約束の時間となる前に合流する場所でペイン一行を待つこと5分。見慣れた4人パーティのプレイヤーが闇夜の奥から月の光に照らされながら現れた。
「待たせたかな」
「問題ない。あの時と同じ光景が出来たからな」
雲一つない蒼夜に浮かぶ大きな満月を見上げる。今夜こそはジズを倒し切ってみせるぞ。
「花見の件だけど、そっちはフレデリカが料理を用意すんのか?」
「そうだよー。まったく、あの料理を食べて以来は時間が空いたらMPに関する料理を試行錯誤していたら、ついでに花見用の料理を作ってくれーって言われたんだよ?面倒この上ないよ」
「ははは、そりゃ俺も他人事じゃないな。悪い、お詫びと言ってなんだが実ったらスカイ・ストロベリーをあげるよ」
「苺?ワイルドストロベリーじゃないの?」
「食用の苺だ」
まだ残っていたスカイ・ストロベリーをフレデリカに譲渡する。手の平の中の赤い果物にペイン達も興味を示して視線を注いだ。
「食用ってことは甘い方のだよな?よく見つけたな」
「ドワルティアの商人から買ったんだ。買うためには一定量か、規定量のアイテムを買うことと自身がファーマーかそれに類似している状態を話すとスカイ・ストロベリーの隠し要素を発見することが出来るんだ」
「うわー、それ絶対に見つからないわけだよ。いま第6エリアまで進んでいるけどさ、全然見つからなかったんだよね」
「そうなのか?あと、スカイ・ストロベリーはどこかのエリアの村で群生しているらしいぞ?更に言えば、実ったらピクシードラゴンが食べに現れる情報だ」
「へぇ、あの小さいドラゴンが向こうからくるのか?」
「まだ断言できないけど、ピクシードラゴンが現れなくても美味しい思いをするのはこっちだ。ファーマープレイヤーや畑を持っている探索・戦闘系のプレイヤーがこぞってマネーや物々交換して手に入れた程だ」
まだあるがな、と付け加えるとフレデリカがパクッと口の中に放り込んで食べだした。
「美味しい~! あま~い!」
「これでいつかはケーキやジャムを作るつもりだ」
「・・・・・私も苺を育てようかな。あ、まだ苺ある?」
あるぞ、と10個ほど譲渡すると美味しそうに食べ始めるフレデリカの横から3つの手が伸びる。
「あっ、ちょっ!」
「お、本当に苺だな」
「甘い」
「これは他のプレイヤーも欲しがるのも頷けるな」
頬を膨らませプンプスカと怒るフレデリカを何とか宥める。
「ぶっちゃけ言うと、これ一粒で1万Gもしたからな。50粒ほど買ったから50万もしちまった」
「「高すぎだろっ!!」」
「・・・・・お金払うね」
「流石に無償で貰っていい額じゃないね」
申し訳なさからか、フレデリカから7万。ペイン達からは1万Gをくれた。消費した一部が戻ってきた!
「さて・・・・・そろそろ本題に入るか?」
「ああ、そうしよう。頼めれるかな」
「了解。フェンリルを呼ぶな?」
召喚用の笛をインベントリから出して思いっきり吹いた。笛から鳴る音と共に目の前に銀色の魔方陣が浮かび上がって、そこからフェンリルが現れる。
「久しぶり。今夜はジズと戦うつもりだ。お前の力を借りたい。協力してくれるか?」
「・・・・・グルル」
俺の願いに応じようとするフェンリルからパーティーの加入の申請がされた。受託して俺とフェンリルに―――サイナとメリープ、ペイン一行のパーティーとチームを結成。
「戦闘前にデバフの料理を食べよう」
「おっ、そりゃいいな!」
「ありがたくいただくよ」
「って、また見たことのない料理をたくさん作ったんだね」
「さっさと食べて始めようぜ」
物の数分でデバフ料理を食べ尽くした後、俺が鷹の衣を纏って鷹になって夜空に飛ぶ。高く飛び続けると、俺達の標的である大型のモンスターの姿が久しぶりに暗夜から現れた。ただ、前回奪った一対の翼はそのまんまHPバーは満タンの状態での登場だ。
「ようジズ。今日こそは倒させてもらうぜ!」
衣を脱いで直ぐに【八艘飛び】で空中機動をしながら迫ってくるジズへ逆に突っ込んだ。空中戦はお前の方が何倍も上手だろう。だがな、お前にとってハエのような存在たる俺を攻撃するには魔法を使うよな?
「両手がないお前の死角こそ俺にとってのラッキーポイントだ!」
7回目の跳躍で矢の如く真っ直ぐ一直線に飛ぶ俺を嘲笑うかのように、真上へ移動するジズが大きく翼を広げ、魔方陣を展開した―――その瞬間。地上から弾丸が勢い良く伸びてジズの至近距離で眩い光量の閃光が闇夜を引き裂いた。それは一瞬だが、ジズには大いに効いただろう。視界が一瞬で真っ白、次いで視力が奪われて目の前は真っ暗になっている筈の黒鳥は地上へ真っ逆さまに落ちて行った。
「おし、一回目!」
墜落したジズにペイン達が攻撃を開始した。1割も減っていないがちょっとずつ確実にHPバーを減らしているのがわかる。この間に・・・・・一気に畳みかける!
「サイナ、機械でさらに封じろ!」
「了解しました。これよりアームを創造します」
ジズの両脇から巨大な機械のアームが飛び出し、胴体を拘束した。ふっふっふっ・・・・・これでしばらくはこっちのターンだ。HPを半分まで減らさせてもらうぜ!
「・・・・・なぁ、俺達がいる必要あったか?」
「ないねー。うん、ハーデス達だけでも倒せれるでしょこれ」
「誘ったのは俺達なんだ。彼等に負けない戦いだけはしよう」
「既に迫力は負けているがな」
ジズとの交戦を初めて30分以上が経過した。地面に縫い付けられた巨鳥は一方的な蹂躙を受け、見る見るうちにHPを減らされていく。当然抵抗しないはずがないジズは、動けない状態でも口から風魔法のかまいたちや突風を放つ。ペインとドレッドはそれぞれ躱し、フレデリカの魔法の援護でドラグは守られたりと未だ誰一人も死に戻りはしていない最中。
「【断罪の聖剣】」
光る剣を横凪ぎに振るわれ、ジズの額を斬り裂いて抜けていく。剣士の技を見て、おおっと感嘆する。
「どこで取得したんだそれ?」
「秘密さ」
「そりゃあ残念。【生命簒奪】!【悪食】!」
こうして俺もHPとMPを増やしていくことでジズのHPを削っていくと、とうとうHPバーを半分にした瞬間。ジズの身体が黒い靄と赤いエフェクトを纏いだしたのだ。その姿と空に暗雲が漂い、紫電が迸る光景を目にした瞬間。
「ジズから離れろ!無差別の広範囲攻撃の雷が落ちてくるぞ!サイナ!」
「準備は整っております」
いつの間にか至る所に避雷針の機器が創造されていた。流石は俺の相棒だ!稲光と共に下へ落ちる稲妻がペイン達を狙う動きを窺わせたが、避雷針に吸い寄せられる。
「赤いエフェクトが出ている時は物理も魔法も無効化される!」
「じゃあどうすんのさー!」
さぁ、どうすればいいんだろう?その解決策はまだ判明していないから兎に角その無敵モードが無くなる時間経過を待つしかないんだと思う。って、ヤバい。アームが壊れるっ!首に腕を回して抱きしめるとジズがアームの拘束から無理矢理強引で抜け出して、俺ごと空へ飛んで行った。んー、この後どうしようかな。俺を振り落とそうと激しい動きをするジズを他所に考える・・・・・あっ、流石に螺旋状に動かれるとっ!
「あっ」
ジズから振るい落とされてしまい、地面に落下中の無防備の所を稲妻に狙われる―――なんの!指輪も二つ外して極振り状態にした瞬間。俺は稲妻の直撃を食らった。
「ははははー!VIT1万も超えている俺にそんなの通用するかぁー!【機械神】!【武装展開】!」
破壊する装備を選び体中から兵器が飛び出して、空中移動を開始する。
「【機械創造神】!【攻撃開始】!」
【機械創造神】はミサイルを10基ほど創り、それらをジズに向けて放った。真正面からぶつかって破壊されるミサイルの一基が眩い閃光を解き放った。また視力を奪われて地面に落ちて行ったジズの前に先回り、開いた口の中で赤い閃光の雨をお見舞いした。外側がダメなら内側ってなぁっ!!地面と接触する前に退避してジズから離れる。口の中で攻撃したからHPはそれなりに減ったが今もある雷雲からの稲妻が邪魔だな・・・・・。
「マスター、超電磁砲の四丁分のエネルギーが充電完了しました」
「合図があるまで待機。―――そうだ。試してみるか」
サイナを見た視界に入るメリープ。あいつのスキルを思い出して試みる決断をした。
「メリープ、【発毛】!【羊雲】!」
メリープの羊毛がさらに膨張して巨大な毛玉化になった後、地面から風船のように離れフワフワと浮かび上がって地上へ落ちる俺と擦れ違い、夜空へ吸い込まれていくメリープは毛玉化とした羊毛をポポポンと分裂させて広範囲に広げた。広範囲と生易しいどころじゃない。見渡せる限りの雷雲を蓋するように、地上を覆うように金色の羊毛が雲のように広がったのだ。・・・・・初めて使う俺も口があんぐりだ。
視力が回復して地上から力強く羽ばたいて飛ぶジズが金色の羊毛の雲に対し、戸惑いの色を窺わせたもそれは一瞬。一気に羊雲へ突っ込んで行ったのを、メリープに疾呼した。
「【金剛】!」
ジズが羊雲にぶつかる直前。ぶつかる部分にだけ、雲が硬質な金属と化してジズの体当たりを何と防ぎ切ってみせた!金属と化した雲はその後、消失してぽっかりと暗い空を窺わせる穴が出来た。
「【雷雲】!」
金色の羊雲全体に迸る電流、ゴロゴロと雷鳴が轟く。今度は―――ジズが稲妻に狙われる番だった。巨大さゆえに回避は完全ではなく、何度も稲妻を食らう。威力はどれぐらいあるのか分からないが、三分後。雷雲が止み羊雲が暗黒の雷雲を残して消失、メリープが姿を見せて落ちて来た。それを見逃すジズではない。黒い閃光と化してメリープに襲い掛かった。
「【身代わり】!」
ジズの鋭い鉤爪がメリープの身体を引き裂いた―――かと思ったがそれは金色の羊毛だけだった。メリープは羊毛がない姿でさらに落ちてくるが直ぐにジズの追撃が入った。しかし、黙って見ている俺ではない。
「―――【カバームーブ】!【カバー】!」
【機械神】を解除して一瞬でメリープの前に移動、ジズに対して大盾を構え鉤爪の一撃をメリープから守った・・・・・大盾と鎧が砕けてってHPが減っている!?まさかの貫通攻撃かよ!?あ、やば、俺が死に戻りに・・・・・。地上に落ちた俺達。メリープは俺の身体の上にして落下ダメージから避けられた。・・・・・HPが残り1か。
「あっぶねぇ・・・・・ギリ保った」
HP回復にポーションでする。ペイン達がこっちに近づいてくるよりも先に、俺の頭の上に何時の間にかフェンリルが来て見下ろしてくる。
「よう、手ごわいなジズ。お前もそう思うだろ」
「・・・・・」
「でもよ、まだ諦めたわけじゃないぜ。相手は生物である以上は必ず倒せるんだ。俺も、俺達もまだまだ奴を倒すまでは戦い続けるぜ」
不敵の笑みを浮かべながら立ち上がる俺と羊毛がないメリープはジズを見据える。
「メリープ、毛がなくなってしまったが戦えるか?」
「メェー!」
「よーし、なら倒すぞ!」
戦意を感じ取ったか知らないがジズは、大きく翼を動かしたら巨大な嵐を巻き起こして俺達を閉じ込めた。
「俺を信じろ!」
「メェー!」
「グルル・・・・・」
嵐の目から垂直に俺達へ突っ込んでくる。巨大な体での体当たりか。いいだろう!狙いも定めやすい上にこの嵐の壁はペイン達を守ってくれると信じるぞ!
「【覇獣】―――【アルマゲドン】!【グランドランス】!」
ベヒモスになって今まで一度も使ったことが無いスキルを発動する。発動から一拍遅れて黒い雷雲に穴を開ける炎に包まれた巨大な隕石がジズの後ろから落ちて来たではないか。嵐の目に入るそれにジズも気づいたがどうすることもままならず、隕石とぶつかってそのままこっちに落ちてくる。周囲の地面から岩石の槍を作り俺達を囲みつつ穂先をジズに構え、姿勢を低くしながらメリープとフェンリルを腹の下に隠して防御の姿勢に入る。
そして―――嵐の中で隕石による大爆発が発生して嵐が吹き飛んだ。俺は・・・・・何とか耐えた感じだ。爆発耐性が無効だからだろうな。腹の下にいる二匹は・・・・・おお、無事か。じゃあ、ジズは?
クォオオオオオオオオオオオオッッ!!!
爆炎やら黒煙やら土煙やらを全て吹き飛ばすジズが、【アルマゲドン】を食らってもまだピンピンしていますかー。でも、あの無敵モードではなくなっているから今が好機!
「撃て、サイナァー!」
「―――射撃を開始します」
遠くから光の二柱が伸びてきて、ジズの片翼に穴を開けた。ダメージも確実に通ってHPが減った。
「メリープ、フェンリル。行くぞ!」
「メェー!」
「ウォオオオオオオオオオオオオン!!!」
高々に遠吠えを発したフェンリル。暗雲に開いた穴から満月が顔を出して月の光に照らされるフェンリルの毛並みが幻想的に輝き―――。
ゥォォォォォォォォォォォォォ・・・・・!
フェンリルの遠吠えに反応する遠吠えが確かに聞こえた。・・・・・この獣の声は・・・・・。ジズもその声に反応した。もしかして、と周囲に目を配らせるといつぞやの平原の丘から銀色の毛並みの狼の集団が現れてこっちに駆けてくるじゃないか!
「フェンリルの群れ!まだあんなにいたのかお前の仲間は?」
「グルル・・・・・」
当たり前だと言いたげに唸るフェンリル。こんな光景はもう二度と見えないかもしれないな。なら、こっちも応じよう!
「メリープ【羊祭り】!」
「メェエエエエエエエエエエエ!」
メリープも大きく叫んだその後。メリープの叫びの声にジズの後ろから大量の土煙が見える。その原因は・・・・・。
メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!
メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!
メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!メェー!
メーアの群れがフェンリルに負けないぐらいの速度で現れてジズに向かって走り抜けていく!二方向からモンスターの群れに迫られるジズは流石に身の危険を感じ、空へ逃げようと翼を広げた矢先に遠くから飛んできたもう光の二柱が貫いた。その射撃で片翼を奪い取ってみせたのである。翼を失った鳥はもう二度と天へ羽ばたくことは敵わなくなった。それでも反撃をする動きを見せるジズ。
「おっと、攻撃はさせないぞ。【咆哮】!」
ジズに【咆哮】をぶっ放して十秒間動きを封じた。
「行け、フェンリル!仲間の怨みをここで果たせ!」
「ウォオオオオオオオオオオオオン!!!」
宿敵のモンスターを食らいつきに駆け出すフェンリル。そこからはもう何といえばいいだろうか。メーアがジズを圧し潰し袋叩き、フェンリルが牙と爪でジズにダメージを与えていく。・・・・・俺もフェンリルの姿になって交ざるか。
「俺達も行こうか」
「メェー!」
【覇獣】を解除して銀狼のコートを身に纏いフェンリルの姿でメリープと、フェンリルとメーアの群れの中に飛び込みジズに攻撃する。
「おいおい・・・・・何だよありゃ・・・・・」
「狼と羊がジズをフルボッコしている・・・・・」
「・・・・・」
「手が出せないねーこれ・・・・・あっ、ジズを倒しちゃった」
次の瞬間。不意にアナウンスが流れだした。
『ニュー・ワールド・オンラインをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』
記憶に新しい、運営によるアナウンス。
いいやまさかね、とある種の警戒を抱きながらそれを聞くプレイヤー達はまたしても驚愕を叩きつけられることになる。
『現時刻を持ちまして、レジェンドレイドモンスター「鳥帝ジズ」の撃破を確認いたしました。撃破者はプレイヤー名「死神ハーデス」、「ペイン」、「ドレッド」、「ドラグ」、「フレデリカ」の五名です。さらにレジェンドモンスターの撃破に伴い、ワールドクエスト「ニュー・ワールド・オンライン」の進行を報告させていただきます』
『さらに二体目のレジェンドレイドモンスターの討伐に伴い、「海の皇蛇リヴァイアサン」のレイドボスイベントを2週間後に開催します』
「うっそぉっ!?」
「とうとうジズまで倒しちゃったかぁ・・・・・」
「リヴァイアサンのレイド戦が始まるのかよ!こうしちゃいられねぇ!」
「白銀さんだけじゃなく今回は前線組の有名なパーティも参加か」
「白銀さんの乗っかりだろ?実際、あの人の方が凄いって声が多いからジズを倒したのも白銀さんだろ」
「あー、村のイベントの時は一緒だったからわかるよ。あの人ほんと指示も的確で戦いやすかったぜ」
「うー!?私もハーデス君と倒したかったよー!!」
「ふふふ、ジズの素材を持ってきてくれるかしら?」
「す、凄い・・・・・!!」
『おめでとうございます。レジェンドレイドモンスター「鳥帝ジズ」を討伐しました。2パーティ、チーム以下で討伐したプレイヤーには称号【勇者】を獲得しました』
『死神ハーデス様は既に、称号【勇者】を所持しています。死神ハーデス様が勇者スキルを習得しました』
・・・・・勇者スキル?
【勇者】
使用制限は一日一回。使用すると全ステータスが三倍に倍増。魔王・悪魔に対する与ダメージ大幅上昇。被ダメージ大幅減少。各職業の勇者の奥義が使用できるようになる。
各職業の勇者の奥義とな?えっと・・・・・重戦士の奥義って装備ごとに違うのか。ふむふむ・・・大盾の場合は相手の物理攻撃と魔法を全て盾に吸収して三倍の威力で解放するのか。
テイマーは?ほう、従魔のステータスが飛躍的に上昇する魔法を使えるのか。しかも勇者スキルってメインとジョブの職業を両方使用できるとはなかなか便利だな。
「グルルル」
フェンリルの姿のままの俺にフェンリルが傍に寄っていた。ジズを倒せたことで陸に棲む幻獣種の安寧は守られたんだよな?元の姿に戻って銀色の毛並みを触れる。
「もうベヒモスもジズもいなくなった。これからはお前等を脅かす存在がいない平和に暮らせる場所で生きるんだぞ」
「・・・・・」
「ん?」
踵返してまだいるフェンリルの群れに向かい、その内の一頭に近づくフェンリルは短く鳴いた。何かを伝えているようだが言葉が分からない俺は、何か伝えられたフェンリルが深々と頭を垂らした後に暗雲が消え、散らばり輝く星々の夜天に向かって遠吠えをした。最初の一頭に呼応するが如く他のフェンリル達も遠吠えをする。そして共に戦ったフェンリルもする。
『称号:幻獣種に認められし者』
効果:幻獣種との遭遇率が高くなる。テイムが可能になる。
この世界で幻獣種に認められたものは僅か三人の伝説の神獣使いとなったテイマーのみ。テイマーの神の領域に至るためには神獣の協力が必要。いずれも幻獣種が深く関わり合う必要がある。
そんな称号の内容を見ていると、フェンリル達が丘の向こうへと駆けて行ってこの場から立ち去っていく。そして最後に残ったフェンリルは・・・・・俺の額に自分の額を重ねた。
『フェンリルが正式に死神ハーデス様の仲間になりました』
『テイマー、サモナーの全プレイヤーの中で最初に幻獣種のモンスターをテイムに成功しました死神ハーデス様に特殊職業「幻獣使い」が解放されます』
幻獣使い
編成従魔枠が6から7に増え、パーティ上限数が7になる。
条件:コマンダーテイマーに転職し、メインもしくはジョブがテイマー、もしくはその上位職の状態で幻獣種をテイムする
・・・・・先走っちゃてますよねぇ・・・・・。
「えっと、よろしくな」
「グルル・・・・・」
挨拶を交わす。その間にもメリープの【羊祭り】で召喚されたメーアの群れは草原の草を食べ始めたりその場で寝始めたりしていた。天敵がいなくなったから安心しているのかな。
「ハーデス」
「ペイン」
ペイン一行が来た。そういえばこいつら、殆ど出番なかったよな。
「出しゃばってすみませんでした」
「いや、こちらも誘っておいて役に立っていなかった。殆んど君が戦ってくれたから俺達も勇者の称号が手に入ったよ。だから、今回の戦いで手に入った報酬を全てハーデスに譲ることにしたんだが」
深々と頭を下げる俺をペインの考えに顔を上げて目を瞬いた。
「いいのか?そのまんま持っていてもいいんだぞ」
「ハーデスほど働いちゃいねぇからよ。今回のVIPは誰がどう見てもお前だ。貰っとけよ」
「寧ろジズの素材よりも勇者の称号の方が狙いだったしな」
「ステータスに振るポイントが三倍だもんねー。これで他のプレイヤーよりも確実に大きな差が出来るから嬉しいんだよ。ハーデスには負けるけどね」
「そういうことだ。この称号を手に入れたのはハーデスの働きがあってこそだ」
四人からそれぞれ得る筈だった報酬を受け取ることになってしまった。あの少し離れた場所にある豪華な複数の宝箱を。
「じゃあ・・・・・開けるぞ?」
俺達は宝箱に近づいて頷く四人を尻目に俺は一つずつ開けて行った。
まず一つ目はジズの一式素材だ。これが一番欲しかったんだよな。
二つ目は莫大なG。ベヒモスの時と同じ2000万Gが入っていた。
三つ目は―――。
『ジズの魂魄』
肉体が失えどジズの巨大な生命力は未だ残って消え失せずにいる。
と表示された黒いオーラを滲ませてる魂魄。そのアイテムは触れようとする前にジズの魂魄は夜天に昇ってしまい―――。
『レッサージズと挑戦しますか?』
というアナウンスが流れた。いやNOで。報酬はこんなものか。さて、取得できたスキルは?
【大嵐Ⅰ】
一分間、大嵐を召喚する。スキルレベル依存で召喚できる時間が増え任意に操作することが可能になる
【大竜巻】
対象を閉じ込め持続ダメージを与える。
【稲妻】
稲妻を発生させる雷魔法に10%の麻痺効果とスタン効果を付与する。麻痺耐性とスタン耐性スキルの影響を受けない
【飛翔】
MPを消費することでステータスの数値関係なく空を飛ぶことが可能になる。
んー・・・・・これだけか。ジズをHPドレインしたのは俺じゃなかったんだな。ジズに変身できるか、意のまま操れるのスキルが手に入るのかと思ったんだが非常に残念だ。これはこれで凄く強いんだがな
「ハーデス。報酬はどうだったかい?」
「まぁ、結構得たよ。称号もスキルも。それとここに来れば多分レッサージズに挑戦できるようになってるしな」
「鳥帝ジズより劣化したモンスターのレイド戦ができるのか。それって経験値が入るのか?」
「挑戦してみないことには何とも。俺はしないけどな。色々と試したいことが出来た。今夜はこの辺でログアウトするが」
「そうだねー。私も疲れちゃったよ。特にラヴァ・ゴーレムを倒すのに水魔法を連発したりマグマや溶岩から逃げ回ったりしてさ」
俺はもう耐性があるから平気だもんねー!
「それじゃ、ペイン達。次はエルフのイベントの時に」
「ああ、楽しみにしているよ」
チームを解散し始まりの町に戻る前に群れのメーア達を見つめる。
「・・・・・なぁ、あいつらをある場所まで導けないか?」
フェンリルに何となく尋ねた。
「おお、勇者様!今宵は如何致しましたか?」
「メーアを50頭連れて来たんだが」
「なんと!それはありがたいことです!では、こちらの者でメーアを―――」
「それとさ、さっきジズを倒してきたんだ。これでメーアの天敵が減ったから安心してくれ」
「な、なんですとぉ~っ!?」
死神・ハーデス
LV52
HP 40/40〈+300〉
MP 12/12〈+200〉
【STR 0〈+129〉】
【VIT 1155〈+4875〉】
【AGI 0〈+120〉】
【DEX 0〈+120〉】
【INT 0〈+100〉】
装備
頭 【空欄】
体 【黒薔薇ノ鎧:
右手 【新月:
左手【闇夜ノ写】
足 【黒薔薇ノ鎧:
靴 【黒薔薇ノ鎧:
装飾品 【生命の指輪・Ⅷ】【古の鍛冶師の指輪】【
称号:万に通じる者 不殺の冒険者 出遅れた者 白銀の先駆者 毒竜の迷宮踏破 大樹の精霊の加護 幸運の者 ユニークモンスターマニア 三代目機械神 聖大樹の精霊の加護 勇者 最速の称号コレクター 魔王の戦友 絆の勇士 村の救援者 幻獣種に認められし者
スキル
【絶対防御】【手加減】【逃げ足】【体捌き】【瞑想】【挑発】【極悪非道】【シールドアタック】【