに俺達がこのまま何もせず見守るだけというのは、なぁ・・・・・?

 

「私達も行くぞ」

 

「はい!」

 

「マッチポンプだよな完全にありゃ」

 

「言うな言うな。そうでなきゃ一方的に俺達の方がやられていたんだからよ」

 

ということでハーデス。いや呪いの仮面、今すぐ倒れてもらうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、俺のアバターが乗っ取られて動かすことも喋ることもできないまま幽霊のように静観するしかなく、結果的にオルト達とタゴサック達が共闘して呪いの仮面の最後の頭、仮面を砕いてボス戦をクリアした。俺も無事に自分のアバターの操作権限を取り戻せてみんなに詫びと感謝の言葉を言った。

 

「マスター。ホームに戻り次第、寄生虫に凌辱された身体のケアを施させていただきます。拒否権はありませんよ」

 

有無を言わさず、異論も問わさないサイナにこの時だけは頭が上がらなかったがな。

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